月曜の、そろそろ夕焼けが綺麗な時間。
もうすぐ主が学校から帰ってくる。
「今のは……攻撃魔法か?」
少し離れた場所で、攻撃魔法と思われる魔法の使用を確認。
住宅街の裏道に死体を発見。
術者の捕捉に失敗。
魔力の残滓は記録成功。
アルフの探索妨害が邪魔。
調査時に恩恵を受けているとはいえ、少々恨めしい。
(エヴァ、今の魔力は?)
(アコノか。
緊急事態だ。魔法による殺人があったようだ。
悪いが、寄り道はせずに真っ直ぐ帰宅してくれ)
(わかった)
主の近辺の警戒を強化。
転移魔法の反応は無い。物理的な移動手段で逃走の模様。
遠くには行っていないはず。
残滓に該当する人物は、付近に確認できず。
隠蔽に長けている?
魔法の行使時に変質させた可能性も考慮。
魔法薬を使用すれば、不可能ではない。
「まずいな……転生者の可能性は?」
死体の情報を確認中。
体型や制服から、付近の中学生である事は確実。
男性だが、女性風外見。恐らくFate/stay nightのアーサー王。
一般にセイバーと呼ばれている。
表情に恐怖は無い。
恐らく、状況を理解しないまま背後からの一撃で殺された。
「殺されたのは、転生者と見て良さそうだな。
殺したのも……恐らくは。
この情報はアコノにも」
(聞いているから、大丈夫。
ただ、あまり急げない。
魔法は使わない方が無難なはず)
(そうだな。変に慌てて犯人を刺激してもまずい。
寄り道をしないだけで、いつも通りに)
(そのつもり)
転生者同士の争い?
裏が取れない。当人は死亡済み。
それよりも主の護衛を強化。
これ以上の強化は、いくら隠蔽や阻害を行っても感付かれる。
過剰反応は敵を呼び込む可能性。
「落ち着け。今のところは私達を狙っているわけではない。
まだ余裕はある」
それを言うなら、お姉様も黒龍を片付けて本に戻るべき。
何かあったら行く気満々。
カートリッジ完全充填かつ防護服装備済みでは言い訳も無効。
それでも魔力を漏らさないお姉様の制御技術は流石。
「煩い、主の危機に駆けつけてこそだ。
それにしても、ここにきて転生者同士の争いか。
頭の痛い話だ」
まだ確定はしていない。
周囲の哨戒を強化。
一部調査に遅延が発生。
「止むを得んだろう。
少なくとも、今回の犯人を捕捉するまでは哨戒優先だ。
情報整理は遅れても構わん。頼むぞ」
頼まれた。
哨戒優先へ、役割の再割り当て。急いで。
◇◆◇ ◇◆◇
あれから、2日。
今は水曜日。再び夕焼けが眩しい時間。
犯人の捕捉は出来ていない。
地元の警察は魔法の事件に対して無力。
何が起こったかの判断も出来ていない。
凶器の発見も出来るわけがない。
私達は、全力で警戒態勢を維持。
高町なのは組やフェイト・テスタロッサ組も、何かあった事は感付いた様子。
探索時の警戒度が上がっている。
昨日八神家にヘルパーとして現れたリーゼアリアも不穏な空気を察したのか、八神はやて宅の妨害魔法を更に強化。
他の転生者は……無能の集まりだった。何かを期待するだけ無駄な様子。
そんな状態の中。
「……捉えた」
再び攻撃魔法の行使反応。
今回は被害者も抵抗した模様。数回の魔法行使を確認。
光学系でも捕捉。
追跡を開始。
「あれは、フェイト……かな?」
正確にはフェイト・アーウェルンクス。ネギまの敵役。
体格は小学生高学年相当。
黒尽くめの服装。身なりからの特定は不可能。
身のこなしが明らかに常人でない。
暗殺者の訓練を受けている?
低機能だがストレージデバイスを持っている様子。
他の転生者の物より暗殺向きに調整されている気配有り。
「これも転生者だな。
被害者は?」
外見は、上条当麻っぽい?
そこそこ美形だがありがちな顔。特定して良いか疑問。
とある魔術の禁書目録なら、外見としては新しい物語。
ある意味私達の仲間?
制服を見る限り高校生。
デバイスは持っていない。
上条当麻なら、攻撃魔法は
(また、殺人?)
(ああ、まただ。
今回は犯人も捕捉した。
犯人と被害者共に転生者の可能性が高い。
アコノの方には向かっていない。現状での襲撃は考えなくて大丈夫だ)
(わかった)
犯人は、山の方へ移動。
隠密性は高い。
捕捉していなければ、近くを通ったことに気付けない程度の隠行。
「山に入ったか……この近くに住む人間ではないという事か?」
洞穴に、簡単な調理用具と毛布を確認。
ここに潜んでいる?
ここに住んでいる?
宿無し?
「オリ主様ではないようだが……ダークヒーロー志望か?
それとも、原作至上主義者か……」
(殺された二人は、オリ主様にありがちな容姿とも思える。
テンプレオリ主様に嫌悪感を持っていた人の可能性もありそう)
(アコノか。聞いていたのか?)
(妹達が声を転送してくれていた。
それにしても、転生者の危険人物率は異常だと思う)
(そうだな。神もどきの悪意で、理性が飛ばされてるんじゃないかと疑いたくなる。
後は、ここが現実だと受け入れていないか、だな)
(実際の生活を現実と受け入れられないとなると、相当鈍い。
アニメの世界という事や、魔法や特殊な能力が使える事も要因として考えられる)
(現実感に乏しい要素ではあるな)
犯人は、転生者の居場所を知る転生特典を持つ模様。
転生者という存在に嫌悪感あり?
今まで出会った二人の質が悪いことも原因と推測。
(つまり、コイツを泳がせると、他の転生者の居場所がわかる、という事か)
(犠牲者が増える可能性は無視?)
(いや、オリ主様や踏み台様はともかく、普通に生活している転生者なら守る)
(命の選別をする?)
(ニコポやナデポを要求する様な、人の尊厳を平気で踏みにじる馬鹿を守る気は無い。
そいつらには踏みにじられる者の気持ちを分かってもらおうと思ってな。
私は、命の重さが平等などとは思わん。
自分に害がありそうな者を切り捨てて良心が痛むような過去は送っていないのでな)
(アルハザードの経験?)
(そうだ。
戦場の狂気しかり。
政争の腹黒さしかり。
良心や誠意が付け込まれる隙にしかならない環境に慣れるものではないな)
(きっと、私も慣れる必要がある)
(その辺は私が出ればいい。
アコノは普通のままでいてくれ)
(ここで、妹達から一言)
過保護者乙。
(一斉に言うな頭が割れる! そもそも、そういうつもりでは……!)
それより、今後の方針。
犯人の特定は完了。
警戒態勢は?
(くっ、はぐらかす気満々じゃないか……
周囲の警戒態勢は解除。殺人者の警戒と転生者の監視は継続して、元の哨戒と調査……いや、ちょっと待ってくれ。
ジュエルシードと転生者の共通点を探ってくれ)
(何か気付いた?)
(ジュエルシード封印の直後に転生者が見付かる事が多すぎる。
封印が無い間は見付からなかったし、関連がありそうな気がしてならない)
魔法関係については、お姉様の勘は信頼できる。
ジュエルシードの魔力については観測結果がある。
比較調査程度は可能と判断。
警戒態勢を解除、隠蔽が可能な範囲で関連性の調査に注力。
余力は元の調査に復帰へ。
ジュエルシードについては、早めに現物の詳細な解析を行いたい。
高町なのは、又はフェイト・テスタロッサとの接触も検討?
時期尚早。少なくとも今度の温泉旅行までは待つべき。
(これで他の転生者が見付かれば、だいぶ楽になるが……)
(でも、エヴァの仮定が正しかった場合、最悪ジュエルシードによる転生の可能性もあるということ。
納得できる点も色々あるから厄介)
(そう、だな)
◇◆◇ ◇◆◇
あれから、1日。
驚くべき結果報告。
「やはり、ジュエルシードに対応しているか……」
「死ぬ直前に見た青い光がジュエルシードの可能性がある」
「その可能性は高いな」
お姉様や主を含む発見済み転生者全員から、ジュエルシードに似た質の魔力を検出。
内3名については、対応するジュエルシードの番号も判明。
衛宮士郎似の中学生。名前は
ナギ・スプリングフィールド似の高校生。名前は
フェイト・アーウェルンクス似の殺人犯。名前は
いずれも、封印から数日以内に捕捉している。
この事実から、ジュエルシードの封印が鍵となっていると予想できる。
対応が未確認のクルト・ゲーデル似の
「……つまり、私は神社の犬が鍵だった、ということか?」
「それなら、私はユーノを襲う毛玉だった?」
「タイミングを考えれば、辻褄はあう。
ジュエルシードによる転生と見て、間違いないか……」
「そうなると、元の世界にもジュエルシードが存在したことになる。
前世の世界もリリカルな世界だったという事に繋がる」
「……現実だけど、現実じゃなかった……か?」
「隣とトロノの逆パターン。
この世界を物語の中だと笑えない。
元々私達も同じ物語の中の存在だった可能性がある」
「……深く考えるのはやめよう。前世も、ここも、私達の現実だ。
誰かに見られようが、誰かが手を出して来ようが、関係ない。
私は、私の意思で生きる」
「元々、物語の中かどうかなんて、知らなければ何の意味もない事。
知っても、知ることも出来ない誰かを気にする必要はない。
それでいいはず」
「そうだな。
ところで、封印済みのジュエルシードは、今は幾つだ?」
封印済みは7つと思われる。
昨日までに確認していた転生者は、お姉様と主を含めて生存者が6名。
2名の死体からも、該当すると思われる魔力の残滓を確認。
本日、新たに4名の捕捉に成功。
「やはり、ジュエルシードの魔力か……」
隠蔽しながらでは、これが限界の可能性。
怪しいが追い切れなかった反応はある。
調査は継続中。
「見つかった人の情報は?」
若いのに髭が濃くて、ガタイが良い。おっさんの雰囲気。
魔力はC相当、デバイスは所有していない様子。
家に老執事がいるが、人間ではない。構造は月村家のメイドに類似と思われる。
老執事から強いジュエルシードの魔力反応。これも特典と思われる。
他に家族はおらず、老執事が育ての親となっている模様。
ナデポ持ちだが、撫でられると相手に惚れる逆転現象が発生している。
特典による心の支配を求めた自分に嫌悪感がある様子。
翠屋の映像記録に姿が残っていた。高町なのはの姿も見ている事は確実。
その際に頭を抱えていた事から、それまで原作の知識が封印されていた可能性も。
現時点では原作介入の意思が無いか、避ける方向と思われる。
ギル・ガーメス。男性で大学1年生。容姿はFate/stay nightのギルガメッシュに酷似。
笑みが気持ち悪い。確認した言動も併せて考えた結果、オリ主様の気質と判断。
魔力はAA相当、デバイスは所有していない様子。
美人にはとりあえず笑みを向けている模様。
ニコポの可能性を考慮すべきだが、発動している気配は無い。
現時点で原作に係わろうとする意志はある様だが、店や学校の名前を思い出せず、手を出せていない模様。
ぽっちゃり系男の娘。元気いっぱいで料理好き。人柄としては好感。
魔力はAA相当、デバイスは所有していない様子。
フェイト・テスタロッサの隠れ家と同じマンションに住むが、接触していない。
現時点で原作に係わろうとする意志や行動は確認できていない。
人を見下す感じも若干似ているが、年齢の差が大きいため、特定に至らず。
着替えや食事等の行為は幼児並の水準。体を思うように動かせていない?
日常生活能力の欠如により、保護施設にいる。
魔力はAAA相当、デバイスは所有していない様子。
現時点で原作に係わろうとする意志はある様だが、自由に施設を出ることが出来ず叶っていない。
「つまり、好感を持てるのは1人だけ、1人が中立的で問題なし、残る2人は問題児、ということか」
「随分質の悪い人が揃っている?」
「……いや、質のいい人はうまく隠れているか、見付けやすい特典を貰っていない、と思いたい」
「そうだといいけど」
「今後の方針は?」
「このままだと、こんなのがわらわら集まってくる可能性が高いという事か。
それに、ジュエルシード1個につき1人と仮定すると、21人だ。
今の比率のままだと、オリ主様が更に……倍?
色々と危険すぎる。折を見て介入を検討するか。
殺人者は目的がまだ見えていないから、要警戒のままだな。
最悪は排除も候補に入れたままだ」
「面倒事」
「全くだ」
というわけで、プロローグ(神様転生)の裏側と、タイトルの由来説明回でした。
タイトル「青の悪意と曙の意思」の青は、ジュエルシードの外見(菱形の
ジュエルシードで転生という話はよくあると思いますが、伏せて話を進めるタイプは珍しいんじゃないかと。
プロローグにもヒントは置いてあったのですが、どれくらいの人に気付かれていたのでしょうか? 気になります。
裏側を暴露したため、発見した転生者も一気に増えてます。
そして、この設定厨、まだだ! まだ終わらんよ! と言いたい気分で、まだちょっとだけ伏せた(主人公が知らない)設定もありますよ。
魔導師や魔力の探知は難しいんじゃないの? という話ですが、特定の魔力反応の探知、という別の形での調査なので、だいぶ楽になりました。
あれです。「魔力」でヤフったら7790万件だけど、「魔力 ジュエルシード」でビングったら2万件。すごく見付けやすくなったよ! みたいなイメージでしょうか。
なお、馬場鹿乃は、本人ではなく執事が見付かりました。本人は芋蔓です。
あと、ここから投稿ペースを落とします。
本来は遅筆なので、書き溜めの消費が早すぎです(汗)
後で思い付いた設定やらを書き足すためのバッファでもあるので、ある程度の量が欲しいのですよ。今日もこの話にちょっと足したりしていますし。
当面は週に1本くらいのペースになる予定です。
(おまけ) とあるフェレットの合わせ鏡
ユーノ・スクライア。
若くして遺跡発掘のプロとして名を馳せる彼は、ジュエルシードの発掘者であり、優秀な魔導師でもある。
そんな彼は今、事故によって散らばってしまったジュエルシードを探して、第97管理外世界の地球にある日本という国へと来ていた。
「あれ? ……何だこの人達は?」
そこで見たのは、ヘルメットをかぶり、空を気にしながら歩く大勢の人達。
この星はこんな文化なのか? 等と疑問に思いながらも、ジュエルシードを探して街の捜索を開始しようとした。
そんな矢先、街頭のテレビが気になるニュースを流し始める。
『先日発生した、落下物と思われる宝石のような物により21名の犠牲者が出た事件についての続報です。
事件当時に現場近辺を飛行していた飛行機やヘリコプターは無かった事が、警察の調査で明らかになりました。
また、宝石の調査を行っている研究所では、問題となっている宝石のような物はとても硬く、ダイアモンドを超える未知の物質で構成されているという事も判明しました。
そのため、地球上で作られた物とは考えにくく、宇宙からの飛来物である可能性が高いとの事です。
今後も同様の飛来物が落下する可能性があり、今後はアメリカのNASAやロシアのРоскосмосとも協力し、宇宙からの微細な飛来物を発見できる体制を……』
「そ、そんな……!」
彼は、知ってしまった。
既に、ジュエルシードによる犠牲者が出てしまっている事を。
彼は、知ってしまった。
既に、ジュエルシードはこの地の国家権力の手にある事を。
彼は、知ってしまった。
どう考えても個人で回収できる状態ではなく、自分が見付けた物だからと責任を取ることが出来る状況でもなくなっている事を。
「……後は管理局に任せるべきだ。
国との交渉は個人でやる事じゃない。
輸送中の事故も僕のせいじゃないし、僕がここにいて出来る事は、何もないはずだ。
僕はこれ以上ここにいるべきじゃない。管理外世界に必要以上に長居しちゃだめだ」
どうにか後ろ向きに自分を納得させ、地球を後にするユーノ。
彼は、知らない。
ジュエルシードが既に力を使い果たしている事を。
彼は、知らない。
彼が
彼は、知らない。
物語の舞台となる地も登場する少女達の姿も、ここにない事を。
彼は、知らない。
2012/11/26 以下を修正
記憶?→経験?
心算→つもり
2012/11/30 エヴァのセリフを変更
ちょっと待て、そういうつもりでは……!
↓
一斉に言うな頭が割れる! そもそも、そういうつもりでは……!