主と高町なのはの会話が終わる頃。
世間の日付は既に変わり、一般に深夜と呼ばれる時間帯。
お姉様は、別荘にある部屋で落ち込んでいた。
状況としては、ジュエルシードの解析が概ね終わり、結果の報告をしたところ。
(エヴァ、話が終わった)
(ああ、アコノか……随分ユーノを苛めていたな)
(弄り甲斐のあるキャラ。
感情があればあの反応は楽しいのだろうな、と思える。
でも、エヴァはあまり元気がない?)
(ああ……衝撃の事実が判明してな……)
ジュエルシード、シリアル16の構造解析が、概ね終了。
結果発表。
お姉様は衝撃のあまりorzとなった。
今ここ。
(ジュエルシードに、何か問題でも?)
(ああ……ちょっと、な…………)
アルハザード時代に消失した、お姉様の実験用デバイスに酷似。
通称青。
高出力型で、主に比較的安定した魔法の高負荷実験や過負荷実験で使用。
その分、実験用デバイスなので安定性が低め。
インテリジェントデバイスだけど、本来は魔法の発動制御及び安定化に特化。
実験用と割り切った構造。使用魔法の選択は手動。緊急停止のみ自動。
実験用の、未完成や怪しい魔法を多数格納していた。
アルハザードの貴族が行った実験に貸与、空間崩壊に巻き込まれて消失。
(つまり、どこかに流れ着いて、それを元に複製でもされた?)
制御特化だった知能に改変を確認。初歩的な祈願型の発動制御機構が組み込まれている。
そのための人格追加も確認。あまり性格はよろしくない。
魔法の情報もおかしい。正しく魔法を選択出来ると思えない。
祈願検出部分も不安定。異様に高感度になったり、雑音で異常な結果を出したりと、使い物にならない水準。
出力は増強。ただでさえ高負荷・過負荷実験用の高い出力が更に強化されているけど、不安定。
魔法の制御も異常。制御力劣化に加え、出力増強と知能改変による制御力低下。暴走する要素が満載。
安全装置は出力の増強や知能改変の影響等々で、役に立つ状態ではなさそう。
実験用魔法の多くはそのまま、更に色々な魔法が追加されている。特殊な効果を持つ物、実験的と思われる物も少なくない。
この結果、願いが叶うが不安定と言われる様になった?
(だけど、物語の世界に飛ばすとか、そんな事は可能?)
時間魔法で並行世界や可能世界と思われる別世界の観測例がある。
空間魔法で新しい宇宙を生成する事は、理論的には可能。
ネギまの幻想空間の再現魔法がある。ここがある種の精神世界の可能性がある。
追加された魔法の解析は出来ていないけど、特殊な物が含まれている可能性がある。
厳密でない再現、似た空間の作成であれば、不可能と言い切る事は出来ない。
物語が存在する世界、つまり前世が作られた世界と考える事も出来る。
(そう。それで、エヴァは自分の責任だと)
過去の自分が作った物で過去に移動するのは、因果や運命の問題が発生。
お姉様が作り、失ったデバイスが原因で過去に戻ったのであれば、それは運命。
だけど、お姉様の前世に海鳴市は無い。
この世界には、リリカルなのはもネギまも無い。
過去ではなく、何らかの別世界と認識する方が自然。
(それなら、少なくとも私達に付いての責任は無いはず。
恐らくこの世界の辻褄合わせに利用されただけ。
落ち込んでるのは何故?)
自分の研究が悪用されるとどうなるかの実例。
危険物の管理が甘かった事の反省。
半ば遊びで作りかけた魔法を大真面目に調べられた事に対する羞恥心。
分かりやすく言えば……
自分の黒歴史を見て悶える、の図。
(そう。こんな時、どんな顔をすればいい?)
指をさして、笑えばいいと思うよ。
(それは色々な意味で無理)
◇◆◇ ◇◆◇
翌朝。
食事を終えた主は、八神はやてを部屋に残して高町家、月村家、アリサ・バニングスのいる部屋へと来ている。
なお、月村家のメイドであるファリン・K・エーアリヒカイトが八神はやての相手をしている。
八神はやてを1人にさせているわけではない。
そして、高町なのはと主により、魔法の話、ジュエルシードの話、そして、転生者の話が行われた。
主と高町なのははデバイスと防護服を展開したり、飛行魔法で浮かんだりして、魔法の存在を分かりやすく見せてもいる。
「なるほど。確かに、そういう技術がある事は理解した。
転生者なる人物にも、確かに心当たりがある。
警戒が必要だというのは、納得できる話だ」
「そうね。あたしも嫌な目で見られた覚えがあるから、嘘じゃないと思うわ」
「うん。どうしてって思ったけど、そういう事だったんだね」
高町士郎に続き、アリサ・バニングスと月村すずかが頷いている。
直接見た事のある人達は、全員が納得の表情。
「それと、ジュエルシードか。危険だという事は分かった。
だけど、なのは。
そういう危険な事を、何も言わずにやっていたことは駄目だ」
「それは思う。
アニメの原典の設定が生きているなら、高町家は異常なレベルの剣術家の集まり。
その力を借りられたらとても頼もしかったはず」
高町なのはが、高町士郎に怒られた。
でも、主はそれを言う前に、とらいあんぐるハートの設定が有効か確認する方が無難。
「え?
うちって、剣術の道場があるけど……そんなに凄いの?」
そもそも裏の話を知らない高町なのはは、この時点で脱落。
「御神真刀流、小太刀二刀術。特に、不破の家系には裏が伝えられているはず。
この設定は、この世界でも有効?」
「あ、ああ、確かにそうなんだが……転生者の情報は凄いな」
「お父さん!?
ほ、本当なんだ……」
少なくとも、入り口は有効だった。
高町士郎が、あっさり認めた。
もっと隠されると予想していたのに。
「御神流の表は護るための剣で、裏は暗殺剣。神速の使い手レベルになると、空を飛ばれない限りは魔導師を剣で相手する事も不可能ではないはず。
確か、神速は知覚を限りなく高速にする技術。行動も早くなったかも?
銃弾を避けるレベルだから、瞬間的な速度ならフェイトを超える水準と思える」
「フェイトって人の能力は分からないし、魔導師の戦闘力も分からないけど。
御神流についての説明は概ね正解だ。
但し、神速は早く反応できる事が大きいね。
動きそのものも早くはなるけれど、知覚に比べたら小さなものだよ」
全部認めちゃった。
お父さん大丈夫?
隠してなかった?
魔法の存在のせいで、これくらいは些細な事?
「だけど、士郎さんは引退、恭也さんは膝を痛めていた?
美由希さんは確か天才的だけど遅咲きだったような……?」
「大体あっている。そこも知られているのか」
「私って、天才的だっけ?」
高町恭也は頷いているが、高町美由希は疑問顔。
主に、自分の評価が気になった模様。
「覚えるのは遅いが、一度覚えたら忘れない。
全てを覚える事が出来れば、その時が大成する時だろう。
遅咲きの天才という表現は、間違っていないと思うが」
不思議そうな高町美由希に、兄の高町恭也が補足説明。
少なくとも、主の説明は訂正されてない。
「そっか。ちょっとは認めてもらえてたって事かな?」
「そうだな」
高町恭也に褒められたせいか、高町美由希は嬉しそう。
妙に距離が近いのは元18禁のせい?
「……ひょっとして、恭也さんの膝も治せるかも?
ロードカートリッジ、
ぱしゅっ、という軽い音と余剰魔力の煙。
足元に現れた三角形の魔法陣を見て、一般人達はデバイスや飛行魔法を見せた時と同じくらい目を見張っている。
「どう?」
「あ、ああ……確かに、痛みが減っていく。
凄いな、こんなことも出来るのか」
そういえば、防護服や飛行は魔法陣が出ない。
高町恭也は棚ぼたで回復。
「まだまだ、練習中。
極めたら治せるのかもしれないけれど、今はこれが精いっぱい。
効果がある間はそこに居れば、もう少し良くなるはず」
「ありがとう、充分だ」
主の次の標的は、月村忍と月村すずかの姉妹。
この2人は、他の人達より落ち着いている。
やっぱり、ひょっとしそう。
「……言わない方が良い?
ここまでみんなぶっちゃけてるから、私の知識が間違っていないのなら、言ってしまった方が楽になれる。
それに、ずっと友達を続けたいなら、いつか話すことになる」
「私……いえ、私達の事ね?」
姉だからか、月村忍が対応。
達、にどこまで含んでいるか、よく解らない。
「そう。
元々裏側の人がいる。
魔法と言う非現実的な物を使う人もいる。
そこに何か加わっても、今更の話」
「そうね……恭也、いい?」
「忍がいいなら構わないけど、すずかちゃんはいいのか?」
「え……うん、話した方がいいと思う。
なのはちゃんの秘密だけ聞くのは不公平だと思うし、ずっと友達でいたいから」
ざ・たらいまわし。
月村忍、高町恭也、月村すずかときて、最終的に視線は月村忍に。
「そうね……この際だし、言ってしまいましょうか。
まず、アコノちゃんから話してみて。
私達が話すより客観的だと思うし、説得力も違うでしょ」
月村忍が、主に説明を任せた。
たらいは主に。
どの程度知られているかの確認と推測。
「わかった。間違いがあったら訂正してほしい。
月村忍、月村すずかの2人は、夜の一族という、ある意味で吸血鬼に近い種族の末裔。
高い身体能力と、20歳を過ぎたら成長や老化が遅くなるという特性を持ち、不老でも不死でもないけれど、人間よりかなり長い時を生きる事が出来る。
その代わりに、定期的に異性の血液を飲まないと体調を崩す。
ノエル・綺堂・エーアリヒカイトとファリン・綺堂・エーアリヒカイトの2人は、自動人形。
人間ではなく電気で動くロボットに近い存在。1回の充電で20時間ほど動ける。
右腕にロケットパンチは仕込み済み?」
「だいたい合っているわね。
でも、ロケットパンチの構想はあったけれど、仕込んでないわ」
浪漫パンチが無い。
修理したはずの月村忍に言明された。
残念。
「そう。あっているならよかった」
「よくないわよ!
なのははともかく、すずかは気配すら見せてなかったじゃないの!」
主の確認完了に、アリサ・バニングスが噛み付いた。
夜の一族について、気配くらいはあったはずなのに。
「体育の授業で片鱗は見せていたはず。
ちなみに、アリサは一般人。
表の人間として、裏の人のボケにツッコミを入れてほしい」
「むちゃくちゃ難しいじゃないの!
あたしには本当に何もないの!?」
「アニメだと、なのはを心配する一般人の親友という立ち位置。
アニメの原典だと、アリサ・バニングスと言う人物は存在しない。
アリサ・ローウェルと言う幽霊に対応するはず。
IQ200以上の天才だけど、言うのが憚られる事件で幽霊になった人物」
「なっ……そ、それはそれで何か嫌ね。頭はいいみたいだけど。
あんたが憚られるって言うぐらいなんだから、よっぽどなんでしょ?」
アリサ・バニングスのテンションが落ちた。
主が慮っているのが気になった?
「アニメの原典のシリーズ中一番悲惨な人物で、18禁のゲー「わー! わー! なんかわかっちゃったからそれ以上言わないでーーー!!」……聞きたそうだったのに」
「ねえねえ、アコノちゃん、18禁って「なのは聞かない! 聞いちゃダメー!!」……えー」
「簡単に言うとエ「あんたも説明しない!」……なのはは不満そう」
アリサ・バニングスが騒々しい。
理解出来たアリサ・バニングスがませている。
本当は高町なのはの様に理解出来ないのが、年齢的に正しい。
主は大丈夫。元18歳以上。
「いやいや、だいたい想像が出来るけれど、あまり聞かせていいものじゃなさそうだ。
これ以上はまだ秘密にしておいてくれないか」
だけど、アリサ・バニングスの妨害はある意味見事。
高町士郎の判断は正しい。
ようやく、無印のブレイクが始まりました?
とりあえず、関係者への情報提供開始です。
ついでに、とらいあんぐるハートの設定、入りました。
作者はこのシリーズは未経験ですので、Wiki等が頼りとなっています。
リリカルなのはでの発言が少ない月村忍や高町美由希等の口調がヘンで安定しなくて空気化するのもそのせいということで……
なお、リリカルなのはでは「説明したところ以外は変わっていない」と原作者(都築真紀)様の発言があったそうですから、とらハ設定の組み込みは原作乖離とは言えないはず。
妹達の絵文字・顔文字については、アルハザード編1話で「この声というか、意識は……」とある通り「意識」で直接伝えているために可能な事です。当然、真面目な時にはやりません。
本気で悪戯する気なら、ギャル文字(2004年設定なので、全盛期~衰退期の頃になるでしょうか?)もいけます。誰も喜ばないのでやりませんが。
そして、アルハザード編で仕込んでいた伏線の回収です。神様転生にも影響しています。
エヴァの実験用デバイス(青)が、この世界のジュエルシードの元です。アルハザード編7話で作成、8話で喪失した物ですね。
エヴァのチートが優遇されているのは、ジュエルシードなりの、ジュエルシード関係者への愛なのでしょう、きっと。2500年程眠らせたり、性転換させたりと色々歪んでますが。
転生時のジュエルシードはどうだったか、ですか? エヴァのデバイスが元、かもしれません。真実は、皆さんの心の中に。
2013/06/07 以下を修正
実験用と割っ切った→実験用と割り切った
魔方陣→魔法陣
2019/09/23 実験用デバイスとしては安定性が→実験用デバイスなので安定性が に修正
2020/01/29 ―(横線)→ー(長音符) に修正