あれから6日が経過して、今は土曜日の昼過ぎ。
この間、新たなジュエルシードは発動していないし、見付けていない。
高町なのはやフェイト・テスタロッサも探しているが、どちらも空振りが続いている。
転生者の捜索は、難航中。
そもそも、魔法を使っていない魔導師は見付け難い。
少なくとも、原作でヴィータが高町なのはを見付けるのを手間取る程度には。
加えて、アルフの探索妨害もある。
もちろん、ひとりひとりを対象に詳細な調査を行えば判明するが、まさか海鳴市やその近隣の住人全員を調査して回るわけにもいかない。
お姉様がリンカーコアを捜索すれば一発。だけど、そんな事をすれば、確実に高町なのはやフェイト・テスタロッサ、恐らく管理局の猫達や他の転生者にも気付かれる。これは避けるべき。
お姉様が心配していた高町なのはは、ようやく魔法の練習をする気になった模様。
日曜の夜にユーノ・スクライアから魔力の扱いの説明を受けていた。
ある程度は力尽くで何とかなっているから、今は焦らずにじっくりと技術を磨くようにとも言われていた。
月曜からずっと、早朝に公園で缶を打ち上げている。
これは、A’sで行っていた練習、12月の出来事。最大で半年以上早い可能性。
授業には微妙に集中できていない?
マルチタスクでイメージトレーニングを行っている可能性。
映画版での練習、但しフェイト戦の後。これも前倒しされている。
火曜に、八神はやて宅でリーゼアリアと思われる人物を捕捉。
ヘルパーとして来訪。
部屋の掃除や入浴の手伝いをしていた。
ヘルパーを装って八神はやての監視等を行っている模様。
気付かれないよう低レベルだが、リーゼアリアに情報収集用の魔法を仕掛けてみた。
ギル・グレアムについての情報を取れると予想。
リーゼアリアは、フェイト・テスタロッサとアルフの存在に気付いた模様。
何かを探している様子を警戒してか、八神はやて宅の妨害魔法を強化した。
帰還するリーゼアリアの追跡に成功。
イギリスを中継していたところを見ると、ギル・グレアムの住居への訪問が建前か。
中継ポートを2か所と、時空管理局本局の位置特定に成功。
本局に侵入しての調査は距離が問題。情報転送や魔力供給に支障が出る。
現時点では詳細な調査を断念。
中継ポートのある世界に隠れ家的通信及び魔力供給施設を用意できないか、簡易調査を開始。
管理世界であれば、身分の問題さえ解決できれば従者や使い魔が大手を振って行動可能。
まずは、社会制度の確認から。
ユーノ・スクライアは、水曜にようやく探索妨害を確信した模様。
気付くのが遅いと罵るべきか、リーゼアリアが余計な事をしたと貶すべきか、アルフの妨害隠蔽を称賛すべきか。
但し、ユーノ・スクライアは適合不良に伴う不調や、適合不良の改善に伴う魔法特性の変化も可能性として考えていた様子。一概に無能と言う事は出来ない。
ともあれ、これで高町なのはとフェイト・テスタロッサの両陣営が、自分以外の魔導師が存在する可能性に気付いた。
直接の出会い以前に気付く事も、原作から外れている。
そして、今日。
昼頃に、悪人顔のナギ・スプリングフィールドもどきが翠屋に現れた。
名前は
店にいた3人娘と高町士郎は、また胡散臭いのが現れたと警戒。
東渚はまたという言葉に反応。
自分の恰好良さを見せようとするも、胡散臭さが際立っている。
最終的に、直に僕の素敵さが分かると捨て台詞を吐いて立ち去る。
立ち入り禁止にはされていない。
同じく店にいた高町恭也と高町美由希にも、警戒対象と思われた模様。
というわけで、平穏と言えば平穏、想定外と言えば想定外な平日は過ぎ去り。
主は今、八神はやてに会うために図書館に来ている。
「今週は、宿題は大丈夫なんか?」
「大丈夫。作文は無い」
「おー、それなら安心やな」
気になる本とジュースを手に、休憩室に来た主と八神はやて。
持っているのは、八神はやては首輪物語の2巻目、主は父親失格。
「先週の続き?」
「そうや。優秀でいい人から死んでく、何か切ない話やな。
アコノさんは、太細治の代表作か?」
「そう。
私はたぶん娘失格。
この本の父親がどう失格なのか、読んでみようと思った」
「そうか?
家族の事を心配しとる人が、家族失格とは思えへんよ?」
「少なくとも、世間からは負担と心配ばかりかけている様に見えるはず。
だけど、実際はお互いに半ば放置してる。
仮面夫婦ならぬ、仮面親子?」
「うーん、それでも、家族としてやる事はやっとるんやない?」
「やる事しかやらないから、仮面と思える。
親としては、お金関係と最低限の世話や身の回りの物の手配だけ。
子としては、半ば親を安心させるための学業と通院だけ。
基本的にお互い干渉しない。
それが暗黙のルールになってる」
「そうかぁ……そんなに上辺だけなんか?」
「たぶん、私が家を出ると言えば、賛成する。
そんな関係。
私におしゃれをする気が無いのもあるけど、普段の服もこんな感じ」
「そういえばそのジャージ、先週と同じやね。
綺麗なんやから、着せ替え人形にしててもよさそうやのに。寂しい関係やなぁ」
「たまに言われるけど、きっと、着せ替えるのも面倒とか、そんな感じ。
せめて足が普通なら、そうなっていたのかも。
はやての家族は?」
「うーん……あんま言いたくないんやけどな。
両親は、最近死んでもうてな?
今は一人暮らしなんや」
「あり得ない。
足の事が無くても、小学生の子供が一人暮らしするのは世間的におかしい」
「ヘルパーさんは来てくれとるよ?
資産とかお金とかは、おじさんが管理してくれとるし」
「おじさんもおかしい。
金銭的援助で満足してる様に見える。
金が全てで心を蔑にする、今の日本の代表の様な人物に思える」
「それはひどい言い方やと思うんやけど」
「事情があるにせよ、保護責任を放棄しているようにしか聞こえない。
援助ではなく隔離しているようにも見える」
「……そんな言い方せんでもええやん…………」
「ごめん。
これも、私が嫌われる理由の一つ。
相手がどう思うか、気付けないから」
「……そやな…………そういう人やったな。
でも、感情を抜きに考えると……そうなんやな……」
「親戚や知り合いに、頼れる人はいない?
血の繋がりより強い絆もあるはず」
「頼れる人……おらへんな。
この足のせいもあると思うんやけど、両親の親戚とか知り合いは、おじさんしか知らへんのや。
おじさんも、両親の事故の後で初めて会ったんよ?
他の知り合いゆーても、ヘルパーさんに近所のお店の人、それと医者の石田先生くらいやし……」
「本当に隔離されている?」
「……ややなぁ、本当にそう思えてきたやんか。
でも、本気で隔離はされとらへんよ?
アコノさんと知り合えて、会うのも問題ないんやし」
「うん、そのはず。
でも、他人を頼ることも考えた方がいい。
誰か助けてくれる人がいたとして、その人と家族になることは嫌?」
「ちゃんと助け合える人やったら、ばっちこいや。
でも、足の事やらに嫌悪感のある人は、ちょっとややな。
同情とかやなくて、お互いに人自身を見れる相手が理想や」
「でも、そんな人はなかなかいない。
一人暮らしからの脱却は難しそう。
大抵の人は、動かない足を見ると思うところがあるみたい」
「その点では仲間やから、よくわかるわ。
特に子供の無邪気な悪意が怖いなぁ」
「子供は遠慮も配慮も無いから。
ひどい事をしている自覚も無いから、歯止めがきかない。
だけど、大人も裏でこそこそと陰口を言っている。
分からないところで言うならまだしも、微妙に聞こえるところで言うのはどうかと思う」
「おるなぁ。あれは、聞こえとらんと思てるんやろか?」
「耳の悪い老人でも、話している表情と視線で悪口を察する事もあるらしい。
まして、目も耳も悪くなっていない私達は、余計気付けるのに」
「嫌がらせっぽい時もあるし、世知辛いやね」
「過ごしにくい。
でも、足が悪くても生きていられる。
過ごせないわけじゃないのが微妙なところ」
「過ごせへんかったら、私らはとっくに死んどるんやろなぁ」
「紛争地域や飢餓に苦しむ地域なら、多分捨てられてる。
その意味では、まだ幸せなのかもしれない」
「あんま賛成しとーないけど、否定はできへんな。
下を見れば切りがないやん?」
「それでも、今が最底辺ではない事は知るべき。
小さくても、幸せを幸せだと思えない事が、一番不幸なはず」
「いい言葉やな。やっぱり、人間前向きが一番や。
でも、アコノさん、ほんまに感情が無いんか?」
「前向きな本の考え方を覚えているだけ。
さっきの言葉を裏返すと、幸せを幸せと思えない私は、不幸という事になる。
でも、私は辛いとも不幸とも思っていない。
自分がどんな状態だと表現していいのか、よく分からない」
「うーん、きっと主観的なもんやけど、相対的なもんでもあるし。
まずは、改めて周りを見る事から始めよか」
「周り……とりあえず、はやてを見てみる。
はやては、いい人。
はやてならきっと、友達を作れる。
信頼できる人も、きっと現れる」
「そうやね、前向きにいこか。
でも、アコノさんも信頼できる友達やと思ってるんよ?」
「ありがとう」
◇◆◇ ◇◆◇
と言うわけで、夜。
お姉様と主は、いつものようにゆっくりと状況を確認している。
「つまり、はやては守護騎士を家族として迎えられる素地はあるという事だな」
「生活状況的にも、考え方的にも、大丈夫。
ただ、原作のやり方は、守護騎士の困惑は激しいはず。
私の例も挙げれば、もう少しソフトランディングが可能かもしれない」
「問題は、グレアムか……闇の書の完成を目指す以上守護騎士の排除には動かないだろうが、不要な手出しはしてくるか。
最悪は猫を躾ける必要があるが、急いで行う必要は無いな」
「エヴァ、ちょっと悪い顔をしてる。
悪人だと思う必要は無い」
「そんなに悪人顔だったか?
善人では無いと思っているが」
「目的を達成するために必要な事。
それはグレアムや猫も同じ。
手段が異なるから、発生する衝突は仕方がない」
高町なのはについて、報告。
ユーノ・スクライアが、他の魔導師が存在する可能性と、他者によるジュエルシード回収の可能性を高町なのはに通達。
時空管理局の可能性も示唆。但しユーノ・スクライアが許可を取って来ているため、そうであれば何らかの連絡があっても良さそうとの事。
この話の為に、時空管理局についての説明も行っていた。次元世界やロストロギアについても同様。
「管理局について教えたのか。随分と早いな」
「原作では、アースラやクロノが来た後の話?」
原作で高町なのはが時空管理局を知るのは、フェイト・テスタロッサとの戦闘及び温泉の後。
クロノ・ハラオウンの戦闘介入の後、アースラに連れて行かれてから。
現時点では、フェイト・テスタロッサとの遭遇もしていない。
ユーノ・スクライアが、フェレットではなく人間だという事を告白。
魔力不足により人間の姿は見せなかった。
これは、淫獣フラグが折れた?
「問題は、そこ?」
高町なのはが部屋で着替えている際は、ユーノ・スクライアは後ろを向いていた。
原作の温泉では、一応は男湯の方へ行くという意見は出していた。
ちらちら見ていたのは、健全な男子としては仕方がない反応?
獣である事を笠に着て堂々と見たりしていない。思春期に近い男子としては微笑ましい反応。
今後温泉に行くと仮定して、好き好んで女湯に行く様なら話は別。
人間だと説明した上で風呂に連れ込まれるなら、責任は連れ込んだ人にあるべき。
「随分熱心」
「今後、私達が原作に係わるなら、温泉やら風呂という場面になる可能性もある。
私達は女で、ユーノは男だ。
警戒すべきだとでも思ったんじゃないか?」
「納得した。
来週一緒に温泉に行く約束をしてきた。
遭遇する可能性はそれなりにある」
「そうか、随分と早いな。
来週だと、なのは達と被る可能性があるが……」
高町家や翠屋を見ている限り、原作の一行も来週に行く模様。
原作では、旅行は連休という発言がある。時期がずれている?
その後の次元震の日付を考えると、このタイミングで正しいとも取れる。
「もし温泉で出会ったとしても、それはそれでいいと思う。
それに、断る理由が無かった」
別れ際に約束していた。
主の家族には既に通知済み。問題なく許可は取れている。
費用については、八神はやてが出してくれるとの事。
宿の選定や手配は八神はやてに任せる事になっている。
出会うも出会わないも、原作の人物の選択と、神もどきの悪意次第。
「……そうか、これは出会うフラグだな」
「可能性は高い」
「設定垂れ流し」タグに恥じない回になります。
約1週間を1話に収めたので、高圧縮。01話~05話で実質3日だったのに比べると、大違いです。
アルハザード編(10年を1話にしたのが2回あります)を思い出しますね。
リーゼアリアにかけた魔法は、自動情報収集で蓄積型です。
発覚しにくいタイプですが、その分収集能力は低いです。
何かいい情報が取れたらいいな、程度に思っています。
次にリーゼアリアがヘルパーで来た時に、記録が残っていたら回収予定です。
隠蔽処理のメンテナンスもあるので、リーゼロッテが来る可能性は低いと判断しています。
アコノの家族についてですが、色々と事情があります。
決して、ここではやてに語っている事を真に受けてよい様な人達ではないのですよ、とだけ言っておきます。
2012/11/21 以下を修正
心算→気
1人→ひとりひとり