青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編25話 闇と夜天と曙天と

 主と八神はやての話が付いた後、八神はやてにお姉様、チャチャマル、実体具現化しているチャチャをきちんと紹介。

 魔法、他の世界、管理局、原作、転生者の存在や、原作で語られたギル・グレアムの事情なども全て話した上で、偽装と闇の書対策への協力を要請。

 八神はやては、それを受諾。

 本格的な協力態勢の構築が決まった。

 

 実体具現化しているチャチャが、八神家に通って補助と教育を担当する事になった。

 名目は病院でヘルパー志望の子と知り合いになり、練習台になってほしいと頼まれた事。

 呼称は他の2人に倣い八神家のチャチャ、普段の呼称はチャチャに決定。

 安直言うのは禁則事項。

 

 お姉様は、闇の書の調査へ。これで本格的な対策を取れるようになる。

 主は永く付き合える友を得た。

 私達は新しい料理の師匠を得た。

 八神はやては、主やお姉様という友に加え、日常生活の補佐役と、魔法についての指導者を得た。

 全員に利点。とても良い。

 

 その後、主と八神はやてはお姉様、チャチャマル、八神家のチャチャの3人の補助の元、ゆっくりお風呂に入ったり、チャチャマルが揉まれたり。

 パジャマパーティーと大はしゃぎした八神はやても、今は主と共に夢の中。

 

「さてと、始めるぞ」

 

 闇の書を前に、お姉様が静かに目を閉じる。

 何があってもいい様にチャチャゼロとチャチャマルが侍り、私達も全力で警戒と調査を行う体制を整えている。

 例え暴走されても、周囲に被害を与えずに消し飛ばす準備と覚悟は完了。無限転生的な意味で、次の機会に期待する。

 今はまだ八神はやてのリンカーコアも呑まれてない。最悪の事態になっても、死ぬことは無いはず。

 

「曙天の指令書から、夜天の魔導書へ。

 管制通信を開始。現在の状態を報告せよ」

 

 初めて使う、管制通信。

 やり方は間違ってない。

 だけど、返ってくるのは雑音だらけの壊れた情報のみ。

 何らかの意思疎通を行おうとしているのは分かる。

 それ以上は読み取れない。

 

「クソッ、最悪の状態か?

 仕方ない、管制特権発動。現在の状況報告を命じる」

 

 強制命令は……一応効果あり。

 情報が帰ってきた。

 随分と断片的。しぶしぶ提出した気配。

 情報と様子を見た限りでは、防衛プログラムに周囲を巻き込み自滅する様な狂化処理が存在する可能性が濃厚。それが夜天の魔導書本体を包み込んでる。

 起動前だから保護状態になっている可能性も。

 情報を返したのは、狂化した防衛プログラム?

 夜天ではない模様。

 

「……状況としては最悪か……封印解除で状態が変わらなければ、防衛プログラムを何とかしない限り外からは手出しが出来ないという事か?

 夜天も、この状態のままでは何処まで動けるか……」

 

 暴走の気配は無いのが救い。

 夜天自身の状態は不明。

 防衛プログラムは管制特権命令に従ったものの、かなり不満そうな気配。

 改悪の影響で強制力も低下していると考えた方が無難。

 特権を使い過ぎると、逃亡または反逆の可能性も。

 現状は、防衛プログラムが起動して主の登録と起動魔力の準備中?

 チャチャゼロの起動後、お姉様の起動前に近い状態?

 それなら、最初の雑音は誰?

 

「……原作で夜天が動けるのはいつだ?」

 

 少なくとも、テレビ版では語られてない。

 人の姿を見せたのは、闇の書完成後。

 実体具現化が出来なくても、人格起動はもう少し早く可能らしい?

 人格起動は400頁と主の承認が必要という情報はあった。

 既に意識としては目覚めている可能性も高い模様。

 お姉様の記憶にあった纏めサイトの情報。どこまでこの世界と一致するか不明。

 封印解除と守護騎士システム起動がどう行われるかで判明するかも。

 本来の夜天は、起動の為に蒐集する必要が無い。主からの魔力供給で充分だった。

 改変内容がおかしい以上、夜天の情報は参考にならない。

 下手に手を出せば暴走や転生してしまう可能性が高い。

 不用意な手出しは禁物。

 

「夜天との接触は今後も試みるべきですが、最悪の事態に備える必要があります。

 原作最終戦に相当する戦いで強制停止を行い、その後の消滅イベントに相当する状況で修正を行う事も想定すべきです。そのための準備を開始する事を提案します」

 

 珍しくまともな事を言ってるチャチャマルに賛同。

 お姉様の手札を使わないためには、アルカンシェルは必須。

 人柄的に、アースラへのアルカンシェル搭載が望ましい。

 闇の書の名前が表に出る。その対策も必要。

 ギル・グレアムとの協力?

 ギル・グレアムとの交渉はクロノ・ハラオウンに仲介を頼む?

 プレシア・テスタロッサを救済?

 闇の書の悲劇の終焉は、プレシア・テスタロッサの過去の罪の相殺にも繋がる?

 

「夜天の状態が最悪だとすると、やはり管理局対策のための手札は必要だな……

 どちらにしても、アースラの連中には話を付ける必要があるか。

 しまったな、アースラへの接触をもう少し早めに設定しておくべきだった」

 

 接触を引き延ばす口実的に、無難な日程だった。

 フェイト・テスタロッサの無茶までは、少し余裕があるはず。

 現状でこちらから通信を行うには、手札を明かす必要がある。

 魔法を使ってあちらからの接触を待つのが無難?

 建前通り、転生者の対策を行う?

 お姉様と主で別に動けば、ある程度は同時に出来る。

 

「そうだな……早めに接触すべきだろうな。

 グレアムの説得は……立場的にあまり情報を伝えたい相手ではないし、その状態で対処できると言っても説得力が無さすぎるか。現状では微妙だな。

 となると、やはりプレシアか。プレシアを救済するなら、ジュエルシードの件を誤魔化すための手札が必要だな。内部時間を3か月程度確保できる、時間加速型の別荘があればいけるか?

 使い捨てだと、今の材料で何処まで加速できる?」

 

 再利用は考慮しない、惜しくない材料のみで構成。

 広さはさほど必要じゃないけど、衣食住及び治療のための医療設備が必須。

 資材の在庫を確認。

 製作期間は5日間を想定。

 現実の約27時間。余裕。

 現実の約13時間半。何とか。

 現実の約9時間。困難。

 

「そうか。余裕はある方がいい、27時間弱のものを早めに用意してくれ。

 それと、アースラの監視を少し強化。何かあったら即対応するぞ」

 

 了解。

 ギル・グレアムは?

 猫は定期的に現れる。

 当面は警戒が必要。

 

「少し負担が大きいだろうが、偽装は現状維持で頼む。

 はやてにも協力してもらう事になるが、そっちは説得しよう」

 

 頼まれた。

 やっててよかった人数増強。

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 夜も明け、主と八神はやても目を覚まし、チャチャマルと八神家のチャチャの2人が用意した朝食を食べて。

 今日は朝から、八神はやてのお勉強の時間。

 

「はあ、今は闇の書、元々は夜天の魔導書、なぁ」

 

「改悪されて災厄をまき散らすうちに、闇の書と呼ばれるようになったようだ。

 元々の役目は、魔法の技術を集める事だった。要するに資料本だな」

 

 教師役は、今はお姉様。

 八神家のチャチャが助手だけど、役に立つ用事があまり無い。

 

「それが、何で闇の書なんて呼ばれるようになってしもたん?」

 

「身を守るための大きな力と、魔法関連の蒐集能力がある。それらを悪用されたのが主な原因だろうな。必要以上に主の言う事を受け入れた事も要因なのだろうが……要するに、夜天が優しすぎたのだろう。

 だからこそ、夜天を人として扱い、欲に流されない主が望ましい。

 はやてには期待しているぞ?」

 

「ややなぁ、私にも欲はあるよ?」

 

 八神はやての欲?

 母性を襲う右腕的な何か?

 

「身を滅ぼすような出世欲や自己顕示欲でない、一般的なレベルの欲なら大したことにはならんよ。

 それに、道を踏み外すようなら、私が張り倒してでも止めてやる」

 

「ぶれない過保護者おつ」

 

 横で傍観していた主からのツッコミ。

 でも、お姉様にはたまにツッコミが必要。

 いくら守りたくても、過保護は良くない。

 

「いや、ここは譲れん。というか、アコノは変な茶茶を入れるな。

 それでだ、多くの改悪の中にも、まだマトモと言うか、役に立つものがある。

 それが、守護騎士システムだ」

 

「守護騎士、か? 凄そうな名前やなぁ」

 

「名前だけはな。中身は、戦闘狂気味のお姉さん、おっとりどじっこのお姉さん、ツンデレ幼女、犬耳忠犬お兄さんだ」

 

 随分な言い方。

 しかも、ある程度感情が戻ってからの話。

 シャマルは当初、冷徹な参謀役のはず。

 ヴィータもデレるまでに少々時間がかかる。

 他の2人は、この説明であってる?

 

「うーん、なんか、あんま守護騎士って呼び名と説明が一致せえへんな」

 

「だが、主の命令を忠実に実行するプログラムの様なものとして作られている。

 戦力としては破格だ。ちょっとした軍隊程度なら、軽く蹴散らされるだろうな。

 問題の頭の中身だが……そうだな、アコノが従順になった様な状態だと思ってもらっていい。

 感情は無く、主の命令は絶対。人ではなく使い捨ての駒。

 そういう風に作られ、使われてきた存在だ」

 

「家族やろ? なのにそれはあかんよ」

 

「だから、感情を思い出させてやってほしい。少なくとも私達が原作と呼んでいる物語では、次第に自分達の考えと感情で動くようになっていったからな。素地はあるはずだ。

 ただ、最初は前世の記憶があるアコノ以上に、感情というものが理解出来ない可能性がある。

 慌てず、じっくり取り組んでほしい」

 

 主が良い教材になってる。

 主も否定してない。

 むしろそれでいいと言いたげ。

 

「なるほどなぁ。つまり、その意味では私がお母さん役ってことやね?」

 

「そうだな、その認識で大体あっている。但し、全ての面で母をする必要は無いぞ。生活面やらは存分に頼っていい。持ちつ持たれつと言うやつだな。

 対面は、闇の書の封印が解ける6月4日、午前0時のはずだ。これは物語での日時だから変化する可能性もあるが、大きくは変わらないと見ている」

 

「よーするに、それが覚醒イベントってやつやな。

 それが済めば、私も魔法を使えるんか?」

 

 きっと無理。

 リンカーコアが闇の書に取り込まれる。

 蒐集された高町なのはの様な状態となると予想。

 八神はやての魔法資質は殆ど闇の書の中だから詳しく検査されない限りばれないとばっちゃ……じゃない、シグナムが言ってた。

 お姉様と主の様な、魔力の結合は無い事を想定。

 

「いや、その時点で魔法の資質が闇の書に呑まれるはずだ。

 はやてが魔法を使えるようになるのは、闇の書が完成するか、夜天に戻すかした後になると予想している。

 本当は、現時点で夜天に戻してやりたかったが……残念な結果になった。

 この際だから、夜天に戻す事が期待出来るタイミングも説明しておくぞ。

 

 次の期待は、封印解除後。守護騎士が現れてからだな。

 この時点までなら、人に迷惑をかける事も無い。

 

 その次は、闇の書の完成前に管制人格が起動できればその時だな。

 この状態に持ち込むために多くの人に協力を求めることになるが、この時点なら危険性が低いギリギリのラインだ。ただ、本当に早めに起動できるか分からんから、あまりあてには出来ん。

 

 最後が、闇の書の完成直後。これ以上は後がない、最後の機会だ。

 ここまで来ると、はやての意思の強さが頼りの綱渡りもする事になるし、巨大な力と力がぶつかり合う戦いにもなるだろう。管制人格の協力は得られるだろうが、一歩間違えれば地球滅亡に直結する危険な状態だ」

 

「うわぁ……最後のは避けたいとこやなぁ」

 

 私達も避けたい。

 下手を打てば、地球の危機。

 この水準の食文化は惜しい。

 

(お前達、本当に食い意地が張っているな!)

 

 おいしさは正義。

 これは譲らない。

 

「私もそれは同じだが、これを想定した準備もするつもりだ。

 むしろ、これに主眼を置いて準備する。

 準備が無駄になるのは構わんが、最悪の事態に手を打てないなどという失態を犯すつもりはない」

 

「それはそうやね。

 ところで、闇の書って、何をすると完成するん?」

 

「魔法の素質を持つ者の、魔力や能力を分けてもらう事でページが埋まっていく。

 全ページが埋まれば、闇の書の完成だ」

 

「分けてもらうって、危険は無いん?」

 

 ありゃ、気付かれた?

 名前や災厄の原因的に、危険な行為の可能性は予想出来る範囲かも。

 

「適度に分けてもらう分には、そこまでの危険は無い。過剰に奪ってしまえば、相手を殺してしまう可能性はあるがな。

 イメージとしては、献血が近いか。あれも血を抜き過ぎれば命に係わるし、一時的な血液の減少で眩暈がしたりする場合もあるだろう?」

 

「うーん、私の為に献血してもらうイメージになるん?

 なんか悪い気がするなあ」

 

「実際の方法だが、可能なら守護騎士を犯罪者対策に参加させることを考えている。

 犯罪者から適度に奪う事で、魔法的に無力化できるからな。能力面だけを見れば、犯罪者を安全に捕らえられる戦力だ。

 過去のシガラミがどの程度かによるが、協力の余地ぐらいはあるだろう」

 

 情報を表に出さずに済めば、一番無難な手法。

 犯罪者にならずに、それなりに多くの人から必要な物を確保可能。

 お姉様や私達を蒐集させるわけにはいかない。最終戦でアルハザードの魔法を使われると色々ヤバイ。

 

「社会貢献を兼ねつつ、給料代わりに闇の書に必要な物を分けてもらう、って感じなん?」

 

「交渉や状況次第だが、それが一番無難だろうと思っている。

 1人につき1回だけだから、どうしても頭数が必要になるんだ」

 

「そっかぁ。それなら、私に出来る事はあるやろか?

 主ってことは、色々とやれることがありそうやけど」

 

「そうだな。まずは、魔法関係の知識を得ておく事。

 闇の書が起動した時もそうだが、夜天に戻せた、または闇の書が完成して魔法が使えるようになった時に戸惑わないためだな。

 闇の書が完成した場合は暴走部分との戦いになるだろうから、最悪の場合は戦い、滅ぼす覚悟も必要になる可能性があることは覚えておいてくれ。

 

 次に、守護騎士と良好な関係を築く事。

 守護騎士は命令すれば従うだろうが、はやてはそんな関係を望まないだろう?

 

 最後に、日々を楽しく過ごす事だな。

 楽しめなければ、永い時を生きることは出来ん。私達と共に楽しもう。

 

 ああ、もう1つあった。人としての夜天に名前を付けてやってくれ。

 人の姿で共に在れるなら、夜天はともかく、魔導書や闇の書なんて呼び方はしたくないだろう?」

 

「そうか……うん、わかった。ありがとうな。

 なんか、面倒な部分は全部押し付けてそうや」

 

 八神はやてが押し付けたのではなく、お姉様が勝手に持って行った。

 まさに、過保護者。

 

「なに、私にも目的があるからな。その一環だ」

 

「エヴァさんの目的って、何や?

 闇の書を夜天の魔導書に戻して、災厄を防ぐのとは違うんか?」

 

「その手段部分、前半だけが本来の目的だ。私は、夜天を助けてやりたいだけだからな。

 災厄云々は、私が目的を達成した後に続く結果でしかない。

 本としての私の名は曙天の指令書と言ってな。夜天は私の姉のような存在になる。

 夜天の魔導書を直接見たのは初めてだし、言葉を交わしたことも無い。原作の知識として、こうなる事も知っていたが……やはり、何とかしてやりたくてな」

 

「そうなんか……うん、やっぱ私の選択は間違ってへんな。

 エヴァさんは優しい人や。悪いようにはせえへん」

 

「だけど、驚きの過保護さ。

 普段は自由にさせてくれるけど、いざとなったら自由は無い可能性が高い。

 その代り、安全だけは保障する」

 

「アコノ、私を一体なんだと思っている?」

 

「過保護者」




はやて、当分の間は魔法少女になれず。残念。

無印編はプレシア救済ルートの駒を進めました。
そして、無印の決定的なブレイクは……さて、いつでしょう?
既になのはがアースラに行っていますから、そろそろ壊れないとブレイクが間に合いません。メタ的な意味で。


はやての次の出番は「次の土曜日=6日後(今は日曜日)」の予定なのですが……話数的には随分遠いです。
小話で1回出番がありますが、本編では4x話になる予定です。
はやてを放置したいわけじゃないんです。無印編のイベント密度が高すぎて、はやてを出せない&無理に出すと無印編が更に終わらないんです。
八神家のチャチャが入り浸りますし、実態として放置するわけじゃないですよ。

2013/03/08 ギルアム→グレアム に修正
2017/09/06 闇に書→闇の書 に修正

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