「危険性や自分たちの秘密に転生者の危険性を全員が把握したところで、だ。
アコノくんに魔法を教えた人物は、優秀な魔導師なのかい?」
主と原作の人物たちの会話は続く。
主導は、とりあえず大人代表としてか、高町士郎。
「恐らく。
魔力の量や知っている魔法の内容はともかく、制御については自信があると」
「それなら、なのはもその人に教えてもらうことは可能かな?」
高町士郎は、高町なのはの師匠を求めてる?
元凶に頼るのは良くないと認識?
「あまり人前に出たがらない研究馬鹿だから、いい返事を貰えるか分からない。
でも、ノエルさんを調べたいと言っていたはず。
それを餌にすれば、来てくれるかも」
(ちょっと待て、アコノは私を何だと思っている。
過保護な変人だの研究馬鹿だのと好き放題言って、今度は何を言い出すんだ)
(過保護な研究馬鹿を釣る方法)
「技術者としての腕は、どう?」
月村忍は、技術系の人種としてお姉様を認識した模様。
デバイスにもきっと興味を持つ。
「かなり高い。このデバイスもその人が作ったはず。
きっと、解析してスペックを上げる位は平気でできる」
主の信頼は、とても正しい。
けど、お姉様の解析は知的好奇心を満たすためと予想。
改造するなら、きっと魔改造。
「そう。ノエル、見てもらってもいい?」
「はい、お嬢様」
頷いちゃった。
それでいいのか自動人形。
「と言うわけで、お師匠はさっさと来るべき」
(ちょっ、ちょっと待て! そんな餌で私が釣られくぁっ!?」
空間が裂け、そこからお姉様とチャチャマルが落ちてきた。
お姉様は体勢を立て直す余裕も無くうつ伏せで落下。
その背中にメイド姿のチャチャマルが正座で追い打ち。
「お、お前ら……まずはそこをどけこのボケロボ!」
「はい、マスター」
チャチャマルは恭しく礼をしながら、その実メイドにあるまじき体勢から立ち上がる。
お姉様の手を取り立ち上がらせる姿だけは、忠実な僕らしく見える。
「クソッ、アコノもそんな餌で私を呼ぶな。
変人だの研究馬鹿だの、好き放題言いおって」
「でも、一番来てくれそうだった」
お姉様は困った顔で主を突いてる。
周りの人たちは唖然としてる。
「子供……?」
「お師匠……?」
最早誰の呟きかもわからないというか、どうでもいい。
表情を見る限り、全員同じ感想の模様。
困惑は分からなくもない。
見た目的に、お姉様は10歳程度。
実年齢10歳だけど少し年上に見える主よりも、小さい。
「ん? ああ、こんなナリだが、研究者歴は20年以上だ。ずいぶん長い間眠っていたせいで、記憶は少々怪しいところもあるがな。
ときに、ユーノとやら。ここではない世界の住人で、ベルカの事を知っているそうじゃないか。
今は、ピリウス歴で何年だ?
どれくらい眠っていたのか、さっぱりわからんのだ」
「ピ、ピリウス歴!?
古代ベルカでも、中期の頃の暦じゃないですか!」
ユーノ・スクライアが、驚きのせいか言葉遣いが丁寧になった。
年上と認識された?
「そうなのか?
というか、古代ベルカ中期?」
古代ベルカは5000年前から300年前くらいのはず。
夜天や宵天の情報を見る限り、アルハザードの崩壊は2000年から3000年くらい前のはず。
その中ほど。
間違っていない感じ。
「ベルカという世界自体、300年程前に滅んで今は無人世界なんです!
今は末裔が自治領にいる程度になってるんですよ!」
「なん……だと…………?」
「僕が遺跡発掘もしてる歴史好きじゃなかったら、そもそもピリウス歴なんて知りませんよ!
それくらい前だってことです!!」
「なんという……」
美しいorzの体勢でうなだれるお姉様。
だけど、口元には笑みが浮かんでる。
楽しんでる。
でも、ユーノ・スクライアは歴史好きだったらしい。
昔の事を知っていそうな人という事で、お姉様に敬意を表した?
「エヴァ、遊び過ぎ。
ユーノも、この人は過保護な変人の転生者だという事を思い出すべき」
「へ?
……そ、そういえば!?」
ユーノ・スクライアは主に言われてようやく気付いた。
言わなければ、お姉様がもっと弄れたのに。
「はははははは、悪かったなぼーや。
ベルカが滅んでいる事は原作の知識として知っている。
それについては、やはりそうなったのかとしか言えん。
だが、眠ったのがピリウス歴の頃だというのは本当だ。
そんな昔の話や暦の名前なんて、原作に出てこないしな。
証拠は出せないが、この世界に来てから知った事なのは間違いない」
「そ、そうなんですか……って、いったい何歳なんですか!?」
きっと、ユーノ・スクライアにとっては重要な点。
昔の事を知っているかどうかが分かりそうな質問。
「わからん。
眠る前に20年程研究者をしていたのは確実なんだが、眠った年も曖昧でな。
そもそも、今と1年の長さが同じなのかも疑わしい」
「正確には、ピリウス歴203年頃と思われます。
1年の長さは、地球の1年にかなり近いかと」
チャチャマルに結論を言われた。
誤差は最小で2%以内の計算。
ピリウス歴は、1年おきに閏月を使う豪快な暦。
1年だけで長さを考えると、最大誤差は酷い事に。
「年に関してはそのまま換算しても大きな誤差は無いという事か。
まあ、そういう事らしい。気が向いたときにでも、ピリウス歴で今が何年に相当するか調べてくれ」
「いえ、だいたいは分かります。
ピリウス歴の元年は、概ね2700年前だと言われて……え?」
「私は2500年ほど眠っていた、という事になるのか?
凄いな」
簡単な算数。
誤差は問題にならない程には大雑把な計算。
「いえいえいえいえいえ、凄いというレベルじゃないですよ!
とてもじゃないけど、信じられません!」
ユーノ・スクライアが、見てわかるほど驚いている。
フェレットなのに。
「嘘を言ってどうする。
という事だから、特に月村家とは仲良くやっていきたいんだが」
「私達と? その心は?」
いきなり話を振られた月村忍は、ちょっと意外そう。
理由は想像しやすいのに。
「恐らく長寿で、周囲の人間に残される者同士だからな。
地球で暮らす時の誤魔化し方を教えてもらえると有難い。
それに、長く友でいられる仲間候補だ。いがみ合うより仲が良い方が良いだろう?」
「うん、確かにそうだね」
「すずか、認めちゃうの!?」
月村すずかは納得できた模様。
納得できないアリサ・バニングスは、やっぱり叫ぶ。
「だって、さっきの話も否定してないんだよ」
「頑張るんだぞ、一般人代表」
お姉様が、再びアリサ・バニングスを弄る?
弄り過ぎると話が進まない。
むしろ現時点で脱線は確実。
「だからそのカテゴライズはやめて!
……まさか、はやては一般人だけど車椅子仲間だから守ってる、何て言わないでしょうね?」
脱線した。
この場に居ない、一見すれば一般人ぽい人に矛先が向いた。
「それこそ、まさかの話だ。むしろ魔法関連で危うい立場と状況だからだと思っておいてほしい。
何しろ、はやては2作目でジュエルシードとは異なる古代遺産に関わり、命に係わる状況に陥る立場だ。
最終戦で、なのは達と共に敵と戦えるくらいの才能持ちでもあるがな。
ちなみに、なのはは2作目でAAAクラスの敵とやりあい、3作目でS+となる魔導師だ。
素質が原作と変わらなければ、なのはの才能は相当な物だぞ?」
むしろ、映画版が基準なら、テレビ版より上の可能性も。
あなおそろしや。
「S+!?」
「それは凄いのかい?」
ユーノ・スクライアが驚くのは解る。
それを他の人は理解出来ず、高町士郎が質問するのも解る。
高町なのはが全く理解していない様子なのはどうなんだろう。
「驚いたユーノが理由を説明すべき。
士郎さんを含め、地球の人は理解できない」
「僕が!?
ええと、魔導師のランクは、FからSSSまでの11ランクに分けられています。
FからA、そこからはAA、AAA、S、SS、SSSですね。
時空管理局には優秀な魔導師が揃っていますが、武装隊の隊長でもAランクが多いそうですし、AAA以上になれる魔導師は5%もいないと聞いた事があります。
S+と言うと、歴史に名が残る様な魔導師もいるくらい、希少で膨大な力を持っているはずです」
「だ、そうだ。
全く実感の湧かない説明をありがとう、と言うべきか?」
「希少な事以外は伝わっていない。
プレゼンテーションとしては低評価」
頑張ったユーノ・スクライアの努力は、お姉様と主に不評。
他の人達はやっぱりよく解ってない。
「実際に見たことが無い相手には、説明のしようもないだろうがな。
ユーノはA相当のはずだが……ランク試験を受けたことはあるのか?」
「僕はそんなに高いんですか!?
あ、いえ、攻撃魔法の適性が無くて、あまり高くないだろうと思って受けていないんです。
発掘の仕事にはあまり関係ないですし」
丁度いい比較対象。
でも、自分のクラスを知らなかったのは低評価。
「なるほど。
とまあ、単独で異世界へ危険物回収に来る様な人物がAと言われて高いと驚くレベル。
そのはるか上を行く可能性があるなのは、程度に思ってくれ。
要するに、一流や超一流と言われる世界に手が届く素材という事だな」
「ふむ、なんとなくは分かった。
だけどその言い方だと、やはりまだまだ原石という事だね」
ようやく、高町士郎は理解した模様。
高町なのはが原石と言う点も間違っていない。
だいぶ磨かれていても、成長の余地は充分。
「そうだな。それで私に教えてほしい、という意図はわかる。
だが、魔力操作の基礎は教えられるが、私に出来るのはそこまでだ。
魔法そのものはユーノが、体術は高町家が教えてやってほしい」
「おや、どの様な意図だい?」
「さっきの話でも分かると思うが、私の技術は古すぎる。
何しろ、2500年前の年代物の様だからな。どれほど変わっているのか分かった物ではない。
アコノの魔法も、古い記憶や仲間が残してくれていた資料を紐解きながら用意している状態でな。
要するに、用途や構造が慣れた物とは異なるミッド式を教えられるとは思えん。
それに、私は本来研究者だ。戦闘の訓練など受けていない。
魔法戦闘と言っても、なのはとフェイトの戦いを見る限りでは、今でも多少誘導性の強い弾丸程度の物を使う事が多いようだ。
それなら、銃を持つ相手と戦える御神流の動き方を教える事にも意味があるだろう」
「つまり、君自身は戦闘の訓練は施せない、という事だね?」
高町士郎は、いい感じに誤解してる。
お姉様の言い分は、嘘は言ってない。
古いのは事実。今でも通用すると言っていないだけ。
ミッドチルダ式は本当に情報不足。
むしろ教えてほしい。
「魔力の制御方法自体はあまり差異が無いようだし、魔法を使う上で重要な部分でもあるからな。
この点をしっかりと叩き込むのは問題ない。
だが、私は研究者だ。それ以外はな」
それ以外……アルハザード式の訓練を試す?
きっと泣く。
むしろ、殺人機械になる可能性も。不破の血筋的な意味で。
どちらにしても、事件後の日常生活に支障が出る未来しか予想出来ない。
「エヴァ、他の理由もきちんと言っておいた方がいい。
あまり納得していないように見える」
「おや、他にも理由が?」
主の横槍に、高町士郎は不思議そう。
意図としては、別の理由追加による一層の技術隠蔽?
頑張れお姉様。
「本人の前で言うべきでないと思うが……今更か。
先に言っておくが、原作知識だ。間違っているなら反論は受け付けるぞ。
高町家の家族仲がいいのは結構な事だが、両親、兄妹でやけに桃色の空間を作りすぎていて、なのはが疎外感を感じている。
それに、翠屋の開店や士郎の入院等が重なった際、なのはは寂しさと共に、いい子じゃないといけないという強迫観念も感じている。
もう少し、構ってやったらどうだ?」
「なるほど……家族として、反省するべきという事だね」
完璧。
お姉様なのに。
でも、夫婦はともかく、兄妹で桃色空間はどうなんだろう。
妹的なヒロインばかりだったらしいとらいあんぐるハートの影響?
とらいあんぐるハート的には、血が繋がってないから問題ない?
「あと、なのは。
お前はまだ8歳だ。もう少し家族に甘えろ」
「ふぇ、私も!?」
この際に、高町なのはの魔改造開始?
むしろ、救済?
「親から子供に甘えさせることは難しい。子供を甘やかすことは簡単だがな。
この差は大きいぞ?
だからこそ、子供は甘える事を遠慮するな」
「う……」
「確かになんかいい子ぶってるというか、そんな雰囲気はあったわね」
「うん。一人で抱え込むところも、何だかそれを連想させるし」
バツが悪そうな高町なのは。
月村すずかとアリサ・バニングスには心当たりがある模様。
「あうぅ……が、がんばります。
でも、私、運動が苦手で、剣術なんて……」
「本当にそう思っているのか?」
自信なさげな高町なのは。
その様子に呆れていても、自信のありそうなお姉様。
何だか対照的。
「だけど、なのはは本当に運動が苦手よ?
いくら優秀な剣術家の血筋って言っても、限度があるんじゃないの?」
アリサ・バニングスは不思議そう。
お姉様の自信の根拠は見てるはずなのに。
「ふむ、ではアリサにいくつか質問をするぞ。
月村すずかの運動能力は、高いと思うか?」
「そりゃあそうよ。体育なんかでもいつも飛びぬけてるもの。
でも、それって夜の一族とかいうのが理由なんでしょ?」
「そうだが、質問を続けるぞ。
月村すずかと同じ年齢の子供が、月村すずかと同じ様に動くことが出来る場合。その者の運動能力は、高いと思うか?」
「そりゃあ、高いでしょ。
なのはがそうだって言うの? 信じらんないんだけど」
「では、最後の質問だ。1週間前、足元の猫に気を取られて転倒しそうになったファリンを、月村すずかと同じタイミング、同じ方法で支える事に成功している高町なのはの運動能力は、低いと思うか?」
「そ、そういえば……」
アリサ・バニングスも見ていた光景。
高町なのはと月村すずかの2人で転倒を防いだのは確か。
見ていたと言われているも同然だと気付かない程、アリサ・バニングスは驚いてる。
「とっさにあんな事が出来る人間はまずいない。
それが可能な人間に素質が無いなんて、私は信じないぞ」
「……ふう。
なーのーはー、あんたは理数の成績は私よりいい上に超一流魔法使いの才能が有ってその上すずか並みの運動の素質ですって!?
どこに取り柄が無いってのよ!
文系が苦手ってどんだけ完璧超人を目指せば納得できんのよあんたは!!」
アリサ・バニングスの矛先が高町なのはに向いた。
一気に叫び切った肺活量に驚愕。
「だって文系はホント苦手だし才能とか素質なんてわかんないしーー!」
「ふ、2人とも、駄目だよ、ねえ、ねえってば!」
バタバタと喧嘩の様にじゃれ合っている3人娘。
それを微笑ましそうに見ながら、高町桃子がお姉様に近寄ってくる。
「ふふ、なかなか上手ね。えーと、エヴァさん、でいいのかしら?」
「そういえば、自己紹介もまだだったな。
私の名は、エヴァンジュだ。
まあ、エヴァとでも呼んでもらえればいい」
「そう、わかったわエヴァさん。
だいぶ基本的な質問なのだけれど、エヴァさんは、いったい何なのかしら?」
いったい何、と来た。
母の勘?
高町桃子もなかなか鋭い。
「ん? どういう意味だ?」
「20年程研究者をやっていた、と言っていたでしょう?
年齢の説明で仕事の期間を説明するのはちょっとおかしいんじゃないかと思って。
2500年も眠っていたのにここにいる、という事も不思議ではあるんだけど」
「ほう、気付いたか。
残念だったなユーノ。魔法を知っているお前が真っ先に気付くべき人外の可能性を、先に一般人の地球人に気付かれたぞ?」
「ま、また僕ですか!?」
ユーノ・スクライア弄り、再び。
とても弄り甲斐がある。
隙が大きいのが悪い。
「それとも、魔法に浸かり過ぎて、感覚がマヒしているか?
フェレットの姿に慣れ過ぎて、知能までフェレット化が進んでいるんじゃあるまいな?」
「も、もう僕をいじっても誤魔化されませんよ。
エヴァさんは何者なんですか?」
ユーノ・スクライアは焦ってる。
何だか必死。
「誤魔化す気など無いよ。いじると楽しいだけだ。
質問に答えると、私は魔導具の意思だ。
眠っていたと言うよりは、殆ど機能停止していたと言った方が正しいのだろうな」
「魔導具? つまり、魔法の道具、という事ね?」
高町桃子の理解力に驚愕。
ひょっとしてファンタジー好き?
「その理解で正しいぞ。
道具として作られて、すぐに研究者だからな。幼少期など存在せんし、研究者としての期間がほぼそのまま存在期間でもある。
要するに、ノエルを作ろうとしたら転生者である私の意識が入ってしまった、と言う感じが近いか?
製作者としては、結果的に良かったようだがな」
「だけど、製作者の意図した結果ではないんですよね。
壊されたりしなかったんですか?」
ユーノ・スクライアが鋭くなった?
私達の初期の懸念に辿り着いた。
「求めていたのは研究の助手だったから、だろうな。
異世界の知識を持つ私は、結構役に立った様だぞ?
最終的には、助手と言うよりも協力者に近い立場だったしな」
協力者も何だか違う。
共同研究者?
研究者仲間?
(似たようなものだし、こいつらには関係ない事だ。あまり気にするな)
「なるほど、製作者にとって価値があったという事ですね。
でも、それだとどうして眠ることに?」
「阿呆が行った魔法の実験中に起きたトラブルに巻き込まれて、最終的に主が死んだからだ。
眠っている間は殆ど意識が無かったからよく解らんのだが、魔導具としての私は主を求めて彷徨っていたらしい。
私が目覚められる力を持ったアコノには、心苦しいが感謝している」
「あら、それだとアコノちゃんは凄い力を持っているという事になるんじゃない?」
高町桃子が、会話に復帰。
ようやく、理解が出来そうな話に戻った模様。
「なかなか鋭いが、“凄い”の言葉が指す部分に問題がある。
魔導具としての私には欠陥があるらしくてな。主となってもらう際に、感情の暴走が発生するんだ。
はっきり言ってしまえば、感情が無いアコノだからこそ主になれたという事だな。
転生者仲間であり、私を目覚めさせられるほぼ唯一の人物であり、実際に主となってくれた恩人でもあるアコノには、感謝してもし切れんよ。
アコノは、何があろうが全力で護り抜くつもりだ」
「あらあら、ずいぶんと入れ込んでいるわね」
「アコノに害がある相手なら、地球全てだろうが管理局だろうが敵に回す事を躊躇わんぞ。
2500年とは思わなかったが、眠っている間は何だか夢を見ている感じでな。いつ終わるか分からん夢など、これ以上ない悪夢だ。
次は、間違いなく狂う自信がある。
むしろ、まだマトモな部分が残っている事自体、奇跡じゃないかとすら思うが」
「な、何だか随分物騒な感じの覚悟ですね……」
ユーノ・スクライアに引かれた。
そんなに怖い?
「でも、それだとアコノちゃんの寿命で共に死ぬつもり、という事になるわよ?」
主の次の主が存在しない可能性。
主が普通の人であると言う前提。
不老不死を言ってない。
今までの説明だと、高町桃子の言う通りになるか、狂う事を覚悟で眠りにつくかの2択しかない様に見えるかも。
「ああ、その点は問題ない。
私の主は実質的には私の一部扱いになって、勝手に保護状態になるらしいからな。
具体的には、不老は確実だ。私が死なせないから不老不死とも言えるな。
例えばあのメイドも私の一部で、研究者時代には助手にしていた。
前の主も20年の付き合いだったが、外見の変化は特に無かったしな」
チャチャマルは、助手と言うよりは侍女をしていた。
護衛の指揮担当のはずなのに。
妬ましい。
「なるほどね。だから、忍ちゃんやすずかちゃんと仲良くなりたいと言っていたわけね」
「そういう事だ。世界が違うと言っても、地球は前世によく似ているからな。
地球や日本という国や風土、文化と言った部分はそっくりだ。
なるべくなら、ここでアコノとゆっくり過ごしたいと思っている。
その為には、この地に根を張る人物のコネは重要だし、苦労を分かち合える存在は貴重だ」
「あら、意外に打算的なのね?」
「感情だけよりも分かりやすいだろう?
だが、よくこんな小娘の話を信じる気になったな」
「あれほど年長者的な話が出来る人物を、この見た目通りの年齢と信じる方が無理よ。
だけど、子供がいる様には見えないし、誰かから聞いた話にしては実感が籠もっている感じもしたし。
色々な意味で年齢不詳ね」
言動と外見は、確かに一致しない。
一般人の高町桃子から見れば、不思議な存在。
「ああ、甘えさせるとか甘やかすとかの話か?
研究者時代の後半は、結構な人数を抱える研究所の所長をしていてな。
あいつら、人が小娘に見えるからと、自分の子供の相談を、な」
あったあった。
娘だけでなく、孫娘についての相談もあった。
子供に混じって話を聞き出していたお姉様。
子供達の間でも裏ボス扱いだったのはいい思い出。
(精神年齢30過ぎのおっさんにはきつかったんだ思い出させるな!)
「そういう事ね。つまり、子供から話を聞き出す役をやらされた、という事かしら?」
「可能な限り拒否はしていたがな。
まあ、少しは相談に乗っていたから、その時の感想だ。
実際にどうやれば大きな差が出るのかまでは、私も知らん。
子供の性格にもよるだろうし、実際に子育てした事は無いから経験を語ることも出来ん」
「だけど、外から見ていたらそんな感じだった、という事ね」
「そうだな。その点では、成人してからが長い夜の一族は羨ましくもあるな。
私はこの姿のままだ」
「不老と言っていたけど、その姿のままという意味かしら?」
不老に食いついた?
高町桃子も女性らしく若さに食いつく?
「意識があった期間だけでも20年、眠っていた期間を入れると2500年以上この姿だ。
成長しているとはとても思えんぞ」
「だからこそ、長寿の誤魔化し方を知っていそうな2人と、と言う話に戻るわけね」
あれ?
状態の確認だけだった模様。
「そうだな。
それでも、もう少し状況を理解してから、ゆっくり接触するつもりだったのだが……
まさか、あんな形で連れ出されるとは思わなかったぞ」
ため息をつくお姉様の視線の先は、ノエル・K・エーアリヒカイトに熱い視線を送るチャチャマル。
もちろん、解析のため。私達も参加中。
だけど、迫るチャチャマルと恥ずかしがるノエル・K・エーアリヒカイトの絵はとても百合百合しい。
ここは元祖茶々丸の二次作品でのイメージに倣って。
●REC
テレビ版の第1話前半の喧嘩が出演を試みました。
エヴァも、本人は嘘を言っている気はありません。
不死の真の理由とか、色々と重大な事も言っていませんが。
「欠陥」については、本人は全て把握している、とだけ言っておきます。
というわけで、お年玉企画、希望の多かった「本編追加投稿」、その2日目です。
明日ですか? 木曜日ですよ。通常営業日じゃないですか(笑)
2013/01/04 以下を修正
隙が大きいのが悪い事にする。→とても弄り甲斐がある。隙が大きいのが悪い。
2013/01/06 お前はまだ10歳だ→お前はまだ8歳だ に修正
2013/01/10 自身→自信 に修正
2013/02/06 以下を修正
眠っている間な何だか→眠っている間は何だか
2択しかない→2択しかない (数字を半角から全角に)
2016/04/03 避け→裂け に修正