お姉様が起動した翌日。
主は普通に学校へ行き、帰ってきた後もごく普通の生活を送っている。
まずは、宿題。
前世は大学生だった主にとっては簡単……と言うわけでもない。
書き取りなどの単純作業は、単純なだけに時間が短縮できない。
ちょっとした調べもの、特に地域の事といったこの世界特有のものや、そもそも忘れているものは、相応の手間をかける必要がある。
そして、終わったころに夕食や入浴。
その間、私達は周囲の捜索や、夜天及び宵天からの情報の整理。
お姉様はチャチャマルを助手に、別荘でお姉様用と主用のデバイスを作製。
作製中のお姉様に、捜索結果の報告。チャチャマルにも同時通信。
「魔法の戦闘訓練をやっている
魔力の残滓を調査していて発見。
名前は
市内だけど北の方、少し遠い。
外見は、悪人顔のクルト・ゲーデルをそのまま若くした感じ。
簡易的なものとはいえ、ストレージデバイスを装備。
魔力量はB相当、魔法と技術はへっぽこ。恐らく陸戦Dランク程度。
結界を張る能力又は意思が無い模様。
人に見つからないよう、山を少し上って林の中で練習する程度の隠蔽は行っている。
「転生者、だな。というか、その名前はいいのか?
悪人顔な点も気になるが……」
「性格及び行動原理の調査は完了しているでしょうか?」
修行中の呟きやメモを調査済み。暫定的な結果は出ている。
原作に介入する気満々。
物語の主人公に成りたいと思っている様子。
ハーレムを希望している。
お姉様的表現をするなら、オリ主様志望。
実力不足は理解している。
現時点で、介入を意図した行動は取っていない。
原作の登場人物に接触もしていない。
原作開始に気付いていない。
来年だと思っている可能性が高い。
「行動原理としては要注意人物ではあるが……」
「現状ではトラブル覚悟で強制排除する程の脅威では無いと考えられます」
「むしろ、高校1年生が小学3年生を捕まえて俺の嫁だのハーレムだの言いそうな状況だ。
性犯罪者として警察に捕まえさせた方が平和か?」
証拠不足。
現状では困難。
「やはり、そうか。
だが、私達以外の転生者が実際に見付かった。他にもいる可能性は高まったとみていいだろうな。
こいつの警戒と、片手間でもいいから他にいないか捜索を。
原作通りなら、ある程度の魔力を持つ者は怪しいと見ていいはずだ。
他に、可能であれば外見以外にも共通点や特徴が無いかの調査も頼む」
捜索は哨戒の範疇。問題ない。
探知妨害が障害となりそう。
共通点の調査は事例不足。
調査は開始。事例は現在、お姉様、主、
この内、お姉様と主は特殊要因も多いため、恐らく比較調査に不適格。
確認済みの地球出身魔導師は候補も含めても高町なのは、八神はやての2名。
八神はやては闇の書の侵食を受けている。比較対象の魔導師として不適格。
ユーノ・スクライアは他世界出身。比較対象に加えてよいか不明。
直に来るであろう、テスタロッサ家及びアースラのクルーも同様。
管理局本部にいるであろうギル・グレアムは他世界での生活が長い上に、調査網をそこまで伸ばせるかも不明。
ギル・グレアムの猫は人ですらない。恐らく不適格。
「止むを得ないだろう。当面は情報収集を主に、適時比較をしていくしか無いだろうな。
さてと、アコノのデバイスに入れる魔法だが……」
主、入浴終了。部屋に戻ってくる。
昨日と同じく1人。お姉様も部屋に戻って大丈夫。
魔法の相談なら主とするべき。
「そうだな。では、戻るとするか。
チャチャマル、片付けを頼む」
「はい、マスター」
◇◆◇ ◇◆◇
ほぼ同時に部屋に戻ってきたお姉様と主。
チャチャマルはまだ片付け中。部屋にいるのは二人だけ。
「待った?」
「いや、今別荘から戻ったところだ。
デバイスの基礎部分が完成してな、どんな魔法を入れていくか相談したい」
「今の予定は?」
「魔法に慣れるための浮遊、念動、障壁、光弾は入れた。低レベルの扱いやすいものだな。
それに、自動防御や回避用の強化障壁、飛行、転移は必須だろう。
ああ、形はお望みの、2つの扇だ。普段はストラップ程度のサイズだから、アクセサリーとして身に着けておくことも可能だろう。
現時点で、ここまでが準備済みだ。
後は飛行や回復を中心に、各種戦闘用魔法や便利魔法を入れる事になるが……その種類を相談したい。適性の問題はあるが、好みの魔法の方が練習する気になりやすいからな」
「魔法の適性は?」
主は、恐らく広域型。
収束よりも拡散に向いている。
近接よりも遠隔に向いている。
原作の八神はやてに近い特性。
ベルカ式に多い近接魔法は適性に合わないものが多い。
回復も、個人回復よりも回復領域の展開等の方が扱いやすい。
合わなくても扱えないわけではない。
最終的には好む戦術次第。
「適性に合う、一般的なものを。
戦術もよくわからないし、何が有効かも知らない。
効率的に力を使えるものが慣れやすいはず。
まずはそれから練習する」
「そうか。それなら、色々使えそうなものを見繕っておくか」
「色々入れて大丈夫?」
原作3作に登場した魔法全てを入れても余裕があると予想。
入れる魔法の選定ではなく、使う魔法の選定がより正しい表現。
お姉様の作るデバイスは優秀。
「そういう事だ。他に何かあるか?」
ジュエルシード戦を想定するなら、封印方法も準備しておくべき。
高町なのはの使う封印魔法の解析を推奨。
所謂リリカルマジカル。
それを参考に、古代ベルカ式で近い形の封印方法を模索。
現在知られている封印方法から大きく逸脱する事は避けるべき。
高町なのは及びユーノ・スクライアは、本日の封印作業時に捕捉完了。
捕捉は夕方。発動前の物を発見?
封印処理のみで完了した模様。
姿を確認した時点で普段着に戻っていた。
恐らく数日中にも封印作業がある。その際に解析可能と推測。
古代ベルカ式で不可能なら、ミッドチルダ式の簡易的なストレージデバイスの追加を検討。
「確かに、準備が無駄とは考えにくい。原作介入までにはあった方がいい」
「そうだな。封印か……古代ベルカだとあまり良いのは無い気がするが…………
低レベルのストレージデバイスになるが、ミッド式も準備しておいた方が無難だな。
とりあえずは、訓練の様子を見ながら少しずつ入れていく。馴染まない魔法だと思ったら遠慮なく言ってほしい」
「わかった」
「さてと、そろそろ別荘に向かおうか。
デバイスの使用者登録と、基礎の練習を少ししてみよう」
◇◆◇ ◇◆◇
というわけで、別荘へと移動したお姉様と主。
熱海の拠点近くに設置されている簡易演習場に来ている。
端にある休憩所にはチャチャマルや護衛担当の私達が数人待機し、飲み物などの準備を行っている。
「さてと、デバイスの使用者登録からだ。
とは言っても、アコノ専用に組み上げたデバイスだ。
魔力認証で起動できるから、パスワードは存在しない」
「登録の意味は?」
「紛失や手元に無い場合の召喚登録と長距離念話の接続が主目的だ。
座標特定を私の中にあるアコノのリンカーコアで行ってしまうと、私の手元に来てしまうからな。
ああ、私の手元にも呼べるようにしてあるから、体が滅んで再構成する時でも、破壊されていなければ失うことは無い。もう少し調整してからになるが、それも対処するつもりだ」
「わかった。呼び名は?」
「
最も、当面は好きな方を一つだけ使って練習する事になるが」
「対でも、一つから?」
「内部同期は行っているが、扱いとしては2個のデバイスに近いと考えてほしい。
正直に言えば複数魔法の同時使用は難しい技術だ。最低でも魔力運用とマルチタスクをそれなりにマスターしてからが無難だからな。
現時点では回復系魔法以外は同じ魔法が入れてあるし、片方でもデバイスとしては十分な性能だ。
騎士甲冑も同時起動時程強力ではないが、一つだけでも十分な性能で展開できる。
2つとも寡黙なキャラだが、馴染む方で練習するといい」
お姉様はそう言うと、紐で繋がれた、小さな2つの扇を主に渡した。
扇は主の魔力に反応して、淡い赤色の輝きを放っている。
「わかった」
「では、始めるぞ。目を閉じて、心を澄ませろ。
管理権限。使用者設定機能開放」
お姉様の声と共に、三角形を基本とした魔法陣が主の足元に現れる。
「魔力による認証を実行。
『認証確認。
『主の魔力を確認しました。
重厚な男性と優しげな女性の声が扇から聞こえ、主の衣装が瞬時に切り替わる。
変身しーんやさぁびすかっとは無い。
そもそも色気は無い。
服装は、近衛木乃香のパクティオーカードの狩衣。
「……浮いてる?」
「デバイスが使用している浮遊魔法の効果だ。
アコノの魔力ならこの程度はデバイス任せでも使えるが、思ったようには動きにくいからな。
このレベルの魔法を自力で制御できるようになる事が、当面の目標の一つだ」
「わかった」
「それと、説明だ。
カートリッジシステムは、扇面の紋様として装備した。32本の中骨毎に1発ずつ装填出来るが、余剰魔力放出の都合で扇を開いている時にしか使えない。
1発毎の魔力量は弾丸タイプと同程度に出来た。複数発の同時ロードが出来るし、装填数も多い分、性能はむしろ高いはずだ。
リロードは一度扇を閉じれば良い。紋様カートリッジの在庫があれば、デバイスが自動装填してくれる。
弾丸タイプは使えないが、私や妹達で生産しておく。私のベルカ式デバイスも同じカートリッジを使うし、在庫は大量に用意しておくぞ」
「そこまで必要?」
「表に出てからも、私の魔力はBかC程度に見せておこうと思ってな。
無限再生に物を言わせた無茶なカートリッジロードで魔力を確保というスタイルで、本来の魔力を偽装しつつ、いざという時の戦力を確保する。
書と言う点を隠すより、書の特性を前面に出して制限を用意した方が良いと思ってな」
「意図は納得。
デバイスは出来てる?」
「魔法の設定はまだだが、基本的な形は出来ている。
そうだな、この際見せておくか。
黒龍、セットアップ」
お姉様の声にデバイスが応え、大型の鉄扇を持ち、黒で統一したノースリーブにミニスカート、ロンググローブ、ニーハイソックスを纏った姿となった。
要するに、魔法先生ネギま12巻武闘大会参加時のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、肌の露出減少版。
「安定性や扱いやすさを犠牲にして、耐久力と処理速度を優先したものだ。
中骨は16本だが、カートリッジは中骨1本毎に4発用意で、最大64発だな。
これだけあって足りないという事は無いだろう」
「随分多い」
「アコノのデバイス2個分と同じカートリッジ数だぞ?
同時行使数はともかく、装填数は変わらん。
それに、リロードはアコノの方が2つある分やりやすいからな」
「確かに。
デバイスのデザインは私に合わせた?」
「主従だからな。同じ系統で合わせた方が疑問は持たれにくいだろう。
騎士甲冑は、この世界の文化の範囲だ。ネギまの服でも問題は無いと思ってな」
「甲冑なのに、金属部分が無いのは問題ない?」
原作でも、ヴィータやシャマルは布地主体。
シグナムも金属質の部分は手、足、腰のパーツ程度。
鎧に見える騎士甲冑を使っている原作登場人物はいない。
主は素肌部分が手と頭くらい。
体と騎士甲冑の距離も遠め。間に緩衝や耐温度、各種防御を色々展開。
総合的に、防御力や耐環境性はかなり高い。宇宙でも活動可能。
主は書の保護で元々活動可能。それを隠す隠れ蓑。
「過剰、でもない?」
「情報隠蔽という点では、過剰とまでは言えないと思っている。
通常の騎士甲冑としては異様な性能だが、SSクラスの騎士甲冑だ。
多少の過剰性能は問題無いだろう」
「無い……?」
「書の性能の漏洩を遅らせる程度の効果はあるだろう。
過剰と言っても、大きな魔力と既存の術式で可能な範囲だ。
私が過保護だと思わせられれば成功だ」
「デバイス製造に関して、公表予定は?」
「当面は無いし、公開するにしても古代ベルカでも可能な範囲までだな。
アルハザードと私達の技術を総動員すれば、トンデモ性能のデバイスを用意できるんだが……そのレベルは必要無い。
必要になる前に、私達で敵を殲滅してくれる」
「頼もしい。でも、過剰反応は良くない」
「分かっているさ。
それに、必要になるまではお互い魔力は抑える。
アコノの場合は、デバイスを持っていればリンカーコアの無い一般人レベルにまで抑え込める」
「リンカーコアが無いのに、魔力はある?」
「ほんの少しだがな。アルハザードでは魂や肉体にも魔力素から魔力の変換能力があるとされていたし、リンカーコアが欠片も無い人間はいないらしい。
最低レベルのリンカーコアの能力は限りなく低いから計測時の誤差に近いレベルではあるし、そのレベルならレジスト能力も低いからな。無いものとして扱う魔法も色々とあるぞ。
おかげで、今の判定法では誤差として切り捨てられているようだがな」
「つまり、地球の一般人にもリンカーコアの欠片はある?」
「魔法が使えないレベルのものでもあると認めれば、そうなる。
じゃないと、いくら突然変異的とはいっても、高町なのはや八神はやてみたいな大魔力持ちが生まれる可能性は低すぎるぞ?
原作だけで管理局と接触した大魔力持ちの地球人はギル・グレアムを含め3人、内2人は事件があった場所の近くに偶然いただけだったわけだ。
物語補正があるにしても、他にいないわけがない」
「納得」
うちの主人公は、前準備が長いです。むしろ前準備が本編で、実行をエピローグにする勢いです。
この話のデバイス(レイハさんやバルさんを含む)は、最低限しか喋らないのです。
勘違いオリ主系(いわゆる踏み台系)の転生者ですが、裏設定的には、彼等が必要です。彼等がいなければ物語が成立しない勢いで。
実際の物語としては……えーと、うん。素直に踏まれて、みたいな。ちゃんと必要なんですけどね?
なお、4個目(今回封印分)のジュエルシードは、サウンドステージだとプールらしいですね。作者は聞いた事がありませんが。
なので、ひっそりと回収してもらうために、未発動の物を発見してもらいました。
基本はテレビ版と言っている以上、乖離には含めません。
リンカーコアや魔力云々は、捏造設定です。
「無い→超ある」の突然変異よりも、「ほぼ無い→超ある」の方がまだ自然だろうという判断です。別の設定(複数)にもちょっと影響したりしています。設定厨乙です。
そして、次話でようやく原作キャラと本格的に接触します。
「初めに」での予告通りですよ。
(おまけ) ありそうな疑問に先に答えるコーナー
Q:なのは捕捉が微妙に遅い理由は?
A:主人公達(エヴァ&アコノ)が、さほど気にしていないからです。
急いで場所を確認しなくても、すぐに暴走や封印作業で居場所を知らせてくれるからその時で十分。調査に向かうよりも他にやるべきことが多いし、ユーノが使う魔法やレベルも分からないし、といった感じです。
サボりではなく、優先順の問題です。特に2500年分の未整理情報の処理は洒落にならない負担になっています。特に最近の魔法を理解しておかないと術者が使う(解析が間に合わない)魔法に対処出来ない可能性が高いので、必死です。他の作業も色々多いですし。
そして、宵天の情報には
Q:はやての発見はあんなに早かったのに?
A:はやては家が意外に近かった上に、隠蔽用の魔法の存在が妹達にとって気になる目印となったためです。
はやてを探すつもりは無く、付近地域の捜索段階で発見していました。病院などは、そこからの芋蔓です。
設置済みの魔法の解析は難しいですが可能なので、かなり面倒ですが回避も不可能ではありません。夜天もいますから、最優先調査対象として全余力をここに投入していました。だからこそのあの情報の早さです。
なのはの家・翠屋・聖祥大学付属小学校は、この時点での「付近地域の捜索」の範囲外です。はやての家に集中しすぎたので。
本来は、ユーノやアルフ、フェイトが気付かない程の、高度な隠蔽処理なんです。妹達は頑張りました。
ところで、こういった解説とか裏話は、今後もここ(あとがき)にあった方がいいでしょうか?
無い方が楽しめる方もいるかもしれないので、別の場所(ブログか何か)への移動も検討しているのですが……
2012/11/18 あとがきのQAを修正(意味に変化は無いです)
できない→出来ない
おおい→多い
宵天の情報は見ると~があります→宵天の情報には~が含まれています
2012/12/25 ミッド式→ミッドチルダ式 に修正(妹達の発言のみ)
2013/03/15 ネギま12巻武闘大会参加時のエヴァ→魔法先生ネギま12巻武闘大会参加時のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル に修正(妹達なので略称を使わない)
2015/02/10 一部変更
私の中にあるリンカーコアで→私の中にあるアコノのリンカーコアで
破壊時ロストに関して説明を追加
2015/02/25 後で出るベルカ式とミッド式の違いの説明と矛盾するデバイス作成手順を修正
2016/04/03 入れいく→入れていく に修正
2022/08/26 入れ事に→入れる事に に修正
2024/09/19 適正→適性