夕方の、ちょうど日が沈む頃。
海沿いの公園で発動した、ジュエルシードひとつ。
シリアルは7。
高町なのはは高町美由希とユーノ・スクライアと共に駆け出した。
フェイト・テスタロッサもアルフと共に現場へ向かっていく。
管理局のサーチャーも反応。現場へいくつか集まってくる。
「始まったか。この流れだとテレビ版か?」
ジュエルシードが樹にめり込んでいく。
樹が巨大化。
高町なのは組到着。ユーノ・スクライアが封時結界を展開。
フェイト・テスタロッサ到着。攻撃するも、バリアで防がれた。
高町美由希は、何だか卑猥とか呟いてる。
緊張感に欠けてる。
「一番危ない立場だな。大丈夫そうか?」
高町なのはが離れるよう指示。本人は上空へ。
ユーノ・スクライアと高町美由希は前線から離脱。問題なさそう。
フェイト・テスタロッサと高町なのは、ほぼ同時に攻撃開始。
ジュエルシードの暴走、停止。
お話開始。
フェイト・テスタロッサはジュエルシードに注意するよう言っている。
原作同様だけど、主との約束をきちんと守っていると言える。
高町なのはは、私が勝ったら話を聞かせてくれと要求。甘ったれと言われて無くても、少年誌的な流れは同じ。
2人が動こうとする直前、クロノ・ハラオウン登場。
空中に身分証明を投影した。
「身分証明? 映画版の流れに変わるのか?」
2人をバインドで拘束。
アルフが焦った表情だけど無言で閃光弾と煙幕弾で攻撃を開始。
フェイト・テスタロッサも巻き込む軌道。だけど、見た感じ魔力ダメージすら皆無。
どう見ても目眩まし。
フェイト・テスタロッサはバインドを破壊。ジュエルシードへ向かう。
クロノ・ハラオウンの攻撃。散弾風魔法弾、一応非殺傷設定。
フェイト・テスタロッサに命中するも、アルフが即時回収、低威力の非殺傷設定魔法弾をばら撒きながら逃走開始。
高町なのはが、フェイトちゃん、と心配そうに叫んでいる。
クロノ・ハラオウン、高町なのはの近くでシールドを張ったまま動けず。
アルフ、逃走成功。
「……これは、どう見るべきか…………」
小さくても、明確な乖離。
高町なのはが、フェイト・テスタロッサを庇ってない。
庇うまでも無く逃走に成功した。
リンディ・ハラオウンからの通信は原作通り。
高町なのは、高町美由希、ユーノ・スクライアがアースラへ行く模様。
もちろん追跡。
「……さて、どうなることやら」
◇◆◇ ◇◆◇
と言うわけで、やってきましたアースラ艦内。
(ユーノくん、ここが、前に言ってた管理局ってところの、宇宙船の中なんだよね?)
(時空管理局の次元航行船だよ)
(はあ……あんまり、船って感じしないね)
高町なのはの脳内単語を、ユーノ・スクライアが修正。
ちゃんと修正出来ているか、とても怪しい。
(なんだか、微妙に工事が終わってないビルを歩いてるみたいね)
高町美由希は、高町なのはとこそこそと囁き合いながら周囲をきょろきょろ見ている。
右側の壁には斜めの鉄骨の様なものが見える。
左側の壁には四角のパイプにも見えるものが延々と続く。
言ってしまえば、映画版のアースラの内装。
「ああ、いつまでもその格好と言うのも窮屈だろう。バリアジャケットとデバイスは解除して平気だよ」
「あ、そっか。そうですね」
原作同様、クロノ・ハラオウンに言われて気付いたらしい。
高町なのはは普段着に、レイジングハートも赤い宝石の姿に戻った。
「君も、元の姿に戻っていいんじゃないか?」
「ああ、そういえばそうですね。
ずっとこの姿でいたから忘れてました」
ユーノ・スクライアは頷くと、光に包まれて元の少年の姿に戻る。
「あ……ふえぇぇぇぇぇ!?」
「え? なのはには、僕が人間だって言ってあったよね?」
高町なのはの叫びに、ユーノ・スクライアが目を丸くしてる。
人間だと知っているのに叫ぶのは予想外。
「ユーノくんって、私とおんなじくらいの年だったんだ!?」
「発掘の仕事をしてるって聞いてたけど、まだ子供じゃない」
高町なのはと高町美由希は、ユーノ・スクライアの人の姿を見るのは初めて。
予想外の落とし穴。
私達も現物は初。
やっぱり、ショタ。
「あ……あれ? そんなに変な事だっけ……?」
「働いてる人が私と変わらない年だなんて思わないよ!」
「うん、日本の常識としては、有り得ないかな。
地球の人ですら無いからと言えばそれまでなんだけど……ちょっとびっくり」
困惑しているユーノ・スクライアに、高町なのはが叫ぶ。
それに同意する高町美由希は、既にだいぶ落ち着いた模様。
「ちょっといいか。君達の事情はよく知らないが、艦長を待たせているので、出来れば早めに話を聞きたいんだが」
「あ……は、はい」
「そうね、ごめんなさい」
「すみません」
「では、こちらへ」
クロノ・ハラオウンに注意された3人は、素直に謝ってる。
そして、もう少し歩いてたどり着いた、外人が勘違いして和風に仕立てたような、獅子脅しがかこんと音を立てて怪しげな桜の花びらが舞う部屋。
その部屋の奥の赤いじゅうたんに、リンディ・ハラオウンが正座で座っている。
「艦長、来てもらいました」
「お疲れ様。まあ、3人ともどうぞどうぞ。楽にして」
リンディ・ハラオウンは、ぽん、と手をたたきながら、にこやかに3人を招き入れようとしてる。
だけど、高町なのはと高町美由希は目が点。
動く気配なし。
「どうぞ」
クロノ・ハラオウンが促し、ようやく2人が再起動。
よく解っていないユーノ・スクライアと一緒に部屋の中へ。
それからはお茶と羊羹を口にしながら、主にユーノ・スクライアによる状況説明。
まずは、ジュエルシードがこの付近に散らばった事。
現在の回収状況。
同じくジュエルシードの回収を行っているフェイト・テスタロッサとアルフがいる事。
2人の所属や目的は不明な事。
散らばった原因が、輸送船が事故か事件に巻き込まれた事にある事。
そして、ユーノ・スクライア自身がジュエルシードを発掘した事。
「なるほど。ロストロギアを発掘した少年は貴方だったんですね」
「それで、僕が回収しようと……」
「立派だわ」
「だけど、同時に無謀でもある」
リンディ・ハラオウンの称賛と、クロノ・ハラオウンの小言。
この辺は、ユーノ・スクライアの説明も含めて原作同様。
「でも、管理局ってところがもう少し迅速に動いていたら、とっくに解決してたんじゃないの?
報告はしたって聞いてるから、私達からは軽視か放置されていたようにしか見えないし。
無謀だろうと実際に手を差し伸べてくれる人の方が、何の情報も無い現場としては有り難いってものよ」
「それは……そうなんだが」
だけど、高町美由希の意見には反論出来ない模様。
現場に立つ身として、よく解る現実がある。
「私達は、先日まで輸送船の人員救助と、原因調査を行っていたの。
こちらに来るのが遅くなってしまったのは確かだし、原因の特定も未だに出来ていないから、申し訳ないと謝るしかないわね。
でも、幸いな事に死者はいなかったわ。事故処理の担当者が調査を引き継いでくれているし。
だから、これよりジュエルシードの回収は、私達が担当します」
「え……」
リンディ・ハラオウンの宣言に、高町なのはが唖然としてる。
それほど意外な内容と言うわけではない。
来るのは遅れたけど、これからは自分達が責任を持つと言っているだけ。
「君達はそれぞれの世界に戻って、元通りに暮らすといい」
「でも……!」
クロノ・ハラオウンの言い方も、気を使ったのかもしれないけど遠まわし過ぎ。
使命感のある小学生には理解出来ない模様。
わかんないことだってあるさ、8歳だもの。
「まあ、急に言われても、気持ちの整理もつかないでしょう。
今夜一晩、3人で話し合って、それから改めてお話をしましょう」
「送っていこう。元の場所でいいね?」
◇◆◇ ◇◆◇
「ってことがあったの。どうしよう!?」
高町家に戻ってきて、高町士郎に何があったのかを話す事でやっと現状を理解した高町なのは。
あわあわしてる。
なお、アースラのサーチャーが高町なのはと共にここに来ているのは確認済み。
担当はエイミィ・リミエッタ。今はリンディ・ハラオウンも情報を見てる。
高町なのはやユーノ・スクライアは気付いていない。
お姉様は、ここで情報を渡したほうが良いと判断。
それに、破壊はアースラとの関係を悪化させる要素になる。
よって、サーチャーは放置。
「危険物なのは確かなんだし、管理局ってとこが責任を持つから手を引けって言うのも、間違いじゃないんだよね」
「だけど、なのはを取り込もうとしている様だね。
普通の治安組織なら、手を引けと一方的に通告してお仕舞だ。
親切な治安組織でも、手を引くように説得するだけだろう。
話をすると言っているなら、協力してほしいと言っているようなものだ。
それに、ジュエルシードも渡していないんだろう?」
高町美由希と高町士郎は、比較的冷静に現状を考えてる。
高町桃子は夕食の準備中、高町恭也はまだ帰ってない。
「原作では、高町なのははユーノ・スクライアと共にアースラへ行っている。
アースラでの話も、原作と比較して大きな変化は無い。
きっと、リンディ・ハラオウンの意図も勧誘にある」
高町家のチャチャが、原作知識と併せて現状を解析。
普段なら料理の手伝いと言う名の修業をするところ。
今は我慢。
「やはり、実質的な協力要請という事だね?」
原作でもそうなんだろう、という意図が見える質問。
高町士郎の眼力が怖い。
「リンディ・ハラオウンは戦力として使う気と思える。
クロノ・ハラオウンは、あまり乗り気ではなさそうな態度。
提督で艦長で母親のリンディ・ハラオウンの決定権の方が上」
「行くのはいいとしても、なのはにとってのメリットって、何があるの?」
高町美由希にとっての問題は、やっぱり妹について?
姉妹仲は良い。
よく解らない組織より優先するのは当然。
「フェイト・テスタロッサとの対話の機会。
ジュエルシードに関わらない限り、この機会を用意する事は困難。
事件終結後も魔法に関わりやすい。
地球は、魔法を自由に使える環境では無い。
管理局に関わり、例えば管理局に就職する事で魔法に関わりやすい環境に行く事が出来る。
専用の設備での訓練や、今よりも安全性の高い状態での実戦。
地球には無い訓練設備があるはず。これを待機時間に使用できる可能性がある。
実戦も、管理局の補助が期待できる。今までより安全。
どれも、今後も魔法に関わることが前提。
今後は魔法に関わりたくないなら、行かないことを薦める」
最後の選択肢は、恐らく有り得ない。
関わりたくないなら、ここで困ってない。
「なるほど。今後、魔法とどう関わるかという事だね。
だけど、管理局に就職なんて出来るのかい?」
高町士郎は、父親として将来が気になる?
情報すら入手できない、とても遠い世界へ行くかもしれない娘を心配するのは理解出来る。
「可能なはず。
原作でも地球出身の管理局員が登場するし、日本人の子孫らしき人もいる。
出身世界での派閥的な物はあるかもしれないけれど、差別は特に無いと思える。
そもそも、人手不足の管理局が超一流の卵を惜しまないはずがない」
「だってさ。なのははどうしたいの?」
「うーん……魔法を使いたいって気持ちはあるんだけど…………」
高町美由希が高町なのはに丸投げした。
心配は解消された?
高町なのはは迷ってる。
「一つだけ忠告。
魔法は、あくまでも技術で、手段。
手段を目的にしてはいけない。
目的の為に手段を誤ってもいけない」
「手段……目的……?
よくわかんないよ~」
高町なのはは混乱している。
高町家のチャチャの説明が悪い。
小学生相手にそれは無い。
「魔法を使って、何がしたいのか。
何のために、魔法を使うのか。
したい事をする為には、魔法が一番良い方法なのか。
魔法以外に、もっと良い方法は無いのか。
魔法を剣に置き換えれば、高町士郎さんも詳しいはず」
補足も失敗気味。
むしろ、父親に丸投げした点だけが適切。
「そ、そうなのお父さん?」
「そうだね。
例えば、御神真刀流は護る為の剣なんだよ。
自分の為ではなく、大切な人の為に使うんだ。
だけど、常に剣を使えばよいというものでもないからね。
それをしてしまえば、暴力で他の人に言う事を聞かせる人になってしまうんだ」
「うーん……」
高町士郎の説明でも、理解し切れてない。
高町なのはの思考が迷宮入り?
8歳には難しい話。
「きっと、まだ難しい。
例えば、フェイト・テスタロッサと話をする切っ掛けのために使う。
そのくらいでも、今は充分。
ただ、話が出来る状態になったら、きちんと話をする事が大事。
人と付き合うための基本は、信頼関係」
高町家のチャチャは、さっきの発言を棚に上げちゃった。
有耶無耶にするつもり?
それは無い。
(なら手伝って)
だが断る。
「なるほど。君はなのはが魔法に関わっていくと思っているんだね?」
高町士郎は、少し諦め気味?
娘が独り立ちする寂しさと予想。
「本人の資質。
管理局の事情。
人が持つ非日常への憧れ。
今やりたいと考えている事。
どれも、関わる方向」
「逆に、関わらない理由ってのも無いんじゃない?
なるべく隠すものだって言われてるけど、すずかちゃんやアリサちゃんには教えちゃってるし。
管理局と関わったら二度と地球に帰れないとか、そんな事は無いんでしょ?」
高町美由希は、魔法に係わる事に賛成気味?
理解があるのか、度胸があるのか。
「少なくとも原作では、管理局の仕事をしながら日本の中学校に通っている様な描写があった。
地球出身の管理局員も、引退後は故郷に戻っている。
帰れないという事は無いはず」
「仕事をしながら中学校に?
労働基準法的な物は無いのかい?」
日本人としては、当然の疑問。
子供を命懸けの最前線で働かせる発想は、普通無い。
「今日現場に来た時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンは14歳。
発掘の仕事をしているそこのフェレット、ユーノ・スクライアは9歳。
ミッドチルダには、就業年齢の制限は無いと思える」
「そうですね。ミッドチルダには、年齢での就業制限は特にありません。
僕の部族みたいに独立が早い文化もありますし、単純に年齢で縛ることが難しいという事もあると思います」
ユーノ・スクライア、ようやく話に参入。
ここまで存在感無し。
「そういえば、外見もなのはと似た年に見えたけど……
本当に9歳なの?」
「そうですけど……それが何か?」
高町美由希の疑問は、お姉様の年齢不詳さが原因?
ユーノ・スクライア本人は不思議そう。
「世界は広い、という事だね。
まあ、そこまで先の事は、今はいいだろう。
なのはは、どうしたい?」
高町士郎も、本人の希望が優先?
優しいお父さん。だけど、過保護じゃないらしい。
「私は……フェイトちゃんと話がしたい」
高町なのは、再起動。
やっぱり気になるのは嫁の事?
高町なのはが嫁の可能性も。
そもそも伴侶じゃない。
「よし。それなら、アースラに行くという事になる。
行く理由付けや、説得は必要かい?」
「原作では、リンディ・ハラオウンを説得していた。
要するに、自分達は役に立つと訴えた」
「なるほど。では、説得内容を考えないといけないね。
それに、転生者についてどこまで話していいか、エヴァ君やアコノ君と相談しよう」
クロノとリンディのセリフや行動は、テレビ版と映画版の混合に今までの乖離の結果を足した感じです。
例えば、なのはへのロストロギアの説明は既にユーノがしています。そのため質問せず、バッサリとカットですよ。
「高町家のチャチャ」と「妹達」のやり取りで、手伝って→だが断るの部分についての捕捉です。
妹達は「共有の記憶領域」をフル活用しています。が、これは「記憶」でしかありません。
ここで断っているのは、判断の補助です。これは「意見を伝える」や「意識の直結」等、手伝おうとする側の能力を使用する形で実現するものです。それを断っているので、自分で考えろという事ですね。
インターネットに資料がいくらでもあるんだから、それを適切に選んで纏めるのは自分でやれ。手伝ってやらないぞ、みたいな感じです。とはいえ、散々茶茶を入れているので、多少は手伝っている様なものですが。
2013/07/03 切欠→切っ掛け に修正