青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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蛇足:或いはこんな未来も/StrikerSだった何か2014年12月

 ◇◆◇ 2014年(新暦75年)12月A ◇◆◇

 

 

 やってきましたミッドチルダ。

 空港に到着したお姉様達を歓迎する式典的なイベントやらの都合で、記念式典自体は明日。

 なので、お姉様達はクラナガンのホテルに宿泊。

 当然の様にお姉様やヴィヴィオはVIP用のスイートルームで、護衛的な扱いのセツナや戦闘機人達も同じ階の(位置的に高級以外あり得ない)部屋を割り当てられてる。

 警備や護衛として直近護衛部隊に加え、時空管理局や聖王教会から派遣された人も常駐してる。そういう人用の控室もちゃんとある辺り、ホテルの用途が解りやすい。

 

「しかし、襲撃の情報があると知っているのに、こういう人物を護衛に寄越すか?」

 

「あまり感心出来ませんよ」

 

 そして、お姉様とヴィヴィオ、ついでに変態(ロリコン)を除く最高評議会メンバーが揃って渋い顔をしてる前には、2人の少女が。

 まだ名乗る前だけど、カリム・グラシアが護衛の中に会わせたい人がいると連れて来た。

 幼いけど、どこかで見た面影もある。

 

「前線に立たせるためではありません。有事の際に近くで緊張を解くためという名目の、皆さんが無茶をしないための枷ですから」

 

「それは、正直に言ってしまっていいのか?」

 

「ええ、隠しても無駄ですし。それに、外見年齢だけを根拠に立案された、問題と抜け穴だらけの名目に拘る必要はありませんから。

 2人とも、自己紹介を」

 

「はい。私は雷帝ダールグリュンの血統、ヴィクトーリアです」

 

「ジークリンデ・エレミア、です」

 

 そんなわけで、Vividに登場した古代ベルカ関係の人物2名が現れた。

 カリム・グラシアは枷と表現したけど、ヴィクトーリア・ダールグリュンは高い魔力ときちんと研鑽した技術を持つし、ジークリンデ・エレミアは制御がまだまだ甘いとはいえ特定条件で恐ろしい爆発力を発揮する。

 12歳や11歳と若すぎるだけで、戦力としては下手な局員や騎士より評価出来る辺り、とても拒否し辛い。ミッドチルダでは10歳のエリオ・モンディアルやキャロ・ル・ルシエが最前線で戦っても法的に問題が無い上に、この2人も直近護衛部隊の臨時増員という形で来てるし。

 キャロ・ル・ルシエも教導の生徒という体裁でお姉様の下にいる以上は仕方ない。

 ついでに、この話を聞いて一番ぶーたれてたのは、地球で留守番になった高町なのはだった。

 

「そうか。まあ、この顔合わせは私達と言うよりは、オリヴィエとしてのヴィヴィオに会わせる事が目的だろう?

 雷帝なんて、いかにも王族関係な血筋だしな」

 

「私としては、エレミアの方が深い関係にありますよ。

 リッド……ヴィルフリッド・エレミアには、随分と助けられたものです」

 

「なんだ、そっちが本命なのか。

 変に私と関わると権力が云々と煩い連中もいるだろうし、お邪魔虫は席を外すぞ」

 

「いえいえ、そうやって逃げようとしないで下さい。権力亡者達を牽制する為にも、若い2人を連れてきたのですから。

 これでも、頑張って騒音を遠ざけているのですよ?」

 

「……解った」

 

 腰を浮かせてたお姉様が、渋々座りなおしてる。

 でも、騒音対策方面を頑張ってるハラオウン親子やカリム・グラシア達は、もうちょっと労ってもいいかもしれない。

 連れてきてる人も、あれこれ煩いのはいないわけだし。

 

 

 ◇◆◇ 2014年(新暦75年)12月B ◇◆◇

 

 

 そして迎えた、記念式典当日。

 表向きは広い会場が必要だからと説明され、実際は襲撃時の被害を減らす事を目的に用意された、湾岸地区の式典会場へと移動。

 うん、ちょっと離れたところに何かで見たような建物が見えるのは、気にしないでおこう。

 その後、式典は滞りなく進んでいく。

 相変わらずいつでも辞める姿勢を崩さない、お姉様の挨拶とか。賛否両論ではあるけど、旧最高評議会の悪行とお姉様の異常な実力と別荘産食材の人気のせいで、支持率の方が高いままらしい。どうして下がらないんだろうね。

 相変わらず暑苦しい、レジアス・ゲイズの挨拶とか。襲撃予定自体には触れてないけど、今でも世界には多くの危険があると訴えてる。

 第一線から身を引くというか、身を引ける程度の根回しが出来たギル・グレアムの挨拶とか。もちろん完全な引退は不可能で、ご意見番的な名誉職に就く予定だけど。

 特別編集のドキュメンタリー映画の上映(一部にお姉様が突っ伏すような内容アリ)があったりとか。

 渋いおっちゃんの楽団による演奏が……行われてる頃。

 海上に、時空管理局でも感付くレベルの魔力反応が現れた。

 同時に、強烈なAMFと電磁波ノイズの発生も確認。

 

「ふん、ようやく動く気になったのか」

 

 お姉様には昨夜のうちに潜伏場所を報告済みだし、お姉様自身も確認済み。ついでに少々仕込みもしてある。

 但し敵の情報は、他の人に渡してない。

 一応は招待された立場だし、緊急時でもないのに指揮権を発動させるわけにもいかない。情報提供程度なら問題無いとはいえ、干渉と言って無駄に騒ぐのに姉様を最高評議会でなくする力は無い阿呆の相手も鬱陶しい。

 時空管理局と聖王教会が自分達の手に余ると判断した時点で、試験開始の予定。

 

「ふぅ、駄目ね。魔法式も機械式も、通信を寸断されてるわ」

 

「こちらも同様ですね」

 

「海上に、敵勢力と思われる飛行型機械を目視で確認。

 本格的に攻めて来るようです」

 

 親衛隊長のリンディ・ハラオウンと近衛騎士団長のカリム・グラシア。それに、直近護衛部隊長のクイント・ナカジマが困った顔をしてる。

 お姉様は、困ったら手を貸すと伝えておいたから、結果的に。

 

「エヴァンジュ最高評議会議長様。

 助力をお願いできますでしょうか?」

 

 こうなる。リンディ・ハラオウンの言葉使いが硬いのは場所と状況的に仕方ない。

 そして、助力第1弾は予定通りに。

 

「解った。ウーノ、予定通りだ」

 

「了解しました、マスター。

 クアットロ、空から状況の把握を。セツナさんは随伴と迎撃、トーレも上空で上がってくるゴミを潰しなさい」

 

「了解ですぅ。(インフィニット)(シェル)機装、セントリー。発進しますぅ」

 

「機装、トムキャット展開……この濃度のAMFでも、本当に動くんですね」

 

「もたもたするな。ホーネット、出るぞ」

 

 というわけで、(インフィニット)(シェル)の実戦試験を開始。

 今のところは某インフィニット・スげふんげふんに似た形のものだけだけど、まだまだ行くよー。

 

「セイン、この付近にあるAMF発生装置の捜索と破壊、ある程度目途がつき次第ロストロギアの掌握を。

 ドゥーエ、敵後方の攪乱及び工作妨害」

 

「あいよー。艦装ノーチラス展開、っと。いってきまーす」

 

「艦装龍田、装着。攪乱するのはいいけれど、無力化してしまっても構わないのでしょう?」

 

「好きにすればいいけれど、その台詞を使う必要があるほど追い詰められる事は許さないわ。

 ディエチとすずかさんは、そこのビルの上から海上のゴミ掃除を。フェイトさんはその護衛を任せます」

 

「ああ、あそこからならよく見えそうだ。

 艦装鞍馬展開、行ってくる」

 

「あ、はい。長門展開、行きます!」

 

「えっと、ファントム展開……うん、大丈夫みたい」

 

 壁の中からでも色々出来るようにする特殊装備と、固有武装のイノーメスカノンを補佐する特殊装備と、魔力の無い人用のフルカスタム装備。

 潜水艦や戦艦に似たデザインのこれらも、ついでに試験試験。

 

「他の者達は、一先ずこの場の防衛を。状況により、追って指示するわ。

 IS機装ナイトウォッチ展開。通信の回復を試みます」

 

 最後に、ウーノもISを展開。

 脚部装備のせいで身長が伸びたような状態になったから、お姉様からは今まで以上に見上げる形になる。

 その表情は……

 

「……この程度?」

 

 実に、つまらなそう。

 少し離れた通信設備は生きてたし、簡単に接続出来たし、それを踏み台に管理局の地上本部やらとのやり取りも出来てしまった。ぶっちゃけ、戦闘機人モードでゴリ押しする必要すら無かった。

 トーレは、戦闘機人モードで暴れてる。

 セツナは、クアットロの近くから中距離火砲支援。ISも問題無く稼働してる。

 すずかとディエチは、快調に砲撃中。特にすずかの魂に響く砲撃音が、頼もしさを醸し出してる。

 そして。

 

「ウーノ姉、こんなの見付けたんだけど」

 

 地面から出てきたセインが、芋虫の様に縛られた女性を放り出した。

 どう見てもルネッサ・マグナスです。

 

「あら、早かったわね。

 だけど、ゴミ掃除がまだ終わっていないわ。ソレはそこに放置すればいいから、役目を続行しなさい」

 

「あいよー」

 

 唖然としてるルネッサ・マグナスを転がして、セインは再び地中へ。

 交渉の為に近くにいたと思われるし、声が届くところまでの接近に成功したとも言えるけど。

抜け出す隙が無い感じで捕縛終了済み、しかも、兵器群も遠方でガンガン破壊されてる。

普通に考えれば詰みです本当にお疲れ様でした、とはまだ言えない辺りが、これまた面倒臭い。

 

「クアットロ、状況は?」

 

『そーですねぇ、この近くはともかく、全体的に物量に押されてる感じですぅ。連携も何もないけど数だけは多い相手だけに、地上部隊では対処に困ってる感じですねぇ。

 母艦的なのは全部で4艦、その連携はドゥーエ姉様が寸断してるみたいですけどぉ、無力化やロストロギア奪取には時間がかかりそうですねぇ』

 

「そう……この位置なら、2つは射程内ね。

 すずかさん、指示する地点を目標に、主砲で砲撃を」

 

『え? はい、ええと……射程ギリギリなので、当たらないと思います。

 それに、完全な物理攻撃ですし』

 

「最初は牽制と射弾観測用ですから、普通に考えれば外れる事が前提となります。

 仮に命中しても、問題ありません。

 人員は少数のテロリストだけですし、使用しているのは軍用艦から転用したものです。個人が行使する武装程度で死者を出すほど腑抜けてはいないでしょう」

 

 いや、その理屈は本来おかしい。

 直径41センチで約1トンの砲弾を2発同時に38キロ先までお届けする武装は、どう考えても個人用じゃない。

 主用に用意された、46センチ3連装よりは……うん、五十歩百歩としか言いようがない。

 

『え、ええと……』

 

「ああ、撃って構わんぞ。派手な方が、連中も白旗を上げやすいだろう」

 

『あ、はい。では、いきます!』

 

 お姉様の許可だとあっさりと納得する辺り、すずかもやっぱりチョロインの素質がある?

 普段のウーノがお姉様の指揮下にあるように見えないから、どこまで従っていいか迷った面はあるかもしれないけど。

 ともあれ、すがーん、という派手な砲撃音と共に、2発の弾が打ち出された。

 それは、銃弾と言うにはあまりにも大きく育ちすぎた。

 砲身より大きく、重く、そして無節操すぎた。

 それは正に、鉄塊だった。

 

「ベルセルクおつ。というか、直撃コースに乗ってないか?」

 

 風の影響等で外れる可能性が、微レ存。

 99%以上の確率で、2発とも命中するけど。

 

「砲弾に風除け用の術式も刻んであると聞いているが、影響……?」

 

 だから、微粒子レベル。限りなく0に近いナニカ。

 というか、超高空に上昇したセツナが長距離ミサイルを乱れ撃ちしてるのは、ツッコミ無し?

 

「200キロ以上の距離がある相手を撃ってるわけだし、ミサイルはアリだと思うぞ?

 元ネタで考えるとあり得ない数なだけで」

 

「ゴミを盾にする等の対策は当然してくるでしょう。この距離では命中率も下がりますから、数を揃えるのは必然です。

 幸いにも2万メートルの上空まではAMFが届いていないようですから、ISもフルパフォーマンスで稼働出来ます」

 

「保護機能に問題は?」

 

「あるのであれば、降下しているでしょう。自身がそこまで上昇する必要はありませんから」

 

 ここで豆知識。フェニックス等の長距離空対空ミサイルは、発射後のロケット噴射で高高度へ上昇。そこから滑空して目標を目指す。遠距離の目標到達まで噴射し続けられる程の燃料は、搭載してないし出来ないから。

 なので、長距離ミサイルの射程や速度なんて飾り。ついでに、フェニックスの公式な戦果は、無い。

 なんという威圧用兵器。

 あと、高高度といっても、高度1万キロとか。2万キロまで上がる必要は、全くない。

 

「んー……まあ、本人は楽しそうだから、いいか。

 で、すずかの砲弾が命中したようだが?」

 

「命中した場所は人がいない場所の様ですから、気に病む必要はありません。

 これで何らかの動きがあるでしょう。それが片付けば、騒動も終わりです」

 

「さて、どう動くかな?」

 

 お姉様とウーノが話してるけど、テロリストの4艦ある母艦の内、まだ援護射撃をしてない2艦の周辺は相変わらず地上部隊が押されてる。そっちはセツナが射撃を開始した頃に姿を消してるセッテとオットーが向かってるから、あとは制圧するだけ。

 ロストロギアも、今は封印状態。迂闊に発動させるわけにはいかないと思ってるどころか、そう簡単には発動出来ないよう仕組まれてる様にしか見えない。

 中心人物と考えられてる、ルネッサ・マグナスの意図が読めない。

 

「……あら」

 

 AMFの減衰を確認、同時にガジェット・ドローンの転移を感知。

 その数……20ほど。意外に少ない。

 

「こうなったら、ちゃんとお仕事しないとね?」

 

 ここまで出番のなかったクイント・ナカジマを中心とした護衛チーム、一歩前へ。

 当然のように大人組が前に出て、ティアナ・ランスターやヴィクトーリア・ダールグリュン達は後詰担当。

 でも、避難の為に集められてた観客達から、飛び出す人影が1つ。

 

「ヴィヴィオ、あれを確保!」

 

「はいっ!」

 

 というわけで、幼女追加入りましたー。

 

「駄目ですよ、個人で対処すべき相手と状況ではありません」

 

「し、しかし……」

 

「王であればこそ、組織を軽んじてはいけませんよ。

 そうでしょう? クラウス」

 

「っ!?」

 

 もがく幼女というか、幼いアインハルト・ストラトス(仮)を宥めるヴィヴィオ。

 ガジェット・ドローンは問題無く抑えられてるし、クラウス・G・S・イングヴァルドの記憶に翻弄される力不足の個人にかき回される方が有害だから、これでいい。

 気の技術を持つ直近護衛部隊や戦闘機人達により、転移してきたガジェット・ドローンは比較的短時間で全て沈黙。転移後にAMFを強化したようだけど、無駄だった。

 母艦達は、すずかの砲撃、セツナのミサイル、セッテとオットーの爆撃で中破や大破に。全て積極的な戦闘行動は不可能になってる。既にAMFの濃度が下がってきてるし、航空武装隊も全力で出動してるから、制圧は時間の問題に。

 セインがロストロギアの回収に向かってるから、こっちも時間の問題。

 

「作戦を終了。セイン以外は戻っていいわ

 セインは回収が済み次第帰還しなさい」

 

『あいよー』

 

 ウーノの指令で、ISの検証の終了をお知らせ。

 実に有効に機能する事が確認出来た。

 めでたい。

 

「さてと、後は……事情聴収か。

 目的や背後関係を聞き出す必要があるだろうが、どうするリンディ?」

 

「そうね……スムーズに話が出来る様子には見えないし、外でやるのも問題かしらね。

 予備情報の時点で名前が出ていたし、重要参考人として逮捕又は保護する事になるわ」

 

「……話す事は何もない」

 

 今まで黙ってたルネッサ・マグナスが、リンディ・ハラオウンを睨んでる。

 でも、何故かチラチラとお姉様を見てる。

 なーんか、企んでると言うよりは……

 

「ふむ。では、1つだけ聞いておこう。

 お前達が喧嘩を売りたかったのは、管理局か? それとも私か?」

 

「最優先の標的は、貴女様個人です」

 

 おんやー?

 お姉様を狙った割に、お姉様には敬語的な?

 お姉様を狙ったから、時空管理局には話さない的な?

 つまり……お姉様による断罪又は尋問がお望み?

 お姉様が記憶を読む能力を使えるのは、5年前にばらしてるし。

 恐らく、お姉様に記憶を渡す事を目的にしてると推測。

 本人は有能なはずだし、この際だから……一本釣り推奨。

 

(……従者化、か?)

 

 暗殺等の手段を取られても安心。

 従属属性の付与を推奨。

 現時点でも敵対意思はあまり無い気がするけど、時空管理局とのやりとりと、こうなるぞというアピールとしては有用。

 むしろ、ここでやることで強制的に行える事を示せる。

 

(力の誇示か……)

 

 お姉様は、国を持つ王であり、世界を従える主でもある。

 別荘の世界以外でも、空想具現化じみた能力は有効。

 事実上、神と呼べるだけの力がある。

 特に今回は、お姉様個人と時空管理局員の前で明言された。能力面を別にしても、背景に国を持つという点で、明らかに一般人だと言えない。

 隠す事による不利益が、もはや無視出来ない。

 有象無象を黙らせるためにも、この機会に動くべき。

 

(……無闇に箔を付けるのも、どうかと思うがな)

「リンディ、こいつの身柄は私が貰っていいか?」

 

「ええと……犯人や犯行組織の手掛りが無くなるのは避けたいのだけれど」

 

「私の予想が正しければその辺の情報はいくらでも得られるし、お前達がやるよりはスムーズに事が進むだろう。

 標的は私らしいしな」

 

「そうね……国王として狙われたとも言える様だし、捜査協力に問題が無い、むしろ捜査が進むという事であれば、問題無いかしらね。

 だけど、身柄を預かるという事は、記憶を読む以外の方法という事でしょう?」

 

 リンディ・ハラオウン、だうと。

 お姉様の言葉と違う。

 

「身柄を預かるのではなく、貰うと言っている。

 簡単に言えば、ルネッサには一度死んでもらおうと思ってな」

 

「……え?」

 

 声を出したのは、リンディ・ハラオウンか、ルネッサ・マグナスか。

 いずれにせよ、淡い光がルネッサ・マグナスの体から飛び出し、お姉様の手に吸い込まれて。

 ルネッサ・マグナスが倒れた。

 

「……なんとまあ」

 

 剥奪した魂の記憶を軽く解析してみたけど、これはびっくり。

 犯罪者共を煽ってお姉様に喧嘩を売らせて叩き潰してもらうとか、なんという埋伏の毒。

 その為に、関係組織の情報を全て持ってるルネッサ・マグナスが、お姉様に記憶を読ませる為に近くに潜むとか、自爆覚悟どころじゃない。

 本来はある程度声明とか脅迫とかの手順を踏んだ後でドジを踏む予定だったのが、随分と繰り上がっただけで。

 

「ええと……」

 

 そして、放置されたリンディ・ハラオウンが困惑してる

 仕方ないね、どう見てもルネッサ・マグナスが死んでるし。

 

「ああ、とりあえず、裏は判明した。

 当面は捜査に協力させるから、詳しい話は本人と話をしてくれ」

 

 魂の改変は完了済み、貸与……問題無し。

 さっきまでピクリとも動いてなかったけど、今は不思議そうに周囲を見てる。

 別に念願じゃないけど、ルネッサ・マグナス(従属属性付き)を手に入れたぞ。

 すずかと同じく元の魔力が無さ過ぎで、魔改造しない限り眷属化は無理だから、これでいい。お姉様がやろうと思えば出来る目処が付いちゃってるけど、しないと言ってるし。

 

「ええと……」

 

「ああ、私の事は好きに呼べばいい。

 それと、当面の処遇だが、今回の件について管理局の捜査に協力する事。それが終わったら、私達の所に戻ってくるといい。

 自分の状態は理解出来ていると思うが……無茶はするなよ?」

 

「……はい、了解しました」

 

 元々の目標にも合致するし、指示を拒否したくなる理由は無いはず。精神的にまだ安定してなくても安心な指示内容。

 心配なのは、事実上の不死である事を利用した釣り餌になろうとする事。

 お姉様に魂を抜かれて突然死するとかならともかく、明確な死の記憶は心を摩耗させるし。

 

「とまあ、こんな所だが。どうだ? リンディ」

 

「文句は無いのだけれど、カメラの前で少々やり過ぎと言うか……賛否両論になりそうではあるけれど、積極的に敵対しようとする勢力は勢いが削がれるんじゃないかしら?

 最高評議会を辞めたいなら、そういう勢力もある程度は大切にしないと」

 

「私を権力の椅子から引き摺り下ろす方向に走る相手なら放置するんだが、大抵は周りに余計な負担をかけてるだけだからな……

 正直言って、当分の間、要するに改革やらについて直接知ってる連中が多くいる間は無理だろうと諦め気味だ」

 

 全く、世界は本当にこんなはずじゃない事ばかりだ、とかお姉様がぼやいてる。

 それでも、雑事が少なくて済んでるのは、周囲の協力があってこそ。それを理解してるから、お姉様も大人しくしてる。

 

「それで納得しているなら、いいのだけれど。

 それと、あちらの少女は?」

 

 リンディ・ハラオウンの視線の先には、ヴィヴィオ達に説教されて涙目のアインハルト・ストラトス(名前確認により確定済み)が。

 しかも、戦闘終了に伴い、ヴィクトーリア・ダールグリュンとジークリンデ・エレミアも説教する側に。

 なんというフルボッコ。

 

「あー、まあ、あれは、あれだ。ベルカ絡みで、余計な事を仕出かす血統の犠牲者だ。

 どう考えてもヴィヴィオは関与するだろうし……あれを何とかするのは、気の長い作業になりそうだ」

 

 原作のヴィヴィオと違って、本人だし。

 色々やり辛いよねー。

 時間をかけてじっくり矯正するしかないかな?

 まだ幼いし。早めに対処出来ると喜んでおこう。

 幸い、StrikerS関係もこれで出尽くしただろうし。

 

「……またフラグか?」

 

 なんでー。




AIM-54 フェニックス 最大射程:210km以上、飛翔速度:マッハ5(@Wikipedia)。
最大射程まで最高速度を維持出来ると仮定しても、発射から着弾までは2分かかる計算ですね。実際は途中で燃料が尽きて減速するので、もっとかかるらしいですが。
トムキャットのレーダーや火器管制装置の性能だと、24目標を追尾、内6目標に向けてミサイルを発射可能。フェニックスの最大搭載数が6ですから、適切な内容です。
で、セツナはそれを(魔力にモノを言わせて)乱れ撃ち。本来は1発47万~98万ドルと、間違っても乱れ撃てる兵器じゃないですが、そんなの関係ねぇ。


StrikerS(サウンドステージX)終了。
Vividがアップを始めたように見えますが、これ以上手を出しません。現在進行形の原作を使った二次創作を書ける書き方じゃないのですよ。
つまり、かなり短い次話+小話1話での終了をお知らせします。


2016/05/07 デューエ姉様→ドゥーエ姉様 に修正
2017/04/15 グラナガン→クラナガン に修正

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