青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編30話 出口はあっち

 その後、お姉様は転生者(へんたい)対策要員としてアースラに搭乗、高町なのはと行動を共にすることに決まった。

 当の変態(ロリコン)は、そのままアースラから姿を消したりしてる。

 何をしたいのか、本当によく解らない。追跡も困難だから動向が掴み辛い。

 だけど、今のところはお姉様や主、高町なのはにも纏わりついてない事は、成瀬カイゼの証言から間違いない。

 変態(ロリコン)なのに。

 成瀬カイゼレーダーによると、変態(ロリコン)は日本をうろついている模様。

 具体的には漫画喫茶。その中はジャミングが酷くてサーチャーでは情報が取れない。

 だけど、こんな短時間で真っ当な現金を得る事は無理なはず。今までミッドチルダにいたはずだから、支払い能力があると思えない。

 まとめると、変態(ロリコン)変態(マゾ)で犯罪者な二次元趣味者(オタク)らしい。

 消滅すればいいのに。

 

 一方、何がしたいのか分かりやすいリーゼアリアが、ヘルパーとして八神はやて宅を訪問。

 部屋が綺麗なことに気付くも、予定通りの説明。

 ヘルパー志望の友人が出来て掃除を手伝ってくれたと聞いたリーゼアリアは、何だか微妙な表情。

 良かったじゃないと言っただけで、問い詰めはしなかった。

 こちらの認識阻害を一部耐えた可能性はあるけど、全体としては勝利?

 認識阻害に耐え切られた場合に備えて、八神家のチャチャは退避済み。不要な情報は渡さない。

 リーゼアリアに仕掛けた情報収集魔法は、やっぱり無くなってた。

 発見され、解除された可能性が高い。偽装が間に合ってよかった。

 密度の上がっているアースラの捜索網を見事に回避して現れ、去っていく技術はやはり見事。

 まだアースラに見付けてもらう必要は無い。とりあえず、問題ない。

 

 その頃の主は一人、翠屋でお茶。

 お姉様の指示で、今日からチャチャマルが主の護衛担当に。

 翠屋という転生者が集まりやすいところに一人で常駐させるのは、やはり許せなかった模様。

 高町家のチャチャもいるのに、相変わらずの過保護者。

 でも、チャチャマルは姿を見せてない。陰からの護衛に徹してる。

 元々護衛対象。優先順が変わっただけで、体制としては変わってない。

 

 アースラの監視も、今は無い。

 高町なのはがいない上に、主と高町家のチャチャがいる。

 お姉様にばれる上に妨害としか思えない事故で情報が取れない監視を続行するより、ジュエルシードやらの捜索に注力する事を選択した模様。

 

 そうこうしているうちに、間宮萬太が接近中。

 出入り禁止を言い渡されていたのに。

 要注意。

 店内に原作娘は高町美由希を含め誰もいない。

 高町桃子と高町家のチャチャは厨房。表にいない。

 主は高町士郎に、何かない限り手出し不要と話を通した。

 主は、主の責任で対処する決意。

 

「ちわーっす……お!? 木乃香発見!!」

 

 発言が痛い。

 手を伸ばしてきた。

 主が腕を掴んだ。

 ナデポ行使未遂の現行犯。

 

「踏み台な人は、身の程を弁えるべき」

 

 見た目は無詠唱、魔法陣無し、デバイス無しでの封時結界。

 実際は体内展開だけど、外から見えない以上どうでもいい。

 不意打ちに最適、練習の成果が見える。

 間宮萬太は驚いて動けない。

 掴まれた手も振りほどけてない。

 軟弱軟弱ゥ。

 

「な、何だ!?」

 

「封時結界。原作を知っているのなら理解して」

 

「くっ……お前も転生者か!?」

 

 間宮萬太が焦ってる。

 でも、それ以前の問題が。

 

「理解が遅い。違う物語の顔がある時点でおかしいと思うべき」

 

「な、何なんだよお前!?

 全然木乃香じゃないじゃないか!!」

 

「当然。私は木乃香になった覚えは無い。

 木乃香に似た外見になった自覚はある」

 

「くそっ! 何だってんだよ!!

 ここは俺の物語じゃないのかよ!?」

 

 あり得ない。

 こんな軟弱で自覚のない主人公はいらない。

 現状の主人公は、強いて言えば高町なのはとお姉様と主の3人。

 

「絶対に違う。そもそも、転生者は推定21人いる。

 転生したのはジュエルシードのせい。望みも歪んだ形で叶えられている」

 

「へ!? ……エミヤの能力がうまく使えないのはそのせいか!!

 チクショー、あの胡散臭い神め、騙しやがって!!」

 

 胡散臭くても、神だと思ってた?

 お姉様や主は、神もどきとしか言っていなかったのに。

 信仰の有無の違いの可能性も?

 というか、ジュエルシードと言ったのに、それはスルー?

 

「あれは神じゃない。多分、ジュエルシードの意思が適当な姿を見せた物。

 この世界のジュエルシードを見る限り、あれはインテリジェントデバイスに近い魔導具。

 結果から推測すると、オリ主やテンプレ転生の願望が歪んで叶えられた様に見える」

 

「そんなの信じられるか!

 だいたい、騙しやがったのは事実なんだろ!?」

 

「私達が知る限り、広い意味なら騙したとは言えない範囲に留まっている事が殆ど。

 自分が主人公だと言われた?

 能力を使いこなせるよう願った?

 そもそも、詳細な指定は不可と言われていたはずだけど、指定していない?

 他人を罵る前に、現実を見直すべき」

 

 本当に広く見る必要はある。

 だけど、一応嘘にはなってない?

 嘘ではない証拠も、嘘だと断言できる証拠もないものに付いては、評価を保留中。

 

「そんなの納得できるか!

 じゃあ、エミヤの能力が使えない理由を言ってみろよ!」

 

「それなら、事実を確認してみる。

 要求した内容は?」

 

「当然、エミヤの能力だ!」

 

 英霊じゃない衛宮士郎の可能性。

 そもそも努力で成り上がった人物。

 衛宮士郎の才能を貰っただけなら、凡人。

 

「投影や無限の剣製は?」

 

「ナイフとか小刀の投影しか成功した事ねーよ!

 何かやけに疲れるし、何でいろんな剣が出せねぇんだよ!?」

 

 本物の剣を知らない可能性。

 視認したものが剣ではない可能性。

 疲れを感じるという事は、魔力不足の可能性も高い。

 

「でも、刃物を出すことは出来ている。

 エミヤの能力は、視認した剣の構成や本質を捉え、複製し貯蔵する能力。

 ナイフや小刀を剣と見なしてくれる分、親切設計だとすら思える。

 今まで、どれだけの“本物の剣”を見てきた?」

 

「本物の剣何て見る機会なんてそうそう無いじゃねーか!

 美術館やらにあるのはなんでか対象に出来ねーし!」

 

「展示されているものは刃引されているものや模造品も多いはず。

 きっと能力の問題じゃない。

 環境の問題である可能性があり、別の刃物で成功している以上、能力を貰っていないと言う事は出来ない」

 

「ありえないだろ!?

 セットだろ普通は!!

 こんなの最悪だ!!!」

 

 セット?

 何と何が?

 流石踏み台様、意味不明。

 

「その辺に本物の剣がある環境の日本が望み?

 随分とおかしな世界を望んでいるという事になる」

 

「は? 何でそうなるんだよ!」

 

「成功する刃物がある以上、複製し貯蔵する能力自体は機能していると考えられる。

 貯蔵している剣は、どちらかと言えば所有物や記憶。能力とは言い辛い。

 つまり、環境の問題かもしれないと言われて普通はセットだと答えたのだから、能力の為に環境を変えろと言っているのに等しい。

 要求を満たすために必要となるのは、その辺に本物の剣がある環境。少なくとも、現代日本ではその条件を満たせない。他の世界や他の国に行くしかないけれど、原作に関わるならその選択肢は難しい。

 要求の時点で世界が壊れるか、原作に関わらないか、言明されていない要求を無視するか。

 原作への介入も望むなら、最も穏便な方法を選んでもらえている。

 ジュエルシードとしては、歪んでいるとは思えないくらいに親切」

 

「な、なん、で……さ…………」

 

「例えば私は冷静さを望んで感情を失い、足も麻痺して車椅子生活。

 人間不信で日々怯えて暮らしている人もいる。

 日常生活も満足に出来ずに保護施設にいる人もいる。

 幽閉されて自由に出歩けない人もいる。

 人でなくなった者もいる。

 普通に人として生活出来ているだけでも、最悪と言えない程度には幸せと言える」

 

「う……あ…………」

 

 間宮萬太、絶句中。

 それにしてもこの主、ノリノリである。

 

「それに、エミヤは天才型ではなく努力型。

 英霊でない衛宮士郎は、へっぽこと呼ばれるくらい貧弱。

 長い努力と苦難の年月が英霊としての実力に繋がっている。

 努力はした?

 苦難はあった?

 どちらも無いなら、実力が付くはずがない。

 仮に能力を持っているとしても、使うのは自分自身。使いこなせなければ意味が無い。

 一般人がいきなりレース用の車を運転しても事故を起こすだけ。

 まだ事故を起こしていないなら、安全設計の車にしてくれた事に感謝していい」

 

「だ、黙れ!

 僕が、主人公なんだ!!」

 

 やっぱりオリ主様。

 むしろ踏み台様。

 性格改変を受けてるとしか思えない頑固さ。

 

(反省する様子が無いから、排除も考える。問題ない?)

 

 問題ない。

 ここまで異常な思考をしてるなら、むしろ排除推奨。

 

「力を貰っただけで主人公になれると思い上がっているから、踏み台と呼ばれる存在に成り下がる。

 ここはリリカルなのはの世界、本来の主人公は高町なのは。会うために翠屋に来た以上、それは知っているはず。

 なのはを主人公から引き摺り下ろすなら、相応の力が必要。

 意志の力かも知れない。

 戦闘面での実力かも知れない。

 経済力や交渉力など、他にも力は色々ある。

 だけど、どれ一つをとっても、なのはに勝てるように使っている様に見えない。

 

 大樹事件の前に、翠屋に来た姿を見た覚えがある。

 なのはは既にアースラに行っている。

 その間、なのはを超えるために何かしていた?

 本当に主人公になりたいなら、少なくともアースラが来る前に何か手を打つべき。既に遅すぎる。

 隣に立ちたいなら、相応の実力を身に着ける努力をするべき。

 支えたいなら、自分に出来る事を見付けるべき。

 共に生きたいなら、秘密を打ち明けられるくらい親密になるべき。

 一人で何とかしたいなら、なのはより先に手を打てる実力者になるべき。

 

 何もせずに居座り続ける主人公なんて、誰にも望まれない。

 そんな主人公の物語は、古本屋のワゴンに10円で並ぶ運命」

 

「だったら、あんたはどうなんだ!

 何かやってんのかよ!!」

 

「私は、魔法を知ってから師匠に教えてもらっている。

 寝食と学校関係以外の時間は、可能な限り魔法の練習に充てている。

 だけど、なのはに勝つどころか、勝てないと断言される程度の差がある。

 ジュエルシードとの戦闘に参加する意味が無い以上、なのはの隣で戦う資格は無い。

 だから、ここで転生者対策をやっている。

 私でも勝てる相手だから。

 転生者の危険性を知っているから。

 なのはや高町家の人達から、それなりに信用される事が出来たから。

 

 何もしていないと言うのは、そういう意味もある。

 突然現れて俺の嫁とか言い始め、娘を不快にさせる男を認める父親はいない。

 出入禁止とまで言われているのにまた来るような不審者は、警察に突き出されても誰も同情してくれない。

 一般常識で考えればすぐに解る事」

 

 勝てないって言ったのは、少々前の話。

 今なら、勝てる要素は増えてる。

 でも、最近主に比較評価を言ってない?

 微妙だけど、主の認識的には嘘にはならなそう。

 

「ここは物語の世界なんだ!

 ここの常識なんて知らないし、主人公に常識が通用するわけないだろ!?」

 

 超理論来た。

 何という暴君。

 特殊な魔力反応は無いけど、常識の認識を阻害されてる可能性も。

 ジュエルシードめ、無茶しやがって的な。

 

「私は、転生はジュエルシードのせいだと言った。

 つまり、元の世界もリリカルなのはの世界だった可能性が高い。

 それに、前世と現世の一般常識に、特に違いは見当たらない。裏の世界、魔法や異能に関わりが無ければ、全く同じと言ってもいい。

 両方知らないという事は、余程の世間知らずという事になる。

 

 元々、私達の存在はその辺の通行人と変わらない。

 ジュエルシードに係わるとしても、事件の際に落ちてきた瓦礫で怪我をする市民Tが相応。

 どんなに良くても、大樹の後は描写されることの無かったサッカーチームのキャプテンやマネージャーと同じ、退治されて終了する立場。

 

 そこから主人公になりたいなら、努力をして必要なフラグを立てろと言っている。

 なのは達に嫌悪感を与えて、敵対フラグを立てている場合じゃない。

 翠屋に出入禁止なんて、絶縁フラグを立てている場合でもない。

 私にすら対処できない貧弱さで戦闘に参加なんて、死亡フラグを立てようとする場合ではもっとない。

 人を見下して、孤立フラグを立てるなんてもっての外。

 

 既に立ててしまっているフラグを全て折った上で、必要なフラグを今から立てられると思うなら、努力するべき。

 少なくとも私と師匠は、自力でフラグを立て、現れたフラグを回収してきた。

 簡単に追い越せると思わない方が良い。

 無理だと思うなら、物語だという事を忘れて、ここを現実として普通に生きるべき。

 

 なのはや魔法の存在を知らなければ、そして、海鳴市等の地名の違いが無ければ、この世界は前世と何も変わらない。

 この世界を物語と見下すなら、ジュエルシードが存在した前世も物語だと見下す必要がある。

 前世が現実だと思うなら、現世も現実。

 何も、変わらない」

 

「こんな……信じない、僕は信じないぞ!!」

 

 切れた。

 殴りかかってきた。

 主は軽く受け流し。

 

「がはっ!?」

 

 間宮萬太は背中から地面に放り出された。

 やっててよかった護身系柔術。

 だけど、説得は無意味としか思えない。

 

「足が動かない小学生の私相手に、その体たらく。

 これでも、まだ私は封時結界以外の魔法を使っていない。

 当然、攻撃魔法も知っているし、使える。

 

 この差が、現実。

 自分が主人公になって、何が出来るか考えた事は?

 

 ジュエルシードは対処出来る? 碌に魔法も使えないのに?

 なのはの心の傷は? 嫌悪感を与える事しか出来ていないのに?

 フェイトの孤独は? ナデポなんてものに頼ろうとしているのに?

 守護騎士は? 自分の身すら守れそうにないのに?

 闇の書は? 蒐集された挙句、暴走する姿を黙って見ているだけ?

 スカリエッティは? ナンバーズは? レリックは? レジアスは? 最高評議会は?

 

 思い上がるのは勝手だけど、行動の結果に責任を持つべき。

 例え主人公でも、それは変わらない。

 力を使い、異端と呼ばれても。

 力を使い、誰かを殺すことになっても。

 力を使い、誰かに恨まれても。

 最終的に、誰かに殺されても。

 最終的に、逃げ出したとしても。

 他人に無いモノを使い、主人公であることを望むなら、その過程や結果を受け入れる覚悟が必要になる。

 元の生活に戻れるなんて考えない方が良い。

 本当に、今の生活を捨てることが出来る?

 本当に、それだけの覚悟があると言える?」

 

「う……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「出口はあっち。間違えないで」

 

 間宮萬太、逃亡。

 マジ泣きである。

 外には全力で逃げ回る彼の姿が。

 

「これで心が折れてくれれば、エヴァが余計な物を背負わずに済む。

 悪い方に行く様なら、その時に別の対処法を考える」

 

 全面的に賛同。

 手段が確立出来れば、能力の強制封印も選択肢として検討。

 記憶封印も候補? 元々狂った思考。馬鹿になる程度の誤差は気にしない。

 当面は監視を続行。

 踏み台系の人の精神面の詳細調査も行うべき?

 思考誘導、認識阻害の可能性が濃厚。

 主の感情消失に類似する干渉方法の可能性もある。

 今日の調査では、それらしい反応を検出できなかった。

 残念。

 

「お願い、よろしく」




うん、なんだかやっちまった感のある回です。踏み台君を全力でディスっています。びっくりするくらいアコノが喋っています。黒いです。真っ黒です。変な転生者の排除=エヴァの役に立つ、と考えて遠慮なしです。
でも、世間体的には、殺したり脅したりするよりも穏便じゃないでしょうか。言葉の暴力が酷いですが、現実を突き付けているだけで嘘は言っていませんし。
そして、戦闘……? 実力の片鱗も見せていませんね。


ちなみに、変態(ロリコン)が何をやっていたかは、次の小話ズで書く予定というかほぼ出来てます。公開はだいぶ先(今のペースなら8月)ですが。
8話後書きの合わせ鏡と38話おまけ予定を小話ズ行きにする気になり、この2個だと2000字程なので書いてみたのですが……クーネだけで4000字を超えてるのは何故なんだぜ?
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