「残り6個をどうするかでしたね。
現実的に考えれば、1番目のプランは時間や危険性を考えると厳しいでしょう。当初は3番目のプランを目標として、失敗した場合に2番目のプランに移行するのが一番でしょうね。フェイトちゃんが無茶をしなかった場合に、1番目のプランを考慮すれば充分です。
もちろん、フェイトちゃんや時の庭園の捜索も並行して行うと言う形が良いのではないでしょうか?」
それ何て異常事態?
「そうだな。フェイトが無茶をしてから動くのは2番目と3番目のプランで共通だ。プレシアの攻撃を防ぎ、逆探知に成功し、フェイトを捉えられた場合のみ3番目が実行出来る。
2人の捕獲に失敗した場合は、仮にアルフやフェイトの転移で時の庭園の場所を特定出来たとしても、その時点で突入するのは止めた方がいいだろうな」
「そうですね。特にフェイトちゃんがジュエルシードの確保に失敗した場合は、プレシアさんに殺される可能性すらあるでしょう。
可憐な少女が殺される場面を見るのは忍びないですから。その意味では、ジュエルシードの確保は優先せず、最悪の場合は全て渡してしまう事も視野に入れて良いかもしれません」
「黙れ
やっぱり
考察の根拠は通常営業だった。
「そうね……理由はともかく、殺される可能性は否定出来そうにないわね。ジュエルシードをあえて渡すのは危険そうだけれど、無視して良い選択肢ではなさそうね。
1番目のプランは、海の中のジュエルシードを封印するだけなら、なのはさんとクロノで何とかなりそうだけれど。
カイゼさんやセツナさんは、実力的に手助けは難しいかしら? それに、エヴァさんやアコノさんもカートリッジを使っていいなら戦力としては問題無さそうに思うし」
封印だけに限定すれば、きっと可能。
でも、前提条件的に困難。
「足が不自由なアコノはなるべく前線に送りたくないし、私は研究者で戦闘を想定した訓練は受けていない事はユーノやなのはに聞いているだろう?
それに、カートリッジはどうしても隙が増えるし、所持数の問題もあるからな。この場合では足手纏いになりかねん」
「プレシアさんやフェイトちゃんの横槍はあると考えるべきでしょうね。絶好の好機と見えるでしょうし、フェイトちゃんは必死ですから、経験の浅い2人は遠慮なく叩き落されるでしょう」
鬱だ。
「最悪の場合、融合暴走する6個のジュエルシードを相手にする羽目になるしな。そうなってしまえば、なのはやクロノを温存する事も難しくなる。
こっちの主力2人が疲弊したところでSSとAAAの魔導師に手出しされたら、不慣れな2人を温存出来ていたとしても、話をするまでもなく全て奪われる可能性が高いだろうな」
「やっぱりそうなるわね。
となると、クーネさんの言う通り、可能ならば3番目、無理だったなら2番目が一番無難という事になるのかしら」
原作のイベントを前提とすれば、こうなる。
原作を無視した作戦を誰も言わないけど、他にプレシア・テスタロッサを釣る方法が見当たらないとは言えそう。
「少なくとも、私はそう考えた。
現時点でフェイトを追うことが出来ていれば、無茶の前に時の庭園の場所を探る事も可能かもしれないが……出来ていない以上はやむを得ん」
「ええ、うまく隠れられているわ。なかなかに上手みたいね」
アースラは、フェイト・テスタロッサを捉えられてない。
だけど、お姉様は情報を出す気が無い。
先に突撃してもプレシア・テスタロッサの身柄を確保しにくいから仕方ないとはいえ、時間稼ぎにしかならない気もする。
「それを踏まえた上での、さっきのプランだ。
もっとも、多少の準備期間があるとは言っても、SS級の魔導師の攻撃を受けることになる。
耐え切った上で、攻撃元を探る必要があるが……可能か?」
「なかなか難しい事を言ってくれるわね。
簡単なわけがないでしょう?」
むしろ、困難と言っていい。
StrikerSで八神はやてが空港を凍らせたり、広域攻撃したりしていたのは伊達じゃない。
本気なら何がくることやら。
「一応、フェイトとアースラへの同時攻撃だ。
1箇所に集中するわけではないが……厳しいだろうな。
一応、私はなのはの方に行くつもりだ。あいつらだけで防ぐのは難しいだろうからな。
可能なら、座標特定もやってやろうじゃないか」
「あら、そんな事も出来るのかしら?」
「可能なら、と言っただろう。成功する保証は出来んよ」
「エヴァちゃんですからね。
想定外の事が起きたり、うっかり何かを仕出かしたりしない限りは大丈夫でしょう」
何故。
「貴様の意味不明な信頼は、どこから来るんだ?」
「嫌ですね、愛ですよ、愛」
「
「まあまあ。とりあえずは、防御系の強化が必要かしらね。
フェイトさんがいつ頃動くか、原作の知識としては分かるのかしら?」
リンディ・ハラオウンの仲裁。
というか、話題ずらし。
「アースラに来てから10日目ぐらいのはずだ。数日中、といったところだな。
早ければ……夜中に来た日を1日目とすると、明日か?」
「ずいぶんと期間が無いわね。
少しゆっくりしすぎたかしら?」
「10日を数えてみると、思ったよりも時間が無いな。
だが、今からでも、出来るだけ手は打った方がいい」
「そうね。エヴァさんは、セツナさんやカイゼさんへの指導かしら?」
「今日はもう休ませた方がいい。次の訓練は明日だな。
すぐになのはと並んで戦えるレベルになるのは無理だろうが……闇の書対策で本格的に動き始めるまでには使い物になってほしいものだ」
「2人とも、今はもう休んでいますからね。
慣れない環境という事もありますから、あまり急ぐのも良くないでしょう」
「なぜ貴様は2人が休んでいると分かるんだ!」
「情報収集の一環ですよ。
ああ、ご心配なく。男色趣味はありませんし、セツナさんも鑑賞対象としては期間が無さすぎですからね。
なので、2人には何もしませんよ」
「2人に限らず貴様は何もするな!」
「大丈夫ですよ。
イエスロリータ、ノータッチ。
紳士として当然の嗜みです」
「何が紳士だこの変態!」
お姉様の拳が空を切った。
「まあまあ、落ち着いて。
でも、転生者の人達はベルカ式、それも
戦力はあるに越したことは無いのだけれど……」
「私はそれ以外教えられんし、お前達も余裕は無いだろう?
ミッド式を教えてくれるなら私は喜んで学ぶが、もう少し余裕がある時に頼みたいところだな」
「そうね、時間や人手の余裕を考えると、少なくともこの事件の目処が付いてからになるわね。
事件が終結した後はどれくらいここに滞在するかも解らないし……その意味では、確実にエヴァさんという先生が確保できる真正古代ベルカ式にするのは、悪くない選択かもしれないわね」
余裕はアースラ側、正確には教師役に必要だし。
お姉様と言うか、私達は何時でも情報収集の構え。
「まあ、慌てる気は無い。のんびり知っていくさ」
「本来、時間はいくらでもありますからね。
今は目の前の緊急事態が放置できないだけでしょう?」
「さすが不老、と言ったところかしら?」
「今のところはミッド式の知識が無くてもそれほど困っていない、という事も大きいがな。
さて、まずは明日に向けた準備だ」
「そうね、そうしましょう。
エヴァさんにも部屋を割り当てておいたから、休むならそこを使ってもらっていいわよ」
「そうか、助かる」
◇◆◇ ◇◆◇
翌朝。
世間は連休も終了し、平常の生活へと戻る頃。
主は平常の、学校へ通う生活へ戻った。
高町なのははベッドの上で3つのジュエルシードをくるくると回し、リンディ・ハラオウンはクロノ・ハラオウンやエイミィ・リミエッタと防御方法の検討をしてた。
そんな朝のひと時、アースラの部屋で起きた直後風のお姉様の元に、チクァーブが現れた。
ちなみに、お姉様は幻影を残して別荘に行っていただけ。仮に部屋の様子を見られていても眠っていた様に見えたはず。
この部屋に関しては監視機構を制圧済みだけど、稼働させる意思が見られない以上は、黙って情報を取る気は無くなっていると判断して良さそう。
「今度は、寝起きか。
もう少しTPOを考えられんのか?」
「いえ、興味深い情報を入手いたしました。
可能な限り早くお伝えした方がよろしいかと考えた次第でございます」
お姉様が呆れてる。
でも、チクァーブを誘導したのは私達。
とても重要な情報。
「ほう……どこで、何を見た?」
「管理局と、とある民間企業の記録でございます。
内容が少々多いので、デバイスか何かに転送してご覧いただくのがよろしいかと推測いたします」
「そうか。デバイスは……昨日入ったあれでいいか」
「おお、あれは美しいものでございましたからな。
相応の配置でお渡しさせていただきますぞ」
お姉様が宝石型のデバイスを出すと、チクァーブが分裂して片方がデバイスに消えていく。
話は残った方が継続する模様。
「別に、確認できる状態であればいい。
ところで、ここに来たという事は、アースラのシステムは掌握済みか?」
「やはり、中央部分は堅牢でございますな。
ですので、末端部分を支配下に置くことが可能な程度でございます」
「そうか。感覚的で構わんが、プレシアの攻撃を受けた時、防ぎ切るだけの防御力がアースラにあると思えるか?」
「時の庭園の性能にもよるでしょうが、アースラの防御機構だけでは心許無いと推測いたします。
恐らく、クロノやリンディによる防御も併せて行う必要があると愚考いたします」
私達も同意見。
プレシア・テスタロッサが本気でアースラを沈める、つまり命を削る覚悟でSSの能力を全力行使すると仮定するなら、クロノ・ハラオウンとリンディ・ハラオウンが全力で防御に入っても不安が残ると予想。
フェイト・テスタロッサへの攻撃があるならそこまでの攻撃は無いはずだけど、アースラの防衛が優先になるはず。
「ふむ……やはり、クロノは出ないと考えるべきか。お前達も防御に回した方が無難か……?」
「海のジュエルシード回収でございますか。
攻撃があると言ってある以上、クロノは防御に回ると考える方が自然でございますな」
「海は私が行くつもりだから、変な乖離が無ければ何とかなるか。
攻撃を防ぎ、座標の特定を試し、うまくアルフを止めて、フェイトを保護する。
なかなか難易度の高いミッションだ」
「時の庭園でございますか。
うまくやれば、我等で捜索する事も不可能ではないと推測いたしますが」
確かに不可能じゃないというか、場所は既に判明してる。
でも、それは失敗した際に切る札。先に見せる札じゃない。
「いや、場所は分かっているんだ。
それを言っていないから、ここで探知した風に装うために、試したという事実が重要でな」
「なるほど、そういう事でございますか。
ジュエルシードの封印作業は、手伝いが必要ですかな?」
「いや、不要だ。お前は防御に回ってくれ。
そもそも、まだ魔法に慣れていないだろう?」
「意外に何とかなるものでございますな。
分体も出して練習し続けましたところ、行使に関しては特に支障なく可能になったかと考える所存でございます」
私達と同じやり方?
分体の能力次第では、有効な手法。
「経験の共有か……便利に使っているな。
それなら、時の庭園に行く場合に手助けを頼むかもしれん。
分体を増やせるのだろう?」
「可能でございますが、頭数を増やすのは戦力的に見て魔力の供給に不安がございます。
我等自身が生み出せる魔力は、分体をいくら増やそうとも合計量に変化が無い様でございます。
どこか1か所の手助けであればさほど問題はございませんが、複数の場所でございましたら、何らかの方法で魔力の供給を受ける必要がございます」
私達より、この点は性能が低い?
リンカーコアを分割してしまう感じにも聞こえる。
「プレシアの様な外部供給が必要という事か……
供給する場所は、現場である必要はあるのか?」
「遅延や安全性を考えますと近い方が望ましい事は確かでございますが、何体も経由する事で遠隔供給をする事は可能でございます」
(空きの魔導炉か人工リンカーコアはあるか?)
別荘に、予備の魔導炉は複数存在。
但し出力の低い小型のもの。瞬間最大出力はAAクラスの魔導師程度。
それでも、持ち出すのは場所的にも作業的にも困難。
人工リンカーコアは、私達の装備や武装としては存在。
保有するリンカーコアを渡せる状態に加工するには、若干の時間が必要。
Sクラス以下なら、昼過ぎには準備可能。
(そうか、分かった。
昼過ぎなら間に合うだろうから、Sクラスを1個と、AからAAA程度のを10個で充分か。
準備を頼む)
「それなら、人工リンカーコアを準備する。
少し時間がかかるが、後で妹達から受け取っておいてくれ。
魔導炉より移動が簡単なはずだ。大切に使ってくれよ?」
「おお、それは有り難い事でございます。
末永く使わせていただきます」
◇◆◇ ◇◆◇
その後、人工リンカーコアをチクァーブに引渡し完了。
内訳はSクラスを1個、AAAクラスを2個、AAクラスを3個、Aクラスを5個の、計11個。
同数のデバイスも併せて渡したため、チクァーブの総戦力が物凄い事になる予定。
チクァーブは大半をアースラに持ち込み、お姉様の指示を待つ模様。
その頃のお姉様は、チクァーブが持ち込んだ資料に目を通して、ため息をついてた。
感想を一言で言えば、これはひどい。資料の書き方ではなく、資料が示す事実が。
プレシア・テスタロッサの身柄確保には役立つ可能性のある内容。無下に出来ない。
その後、お姉様はセツナ・チェブルーと成瀬カイゼに魔法を教えつつ、気に関する観察を開始。
セツナ・チェブルーはちょっとした行動でも使ってしまっている模様。
至近距離でじっくりと見る事が可能な、この機会は逃さない。
(やはり、魔法を使っていない場合にも魔力の反応があるな)
測定誤差とは考えられない水準。
高町家や月村家の人達と似た現象。
リンカーコアが強力な分、紛れやすい。
誤魔化しやすいのはいい事だけど、観察には向かない。
(リンカーコアが活性化していない状態での魔力反応……肉体や魂の変換能力を使用している、という事か? だが、このレベルの魔力でここまで効果が出せるとは考えにくい。低魔力での身体強化技法に近いのか……?)
この仮説では、剣技の説明が付かない。
見せてもらった雷明剣は、明らかに観測魔力に対して効果が大きすぎた。
高効率な技法としても、薪ストーブで飛行機を飛ばすような効率が要求される。
不可能と言い切る事は出来ないけれど、極めて困難とは言える。
使用魔法の隠蔽技術と言われた方がまだ現実的と思えるけど、2度目はAMFの影響下でも同威力という結果を出してる。魔法でない事だけは確実。
(未知の何かを使用する際に若干の魔力も発生すると考えるべきか、魔力と何かを併用していると見るべきか……いや、魔力を使うなら魔力結合を無効にするタイプのAMF内では影響が出るはずか。となると、魔力は飾りか副産物という事になるが……
手掛りは目の前にあるのに、ままならんな。調査用に記録や立ち会い無しで訓練室を使うのも許可されているし、どの程度の飛行能力があるかも気になるから、一度模擬戦をやってみるか。ここでは飛び回るには狭いから、別荘に招待して思う存分使ってもらうのもありかもしれんが……)
別荘を公開していいなら、それも手段として有効。
現時点で別荘に行ったことがあるのは、主のみ。
(……そういえば変態は最初、別荘を作ったと断定していなかったか?
リーナ以外には誰にも漏らしていないはずだが……)
ネギまとお姉様の研究内容を知っていれば、別荘を作ろうとしていた事は予想できるはず。
鎌をかけられた可能性も。
主様と宵天が接触した情報は無いけど、お姉様が完成するまでは何らかの方法で情報を受け取っていたはず。それを利用して会話が可能だった?
(分からんが……リーナは宵天が転生者だという事を知っていた可能性は高いだろうな。
私にそれを隠していたのは、厳しさか優しさか……)
夜天も宵天も、お姉様や私達は会う機会は無かった。
お姉様が管制機能を持っているのに話した事も無かった以上、恐らく意図的。
変な望郷の念に駆られるのを避けたと考えるのが自然かもしれない。
(……そう、か。
私はリーナにとって最後まで子供のまま、信じられる相手にはなれなかったのか……)
主様が最後に責は自分にあると言っていたのは、お姉様が大切だったからと思える。
大切だったからこそ、言えなかった事もあるはず。
(……今となっては、真相は闇の中か。
ところで、今の空間生成関連技術は、どの程度広まっていそうだ?
デバイスの格納領域が近いと思うが……レベルによっては、別荘を知られるのも危なそうだ)
生活可能なものが実用化されているかは、日常生活に関する情報が不足している為に不明。
使われていると言えるだけの根拠は見付けてない。
公開した際にどんな問題が発生するか分かってない。
誰を信用するか。どこまで信用するか。
現状では、これが重要。
いっそ、別荘とは別に体育館の様な空間を作成する?
別荘に地下施設の様な場所を作って、そこに誘導するのもあり?
結界に覆われた特殊な部屋と説明すれば、言い訳は可能?
(色々と問題が山積みだな……どうしたものか…………)
気の調査ですが、未知のものにエヴァや妹達も苦戦中です。
原理不明なものを見ただけですぐに理解出来るほどぶっ飛んだ優秀さじゃありません。
ちゃんと、手順を踏んで理解しようとします。
せっちゃんが得た力、AMFの影響を受けない剣術。
魔法じゃない(魔力を使ってない)ので、魔力結合やら術式干渉やらと言われても影響が出ないだけですが。しかも、まだ無印(A’sも混じってますが)なので原作に関係ないです。StrikerSならもっと活躍できるのにね。
なお、実験で使用した“魔力結合を無効にするタイプのAMF”は、夜天の情報にあったミッドチルダ式です。AAAランクの魔法防御(NanohaWikiより)で、StrikerSでスカさんが使っていたものです。ちなみに、エヴァ&妹達が作った中では虚数をまき散らして術式を崩壊させる虚数空間再現タイプが最も強力でした。
2017/04/25 AA→AA に修正