青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編21話 面会希望者

 翌日になった。

 高町なのはとユーノ・スクライアは、アースラで訓練を兼ねた実力調査。

 2人の高い実力に、アースラの乗務員は驚愕。

 特に、砲撃や飛行については魔法を知って1か月に満たないとは思えない、一般魔導師に引けを取らない水準との事。

 高町なのはに技術を教えたのは、ユーノ・スクライア、お姉様、家族という事になっている。

 魔力の制御方法を最初に教えたのはユーノ・スクライア。最近はお姉様。

 適性を判断し、誰が何を教えるかの役目を割り振ったのは、お姉様。

 訓練の内容は、アースラの乗務員から見ても高い水準になっていた模様。

 アースラにおいて、現地組、特に高町なのはとお姉様の評価は鰻上り。

 基本的な訓練内容は現状維持、アースラとしては実戦に近い形での対魔導師戦闘訓練を手伝う事となった。

 要するに対フェイト・テスタロッサ戦を想定したもの。現在不足している項目、妥当な内容。

 

 その頃の主は、普通に学校へ。

 他の転生者や関係者達も、学校や職場にいる。

 成瀬カイゼは、転生者達の確認作業? 今日は間宮萬太の様子を見に行った模様。

 間宮萬太を見て険しい顔はしてたけど、手は出さず。

 今のところ、様子を見に行ったのは捕捉済みの転生者のみ。未確認の転生者の捕捉にはまだ至らず。

 探し物をしているのは、フェイト・テスタロッサ&アルフと、ユーノ・スクライアを含むアースラの担当者達。

 新しく発見した様子は無い。

 とても落ち着いた状態。

 

 そのまま何事も無く時は流れ。

 学校が終わり、何事かありそうな時間帯になった。

 お姉様は別荘で夜天からの情報を解析しており、主は翠屋へ向かう途中。

 そんな時に、高町家のチャチャから緊急連絡。

 

(お姉様、主、急いで翠屋へ。

 未確認の転生者が話をしたいと来店した)

 

(そうか、わかった。アースラのサーチャーはいるか?)

 

 もちろん。

 エイミィ・リミエッタが担当だけど、特定の行動や言葉に反応して警報を出す自動監視だった。

 高町家のチャチャが呼ばれた事により警報発動。リンディ・ハラオウンにも連絡が行き、監視に参加する模様。

 もうすぐ2人態勢に。多分クロノ・ハラオウンも呼ばれる。

 記録は非公式。即座に管理局上層部や他の人に知られるものではない。

 即時破壊は心証を悪くする。

 

(そうか……猫は?)

 

 猫のサーチャーは未だ再配置されてない。

 猫の姿も無い。

 情報を渡さない方向なら問題ない。

 

(よし。アースラのサーチャーはそのままだ。

 妹達は、思考支援の準備をしておいてくれ)

 

 久しぶりの思考支援。

 アルハザードで貴族の相手をした時以来?

 

(思考支援?)

 

(アコノか。要するに妹達と連携して、疑似的に思考能力を上げるものだ。

 妹達が思考能力の底上げをする時にやる“意識の直結”を参考に、私にもできないか試した結果の産物でな。結果的に、情報交換を高速化して、妹達の支援を最大限に受けられるような態勢を整える程度に落ち着いた代物だ。

 必要な情報の即時検索と大量転送、行動や発言の考案と相談が主な内容だな。

 思考加速とマルチタスクが必須で色々と負荷が大きいから、あまりやりたくはないが……今回は失敗できないからな)

 

 お姉様の場合、頭が痛くなったり気分が悪くなったり。

 高水準の支援を長時間維持するのは不可能。

 場合によっては短時間で意識が飛ぶ事も。

 主に行った際の影響は不明。まだ試してない。

 

(そう。必要であれば、私にもお願い。

 失敗できないなら、チャチャネットワークで相談するよりも確実そう)

 

(無理はするなよ?)

 

 主への接続も準備。

 今回の指針は?

 

(アースラに、未確定情報として闇の書の情報をリークする。

 可能な限りアースラが動けないよう縛るぞ。

 話題の誘導程度でいいが、来た転生者の思考誘導は可能か?)

 

 指針は了解。

 だけど、思考誘導は失敗する可能性が否定出来ない。

 

(そんなに厄介そうな相手なのか?)

 

(来たのはどんな人?)

 

(名前は長宗我部(ちょうそかべ)千晴(ちはる)

 高校1年生。今は茶色のブレザー姿。学校帰りと思われる。

 外見はネギまの長谷川千雨そのもの。伊達メガネではなく普通の眼鏡を着用。

 こちらを茶々シリーズと識別出来た。

 転生者と見做して間違いない)

 

 追加情報。

 ジュエルシードの魔力は検出出来ず。

 但し、探知魔法そのものに無反応。

 探知妨害系の特典と予想。

 高町なのはがいないことを知っていた。

 探知系も特典として持っている?

 連絡が取れないか、と相談しに来たところを捕獲。

 翠屋に来たという事は、原作介入の制限が解除されてる?

 一人目または昨夕の制限解除者である可能性が高い。

 

(キャラ的に、認識阻害やらに耐性を持つ可能性があるのか……確かに、思考誘導に頼るのは止めた方が良さそうだな。

 話は聞いているか?)

 

(調理場の手伝いとして店にいるから、客と話すために表に出るには体裁が悪い。

 それに、相談はアースラ監視下の店の中でしていい内容でない可能性があると判断。

 今はジュースを飲んで待ってもらってる。

 分かりやすく言えばエヴァンジェリンが来る、と言ったら少々引きつってた)

 

(ネギまの印象を引きずればそうなるか。

 アコノ、あとどれくらいで着く?)

 

(もうすぐ。エヴァは?)

 

(人目を避けて、少し離れた場所に転移した。

 別の場所で話そう。先に入って連れ出してくれ)

 

(わかった)

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 その後数分で、主が翠屋に到着。

 主が店に入った瞬間、長宗我部千晴の目が点に。

 

「おいおいおい……木乃香だったのかよ。

 てか、エヴァンジェリンはどーした」

 

「お待たせ。エヴァももうすぐ来る。

 なのはに話したい事は、人に聞かれても大丈夫な事?」

 

「いや……なるべく聞かれたくねーな。

 えーと、私は長宗我部千晴。木乃香じゃねーだろーし、何て呼べばいいんだ?」

 

 驚きつつも、長宗我部千晴は割と冷静。

 見た目年長者の貫録?

 前世も合わせると、どっちが年長かは不明。

 

「私は小野アコノ。好きに呼んでいい。

 どこか人気の少ない公園にでも移動する?」

 

「その方がありがたい。

 移動して、合流は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。もう来る」

 

 主が言うのと同時に、店の扉が開いた。

 入ってくるのは、当然お姉様。

 

「ふむ、見事なまでにちうたんだな」

 

「ちうたん言うな!

 てか、あんたもキティちゃんそのまんまじゃねーか!」

 

「そう返すか、なかなかあっちの作品も覚えているじゃないか。

 だが、私の名はエヴァンジュだ。

 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルではないぞ、千晴」

 

「あ……ああ、わかった。

 だけど、エヴァンジュだっけ、その口調は……地、なのか?」

 

 長宗我部千晴は、お姉様に名前を言っていない事を気にしてない?

 それよりも口調や態度が気になる様子。

 

「言葉使いは、昔矯正されてな。

 名前は面倒ならエヴァでいいぞ。その方が分かりやすいだろう?

 店で騒ぐと迷惑になる。話は後だ、移動するぞ」

 

 お姉様はそう言うと、さっさと主の車椅子を押して店を出ていく。

 でも、車椅子を押すお姉様は目立つ。

 移動もゆっくり。見失うことは無いと予想。

 長宗我部千晴は慌てて代金を払って、後を追ってくる。

 

「偉そうなとこも、エヴァンジェリンのまんまかよ」

 

 追いついた長宗我部千晴が、ため息をついてる。

 

「この姿になって、活動時間だけで既に20年以上だ。

 見た目はともかく、実年齢は千晴よりも年上だ。敬うがいい。

 ああ、認識阻害はしているからな。無理に魔法関係を隠さなくても大丈夫だ」

 

「特に敬わなくても、普通に接していればエヴァは怒らない。

 その辺も特に心配いらない」

 

「ソコまでエヴァンジェリンのまんまなのかよ」

 

 長宗我部千晴は、呆れるやら安心するやらで忙しそう。

 でも、お姉様は楽しそう。

 

「ちなみに、休眠を入れると2500年くらいらしいぞ?

 その間は狂いそうになるほど長い夢の時間だ。

 色々と元ネタ越えも甚だしいな」

 

「おいおいおい……一体ドコに生まれたんだよ」

 

「大昔の、魔法文化が発達していた世界だ。

 私は、そこで作られた魔導具だよ」

 

「魔導具ってお前……」

 

「分かりやすく言えば、闇の書の管制人格の様なもの」

 

 主はお姉様の補足に徹するつもり?

 話の進め方としては無難。

 車椅子を押されているから、位置的な問題で話に参加し辛い可能性も。

 でも、アースラのリンディ・ハラオウンが闇の書という言葉に反応した。

 クロノ・ハラオウンも呼ぶ模様。もうすぐ3人態勢になるのが確定。

 

「私の本体は本だからな。その辺も闇の書に良く似ている」

 

「……転生の時に、人じゃなくなるのを希望したのか?」

 

「吸血鬼の様な能力、とは言ったな。

 夜の一族か何かになるかと思ったが……まさか魔導具とは思わなかったぞ」

 

「ひでー話だな」

 

「ところで、なのはにしたい話とは、いったい何だ?

 わざわざ翠屋に相談したいなどと言ってきたんだ。

 魔法関係なんだろう?」

 

 本題開始。

 思考支援の開始準備は完了済み。

 でも、まずは情報収集。

 介入目的でない限りは、魔法関係の相談しかありえない。

 

「それなんだけどな。

 特典の制限とかって、できねーか?」

 

 予想外来た。

 介入したくない方向と推測。

 どんな特典をどう制限したいか、情報不足も甚だしい。

 

「内容次第だろう。何を制限したい?

 魔力の抑制とかではなさそうだが」

 

「魔力の感知能力を貰ったんだよ。そしたら、知り過ぎちまって……」

 

 知らない方が幸せな事を知ってしまった?

 魔力の感知。

 高町なのはの不在もこれで知ったと推測。

 魔力の有無だけを知るなら、条件次第で認識阻害を突破し得る。

 まさに、ネギまの長谷川千雨状態?

 

「ちうたんの悩みと似たようなものか。

 随分と分かりやすい話だな」

 

「だからちうたん言うな!

 まあ、そーなんだけどよ……」

 

 認めた。

 認めちゃった。

 

「さてと、とりあえずここにでも入るか。

 ああ、出会った記念だ。私が出すから料金は気にするな」

 

「って、ここカラオケか?

 まあ、秘密の会話には向くのか……」

 

「ああ。とっとと入れ」

 

 そう言いながら、お姉様は主を押してカラオケ屋の中へ。

 疑似的な密閉空間。

 音楽の騒音で話声も漏れにくい。

 ここの監視カメラは偽装、録画や録音能力は無い。

 長宗我部千晴もお姉様の後を追い、部屋に入って皆で飲み物を注文。

 

 飲み物を待つ間に、改めて学校やら特典やらまで含めた自己紹介。

 長宗我部千晴、高校1年生。特典は魔力感知、探索魔法の回避、コンピュータの扱い。

 本人の希望としては、認識阻害の耐性は無い。

 でも、裏特典や人物設定として持つ可能性も。油断は禁物。

 

 その後、飲み物が届けられてから悩み相談を再開。

 

「それで、何を知って怖くなった?

 なのはとフェイトの戦闘は予想出来ていただろうに」

 

「2人の戦闘は、むしろ生温い。

 どちらも本気でないし、威圧感もあまり無い。怖いとは考えにくい」

 

 生温いと言うより、ある意味戦闘じゃない。

 原作的には、友情を生むための殴り合い。

 少年誌的な何か。

 

「いや、この前、なんか魔法でだれか死んでねーか?」

 

「世間では謎の美形連続殺人事件となっているあれか。

 あれで怖くなったのか」

 

 2人の転生者、一応美形の連続殺害。

 魔法で殺されたため、魔力を感じ取れるなら殺気の乗った攻撃魔法を感知したと予想。

 警察の手に負える事件ではないはず。

 警察や国が裏では魔法を知っているなら捜査は出来る。

 でも、公表出来ない。

 

「まあ、そんな感じだ。

 あとは、この前の……次元震、だったか?」

 

 封時結界内とはいえ、巨大な魔力爆発。

 アースラから観測可能な程度に色々漏れてた。

 感知能力が高ければ、知ることは当然可能。

 

「あったな。アースラに早く来てもらうために、原作通りになるのを見守ったんだが……

 お前は耐えられなかったか」

 

「見てたのかよ」

 

「見ていないよりは良かったんだぞ? 予想外の被害が出たからな。

 具体的には、なのはが昏倒、フェイトもすぐには動けず、だ。

 ジュエルシードはアコノに行ってもらって封印したから、原作より酷くは無かったはずだが」

 

「そ、そうか。やっぱ、対抗手段があるから見守れたんだよな。

 分かってて何もできないのは、やっぱだめだ。ガタガタ震える事しかできねーし。

 それに、このままだとプレシアがもっとでかいのをやらかすんだろ?」

 

 戦力外告白も来た。

 デバイスを持っている様子は無さそう?

 魔力の有無すら不明。特典で希望もしてない。

 

「地球で地震が起きるほどの次元震だな。次元断層寸前だったか?

 原作そのままに話が進めば、前回をはるかに超える規模だというのは間違いない。

 魔力が分からなければ、今ほど怖くないとでも思ったか?」

 

「まあ、そんな感じだな。できねーか?」

 

「いくつか方法は思い付くが……有効かわからんな。

 少々調べてみるか。少し待っていろ」

 

(自分から翠屋に来たから魔法に憧れもあるかと思ったが、どうも忌避感の方が強いようだ。

 魔導具と言ってしまった私には話しにくいかもしれんから、すまんが、アコノ。ちょっと緊張を取ってやってくれ)

 

 お姉様はそう言い残し、黒龍を起動。

 カートリッジを4発盛大にロードし、多重転移で別荘へ。

 

(わかった。それと、出来る範囲で情報も聞いておく)

 

(緊張を取る方が優先だからな?)

 

(大丈夫、落として上げる。

 妹達は思考支援をお願い)

 

 何故?

 あまり必要無さそう。

 

(エヴァが欲しがる情報を教えてほしい。

 それに、エヴァや闇の書についてアースラにどう聞かせるかも私だけでは判断に困る。

 これくらいの内容なら、私の加速は小さくても大丈夫そうだから)

 

 了解。

 思考支援開始。

 

「おいおい、ベルカのカートリッジかよ」

 

「一般的な魔導具にとって、魔力の消費は死活問題だと言っていた」

 

「そ、そうか。んで、何処に行ったんだ?」

 

「調べると言っていたから、多分資料を広げられる場所。

 でも、重大な事を忘れている」

 

「ん? 何かあんのか?」

 

 何だか理解してない?

 2作目の情報を持っていないか、忘れてる?

 

「魔力持ちだと思われたら、闇の書事件で襲われる可能性がある」

 

「え……あ!? 私も魔力あんのか!?」

 

 長宗我部千晴が、凄く驚いてる。

 気付いてなかった?

 外部観測では魔力が見えない。

 魔力の有無を含め、魔法に関する能力が不明。

 

「魔法で特典を制限するなら、それを見付けられて魔力持ちだと思われる可能性もある。

 襲われるだけなら、それだけで充分かもしれない。

 この世界が2作目を含まなければ闇の書事件が発生しないかもしれないけれど、発生した場合に襲われる可能性の有無は知っておいた方がいいはず。

 リンカーコアがあって、なのはがユーノに出会う前に制限が解除されてるなら、ユーノの声が聞こえたりしてる可能性がある。何か気付いたことは無かった?」

 

「あ……そ、そういや、ユーノの助けてって声が聞こえたって事は、リンカーコアがあるって事か!?

 うあー、気付かなかった!!」

 

 1個目のジュエルシードに対応する可能性が急上昇。

 というか、お姉様以上のうっかり属性持ち?

 それなりのリンカーコア持ちであることは確定。

 

「それを考えると、助けを呼んで、その間の時間稼ぎが出来る程度には訓練しておいた方が無難。

 逃げ一択でも、何も出来ないよりはきっといい」

 

「そ、そーなんのか……魔法とか原作に係わる気はなかったんだけどよ。

 てか、制限の解除って何だ?」

 

 そういえば、ジュエルシード転生だと教えてない。

 でも、原作までは制限があると言われたはず。

 原作開始直前の解除だから、気付いてなかった?

 

「エヴァが調べた限りだと、私達が転生した原因はジュエルシード。

 対応するジュエルシードが封印されると、原作に係われたり、何か力を使える様になったりするみたい。

 それに、ジュエルシードだから、願いが歪んで叶えられている可能性がある。

 例えば、私は冷静さを望んで感情を失った」

 

「な、何だよそれ……」

 

 やっぱり、驚いてる。

 と言うより、呆れてもいる。

 

「今まで封印されたジュエルシードのうち、ユーノが単独で封印したはずの1個目に対応する人と、昨日封印した物に対応する人は見付かっていなかった。

 ユーノの声が聞こえたのなら、たぶん、なのはがユーノと出会う前のものが千晴」

 

「1個目に対応するから真っ先に制限が外れて、ユーノの声も聞こえたってわけか…………ん?

 ってことは、転生者って結構いるのか?」

 

「私達を含めて、見付けたのは千晴が15人目。

 現実を見ていない人、自分が主人公だと思っている人が、その内4人。

 殺された2人も似た性格だったと思える。

 その2人を魔法で殺した人も転生者」

 

「うわぁ……ありえねー。半分に問題あんのかよ。

 てか、エヴァ以外は全員普通の人なのか?」

 

「今のところ、人でないのはエヴァだけ。

 エヴァ以外は全員地球の人で、殆ど学生。社会人が1人で、殺した人は学校に行ったりはしていないけど義務教育の年齢のはず」

 

「そうか……ってことは、コイツも見付かってねーのか。

 もーいいだろ。出てこいよ」

 

「はい、千晴様」

 

 落ち着いた声で返事をする白いものが、千晴の携帯電話から飛び出てきた。

 

「……ネズミ?」

 

 ネズミにしか見えない。

 浮いてる。

 なんだか、キリッ、としてる。

 

「あー、あれだ。ネギまの、千雨のアーティファクトの電子精霊?

 あんな感じらしい」

 

「始めましてアコノ様。

 我等はチクァーブと申します。しがない電子精霊の様な転生者ですが、お見知りおきを」

 

 おでんダネ来た。

 でも、丸々としている絵の方じゃない。

 名前を入力してくださいの頃の、ちゃんとネズミっぽい方の印象。

 4文字制限でもない。

 まさかの連続接触。これで発見済みの転生者は16人……人?

 電子精霊の存在がアースラにばれた。

 実態の隠蔽を優先。

 

「初めまして、私は小野アコノ。

 2人が出会ったのはいつ?」

 

(チクァーブの情報は?)

 

 昨夕のジュエルシードとの対応は既に確認済み。

 魔力はAAと思える。かなり高め。

 現実にいなかったから見付けられなかった?

 情報不足も甚だしい。

 

「いや、昨日の夜なんだけどよ。

 何か、コイツは昨日の夜に気が付いたらしくてな」

 

「はい。先ほどの話を考慮いたしますと、昨日行われたと思われるジュエルシードの封印により起動した、もしくは、完成したと推測いたします」

 

「そう。エヴァの電子精霊とは出会ってる?」

 

「は? あいつ、そんなもんまで持ってるのか?」

 

「2500年前に、コンピュータと電子精霊を作ったと聞いた。

 コンピュータは公開したけど、電子精霊は変な事をするとアンチウイルスに除去されるし、所詮はプログラムと同じ事しか出来ないから公開しなかったと言っていた。

 今はインターネットで公開されてる情報の収集と解析をしてもらってるはず。

 インターネット上にいたのなら、接触している可能性がある」

 

「何かがいると感じた事はございましたが、接触を避けておりました。

 その何かが、エヴァ様の電子精霊ではないかと」

 

 怪しい気配については、お姉様の電子精霊も気付いてた。

 接触を避けている様子だったため、こちらも様子見。

 出会いが悪ければ、抗争になった可能性も。

 初接触がこの形だったのは僥倖。

 

「賢明な判断。

 2人とも、これからはどうする?

 主に、原作とどう関わるかについて」

 

「あー、あんた達はどうするんだ?

 翠屋に話が付いてるって事は、介入する気でいるみてーだけど」

 

「最初は、少なくとも無印の間は介入する気が無かった。

 今は、積極的に介入してる」

 

 介入と言うより、浸食している気分。

 じわじわと浸透。

 

「我等の様な、原作知識を持つ者の存在による悪影響が原因と考えて良いでしょうか?」

 

「それを避ける意味が一番大きい。

 だけど、転生者……原作知識を持つ人が関係しなくても、話は変わっている。

 放置すれば原作通りになるとは考えない方が良いし、原作が一番良いとも限らない。

 それに、原作知識もどこまであてになるか分からない」

 

「そうなのか?

 まあ、介入しちまえばドミノみたいに変わってくってのは分かるけどよ」

 

 長宗我部千晴は直接介入した時の影響しか気にしてない?

 接触自体を避けていたなら、差異に気付いていなくてもおかしくない。

 

「例えば、なのはとフェイトのデバイスは、映画版」

 

「は? ……どう違うんだ?」

 

「具体的には、レイジングハートのカノンモード……砲撃形態に引き金が付いている。

 テレビ版のシーリングモードは無いみたいだし、リリカルマジカルも言っていない」

 

「はぁ!? いやいやいやいや、リリカルなのはとして、それでいいのか?」

 

 長宗我部千晴は、無印のみ知ってる?

 A’s以降はほとんどリリカル言ってない事を知らない?

 気付いていなかっただけ?

 

「映画版や2作目以降のテレビ版でも、タイトルコール以外では一度しかリリカルと言っていないはず。

 それを考えれば、リリカルと言わない事がダメとは言えない。

 そもそも、リリカル(lyrical)は叙情的とか熱狂的とか言う意味。その意味なら、間違ってない」

 

 友達になりたいんだ(かんじょうをのべあらわす)的な意味で。

 こんなはずじゃない(ものがなしい)事ばかり的な意味で。

 なの破産(ねっきょう)的な意味で?

 

「原作のシリーズがその状態でしたら、特に問題は無いのでございましょう。

 しかし、単純な再現ではない、という事でございますな」

 

 チクァーブは状況を正しく認識した模様。

 何がどこから来るか、条件がよく解らない。

 

「恐らくそう。それに、全体的になのはの心に傷をつける展開を回避する傾向にある。

 そのしわ寄せが無いか警戒が必要」

 

「あー、フェイトの境遇が更に悪化するとかか?

 まさか、私らって事は……ねーよな?」

 

 長宗我部千晴の心配は正しい。

 希望としては、踏み台な人達に全て持って逝ってほしい。

 

「可能性としては充分でございます。

 そもそも、歪んだ形で望みを叶えるジュエルシードでございます。

 転生特典の結果から判断いたしますと、原作設定より正常に近いとは言えるでしょうが、歪んでいるのは間違いございません」

 

「だよなぁ……何で冷静さを望んで感情が無くなるんだよ」

 

「だけど、おかげで厄介な転生特典が無効になっている事も期待出来る。

 例えば、オリ主様志望の人が要求しがちなニコポやナデポ」

 

「あー……アレかよ。要求してるやつがいるって事か?」

 

 長宗我部千晴は、げんなりしてる。

 気持ちはわかる。

 

「オリ主様気質の4人は、ほぼ間違いない。

 ただ、正常な作用は確認できていない。

 劣化か、何らかの条件が必要か、違う形で作用しているか。理由までは不明。

 他にナデポを求めた人が1人いるけど、撫でられると相手に惚れる逆転現象が起きていて、心を弄る特典を望んだ自分を嫌悪している」

 

「アホだ……でもまあ、問答無用で効果がある代物じゃねーって事か。

 そりゃあ、問答無用で効果があるなら確実にハーレムルートで、現実にそんなことをしたら修羅場だろうしな」

 

 むしろ、誰にも触れなくなるか、基本能面状態で過ごすしかない。

 迂闊な事をすると、嫌いな相手にも好かれることに。

 ハーレムが出来る前に、胃に穴が開くと予想。

 

「ヤンデレの素質がある方に大きな効果を発揮した場合を考えてみますと、刺されて死亡という形も容易に想像できる結末でございます。

 一見正常に機能するように見えるニコポやナデポを得た人物は、既にそういった形で死亡している可能性もあると推測いたします」

 

「見付かっていない人の中に、そういう人がいる可能性は確かにある。

 でも、正常に機能して生きている人がいるかもしれない。

 気を付けて」

 

「あ……ああ」




長いので、ここで一旦切ります。実質的に、前後編です。
次話と合わせると2万字越え(Wordでのカウント)ですので、1話に収めるのは無理がありました。
ここで場面も切れますし、頃合いかなと。


妹達によるエヴァやアコノへの思考支援ですが、19話で妹達が「手伝って」「だが断る」とかやっていたアレの親玉(意識の直結)の劣化版ですね。
妹達同士だと「元は同一の魂」ですし、「妹達専用領域という共通の膨大な記憶」もあるので、負荷はわりと小さいです。「意識の直結」の効果をコンピュータ的に表現すると、マルチスレッド対応のソフトウェア(データベースサーバーとか動画のエンコードとか)を早くするためにCPUを追加する感じです。
ですが、この2つのないエヴァとの直結は無理で、思考支援用に実用化したのは情報転送の高速化だけです。但し、妹達側も意識の直結などで高速化した上で、会話や思考を先読みして必要そうな情報をかき集めて大量転送を行ったり、相手の行動から発言等の影響を推測したり、それらを元にどの様な行動が適切か相談したりする所まで含めての「思考支援」です。
エヴァ側も不自然にならない時間で処理するための思考加速と、行動しながら相談するためのマルチタスクが必須です。脳にDoS攻撃みたいなものですから、負荷が洒落になりません。
必要と判断したら使う切り札的存在ですが、妹達の準備も必要ですし、常用できるものではありません。じゃあ妹達でまとめた結果だけ送ればいいんじゃね、という事になるのですが、それは23話で話が出ますので、もう少しお待ちください。
ちなみに、うっかり属性持ちのエヴァが貴族を相手に戦えた理由でもあります。


ちうたんの名前改変は、とっても平和ですね。普通っぽいです。

「ちくわふ」は元ネタの時点でアレですが、そんな名前を元にして名付けてしまったチクァーブ自身も大概です。「ああああ」とか付けなかっただけ良かったのかもしれませんが、こっちを捩って「A4」とかにした方が電子精霊らしいですね。
こいつの一人称が気になった人がいるかもしれませんが、これで正しいです。次話でエヴァがツッコミを入れるので、そちらを参照してください。


なお、エヴァの電子精霊は、コンピュータシステム側から見ればプログラムみたいなものです。
アルハザード時代は「ハードもソフト(OSや各種防衛プログラムは全て。アプリケーション類もほぼ全て)もエヴァ&妹達製」なので、好き放題出来ました。電子精霊用の裏口(バックドア)とか余裕です。
現代では完全に対策される側になるので、重要な場面以外では割と自重しています。
隙と必要があれば遠慮なく突撃しますし、能力は凄く高いですけどね。


2013/2/20 以下を変更・追加
 全部で15人見付けてる。→見付けたのは千晴が15人目。
 まさかの連続接触~の行を追加
2013/07/03 以下を修正
 A’s以降はリリカル言ってない→A’s以降はほとんどリリカル言ってない
 一度もリリカルと言っていない→一度しかリリカルと言っていない
2024/09/19 分かりいい→分かりやすい
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