青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編33話 望んだもの

 と言うわけで、ゲートに到着したお姉様、セツナ・チェブルー、リンディ・ハラオウンの3人。

 目の前には、無表情で立つ成瀬カイゼと、宙に浮かぶ小ネズミのチクァーブがいる。

 

「……良く考えたら、先に呼ぶのがこいつらで良かったのか?」

 

「他の方々に聞かれる前ですし、都合はよろしいと思う次第でございます」

 

 お姉様は、重要な点に気付いた模様。

 微妙に信頼できるか分からない2人が先になった。

 

「僕としては好都合だよ。

 初めまして、エヴァさん」

 

「そういえばそうだな。初めまして、カイゼ」

 

「ええと……会うのは初めて、という事でいいのかしら?」

 

 そういえば、まだ会ってなかった。

 初めましてと挨拶するお姉様と成瀬カイゼを見て、リンディ・ハラオウンが不思議そうにしてる。

 

「いや、言葉を交わすのも初めてだ。

 お互いを監視していたから、ある程度は把握しているがな。

 それに、そいつの人柄は、そこの小ネズミが気に入っている。

 単純な危険人物と言うわけではないだろう」

 

「そう……それなりに信用できそうという事でいいのね。

 それで、何だか話したい事がある様だけど、何かしら?」

 

「ご明察、恐れ入ります。

 この男、成瀬カイゼも、アースラで手伝いをしたいそうで御座います」

 

「よろしく」

 

 不自然なほど丁寧な口調で、その実妙に偉そうな小ネズミ(チクァーブ)

 主並みに無表情系の成瀬カイゼ。

 一応協力関係にあるけど、信用できる要素がまるで見えない。

 

「そ、そうなの……えーと、実力はどれくらいなのかしら?」

 

 リンディ・ハラオウンは、受け流しの構え。

 右から左に。

 でも、ちょっと困った表情。

 

「魔力量はなのはに迫るものがあるが……まあ、経験と訓練は不足しているな。

 条件次第ではなのはに勝てる可能性があるかも、くらいか?」

 

「正面切っての戦いでは勝てない。

 その分、小細工には自信があるよ」

 

 実力の自己分析は正しい。

 でも、小細工?

 実態は、潜入と暗殺。

 何と言う堅い蛇。

 

「私も色々とやる事があるからな。

 ずっと変態(ロリコン)を構う事は無理だから、こいつに変態(ロリコン)の対策を頼むのもいい。

 こいつは、神出鬼没なアレを私よりも追えるぞ?」

 

 転生者の探知能力的な意味で。

 この点だけは、とても優秀な事を実証済み。

 

「なるほど……そうね、いいでしょう。

 基本的にはなのはさんと一緒に行動する事として、必要に応じてクーネさんの対策を行う、という事でいいかしら?」

 

「構わない。

 だけど、ロリコンは今、日本に行っていてアースラ内にいない。

 その場合はどうしていればいい?」

 

 実際は、秋葉原。

 情報源はもちろん転移ちょっと前の成瀬カイゼ。

 変態(ロリコン)を追いたくないし、追うのも大変。

 転移や幻影等々の、人を惑わす能力はとても高い。

 

「あら、居場所がわかるのかしら?」

 

「転生者限定で、居場所がわかる能力があるからね。

 だから、余程遠くへ行くか強力な妨害が無い限り、何処へ逃げられようと居場所を知る事だけなら可能だよ」

 

「凄いわね。だから、クーネさんの対策を任せられるという事ね」

 

 リンディ・ハラオウンは本気で感心してる。

 きっと、何処へ逃げられようと、という辺りが注目点。

 

「攻撃力は不足するが、追い回す事くらいは出来るから、私が来るまでの時間稼ぎくらいは出来るだろう。

 あいつがいない間は……そうだな、適当に訓練場を使わせてやってくれ。デバイスを渡したのは最近でな、練習を始めて間が無いんだ」

 

「そう。それなら、なのはさんと一緒に練習するのもいいのかしら?」

 

「そうだな。それもアリだろう。

 さて、そろそろ移動している3人も集まった様だぞ」

 

「そう。アレックス、転送を」

 

 そして、現れる人影3つ。

 

「ここがアースラの中?」

 

 主は、お姉様の方に近寄ってきた。

 

「うわー、とうとう来ちまったよ……」

 

 長宗我部千晴は、周りを見ながら、ため息をつきそうな勢い。

 主の車椅子を押すと言うか、引かれる形で近寄ってくる。

 

「へぇ……意外に普通ね」

 

 真鶴亜美は、何と言うか、遠足に来た小学生っぽい?

 興味津々で周りを見てる。

 

「ようこそ原作の重要施設へ、と言うべきか?

 まあいいか。このメンツが、私が連絡を取れる、まともそうな転生者だ」

 

「そう。意外に女性が多いのね」

 

「まだ接触していない者も多いが、男は何故か変なのが多いからな。

 アレをアースラに連れてくるとしたら……捕獲した犯罪者として、あたりが有力か?」

 

 犯罪者とオリ主様?

 普通に招待するのは有り得ない。

 

「そ、そういや人を殺した奴もいるんだよな。

 そんなにひでーのか?」

 

 長宗我部千晴が、ちょっと怯えてる?

 でも、長宗我部千晴の言っている殺人者は、目の前にいる。

 主が間になるように移動してるところを見ると、それには気付いてる模様。

 まともそうと言われた殺人犯よりも質の悪い人がいる事が心配なのかも。

 

「殺人の後で血まみれのまま街中を歩きまわって警察から逃げ回る羽目になった間抜けとか、この前アコノに絡んだ馬鹿は……常識が通じるわけがない、とか言っていたんだったか?」

 

「主人公に常識が通用するわけがない、だったはず。

 私が一般常識を指摘したら、そんな反論が返ってきた」

 

「要するに、自分が物語の主人公で、自分を中心に世界が回っていると錯覚しているらしい。

 こんな連中は、酷い以外に表現のしようが無いだろう?」

 

 ギル・ガーメスと、間宮萬太が現時点の警戒対象。

 東渚は、あまり動きが無い。正直よくわからない。

 

「うわぁ……」

 

 長宗我部千晴が、凄い勢いで引いてる。

 他の人達も、程度はともかく似たような印象を受けてる模様。

 

「随分と酷い事になっているのね。周囲の人達や、狙われる可能性のある女の子達は大丈夫だったのかしら?」

 

 だけど、真鶴亜美は普通に狙われそうな人を心配してる。

 別作品とはいえ登場人物に似た自分より他人を先に心配する辺り、いい人振りが半端ない。

 

「ニコポやナデポが有効に機能したところは確認できていないからな。

 それに、今は翠屋やらに人を置いている。連中が原作娘狙いで動いたことも、実際に少し絡まれたこともあるが、周囲の人物はまともだ。大事にはなっていないさ」

 

「そっちの対策も大変じゃねーのか?

 それをやってる合間に、私達に魔法を教えてくれてるんだろ?」

 

 長宗我部千晴の心配も、ごもっとも。

 人数が少ないなら、確かに大変。

 でも、私達も増員中。他の理由もある。

 

「問題ない。むしろ、お前達に自衛出来るようになってもらった方が気楽になる」

 

「最初は常識知らずの人達しか見付かっていなかった。

 まともな転生者が見付かって、エヴァは喜んでいた」

 

 主の……フォロー?

 ツッコミに思えて仕方がない。

 

「あー……いや、あんなのがあれ以上増えない事を喜んでいただけだからな?」

 

「ウソ。亜美が狙われそうだった時、エヴァが臨戦態勢になっていた事は知っている」

 

「ちょっと待て! それ以上言うな!」

 

 あら、言っちゃった。

 狙ってた人と、狙われてた人が揃ってる。

 変に隠すよりも、ここで言っちゃった方が後々平和かも?

 

「狙われそうだったって……転生者同士の諍い、と言っていた事なのかしら?」

 

 リンディ・ハラオウンが喰いついた。

 流れ的に、命に係わりそうな事態だったのは明らか。

 言い逃れは難しそう。

 

「あらあら、言っていいものかしら?」

 

 もちろん、真鶴亜美も事態は把握してた。

 困った顔で、お姉様を見てる。

 

「……下手に誤魔化すのも問題か。

 カイゼ、言える範囲で説明してやれ」

 

「分かった。

 僕は、暗殺者の組織で育てられたんだ。

 当然、暗殺の技術を叩き込まれていて、実際に人を殺したこともある。

 そんな組織から逃げ出して最初に見た転生者は、転生で得た能力で好き勝手をしていたんだ。

 分かりやすく言えば、初対面で何の繋がりも無さそうな異性を侍らせていた、かな」

 

「ニコポかナデポが機能していた、ということか?」

 

 これは初耳。

 お姉様もびっくり。

 お姉様に効いたら超危険。殺していてよかったと、成瀬カイゼの評価を上方修正。

 

「恐らくニコポだね。やたらと笑顔を振りまいていたし、1度だけど初対面の様な挨拶をした後にデートの様な行動をしていたのは見ていたよ。効果はだいぶ限定的らしくて、1時間も経たないうちに振られていたし、別れ際は随分と酷い口論をしていたけどね。

 だけど、その時の人を物の様に扱う物言いが、暗殺者の組織の人を連想させてしまってね。つい、殺っちゃったんだ」

 

「それが、1人目の女顔の男だな?」

 

「そうだね。更生する機会ぐらいは与えるべきだったかと、少しだけ反省しているよ」

 

「殺した事自体は後悔していない、という事でいいのかしら?」

 

 リンディ・ハラオウンも、何故かチクァーブと同じ点を気にしてる?

 好みが似ているのか、人格の考察材料か。

 

「人として最低だからね。

 生きるために盗みをしているストリートチルドレンの方が、遥かに同情の余地があるよ。

 その次に見た男も、同じように笑顔を振りまいていたね。特に異性は侍らせていなかったけど、その行動や発言は良く似ていて、つい、ね」

 

「つい、で人を殺したという事かしら?」

 

「暗殺者の組織に育てられたと言ったよね。そこでは、人を殺す事、人が死ぬ事は普通の事なんだ。

 この前隣で飯を食ってた奴が、今日任務に失敗してハチの巣になった。次は僕が誰かを殺しに行く。そんな感じの毎日だったよ。

 今考えると、心が麻痺して、人であることを諦めていたんだろうね。

 だけど、保母さんは殺さずに踏み止まれた。感謝するよ、僕は人だと再認識させてくれて」

 

「そうなの。それなら、普段通りに振る舞った甲斐があったというものね」

 

 随分物騒な話。

 だけど、真鶴亜美は受け入れた?

 なんという聖女属性。

 何だか、危機感が薄すぎる気も。

 主みたいな精神干渉……にしては、方向性が微妙で効果が薄いかも。

 治療や健康の転生特典を得た事の弊害?

 

(やはり、魔力の反応は無いんだな?)

 

 主、間宮萬太、真鶴亜美の3人共、精神操作を行っている様な魔力は検出できてない。

 だけど長宗我部千晴の例もあるから、発動中の魔法を完璧に隠蔽されている可能性も否定できない。

 無い事を保証することは出来ない。

 

(大丈夫、私は感情が無くても困っていない。

 いつか解明できれば、それでいい)

 

「そういえば、気付いていたと言っていたね。

 探し物の能力だったか」

 

「そうよ、なかなか便利に使えているわ。

 何かを探す事以外には使えない能力だけどね」

 

「それでも、使い方によっては強力だぞ。

 どのくらいの範囲を調べられるんだ?」

 

 お姉様が、能力の話に食いついた?

 確かに、明確な特典の詳細も気になる。

 

「うーん、半径で5キロくらいかしら?

 エヴァさんなら、普通に魔法で探せる範囲じゃないかと思うのだけれど」

 

 真鶴亜美の、お姉様の評価も気になる。

 力を見せてないのに、かなり高位の魔導師と思われてる?

 信頼は、エヴァンジェリン的な意味?

 

「確かに、探す事は可能だろうが……それでも、訓練せず、デバイスも使わずにそれが可能なら、強力な能力だと思うぞ。

 この際だ。初対面の相手もいるし、全員、自己紹介のついでに、話せる範囲でどんな特典を望んでどんな結果になったか言ってみるか?

 どの程度歪んでいるかの確認にもなるだろうし、気になっているだろう。特にリンディは」

 

「そうね。どれくらい特殊な能力を持っているのか、興味は尽きないわね」

 

 提督としての役職としても、聞き逃せないはず。

 リンディ・ハラオウンとしては、お姉様の提案は渡りに船。

 

「お前達も、構わな……興味が勝っている顔だな。

 まずは私からいくぞ。名前はエヴァンジュ。2500年以上前に作られた魔導具で、そちらの名は曙天の指令書だ。活動時間は20年少々だが……まあ、転生者としてはお前達より先輩だな。前世は大学生で男だったから、外見的には性転換をしている事になる。

 望んだのは、真祖の吸血鬼の様な能力、多くの知識、多くの友人だ。

 吸血鬼の能力は、2500年も眠れる程度の長寿さや再生能力が該当するだろう。魔法が使えるのも恐らくこれの影響だな。血を吸う必要も趣味も無いから、本当に能力だけらしい。

 知識については、夜天が集めた情報を受け取る能力がある。もう一人情報提供者がいるが変態(ロリコン)だ。無視するか、可能なら遠慮なく殲滅してくれ。

 友人は、チャチャ達がそうじゃないかと思っている。友という表現は微妙かも知れないが、この世界で目覚めてからずっと支えてくれている仲間だ。

 歪みと言うか問題は、主が必要な魔導具、それも夜天の妹という点か。人外になる事は想定内だったが……アコノが主だから良かったものの、変態や力に溺れるタイプだったらどうなっていたか想像もしたくない。今は闇の書と呼ばれている夜天と同じ目で見られる可能性が高い事も問題だな」

 

「魔導具で指令書……本、ですか?」

 

 セツナ・チェブルーがちょっと不思議そうに首を傾げてる。

 確かにイメージはし辛いかも。

 

「そうだな。ちなみに、こんな姿だ」

 

 ぽん、と音を立ててお姉様が本の姿に。

 

「うわ……直接見ると、やっぱ人じゃないってのはひでーな」

 

「本の姿を見ると、夜天の妹と言われて納得できる程度には似ているね」

 

 直接見た事の無かった面々は、やっぱり驚いてる。

 一番引いてるのは長宗我部千晴、何を考えているのか表情に出てない成瀬カイゼ。

 何故かチクァーブは納得の表情で頷いてる。

 それなりに見られた事を確認して、お姉様は人の姿に戻った。

 

「なら、次は私。

 改めて名前から言うと、小野アコノ、小学4年生。前世は未成年の大学生で、女だったから性転換はしていない。

 私が望んだのは、沈着冷静、若く綺麗でいたい、多くの魔法を使いたい。

 感情が無くなったから、冷静ではあると思える。

 この姿で不老になったから、若く綺麗も一応あっている。

 魔力はあって、エヴァから魔法を教わっているから、魔法も使える。

 広い意味では間違っていない。歪みは、冷静さが行き過ぎて感情を失った事だと思う」

 

「ふ、不老ですか!?」

 

 セツナ・チェブルーが驚いてる。

 普通は、有り得ない事態。

 他の人達も、概ね驚愕の表情。

 

「そう。エヴァは夜天の妹のような存在だけど、その主になった私は保護下に入って、不老になったらしい」

 

「つまり、エヴァさんの保護下に入れば、不老になることが出来るという事ね?

 それに、アコノさんの望みはエヴァさんがいなければ叶わなかったという事になるのだけれど」

 

 リンディ・ハラオウンは、お姉様の能力を探るつもり?

 でも、色々と残念。

 

「リンディが何を考えているか想像は付くが、私の従者になって不老化するのは、実質的に人間が使い魔になるのと変わらん。私に対する忠誠心やらを植え付けられるぞ? しかも、リンカーコアを失って魔法が使えなくなるおまけ付きだ。

 主はそうじゃないが、私の主になる者は感情暴走の洗礼を受けるから、廃人になるか死ぬかの2択だ。ユーノは知っていたはずだが……聞いていないのか? そういう事だから、感情を失ったアコノ以外は主になれん。2500年も眠る羽目になったのは、これが原因でもあるからな。

 アコノが私の主になる様に仕組まれていたとしか思えん」

 

「そう……つまり、1つの例外以外は、不老になるには色々なものを捨てる必要があるという事ね。

 その例外、つまりアコノさんを殺して主の座を奪うなんて事は、別の要因のせいで不可能。

 この理解でいいのね?」

 

「アコノを殺した阿呆を主にするなど考えられんし、そもそもアコノを死なせる気も無い。

 それに、感情暴走は主にする過程で発生するんだ。まともな精神状態で生き残ることが出来ればいいな?」

 

 感情暴走はチャチャゼロがやった時という条件付きではある。

 でも、嘘じゃない。お姉様の意識が無い時は唯一の手法。

 

「エヴァさんの事を報告するなら、これの警告も入れておいた方が良さそうね」

 

 リンディ・ハラオウンが、頭を押さえてる。

 色々と魅力的な危険物。

 扱いに困っていると予想。

 

「そうだな。その方が、阿呆が湧く確率も減るだろう。

 次は……さっきから驚いてばかりのセツナ、言ってみろ」

 

「は、はい。

 えーと、始めまして、セツナ・チェブルーといいます。多分中学生くらいじゃないかなと思いますけど、正確な年齢は不明です。

 前世は……自衛官でした。男だったので性転換しています。

 望んだのは、自由に空を飛びたい、剣術を使いたい、主人公達と肩を並べられるくらいの強さ、です。

 空は、見ての通り翼があるので飛べます。

 剣術は、ここに来る直前までは、刀で戦っていました。

 強さは……どうなんでしょう? よく判りません。

 こんな感じ、です」

 

「有り体に行ってしまえば、桜咲刹那っぽい何かを再現しました、だな。

 というか、自衛官で空を飛びたいという事は、戦闘機のパイロットにでもなりたかったのか?」

 

「はい。頭とか体力とか色々足りなくて、諦めちゃったんですけど。

 でも、男なら憧れませんか?」

 

「まあ、私も男だったから気持ちは解るが。

 セツナの問題点は恐らく、飛ぶための翼を持つことで迫害対象になる可能性が高い事だろう。今まで命懸けの生活をしていた事も、強くなるための代償かもしれん。

 次は、そうだな、さっき少し言っていた亜美、いってみるか?」

 

「そうね。

 改めまして、真鶴亜美といいます。みんなよりちょっと年上で、保育士として働いています。

 前世も保育士で、保母さんをしていました。子供好きなんです。

 健康な体でいたい、探し物を見つけたい、みんなの怪我を治したい、の3つを望みました。

 今までひどい病気になったことは無いし、迷子や無くした物は簡単に見付けられるし、怪我の治療も出来るしと、かなり素直に望みがかなっていると思っているわよ」

 

「少なくとも、見てわかる様な歪みが無いのは確かだな。

 というわけで、本人としては予想外の落とし穴にはまった、ちうたんだ」

 

「だからちうたん言うな!

 あー、長宗我部千晴、高校1年生だ。千雨じゃないしネットアイドルもコスプレもやってないから、ちうたん言うな。前世は普通に高校生の女だったから、丁度前世に追いついた感じだ。

 魔力感知と、探索とかで見付からないようにと、コンピュータを自由に使いたい、を希望して、 感知は……うん、わかり過ぎて、我慢できなくなった。

 ってゆーか、あんたの殺気と次元震で我慢の限界超えたんだ、どうしてくれる!」

 

 長宗我部千晴が、成瀬カイゼを指さして叫んでる。

 お姉様もいるし、一応反省済みとはいえ、殺人犯にその態度はどうだろう。

 

「そう言われても困るよ。

 むしろ、殺気を隠す技術には自信があったんだけどね」

 

 当の成瀬カイゼは、やれやれと肩をすぼめてる。

 確かに、魔法を使ったことに対して怒りを向けられても困る。

 

「魔力の殺気は全く消せていないぞ、暗殺者集団も大したことは無いな。

 ああ、千晴が探知魔法で見付からないのは、私が保証する。正直言って目の前にいる今ですら、光学系なら捉えられるが魔力探知系では無理だ。

 あまりにも反応が普通過ぎて反応のない空白地を探す事も無駄だし、渡したデバイスすら見付けられんから、相当だな。光学系と魔力探知系の差異を取って、ようやくおかしい事に気付くレベルだ。

 カイゼや亜美の能力だと……どうだ?」

 

「僕の能力では、見付けられなくもない、とは言えるね。

 ただ、他の人達に比べて特定しにくいのは確かだよ。今だと、アースラの中にいる事は確か、くらいの精度だね」

 

「そうね。近くにいる事は確実だけど、それが目の前かと聞かれると自信が無い感じよ。

 範囲内にあるのにここまで場所が特定できないのは初めてね」

 

「そ、そうなのか……?」

 

 長宗我部千晴が、唖然としてる。

 探知対策がここまで優秀だとは思っていなかった?

 実はデバイスを持っていても守護騎士に襲われる心配が無い事に、ようやく気付いた?

 

「だから、自分で転移するのはいいが、1人の時に転移してもらうな。

 座標の特定や転移中の保護に失敗して、石の中にいる、とかなりかねん」

 

 探知対策の副作用。

 位置が不明な相手を保護できるほど、転移魔法が優秀になってるとは考えにくい。

 

「げっ、マジか!?

 うあー、私の能力ダメダメじゃねーか……てか、来るときに車椅子を押さえててくれって言われたのは、こういう事かよ!」

 

「そうだな。それで、コンピュータはどうなんだ?」

 

「なんとなく使い方が分かるから、それじゃねーか?

 高校の入学祝いで携帯とパソコンを貰ったけど、説明書も読まずに何となくで使えてるしな」

 

「この能力だけは平和だな。

 次は、カイゼ。いってみるか?」

 

「分かった。

 成瀬カイゼ、現世の経歴はさっき言ったね。前世は今振り返ると黒歴史な30目前ニート男だよ。

 望んだのは、オーバーSランク魔導師になる事、転生者の居場所を知る能力、暗殺能力が欲しい、だね。

 特典としては魔導師になる事だけでもよかったから、他の転生者がいる可能性を考えて他の二つを決めたんだ。厄介な相手なら排除出来るようにね。

 魔導師としては訓練中だね。すぐにSランクになれるとは思えないけど、素質はあるんだろう。

 転生者の居場所は、余程遠くない限りははっきりわかる。少なくとも、今地球にいる人は全員把握出来るはずだよ。

 落とし穴は暗殺能力を望んだ結果の、この生まれなんだろうね」

 

「最後の落とし穴だけが問題だな」

 

「そうだね。前世を思い出した時には、失敗したと思ったよ。

 確かに、技術は降って湧いてくるものじゃない。それは納得できるだけに、ね」

 

「やっちまった、と言うところか。

 では、最後だ。謎生物になったチクァーブだな」

 

「我等でございますね。

 リンディ様、セツナ様、亜美様は初めましてでございますな。チクァーブと申します。

 前世はソフトウェアの開発会社でプログラマをしておりました、30過ぎの卑称魔法使いでございます。

 コンピュータやデバイスを弄ったり扱ったりする能力、大きな魔力、好きな場所に自由に移動する能力を望みましたところ、電子精霊に近い存在になった様でございます。

 魔力が予想よりも小さいという点は要求を満たしていないようにも思いますが、マイナスとしては人外という点が大きいでございましょう」

 

「ちょっと待て、デバイスを弄る、だと?」

 

 デバイスも?

 弄るの?

 聞いてない。

 デバイスを内部から弄る事が可能なら、凄い能力持ちという事に。

 移動能力も、それ自体が特典という事は電波すら不要な可能性も。

 

「はい、確かにその様に望んだ記憶がございます」

 

「……なら、これの中は見れるのか?」

 

 お姉様は、宝石型デバイスを出した。

 入門用とは言え、お姉様製。

 対策(プロテクト)は、一般的なデバイスより強固なはず。

 

「ふむふむ、綺麗な宝石型でございますな。

 それでは、少々失礼いたします」

 

 チクァーブの姿が、デバイスの中に消えた。

 

「……対策(プロテクト)が何の役にも立たんか」

 

 お姉様が唖然としてる。

 きっと、地球のコンピュータ技術者が電子精霊を知った時と同じ顔。

 

「いえいえ、最初はサンドボックスの様な場所に誘導されましたので、プロテクトは有効に機能していると見て良いと判断いたします

 少し話をした後で少し内部を見せて頂けましたが、なんとも美しい構成、美しく礼儀正しい知性でございました。地球のパソコンは継ぎはぎだらけであまり美しくありませんが、エヴァ様のデバイスは感動的でございます。良い物を見せて頂きました。

 弄る能力については、調べるにも時間がかかるでしょう。お互いに時間がある時にでも、ゆっくりと検証すべきでございます」

 

 出てきた。

 どことなく目が輝いてる。

 

「……よし、検証ついでに、お前も研究させろ。

 私の電子精霊はデバイスには無力だ。差を調べたい」

 

「ええ、構いませんとも。

 同胞が増えるのは嬉しいですからな」

 

 いいの?

 まさかのオープン戦略。

 罠? これは罠?

 本当に同胞を増やしてほしいだけ?

 

「そうか……そうだ、夜天にも入れるか?

 管制通信でもまともに話が出来ん。

 まだ封印は解けていないが僅かに反応がある。人格自体は目覚めている可能性があるんだが……うまく行けば話が出来るかもしれん」

 

「そういえば、先日試しておりましたな。

 あれも広い意味ではデバイスでございますし、試す価値は十二分でございます。

 都合の良い時に連絡を頂ければ、即参上いたしますぞ」

 

「ああ、頼むぞ」




現在仲間となっている転生者達の転生特典公開の回でした。全体的にハイスペックだと思うのですが、どうでしょう。
でも、今回の説明は本人が認識している範囲です。内容に勘違いや誤魔化しがあったり、本人も知らない事があったりします。
変態(ロリコン)ですか? やだなぁ、エヴァやアコノを含む幼女や少女の敵じゃないですか。


チクァーブの言っていた「サンドボックス」ですが、「好きにしてよい場所(砂場=サンドボックス)を用意して、それ以外(大切な物や壊れやすい物)を触らせないようにする」みたいな感じのものです。
ブラウザでプライバシー保護のために使われたりしている技術ですよ。よくセキュリティホール(大事な物に触られたりするような抜け道)が見付かる問題児ですが。


ちなみに、この回は予約投稿です。しばらくPCを使えない可能性が高いので、感想の返信や修正は後日(多分連休明け)となります。


2016/04/03 察しが良いでございますな→ご明察、恐れ入ります に変更
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