青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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番外:小話ズ

 ◇◆◇ 久しぶりの……(無印編02.5話) ◇◆◇

 

 

 お姉様が、起動に成功した。

 別荘の記録を見る限り、約2500年かかっている。

 別荘の従者達や使い魔達が、首を長くしてお姉様の目覚めを待っていた。

 お姉様の目覚めに伴い、お姉様から使い魔への、直接の大規模魔力供給が再開された。

 要するに、お姉様の目覚めが使い魔達を通じて従者達に知れ渡ったという事。

 

 そんなところにお姉様がやってきたら。

 

「お目覚めおめでとうございますご主人様!」

 

「我等従者及び使い魔一同、首を長くしてお帰りを待っておりました!」

 

「心より、心より喜んでおります!」

 

 ……こんな感じに。

 

 2500年放置していたのに、従者達や使い魔達の忠誠心は何故か限界突破。

 別荘に姿を見せたお姉様の前にずらりと並ぶ従者や使い魔達。

 約2100人、全員集合。

 使い魔が若干減っているものの、概ね無事に生存していた模様。

 設備の維持も問題ない。

 むしろ、色々拡張されている。

 ちなみに、先の3人は、金髪美女の従者、銀髪美中年の使い魔、茶髪ショタの従者。

 役職的には、料理主任、設備管理主任、農場管理主任。

 外見は気にしなくていい。放置期間が長すぎて、年齢が無意味に。

 

「あ、ああ……随分と大袈裟な事になっているが……」

 

 お姉様が若干引いてる。

 勢いに負けてる。

 従者や使い魔達の目が、キラキラ輝いてる。

 

「大袈裟なものですか! 長年の研究の成果が試される時が、ようやくやってきたのですよ!」

 

 金髪美女が、ずずいっとお姉様に寄ってくる。

 少なくとも、やる気は素晴らしい。

 

「そうです! 様々な品種改良もやって、色々と自信作も出来てます!」

 

 茶髪ショタも、ずずいっとお姉様に寄ってくる。

 

「快適に過ごせるよう、各所に手を加えております。

 ぜひご堪能ください!」

 

 銀髪美中年も、以下略。

 

「あ、ああ……」

 

 お姉様が、何故か従者の隅の方に立つチャチャマルの方を、助けを求めるように見てる。

 チャチャマルは微笑みを浮かべながら立っているだけ。残念。

 むしろ、この状況を楽しんでいるとしか思えない。

 

「……どうしてこうなった」

 

 お姉様が頭を押さえた。

 以前は、もう少し家族的な雰囲気だった。

 今は、従者や使い魔の忠誠心と期待の眼差しが怖い。

 むしろ、宗教的と言ったお姉様の正しさが追加証明された。

 

「ご主人様、食事されますか?」

 

「お風呂も気持ち良く拡張しております。研究所も癖などを参考に手を加えて快適な作業が可能となっております」

 

「農場もいい感じに拡張してます! 一度ご覧になってください!」

 

 キラキラの目でお姉様に迫る従者や使い魔達、今のところ3人。

 その後ろにも、明らかに次を狙っている目の物が複数。

 と言うか、多数。

 

「……うん、従者は基本的にもう増やさん。

 使い魔も延命は基本無しにしよう。

 別荘の維持に必要な人数は確保するにしても、それ以上はダメだ。

 この勢いで迫られ続けたら、私の精神が持たん」

 

 お姉様が遠い目をしてる。

 まだ、日本の夜は始まったばかり。

 長い夜が、始まる。

 

 

 ◇◆◇ 妹達の小会議(無印編02.6話) ◇◆◇

 

 

 お姉様は、従者に振りまわされてる。

 相談するなら、今の内。

 

 今回の議題。お姉様と配下達の関係について。

 

 お姉様は、基本的に手駒を求めない。

 出来れば対等な立場を望む。

 これは、アルハザード時代から分かっていた。

 

 だけど、現存の従者や使い魔は、基本的に従属属性。

 全員、元はアルハザード時代の敵対組織の構成員。

 術式構成の前提条件。当時は従属属性の付与が必須。

 

 眷属、従者、使い魔の術式を調査。

 従属ではなく、親愛への切り替えを念頭に。

 元々仲が良い相手であれば、親愛属性の付与はそれほど影響が出ないはず。

 属性付与の削除よりは改変がしやすいと予想。

 

 お姉様からは、きっと眷属や従者にすると言い出さない。

 

 友人として共に在りたい人を拒否してほしくない。

 従属を望まないお姉様には、選択肢が必要。

 

 本来は、親愛も不要?

 

 全面的に削除するには不安。

 お姉様はきっと甘い。

 

 お姉様が騙される可能性。

 騙す気は無くても、心変わりする可能性。

 考慮が必要。

 

 基本的に、お姉様に剥奪された時点で、お姉様が命を握る。

 自立型の使い魔も、お姉様や私達抜きでは本来の生活以上にする事は難しい。

 必要以上の属性付与は、お姉様の決断の邪魔になる。

 

 お姉様は、きっと相手が心変わりしても殺せない。

 だから、心変わりを防ぐ手段を私達が用意する。

 

 親愛の属性付与は、ひっそりと?

 

 ある程度は伝えるべき。

 ばれたら怒られる。

 

 ばれる相手には、何とかして使わせない。

 お姉様も、きっとばれる様な相手を属性無しで眷属や従者にすると言わない。

 

 秘儀、オブラート。

 親愛の情が深くなる程度に従属属性の付与を緩和しました。

 

 それだ。

 

 いい感じ。

 

 採用。

 

 これを目標に、魔法の調査及び改造を推進。

 作業開始。

 

 

 ◇◆◇ とある温泉の入浴風景(無印編10.5話) ◇◆◇

 

 

 アリサ・バニングス、月村すずか、高町なのはの3人娘に拾われた主と八神はやては、温泉に連行された。

 途中、高町美由希や月村忍と合流。

 連れてくる原因を作ったアリサ・バニングスが、状況を説明。

 説明で“ありえない”が妙に連発されていたのは、気にしない事にする。

 年長組の2人も快諾し、いざ、温泉へ。

 

 その前に、部屋へ着替えやタオルを取りに戻り、ついでにフェレットが高町恭也に預けられた。

 建前は、足が悪い2人がいて危ないかもしれないから。

 アリサ・バニングスは不満そうだったが、高町なのはが押し切った。

 月村家のメイド二人は、もう少し高町恭也と部屋にいる気でいる。

 高町夫妻は外に散歩に出ているため、会えなかった。

 

 人数が増えないまま、一行は脱衣場へ到着。

 元々は宿の人に手伝ってもらう予定でいた。

 だけど、今は体力がありそうな年長組の2人もいる。

 特に宿の人を呼ぶ必要も無いと判断。

 脱衣も特に騒ぎが起きる事も無く……とは、いかなかった。

 

「ちょっとあんた、何なのよその体!」

 

 やっぱり、アリサ・バニングスが吠えている。

 見ているのは主の裸。

 

「ほ、本当に1歳しか違わないの……?」

 

 月村すずかは、服を脱ぎながらも主から視線が離れない。

 それどころか、少しずつ近づいてる。

 

「少なくとも、戸籍上の年齢はそうなってる。

 それが違うなら分からない」

 

「そ、そう。なら、そうなんでしょうけど、どう見たって中学生くらいの体型じゃないの!

 特にその胸!」

 

 アリサ・バニングスは、至近距離で主の胸を指さしてる。

 

「確かに、1年でここまで育つと思えへんな。

 何というか、こう……」

 

 主の隣に座り、服を脱いでいた八神はやては、ふに、っと。

 

「……うん、なんかが詰まっとる。

 ひょっとして、感情がこの中に入ってるんか?」

 

 ふにふに。

 

「わからない。でも、揉んでも多分出てこない」

 

「分からへんよ?

 愛情とか羞恥心とか、そんなのがぶわ~っと出るかもしれへん。

 例えば、こんな感じに」

 

「ひゃあ!?」

 

 八神はやての右手が、すぐ近くまで来ていた月村すずかを襲う。

 顔が赤くなってる。

 

「なんか、夢が詰まっとる感じや。

 将来が楽しみな感じやね」

 

「そ、そう……?」

 

 月村すずかの表情が難しい。

 照れてるような喜んでるような恥ずかしがってるような。

 原作だと、3人娘の中で一番育つはず。

 八神はやての超感覚に驚愕。

 

「はいはーい、遊んでないで、そろそろ入るわよ?」

 

 ぱんぱんと手を叩く高町美由希に、主以外がはっとした表情になり、服を急いで片付ける。

 主は、当然の様な顔で終了済み。

 

「じゃあ、アコノちゃんは私が連れていくわね」

 

 主は、月村忍にお姫様抱っこされて、浴場へ。

 年齢の割に大柄な主を安定して支える月村忍の腕力は、大したもの。

 主も抱き上げられ方を心得ていて、うまく体を預けている。

 問題ない。

 

「んじゃ、私がはやてちゃんね」

 

 高町美由希が八神はやてを抱き上げるが、八神はやては高町美由希に抱き着いた。

 元々は、主の様にお姫様抱っこのつもりだった模様。

 どうしてこうなった。

 

「はやてちゃん、そんなにしがみ付かなくても落とさないって」

 

 力いっぱい抱きついてくる八神はやてに、高町美由希は苦笑い。

 

「ごめんな、迷惑やったか?

 何か、こうやって誰かと触れ合う機会はあんまりないから、嬉しくてな」

 

「そういえば、1人暮らしって言ってたもんね。

 いいよ、嫌ってわけじゃないから」

 

「ありがとな」

 

 そのまま主と八神はやては抱き上げられた状態で浴室へ。

 人が誰もいない。

 貸し切り状態。

 抱き上げた状態ではかけ湯もしづらいため、先に体を洗ってしまおうと、洗い場の方へ。

 

「下に直接座らせてな?

 椅子やと、支えが無くて転びそうやから」

 

「足が不自由だと、そんなとこも気を付けないといけないんだ。

 んじゃ、この辺でいいかな。背中流すけど、お湯は熱めがいい? 温めがいい?」

 

「ちょっと熱め位でよろしくや」

 

 八神はやては、高町美由希に洗われ始めた。

 その隣では、主が月村忍に洗われている。

 

「それにしても、綺麗な髪と肌ね。

 ちょっと羨ましいわ」

 

 つやつや。

 綺麗の特典は、かなり有効に見える。

 そういえば、主の入浴を見るのは初めて。

 

「髪が長いと、色々と時間がかかる。

 切りたいと言っても、勿体無いと言われて切らせてもらえないけど」

 

「私でも、勿体無いと言うわ。

 綺麗な髪は女の武器なんだから、大切にしないと」

 

「別に、武器にする気は無い。

 恋も愛も、きっと無縁」

 

「そうなの?

 でも、綺麗な方が周りの人は喜ぶと思うわ」

 

「分からない。今度聞いてみる」

 

「うーん、普通は聞くようなことじゃないんだけど……

 まあ、納得できるようにやってみるといいわ」

 

「分かった」

 

 その後は特に大きな問題も無く、2人は洗われ。

 2人の姉が、自分たちが体を洗うために少し離れたところで、3人娘が主と八神はやてに近付いた。

 

「だけど、あんた達って不思議よね。

 車椅子の人って、もっと足が細くなるもんじゃないの?」

 

 アリサ・バニングスが、今度は主と八神はやての足を見てる。

 と言うか、触ってる。

 2人とも別に隠していない。

 綺麗な生足。

 

「うーん、どうなんやろ。

 確かに他の車椅子の人は、足が細い人が多いなぁ」

 

「普通は筋肉が落ちたりして足が細くなる。

 細くないという事は、筋肉があるか、違う物が付いているという事」

 

 改めて言われたから気付いたらしい八神はやて。

 主は、相変わらず落ち着いている。

 確かに、ちょっと細目程度。

 どうして動かないのか不思議なくらいには、普通の足。

 

「まあ、考えても分からへんな。

 足が動かんのも原因不明やから、足が普通なのも原因不明や。

 それよりも、人に触っていいのは、触られる覚悟のある人だけや」

 

 ふにふに。

 八神はやての今度の標的は、アリサ・バニングス。

 

「いいわよ。ふふーんだ、今やってるあんたにだって、同じことが言えるんだからねっ!」

 

 アリサ・バニングスの反撃。

 というか、揉み合い。

 でも、じゃれ合っているだけにしか見えない。

 色気不足。

 小学3年生が色気に満ちていたら、それはそれで問題。

 

「ア、アリサちゃんだめだよ、危ないよ」

 

「そ、そうそう、止めた方が……」

 

 月村すずかが困ってる。

 高町なのはも困ってる。

 でも、2人とも手は出してない。

 

「きっと、飽きたら落ち着く。

 それまでは、多分言っても聞かない」

 

「そ、それでいいの……?」

 

 主は2人を気にせず、のんびりとシャワーで体を流してる。

 月村すずかは、その様子に納得いっていない模様。

 高町なのはは困ったまま固まってる。

 

「まったく、何やってるのよ?」

 

 高町美由希が戻ってきた。

 呆れてる。

 

「あ、お姉ちゃん。あれ、どうやって止めよう?」

 

 再起動した高町なのはが、早速助けを求めてる。

 というか、どうしていいか分かってない。

 

「あれね……はいはい、そろそろ湯船に行くから、落ち着きなさい」

 

 高町美由希が、呆れながらも。手をパンパン叩いて2人の間に割って入った。

 その途端、胸に伸びる手が2本。

 

「ここか? ここに愛やらが詰まってるんか!?」

 

「愛があればこんなに大きくなれるの!?」

 

「はいはい、落ち着きなさいってば。

 とりあえず湯船に行くわよ」

 

 遠慮なく高町美由希の母性に触れる、八神はやてとアリサ・バニングス。

 高町美由希はそれを軽く流すと、揉まれながら八神はやてを抱き上げ、そのまま湯船へ。

 

「い、いいのかなぁ」

 

 それを引き攣った表情で見送る高町なのは。

 その隣で黙っている月村すずかも、口には出ていないが似たような表情。

 

「本人が嫌がっていないなら、問題ないはず。

 嫌なら嫌とはっきり言う性格に思える」

 

「お姉ちゃんが?

 ……うーん、そうかも」

 

 高町なのはは、納得したようなしていないような。

 とりあえず納得する事にした模様。

 

「本当に嫌なら、拳骨くらいは落ちてるわ。

 アコノちゃんもお湯につかるでしょ?」

 

 洗い終わった月村忍が、主の元へ。

 こちらは平和。特に騒いでも触られもしてない。

 

「はい。お願いします」




無印編02.5話は、今まで全く語られていない、別荘の中の話です。
別に、別荘の中が秘密と言うわけではないです。本筋と無関係過ぎて出せなかっただけで。
ちなみに、従者や使い魔達は、温泉旅行時点ではそこそこ落ち着いています。
が、地球産の作物やレシピで祭りになっているので、その意味では盛り上がっています。




無印編02.6話は……なんだか、妹達の黒さが際立ちました。
でも、本人(いもうと)達に悪気はありません。エヴァの役に立とうと頑張っているだけです。
こんな感じで色々と勝手に準備されていくんだよ、という紹介なんです。本当ですよ。




無印編10.5話は、温泉旅行で空気だった八神はやてがはっちゃける話になった様な?
そして、何故かアリサまで淫獣に。どうしてこうなった。

この後も続けると、桃子さんやメイドさんズの参加もあり得るのですが……さて、どうなったでしょうね?
でも、ここで終わる事で発生する最大の問題はきっと「なのはと忍(と桃子とメイドさんズ)が、はやてに揉まれてない」事なんじゃないかと思うのですよ、うん。




この辺が(準備時間的な意味で)限界で、(悶えてる作者的な意味で)限界です。
年末のバタバタしている中で準備していたので、これくらいで勘弁してくだちい。

これで、お年玉企画「三箇日連続更新」終了です。
今日は4日ですって? ははは、昨日は木曜で本来の投稿日じゃないですか。
振替えですよ、振替え。

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