青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編12話 介入開始

 その夜。多くの人が寝静まった頃。

 宿に近い山中に、フェイト・テスタロッサとアルフの姿、発動し始めたジュエルシードがある。

 シリアルは18。

 高町なのはは既に発動に気付き、宿を飛び出して走っている。

 レイジングハートの起動も完了済み。

 フェイト・テスタロッサとアルフの会話は、概ね原作通り。

 バルディッシュも起動。

 発動体をサイズフォームで切り裂き、封印完了。

 

「封印はこんなに早かったか?」

 

 原作では、シーリングモードで普通に封印。

 タイミングは変わってない。

 映画版のバルディッシュにシーリングモードは無い。

 映画版の空飛ぶ猫に近い封印方法。

 対応するのはギル・ガーメス。

 既に就寝済み。影響が判明するのは明日と予想。

 

「二つ目、か。数も原作通りだな?」

 

 ここでの呟きも含め、原作同様。

 高町なのはが到着。

 アルフの発言が変化。子供は寝る時間だと言っている。

 高町なのはは、フェイト・テスタロッサも同じくらいの年齢だと反論。

 口論中。

 しばらくお待ちください。

 

「何と言うか……アルフがもう少し小さければ、子供の喧嘩だな」

 

 鬱陶しくなったらしく、アルフが狼化。攻撃開始。

 ユーノ・スクライア、結界と強制転移でアルフを道連れに退場。

 高町なのはとフェイト・テスタロッサ、会話開始。

 高町なのはは話し合いを提案。

 フェイト・テスタロッサは話をしつつも、交渉は拒否。

 言葉だけでは伝わらないと言い放ち、戦闘開始。

 フェイト・テスタロッサが、ジュエルシードを賭けようと言い出した。

 

「完全に原作通りと言っていい展開か……?」

 

 砲撃魔法が衝突。高町なのはが押し勝った。

 フェイト・テスタロッサは上空へ回避。サイズフォームに変形させて突撃。

 高町なのは、ラウンドシールドで防御。

 受け流しに成功。防ぎ切った。

 

「お? 乖離したか」

 

 原作でレイジングハートが負けを認める場面が消失?

 フェイト・テスタロッサが振り向きざまにプラズマランサーを使用。

 高町なのは、展開したままだったラウンドシールドで防御。プラズマランサーを弾いた。

 フェイト・テスタロッサが再度突撃。

 同時に、弾かれたプラズマランサーの軌道を反転。

 高町なのは、被弾。

 

「……は?」

 

 弾かれたプラズマランサーの軌道反転は、A’sでカートリッジシステム搭載後の技法。

 今回は2発。A’sの4分の1。但し、発射も軌道反転もかなり高速かつ本人は突撃動作中。

 A’sでの使用時に、カートリッジはロードしていない。

 デバイス強化前でも可能だった?

 そもそもカートリッジの魔力は不要な技術?

 バルディッシュがサイズフォームのまま使用。

 原作ではデバイスフォームで使用だけど、性能に問題は無い?

 問題があるから数が少ない?

 

「あー……いや、考察は後に。戦闘は継続中だ」

 

 体勢を崩した高町なのはの喉元に、魔力の鎌が添えられている。

 レイジングハート、ジュエルシードを排出。

 原作に戻った。

 ジュエルシードはシリアル20。

 フェイト・テスタロッサがこの次は止められないかもしれない通告。

 高町なのはが、名前を聞いている。

 名前を告げて、フェイト・テスタロッサとアルフが撤退。

 結末は、原作と一致。

 

「被弾で少し怪我をした程度か……」

 

 ユーノ・スクライア、帰還。

 かなり怪我をしている。

 フラフラ。

 だいぶ苛められた模様。

 

(うん、介入してくる)

 

(アコノか。建前は治療目的か?)

 

(名目として充分。カートリッジは使っていい?)

 

(問題ない。むしろ、魔力素質バレを避けるためにも、積極的に使ってくれ。

 フェイトやアルフ、猫も特に探知は仕掛けていないようだが、なのはとユーノに見せる以上は念のためだ)

 

(わかった)

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 重い足取りでとぼとぼと宿に帰ってくる高町なのは。

 その手には、傷を負ったユーノ・スクライアが抱かれている。

 意識ははっきりしており、自己治癒力の強化もしているようだが、魔力不足が深刻な模様。

 強力な治癒魔法を使えるようには見えない。

 

「また、話を聞いてもらえなかったね……」

 

「どうしてジュエルシードを集めてるのか、聞けるといいんだけど……

 昼間の探知妨害は彼女達が先に見付けるためかもしれないし、残念だけど僕よりも上手みたいだ」

 

「そ、そんなことないよ。

 ユーノくんは頑張ってる!」

 

 負けた事。話が出来ていない事。昼間に感じていた異様な探知妨害の事。

 いろいろな悩みが頭の中でぐるぐる回っていると予想。

 

「だけど、もう10日以上も封印出来てないんだ。

 その間に発動した物も……」

 

「うん……」

 

 最後に高町なのはが封印したのは、11日の大樹事件の時。

 今は24日深夜。

 少なくとも18日の月村家の猫のものと今日のものはフェイト・テスタロッサが持ち去った。

 更に、今回の戦闘で1個奪われた。

 

「きっと、大丈夫。

 危険な事に使うようには見えないし、何か起こってもいないんだから!」

 

「でも、あれは危険な物なんだ。

 扱いを間違えてしまえば……えっ、封時結界……?」

 

 景色が単彩色に変わり、付近から人の気配が消える。

 見えていた旅館から、主が登場。

 

「分からないという不安は、そういう事。

 アリサとすずかに、きちんと話をするべき」

 

「アコノ、ちゃん?」

 

「君も、魔導師!?」

 

 高町なのはとユーノ・スクライアが、驚いてる。

 

「大丈夫。敵対する気は無い。

 ロードカートリッジ、癒しの大地(Land der Heilung)

 

 ぱしゅっ、という軽い音と余剰魔力の煙が扇から放たれる。

 主の足元に現れる、三角形を基本とする淡い赤色の魔法陣。

 

「ベルカ式!? どうしてこんないたたたた」

 

 迂闊に動いたユーノ・スクライアが悶えてる。

 すごく痛そう。

 主が魔導師と知った時より驚いてるのは何故。

 

「私やユーノくんが使う魔法とは違うの?」

 

「今はもう滅んでしまった世界で、使われていた魔法技術だよ。

 確かに、今でも継承してる人や、ミッド式の技術を使って、再現したりしてる人はいるけど……どうして、こんなところに」

 

 ユーノ・スクライアの説明がもたもた。

 と言うか、主の返事を聞く前にへたばった。

 すぐに治る治療魔法じゃない。まだ痛みは続く。

 

「魔法は、昼に言っていた過保護な変人の人が教えてくれた。

 このデバイスも、その人に貰った物。

 場所に仕掛ける治療魔法だから、効果がある間はそこにいて」

 

「そ、そうなんだ。

 でも、どうして今出てきたの?」

 

 へたばったユーノ・スクライアに代わり、高町なのはが質問してきた。

 魔法少女とマスコットの連携は問題ない様子。

 

「外で魔法を使っている感じがしたから、様子を見ていた。

 こんな夜中に怪我をして帰ったら、家族や友達は心配する。

 もっと気を付けるべき」

 

「うん……それは、分かってるんだけど」

 

 高町なのはの反論に元気が無い。

 自覚はある模様。

 

「あと、この前から、たまに強い魔力を感じる時がある。

 危険な物と言っていたけれど、それ?」

 

「それは……ええと…………」

 

「ジュエルシードといって、扱いを間違えてしまえば、世界を滅ぼしかねない、危険な古代遺産なんだ。

 できれば、近寄らないで、ほしいんだけど」

 

 困った顔の高町なのはに代わり、ユーノ・スクライアが説明。

 やっぱり、痛そう。説明がまだもたついてる。

 

「わかった。

 だけど、一度しっかりと見せてもらっていい?

 どんなものか知らないと、避けることも出来ない」

 

「ええと……確かに、そうなんだけど…………」

 

 ユーノ・スクライアは、困った顔で高町なのはを見てる。

 高町なのはも、困った顔でユーノ・スクライアを見てる。

 お姉様や主では見られない光景。

 何だか新鮮。

 

「私の力でどうにかできる物じゃなさそうなのは、理解できる。

 奪って逃げるのも、私の体ではどうにもならない。

 仮に奪って逃げても、私の家ははやてや学校に聞けば特定できる。

 これでも不安?」

 

「ユーノくん、怪我も治してもらってるんだし、見せていいんじゃないかな?」

 

『Put out』

 

 ユーノ・スクライアの返事を待たず、レイジングハートがジュエルシードを吐き出した。

 封時結界の展開に合わせて、探知は妨害済み。

 シリアル16。原作では神社の犬を魔物化した物。

 恐らくお姉様に対応すると予想。

 早速、全力で解析に挑戦。

 

「これが、ジュエルシード?

 普通の宝石に見える」

 

「今は封印状態だから、魔力とかは感じられないと思う。

 起動していない状態でも、探すのは結構難しいんだ。

 だから、僕が探してるんだけど……」

 

 ユーノ・スクライアが言い淀んでいる。

 確かに、集められていないとは言いにくい。

 

「体調があまり良いように見えない。

 無理に無理を重ねても、良い結果は出ない」

 

「だけど、僕のせいで!」

 

「随分と必死。責任感?

 だけど、そんな人が直接の原因となる事をするとは考えにくい」

 

「えっと、それは……」

 

 それからしばらく、ユーノ・スクライアによる経緯説明の時間。

 具体的には、ユーノ・スクライアが発掘、手配した輸送船の事故、単身での回収について。

 原作で語っていた内容に、時空管理局に関する情報を少し加えた感じ。

 長い話は有り難い。

 ここで朗報。

 ジュエルシードの防壁(プロテクト)の突破に成功。奇跡的。

 構造の複写を開始。

 記録情報の複写も開始。

 可能な限り急ぐけれど、多重防壁(プロテクト)に守られた部分もある模様。

 完全突破にはまだ時間がかかりそう。

 

(わかった。時間稼ぎ、やってみる)

 

「それで、時空管理局とかいう組織に報告して、回収の許可は取っている?」

 

「うん。ここは管理外世界といって、時空管理局が直接関わっていない世界なんだ。

 この世界の場合は魔法が知られていないし、次元世界を超える事も出来ていないからね。

 だから、勝手に侵入しちゃいけないし、魔法がばれる事も避けないといけない。

 渡航許可と魔法使用許可を申請する時に、ジュエルシードの事も担当者に報告しているんだけど、人手不足みたいで……」

 

 主の質問に答えるユーノ・スクライアの歯切れが悪い。

 あまり良くないとは思っている模様。

 

「人手不足で放置とは、危険物を扱う割には随分貧弱。

 管理外だからと、手を抜いている?」

 

「そんなことは無い、と思うんだけど。

 この辺りは本局から遠いし、管理外世界も多いから特に手が足りないんだと思う。

 当面の回収は僕に任せて輸送船の救助と事故原因の解明を優先すると言っていたから、そっちで何か問題が起こっているのかもしれない。

 ロストロギア……危険な古代遺産は事故に見せかけた事件も多いから」

 

「なるほど。

 とりあえず、一度まとめてみる。

 まず、ジュエルシードという古代遺産……ロストロギアは、世界を滅ぼす可能性のある危険物。

 先日ユーノが遺跡で21個発見して、時空管理局へ報告した。

 時空管理局はユーノの報告と過去の情報からジュエルシードだと判断、対策担当の部署への輸送を指示した。

 ユーノは指示に従い、輸送の手配を行った。

 輸送中の事故、あるいは事件でこの付近に散らばった。

 輸送船に同乗していたユーノは事故を通報、散らばったジュエルシードの回収に名乗りを上げ、単身で乗り込んできた。

 現地で力尽きそうになった所をなのはに助けられ、その協力を得て回収を行っている。

 元は人間だけど、魔力の節約と回復のためにフェレットの姿になっている。

 ジュエルシードを狙う魔導師フェイトと出会い、戦闘の結果ジュエルシードを1つ奪われた。

 時空管理局は現在輸送船の救出及び事故原因の調査中と思われる。

 正しい?」

 

「うん、正しいよ」

 

「これから事件の場合を推測してみる。

 犯人は、ユーノ」

 

「ええっ!? ユーノくんが!?」

 

「ぼ、僕!?」




受け取ったのは面白いオモチャ。手にあるのは原作の知識。
アコノのユーノいじり。始まります?


ユーノの状況説明は、原作との明確な乖離はしていないつもりです。
少なくとも「テレビ版で説明していた内容」との矛盾は無いと思います。
ジュエルシード輸送までの経緯や渡航許可関係、アースラがまだ来ていない理由といった部分は捏造設定ですが。
公式に何か発表されていたら……どうしましょう。
この話ではこうだと言い切るしかないくらい、色々と影響が大きいんですよね。


ジュエルシードの解析(防壁(プロテクト)突破と情報取得)については、妹達が言っている通り「奇跡的」です。
どれくらい困難かと言うと「ノートン先生やきちんとした設定に守られたPCの情報を、そこにいる持ち主に気付かれずに全て盗み出すことに成功する」くらいです。
相手が素人ならともかく、技術者(ユーノとレイハ)が付いていますから、難易度はルナティックです。
妹達は他の作業を一時中断したり、防衛余力も動員したりして、文字通り全力で頑張りました。


ちなみに、魔法の綴りはグーグル先生頼りです。ベルカ式なのでドイツ語です。
間違いを指摘する際は、どう書けば正しいかを教えてください。
作者には、綴りが正しいかどうかの判断すらできません(笑)

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