青の悪意と曙の意思   作:deckstick

55 / 162
無印編37話 地雷原

 4人を回収して、アースラに戻ったお姉様。

 防御の中心だったクロノ・ハラオウンや、補佐をしてた転生者3人もそれなりに消耗してる。

 お姉様の傷は血が止まった程度。今は全員の回復を推奨。

 

「済まないリンディ。予想よりも攻撃が苛烈で、プレシアがいる正確な座標までは調べられなかった。

 大体の目処ぐらいは付けたが……特定出来たか?」

 

 可能ならやると言っていた事に関しての話。

 エイミィ・リミエッタの尻尾掴んだ発言も確認済みで、その後の対処も見てたから答えを知っているけど、そのまま放置は良くない。

 

「ええ。物質転送のおかげだけれど、何とかなったわ。結果だけ見れば成功ね。

 あまり好ましくはなさそうだけれど、武装局員を時の庭園に送ってあるから時間を稼ぐことは出来るでしょう。それに、なのはさんが集めたジュエルシードはアースラにあるから、全てが奪われたわけではないわ。その点は安心して。

 それよりも、こちらがアースラと5人の魔導師で防いだ攻撃を耐え切ったエヴァさんは相当無茶をしたでしょう? まずは治療が必要ね」

 

「すぐにでも庭園に行きたいが、お前達も消耗が酷いか……やむを得んな。

 もし局員がプレシアの所まで行けても、それ以上奥に踏み込ませるなよ? 恐らく碌な事にならんからな。

 ああ、お前達も治してやるから、全員集まれ。領域魔法だから、範囲に入れるだけ入らないともったいないんだ。

 ほら、そこの犬耳。お前もだ」

 

「ア、アタシもいいのかい?

 ていうか、アンタはいったい……」

 

 アルフが、何だかオロオロになってる。

 管理局に捕まって、真っ先に治療すると言われるとは思っていなかった模様。

 むしろ、お姉様の立場が気になってるらしい。狼と言われてない事を棚の上に放り投げてる。

 

「お前も入れと言っている。私は今回の事件に協力しているモノで、管理局の人間じゃないから立場なんかは気にするな。

 持続型でゆっくり治すタイプだから、完治するまで範囲から出るなよ?

 いくぞ。ロードカートリッジ、癒しの大地(Land der Heilung)

 

「エ、エヴァ! その腕でこれ以上カートリッジを使ったら……」

 

 人数が多いからちょっとカートリッジを多めに投入。お姉様は傷口を開いてちょっと出血。

 クロノ・ハラオウンが、慌ててる。

 高町なのはの目を素早く塞ぐユーノ・スクライアはいい動き。

 司令部でやるには、やっぱり刺激が強い?

 でも、そろそろ慣れてほしい。

 

「心配するな、自分の治療も兼ねているんだ。

 それに、6発程度ならそこまで大した負荷にならん」

 

「そ、そうか……」

 

 でも、出血。しかも、ちょっと涙目。

 明らかにおかしいけど、クロノ・ハラオウンは見なかった事にした模様。

 

「それなら、その間に少しお話をしましょうか。

 初めまして、フェイトさん、アルフさん。

 私は時空管理局艦船アースラの艦長、リンディ・ハラオウンよ。

 ああ、そんなに怖がらなくてもいいわ」

 

「僕は、執務官のクロノ・ハラオウンだ。

 君達の事情は、ある程度知っているつもりだ。無罪放免とはいかないかもしれないが、必要以上の罪を問う気は無いよ」

 

 管理局としてはこの場の上位2名、つまり、リンディ・ハラオウンとクロノ・ハラオウンは、事情聴取開始?

 事情聴取と言うよりは、職務質問?

 リンディ・ハラオウンは、ニコニコと笑ってる。

 クロノ・ハラオウンも、威圧する気は無い模様。比較的穏やかな表情や口調で話してる。

 

「ついでに朗報だ。

 私の予定でうまく行けば、無罪放免も有り得るぞ?」

 

「エヴァ、一体何をするつもりなんだ?」

 

 お姉様の言葉に反応したのは、やっぱりクロノ・ハラオウン。

 どう見ても、訝しんでる。

 

「言っただろう?

 管理局に踊らされた哀れな女性を助ける、とな」

 

「へ? いや、えーと……どういう事だい?」

 

 アルフは、理解出来てない。

 オロオロのまま。

 フェイト・テスタロッサは固まってる……と言うより、落ち込んだまま。

 

「なに、私にも事情があるだけだ。

 そういうわけだから、大人しくした方が良いぞ。

 下手に暴れたり逃げようとしたりしたら、必要のない罪が増える事になる。そこまでは私もカバーできん」

 

「えっと……その……」

 

 アルフは、やっぱり理解できてない。それでも落ち込んだままのご主人様(フェイト・テスタロッサ)に代わってがんばって理解しようとしてる辺り、忠犬振りが光ってる。

 狼だという意見は封殺。

 

「今は無理に理解しなくていい。立場を悪くしないために変な事をするな、程度の理解で充分だ。

 とりあえず……なのは、治療が終わったらフェイトと一緒に居てやってくれ。

 ああ、なのはは地球在住の現地協力者だ。局員じゃないから、少しは気が楽だろう?」

 

「そ、そうかい……

 だけど、管理局の人間じゃないアンタが、そんなに指図してていいのかい?」

 

 気付いちゃった。

 アルフに余計な事を言われた。

 

「ふむ、そういえばそうだな。

 リンディ、何か問題のある指示はあったか?」

 

「そうね……私達の許可を得ていない事以外の問題は、特に無いわね。

 だけど、ここは時空管理局の艦船の中だから、もう少し私達を立ててくれると助かるのだけれど」

 

 呆れられてる?

 諦められてる?

 リンディ・ハラオウンは、わざとらしくため息をついてる。

 

「確かにそうだな、すまん。

 まあ、そんなわけだ。そう悪い事にはならんはずだから、リンディ……この船で一番偉い提督の指示に従ってくれ。

 フェイトも、今は大人しくしていろ。その方が、プレシアと話す機会も作りやすいはずだ」

 

「う、うん……」

 

 たいへんたいへん。

 プレシア・テスタロッサが、レイジングハートにかかりきり。

 持っているはずだから出せ、持っていない、で言い争ってる。

 相当苛立ってる。部屋から出てこない。

 このまま局員が奥に向かうと、先にアリシア・テスタロッサを発見される可能性が。

 

(プレシアの部屋に誘導出来ないか?)

 

 現場では無理。

 玉座の間の奥に、アリシア・テスタロッサがいる。

 横側の部屋にプレシア・テスタロッサ。

 入ってすぐ見えるのは、玉座の後ろの扉。

 それを無視させるのは困難。

 強力な幻影や精神干渉は、警報に引っかかる。

 強力じゃないのは、局員に見破られる可能性が高い。

 玉座の間近辺の警備システムは油断出来ない。

 

「……フェイト。私も、プレシアと話がしたいんだ。

 どこにいる可能性が高いか、教えてくれないか?」

 

「……多分、玉座の間か、横の私室だと思う。

 それ以外だと、奥の研究室かな……」

 

 お姉様、ナイス判断。

 フェイト・テスタロッサの回答も理想的。

 ついでに、不意を突いた情報と質問だからか、フェイト・テスタロッサが立ち直り気味に。

 話をしたいだけで、捕まえるとかじゃないのが良かった?

 王座横の私室に誘導を。

 研究室に向かえば、アリシア・テスタロッサが見付かってしまう。

 

「そうか。リンディ、まずは玉座の間か私室の方を調べてくれ。

 研究室は地雷臭がプンプンするぞ」

 

「危険な橋は渡らない方がいいという事ね。

 そうね、フェイトさん。プレシア女史の私室にはどう進めばいいか教えてくれないかしら?」

 

「うん。えっと……」

 

 それからは、フェイト・テスタロッサが誘導。

 無事、局員はプレシア・テスタロッサのいる私室の方へと到達。

 アースラのサーチャーもいる。司令部からも様子が見える。

 時空管理法違反及び管理局艦船攻撃容疑で拘束する、と言ってる。

 逮捕する、ではないらしい。

 プレシア・テスタロッサはレイジングハートの方を向いたまま。

 表情がやばい。

 切れた?

 

『私達の邪魔を、しないで!!』

 

 プレシア・テスタロッサ、振り向きもせず雷撃発動。

 あっさりと局員全滅。

 ぎりぎり、死者はいない?

 

「いけない、局員たちの送還を!」

 

「りょ、了解です!」

 

 リンディ・ハラオウンの指示で、エイミィ・リミエッタが送還作業開始。

 やられちゃった。

 経緯は違うものの、なんだか原作で見たような光景。

 

「やれやれ、結局こうなるのか……

 私が直接行って話をするから、ゲートを開いてくれ。

 お前達はどうする?

 話をする時は結界を張るつもりだから、話を聞きたいなら一緒に行く必要があるぞ」

 

 お姉様がため息をついてる。

 プレシア・テスタロッサとの会話は、穏便な始まり方が困難になった。

 特に、管理局との関係において。

 

『たった12個のロストロギアでは、辿り着けるかどうかは分からないけど……』

 

 プレシア・テスタロッサのこのセリフは……

 11話?

 フェイト・テスタロッサの心が折れる話?

 

「まずい! モニターを切れリンディ!!」

 

『もういいわ……終わりにする。

 あの子を亡くしてからの時間も、あの子の身代わりの人形を娘扱いするのも。

 聞いていて? 貴女の事よ、フェイト』

 

「何をしている、モニターを切れと言っている! 記録ぐらい後から確認出来るだろう!!」

 

「だ、駄目! サーチャーが浸食されてる!!」

 

 エイミィ・リミエッタが不思議な事を叫んでる。

 ……あれ? 本当だ。

 管理局の監視システムが、プレシアに乗っ取られてる。影響範囲は、ほぼ司令部まで届く勢い。

 ついでに、アースラから情報を逆流させてる。

 恐ろしく高度な技術。でも、冗談ではなく命を削る行為。

 条件付きとはいえ、流石後先を考えないSSクラスの大魔導師。

 

「何だって!? 何て技術の無駄遣いを!」

 

 お姉様もびっくり。

 でも、手法の確認は完了。侵入や侵入元の隠蔽が不可能な、真正面からの侵食。

 こそこそ使うのは無理。残念。

 

『せっかくアリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。

 役立たずでちっとも使えない、私のお人形。

 限りなく蘇生に近い技術のはずだった、クローン技術のプロジェクトF.A.T.E。

 でも、失ったものの代わりにはならなかった。作り物の命は、所詮作り物。

 フェイト。貴女は私の娘じゃない。ただの失敗作。

 だから、貴女はもういらないわ。どこへなりとも消えなさい!』

 

「もういい、それ以上喋るなプレシア!

 今フェイトを傷付ける意味など無いだろう!!」

 

 お姉様の叫びは、プレシア・テスタロッサにも聞こえているはず。

 でも、何の反応も無い。

 

『いいことを教えてあげるわ、フェイト。

 貴女を作り出してからずっとね。

 私は貴女が、大嫌いだったのよ』

 

 言っちゃった。

 フェイト・テスタロッサが倒れた。

 目から光が消えてる。

 高町なのはとアルフが支えているけど、原作並みの廃人っぷり。

 

「介入してもコレは変わらんのか!?

 どう足掻こうが未来は変わらんとでも言うのか!!」

 

 お姉様は悔しそう。

 でも、少なくともフェイト・テスタロッサへの集束砲撃の洗礼は回避した。八神はやての状況も大きく変わってるから、未来は変えられるはず。

 アースラのサーチャーが崩壊した。言いたい事を言い終わって侵食が止まった事で、ようやく強制停止命令が効いた模様。

 アースラの司令部は、プレシア・テスタロッサの姿を確認出来なくなった。

 

「大変! 屋敷内に、魔力反応多数!」

 

 傀儡兵出現。数は、たくさん。

 ジュエルシード、発動開始。

 プレシア・テスタロッサは、高笑いしてない。

 何というか、悲壮?

 

「あの阿呆が、余計な事を!」

 

「エヴァ、どこへ行くつもりだ!」

 

 お姉様が、治癒効果の続く場所から出た。

 腕の出血は止まってるけど、クロノ・ハラオウンは慌ててる。

 

「あの阿呆を止めに行くに決まっているだろう、放置すれば次元断層だぞ!

 カイゼ、セツナ、チクァーブも行くぞ、傀儡兵相手に盛大に暴れてくれ!」

 

「予定通りと言うか、予想外と言うか。

 だけど、いい機会だ。全力でやるよ」

 

「が、がんばります!」

 

「行動自体は、元々の指示通りでございますな」

 

 3人は、回復もやる気も充分。

 今後の活躍にご期待下さい。

 

「アタシも行くよ! あの女を一発殴ってやらないと気が済まないんだ!」

 

 アルフが滾ってる。

 微妙に10話でプレシア・テスタロッサに喧嘩を売る直前のアルフっぽい。

 

「忠犬は忠犬らしくフェイトの側にいろこの阿呆!

 お前がやるべきは、復讐や八つ当たりではないはずだ!」

 

「だけど、あの女を許せるもんか!」

 

 何だか、お姉様とアルフが喧嘩腰になってる。

 お姉様の言ってる事は正論だけど、言い方がきつい。もっと落ち着くべき。

 高町なのはにも声をかける事を推奨。

 

「……すまん、感情的になり過ぎた。

 フェイトを安心させられるのはお前だけだ。

 なのは、お前も今はデバイスが無いし、フェイトに直接手を差し伸べたアースラ関係者はお前だけだ。

 2人とも、今はフェイトの側にいてやってくれ。今のフェイトは……正直、あまり見たい状態じゃない」

 

「そ、そういう事かい……解ったよ」

 

「う、うん……」

 

 アルフは納得してくれた模様。

 高町なのはは、しぶしぶ? デバイス無しでは戦力にならない自覚は……微妙。

 

「あと、使える戦力は……」

 

 待機中のチャチャマルは?

 チクァーブは、渡したデバイスのリミッター解除で少し底上げ出来るかも。

 

(チャチャマルは……呼ばずになのは達を見捨てたんだ。今から呼ぶのは微妙だな。

 それと、リミッター解除か。チクァーブは扱えるだろうが……カイゼやセツナは無理そうか)

 

 成瀬カイゼは元々使っていたデバイスが非力すぎたせいで、大出力に慣れてない。底上げになるか微妙。

 セツナ・チェブルーは、魔法に関しては駆け出しもいいところ。いきなり出力を上げても扱い切れない可能性が高い。

 

(……チクァーブ、渡したデバイス12個の出力リミッター解除キーを渡しておく。数回ならAAAクラスの魔力にも耐えられるはずだ。

 今回の戦闘で使い潰しても構わん、カイゼやセツナを助けてやってくれ)

 

(了解いたしました。全力で任に当たらせていただきますぞ)

 

「僕は行きます! 次元断層なんて起こさせるわけには!」

 

 ユーノ・スクライアも滾ってる。

 こちらは、戦力として計算可能。雷撃の痺れからもほぼ回復してる。

 動かさない理由も、特に無い。

 

「ユーノは……そうだな、カイゼやセツナの手助けを頼む。

 2人とも力は付いてきたが、まだまだ魔法初心者だ。支援があると心強い」

 

「分かりました!」

 

「次元震です! ジュエルシード12個が発動している様です!」

 

「振動防御! 庭園に転移可能な距離で影響の薄い区域へ移動を!」

 

 ユーノ・スクライアが頷いたところで、オペレータたちの怒号やリンディ・ハラオウンの指示の頻度が上がった。

 ジュエルシードは発動済み。原作より3個多い分、次元断層までの時間が短いと予想。

 

「全く……アリシアもプレシアも結局は地雷か。いつから時の庭園は地雷原になったんだ。

 時間が無い、すぐ動くぞ。

 クロノ、ゲートは開けられるか? 無理なら自力で飛ぶぞ」

 

「準備は出来ている。行こう、プレシアを止めに!」

 

「私も出ます。庭園内でディストーションシールドを展開して、次元震の進行を抑えます。

 エイミィに指揮権を預けるので、局員はエイミィの指示に従うように」

 

 クロノ・ハラオウンの言葉通り、司令部の転送ポートの魔力等は準備出来てる。

 リンディ・ハラオウンも既に席を立ち、出撃の態勢。

 

「無理はするなよ?

 それと、残りのジュエルシードはリンディが持っていてくれ。

 最悪の場合、それを使って対抗するからな」

 

「分かったわ、頼りにするわよ?」

 

「任せろ。これで全員だな、行くぞ!」




テレビ版第11話の後半+αにがっつり対応したような? 台詞は映画版寄りですが。

アースラの指揮権は、1位のリンディと2位のクロノが指揮出来ない状態になったら、自動的に3位のエイミィに回ってくるはず。でも、通信で話が出来る(指揮出来ないとは言い切れない)状態になるはずなので、きちんと指揮系を明確にした上での出撃です。
原作A’s第7話でもリンディ&クロノ不在時にエイミィが指揮代行だったので、序列はこれで間違いないはずですし、描写が無かっただけで、原作のリンディ出撃時に同様の指示はあって然るべき。


アコノはどうしたって? 誰かさんと違って、真面目に学校に通う小学生です。
06話で「親を安心させるための学業」と言っていた通り、きちんと説明できる理由が無い限りは学校を休みません。35話で学校へ通う生活へ戻ったままです。
魔法関係のゴタゴタなんて説明できませんし、エヴァもいます。学校のある時間は平常の維持が優先です。

変態(ロリコン)ですか? 36話でどこか別の遠い世界へ行った事が確認されたままですが何か。


2013/06/07 変わらんでも言うのか→変わらんとでも言うのか に修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。