青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編09話 把握と捕捉

 日が変わり、主や主の家族が学校や職場に行った後。

 誰もいない家で、お姉様は転生者とジュエルシードの関係に頭を悩ませている。

 

「確認済みの転生者は12人。内2人は死亡済み。

 封印済みのジュエルシードは7つ。

 ジュエルシードの封印が能力解放や原作介入のキーになると仮定すれば、7人の制限が無くなっていると考えていいはずだ」

 

 仮定と現在の観測結果に矛盾は無い。

 制限解除は、現在3名が対応まで確定。間宮萬太、東渚、成瀬カイゼ。

 お姉様と主も解除されていると見て間違いない。

 

「翠屋に来ていた、イスカンダル似の髭面高校生も可能性が高い。

 これで6人だ」

 

 馬場鹿乃は、私達が高町なのはを捕捉した翌日、翠屋に来店。

 タイミング的にもこの時封印していたジュエルシードに対応する可能性が高い。

 このジュエルシードの魔力調査に失敗していたのは痛恨。

 

「確かにそうだが、過ぎた事を言っていても仕方がない。

 あと1人、関与可能な人物がいるはずだが……隠れているか、死亡済みか。

 制限解除の前でも死ねるのは、人数から見て間違いなさそうだが……」

 

 対応するジュエルシードは、恐らく主とチャチャゼロの覚醒前。

 高町なのはに出会う前のユーノ・スクライアが、単独で封印した物と思われる。

 チャチャゼロが封印に気付かないとは思えない。

 

「そうなんだが、未だに姿を見せていない。

 介入する気のある人物なら、影ぐらいは見えてもいいはずだ。

 原作開始に気付いていなかったとしても、この前の大樹事件で出遅れに気付けるだろうからな。

 今までの情報を見る限り、原作の人物や以前から関与出来る立場になっている可能性は低いようだし……」

 

 現在の情報から考えると、今回の死者2名も制限が解除されていた可能性は低い。

 学校での行動を調べても、オリ主様の気質を持っていた可能性が高いと思える行動が見られている。

 原作に関する記憶があれば、高町なのはへの到達は難しくない。

 オリ主様系なら、高町なのはやフェイト・テスタロッサへの接触を考えると予想。

 八神はやてへの接触も確認していない。

 原作を知らず、特殊な能力を持って喜んでいただけという可能性は排除できない。

 

「一人目の制限解除者に原作に介入する気がなく、うまく隠れているという可能性が一番高いだろうな。次に、死亡済みか。

 放置でも問題は無いのだろうが……他にも転生者がいる事に気付いているかが問題か。

 殺人者程でないにしても、オリ主系転生者は考え方や行動がおかしい。

 気付いていないのなら、警告ぐらいはしておきたいが」

 

 うまく関与を避けている可能性。

 既に死亡している可能性。

 どちらも考慮すべき。

 無理な調査や接触は効率が悪く危険性も高いと推測。

 現状の調査網で見つかるのを待つのが最善。

 

「そうだな。

 それと、オリ主様系の4人は、どんな状況だ?

 ああ、ギルとかいうのは昨日聞いたから、他の3人の情報を頼む」

 

 間宮萬太。衛宮士郎似の中学2年生。

 市外に住むため、原作介入は行動出来る時間や交通費の問題で苦しい様子。

 普段の言動やメモによると、ナデポ及び衛宮士郎の能力を特典として要求。

 ナデポは高町なのはやフェイト・テスタロッサ等、原作の主要人物に使用する予定。

 今のところ、一般女性に対して使用する気は無い模様。

 投影や無限の剣製は、知っている剣が不足。一般的なナイフや小刀のみ使用可能。

 包丁や美術館で試した刀は剣として解析できなかった模様。

 条件が不明。包丁は剣でないため? 刀も同じ? 刃引されていたため?

 学校では弓道部。昨年行われた全国大会の地方予選で、上位に食い込む程度。

 身体能力自体は普通の中学生より少し体力がある程度。戦闘に耐え得る水準ではない。

 どうしてこうなったと悩んでいる。

 自分が主人公だと、未だに思っている?

 

 東渚。悪人顔のナギ・スプリングフィールド似の高校1年生。

 本人のメモによると、転生特典の無効化能力を持つ模様。

 発動内容を調べる事で、転生者のニコポやナデポを強制除去できる可能性が浮上。

 自分以外の転生者の存在と自身の能力を予め知っていた可能性が高い。

 よく女性の頭を撫でようとし、実際に撫でてもいる。

 恐らくナデポも特典として要求したと思われるが、惚れる効果は確認できていない。

 3人娘の反応は、他の転生者の入れ知恵や不用意な介入によるものと考えている。

 他の転生者の殺害を検討している。

 低機能だがストレージデバイスを持ち、一応は攻撃魔法を使えるため、一般人や魔法に関わっていない転生者には脅威。

 殺人者の成瀬カイゼと同程度の警戒対象と認識。

 

 下出来人。悪人顔のクルト・ゲーデル似の高校1年生。

 学校では剣道部。中学時代には主将を務めた程度だが、強豪校ではない。

 剣道の朝練と称して魔法の練習もしているが、技術は貧弱。

 女性にニヤリとした笑みを向ける事が不自然に多い。

 恐らくニコポを特典として要求したと思われるが、発動は確認できていない。

 先日の大樹事件で原作開始に気付き、ジュエルシードを手土産に高町なのはに近付く計画を立てている模様。

 現時点で、ジュエルシードは見付けられていない。

 仮に見付けたとしても、所有している低機能のストレージデバイスで封印出来ると思えない。

 

「この中では、間宮はまだ救いがありそうだが……他の2人は厳しそうだ。

 味方になりたい転生者がここまで少ないとは、前途多難だな」

 

 味方になりたく無さそうな転生者が動いた。

 殺人者の成瀬カイゼが、移動。

 現在、保育所の近くに潜んでいる。

 保育所内に、新たな転生者を確認。

 

「また、殺しそうか?」

 

 様子を見ている模様。

 表情的には、戸惑いが見える。

 

「戸惑い?

 見つかった転生者はどんな感じだ?」

 

 外見は、ネギまの那波千鶴に酷似。

 保育士として働いている様子。

 雰囲気は、優しいお姉さん。

 子供もよく懐いている。

 名前は、あみ。現状では名札以上の情報が無い。

 魔力量はAに届かない。大きめのB程度。

 魔力の少なさで発見できなかった可能性が高い。

 

「ふむ……殺人者はまだ様子を見ているか」

 

 過保護者再び。

 黒龍と防護服の準備が早すぎる。

 私達も介入準備は整えている。

 お姉様はもっとどっしりと構えるべき。

 

「だからと言って、マトモそうな転生者を殺されるわけにはいかん。

 それに、準備が無駄になるに越したことは無い」

 

 成瀬カイゼに魔法行使の気配は無い。

 お姉様の魔力隠蔽が崩壊寸前。

 管理局や他の者達を警戒する以上、落ち着くべき。

 

「……そうだな。

 現状ではマトモそうな転生者の護衛を優先。最悪の場合はこちらの存在バレも止むを得ん。

 私は少し落ち着いてくる」

 

 お姉様は別荘へ。

 おいしいお菓子でも食べて、落ち着くべき。

 今はまだ従者達の研究成果のお菓子が中心だけど、これも味はなかなか良い。

 地球の食材及び調理法の調査は、なかなかいい感じ。

 本来の食材や調理法の入手に、従者達も燃えている。

 身分が無い事による、穏当な方法での現金入手難易度は異常。

 

 お姉様が別荘へ移動した後も、事態は平穏。

 成瀬カイゼは、何かを考えなら様子を見ているだけ。

 最初の攻撃的な雰囲気は、既に無い。

 転生者の見極めをしていた?

 殺した2人との差異に気付いた?

 殺害の意図は無くなったと判断して良さそう。

 

(問題無さそうか?)

 

 問題ない。

 成瀬カイゼは、手を出さずに撤退。

 あみは……おや?

 こちらに向けてウィンク。

 微笑んでいる。

 気付いていた?

 

(……こちらの隠蔽レベルは?)

 

 ユーノ・スクライア及びアルフを相手に、かなり余裕がある程度。

 目の前を通過されても気付かれない自信がある。

 AAA級の探知魔法能力者を相手に、こちらが油断していても隠し通せる水準。

 今は警戒中、油断していない。

 恐らく、S級相手でも隠せるはず。

 デバイスを持っている様子は無い。

 SS級に匹敵する探知能力が特典?

 存在が知られた以上、近いうちに接触を推奨。

 

(そうだな……明日と明後日は、アコノははやてと旅行の予定だ。

 仕事の後と言うのも都合が分からんな……1週間後になるが、連休に入ってからだな。

 その間も、護衛を兼ねて近くで様子を見る事は伝えておくべきか。

 それと、急ぐようなら都合の良い日時を教えろと添えておいてくれ)

 

 その旨を手紙にして転送。

 手紙に、返信用の通信魔法を用意。

 魔法の存在は確信している様子。問題とはならないはず。

 あみは手紙を確認。こちらを見て頷いた。

 やはり笑っている。

 優しい笑み。恐らくいい人。

 探知が優秀過ぎる。少々離れたところから護衛を兼ねた監視を継続。

 監視担当以外は撤収。

 

(ここにきて、ようやくマトモそうな転生者が見付かり始めたが、簡単に見付けられるとはな)

 

(予定外。意外に腹黒の可能性もある)

 

(アコノか。どこから聞いていた?)

 

(保育士の名前辺りから。

 視覚情報も受け取っていた)

 

(かなり最初からだな。

 どう思った?)

 

(雰囲気としては、安心出来そうなお姉さん系に見える。

 ネギまのちづ姉相当と考えると、ある程度の腹黒さ、女狐っぽさは想定すべき。

 予定が詰まっていたからだけど、多少時間を置いてからの接触になったのは良かった)

 

(そうだな。その間にぼろを出す可能性もあるし、事態が動く可能性もあるからな)

 

(その前に、はやてとの旅行がどうなるかを心配すべき)

 

(確かに。行先は知らされていないが、妹達の雰囲気的に……)

 

(なのは達と同じ宿の可能性が高い)




今回は、実質的に現在の転生者の状況のまとめですね。
エヴァは、主に転生者対策で忙しいです。
複数の転生者がいて、他の人達があんなのばかりだと、きっと嫌になります。

そんな中で見付けた、優しいおねいさん系の転生者。
エヴァも、前世は人の子で男だったのですよ。


そして、闇の書ははやて攻略中なのでのんびりペース。
とは言っても、図書館で偶然(?)知り合った相手とこんな短期間(まだ3週間経っていませんし、会ったのは2回だけ)で旅行に行くのは、充分ハイペースとも言えます。
次話は、6話ではやてと約束していた温泉旅行ですよ。


書き忘れていましたが、今後の更新は水曜~金曜辺りを考えています。
木曜が多くなると思いますが、生活上の都合等で前後する事もあるよ、といった感じです。
書き溜めが充分(完結までスムーズに行けるレベル)になるか枯渇した時点で、ペースを変えますね。


2012/12/02 以下を変更
 ここで、状況報告。→味方になりたく無さそうな転生者が動いた。
2013/03/15 私達がなのはを→私達が高町なのはを に修正(妹達なので略称を使わない)

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