青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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無印編40話 その手の上で

 プレシア・テスタロッサの胸部の調査は、本人とハラオウン親子も参加して入念に。元々胸元が大きく開いている服装だったため、クロノ・ハラオウンも強制参加。

 ちなみにプレシア・テスタロッサの服装は、フェイト・テスタロッサと違ってテレビ版に近い。喉元から鳩尾辺りまで大きく空いてるから、脱ぐ必要も無くよく見える。

 年齢を考えると随分と若作りな服装。外見から正確な年齢が判らないと言う意味では、高町桃子と……こほん。えーと、何の話だっけ。

 間違いなくそこにある事、それが最近埋め込まれたものでない事を各自で魔法も使い確認した上で、魔導具を摘出。

 今は魔法で保護してるけど、本来は安静を保って治癒を待つ必要がある。保護魔法は治癒も妨げていて最大でも後1日しか持たない事、保護魔法の効果を切ってから最低数日は絶対安静だという事は説明済み。

 

 とりあえず、魔力素汚染の後遺症も処置が済み、治療の目処は立った。

 リンカーコアの修復処置やおまけの準備も完了。

 あとは時間をかけてゆっくり治す必要がある。

 

「さて、前準備はこれくらいだが……この魔導具を調べたい。構わないか?」

 

 お姉様が、プレシア・テスタロッサから取り出した魔導具を手に取って見てる。

 六角柱の上下がとんがった形。薄い青色の水晶柱に近い感じ。

 ぶっちゃけレリックに似てなくもないけど、別物。魔力その他の反応も薄いし。

 

「私は構わないわ。

 だけど、管理局としてはどうかしら?」

 

「私達で調べたいところだけれど……埋め込まれた経緯に問題がありそうね。

 無かった事にされる可能性もあるという事でしょう?」

 

 プレシア・テスタロッサは、何をされたか知りたいはず。

 リンディ・ハラオウンも、調べたい気持ちは山々。

 だけど、時空管理局の影響が強い病院で埋め込まれた可能性が高いという事は、プレシア・テスタロッサ救済の理由説明が悪い方向で現実と一致しているかもしれないという事。

 その証拠と成り得る代物。取り扱いは要注意。

 

「それで済めばいいが、最悪の場合は情報を知る者がまとめて闇に葬り去られる可能性もあるぞ。

 やりたい事は調査だから、研究者の誇りにかけて改竄はせん。そんな事をしても私に利が無いし、間違いなく改竄より見なかったことにする方が簡単だ。

 穏便に夜天を救いたいだけなのに、どうしてこうも厄介事が出てくるんだ……」

 

 お姉様が深くため息をついてる。

 理由には完全に同意。

 原作や今までに得た情報は誤りで、時空管理局に裏なんて無かった……という結末の方がまだ良かった。

 

「世の中は、こんなはずじゃない事ばかりだよ。

 ……正直に言えば、時空管理局がこんな事をやっているなんて、まだ信じたくは無いんだが」

 

 クロノ・ハラオウンも、なんだかやるせない表情。

 でも、ようやく信じる気になった模様?

 

「私だって、こんな話が出てくるとまでは思っていなかった。むしろ、いい意味で原作知識があてにならない状況なら良かったんだがな……せめて、こんな事をしているのは極一部であってくれ。お前達が例外だなどと考えたくも無いぞ。

 まあ、ここで愚痴っていても始まらん。事後処理に関して、少々相談がある」

 

「私の当面の身柄の扱い、かしら?」

 

「それもあるが、まずはジュエルシードの事件に関与していた証拠の一部を消したい。

 全く……アースラを攻撃していなければ、大事にはならなかったものを」

 

「こんな結末になると予想出来る人物が、どこにいるのかしら?」

 

「エヴァさん、罪の隠蔽も犯罪よ?」

 

 プレシア・テスタロッサの行動はともかく、反論は正しい。

 そして、リンディ・ハラオウンの横槍も、とても正しい。

 それに、攻撃すること自体を防がなかったお姉様が言える事じゃない。

 

「それは解っているが、私を隠したままでの説明は難しいぞ。

 それに、武装局員がプレシアと接触した際の映像は残っているだろう?」

 

「当然ね。公的な記録になるわ」

 

「なら、それとの矛盾を解消する必要もある。

 交渉やら裁判やらがある頃には、プレシアは若返っているからな」

 

「え?」

 

 ぽかーん、と表現したくなる様な、ハラオウン親子の表情。

 プレシア・テスタロッサも声は出していないものの、似たような感じ。

 

「娘達と過ごすための前提条件を整えると言ったはずだ。別の治療もするともな。

 26年前に5歳の娘を亡くして、当時中央技術開発局の局長だったことは聞いている。

 20代で子持ちの小娘が大魔導師の肩書を持って局長になれるとは思えんから、既に60歳前後だろう?

 アリシアやフェイトは孫と言っていい年齢だから、親子として過ごすには厳しすぎる」

 

「だ、だからと言って、若返り、なんて……」

 

「ジュエルシードの阿呆の様な出力に感謝すべきだな。時間はかかるが、問題なさそうだ。

 だから、本局と接触する頃には、プレシアの外見はそれなりに変わっているはずだぞ?

 元々そんな年齢に見えんから、どの程度変わるか微妙かもしれんが」

 

 クロノ・ハラオウンが、魚の様に口をパクパクさせてる。

 予想以上の技術を目の当たりにした衝撃?

 蘇生と若返り、どっちが理解しにくいだろう。

 

「アリシアさんを生き返らせた上に、プレシア女史を若返らせて……

 どう言い訳するつもりかしら?」

 

 リンディ・ハラオウンが呆れてる。

 でも、ちょっと笑ってる。なんだか好奇心も見える?

 少しわくわくしてる雰囲気も。

 

「3か月ほど前、偶然に時の庭園に流れ着いていたらしい、正体不明の魔導具の様な物を見付けた。

 調べようとした矢先に不思議な光に包まれ、ふと気付いたら体調がおかしい。

 体は軽いし、魔力も全盛の頃を思い出させるくらいに高まったが、どうも勝手が変わったらしく、自由に使えない。

 ふとガラスに映る姿を見ると、どうやら若返ってしまったらしい。

 それに、アリシアが息を吹き返している。

 どうやら願望機と呼ばれる、ジュエルシードのようなロストロギアか何かだったのだろう。影も形も無くなってしまった今では、確かめるすべは無いがな」

 

「それなら、どうして第97管理外世界に来ていたのかしら?」

 

「経緯はどうであれ、愛娘は息を吹き返した。だが、どう見ても療養が必要そうな状態だ。

 プレシアは指名手配されている犯罪者に協力していた時期があり、違法な研究を行っていた事も知られている。過去の事故に関する問題も無くなったわけではないだろうから、管理世界で静かに療養する事は難しいかもしれない。

 ならば、それなりの生活が可能な管理外世界は無いか、と考えるのは不自然ではないだろう。

 出来れば愛娘には人並みの生活を送らせてやりたいから、ある程度は文明があり、交流できる人がいるところがいいだろう。

 そして、管理局には管理外世界の出身者がいるし、管理外世界へ行った経験が有る者もいる。プレシアが管理局にいた頃や、その後に交流のあった人物等に第97管理外世界を知る者がいてもおかしくは無く、そういった人物に話でも聞いていれば、候補として考えても不思議ではないな」

 

「ジュエルシードをフェイトさんに集めさせていた件については?」

 

「せっかく愛娘達と静かに暮らせそうな世界が見付かったのに、おかしな魔導具が降ってきたんだ。そんなものに幸せな暮らしを邪魔されるわけにはいかないだろう。ロストロギアの異常性は、身を以て理解しているからな。

 だが、プレシアは自分で回収して封印できる様な体調ではなかった。

 アリシアは元々戦力外だし、何より幼すぎる。

 であれば、実力のある魔導師で、優秀な使い魔もいるフェイトに頼むしかないだろう」

 

「フェイトさんがなのはさんと戦闘を繰り返していた件は?」

 

「管理外世界にいるミッド式のデバイスを持った管理局員でない強力な魔導師など、普通は犯罪者以外にはありえないだろう。

 明らかに危険そうなジュエルシードを集めているという事は、事故に見せかけてロストロギアを奪取しようとしている犯罪者集団の回収員ではないか、と考えるのはおかしなことか?

 そう思い込んでしまえば、そんな相手にジュエルシードを渡す選択肢は無くなるだろうな」

 

「クロノが戦闘に介入した時は、身分証明も提示していたはずよ。

 その時にフェイトさんが逃亡した件については?」

 

「今まで管理局と関わった事のない少女やその使い魔が、管理局の身分証明がどんなものか、ぱっと見ただけで判断出来ると思ってるのか?

 それに、犯罪者だと勘違いしてなのはと戦闘を繰り返していたんだ。その犯罪者組織のエリートが介入してきたと判断してしまった事は、不幸な事故だったな」

 

「だけど、プレシア女史は知っていたはずでしょう?」

 

「体調が悪化していた母を心配して、相談せずに頼まれた回収と封印を急いでしまったのは迂闊だったとしか言いようがない。

 恐らく、責任感が強すぎたのが災いしたのだろう」

 

「プレシア女史の次元跳躍魔法については?」

 

「不慣れな状態、万全でない体調の中で愛娘を危機から救おうと放った次元跳躍魔法が、思わぬ方向に行ってしまったり、あまつさえ愛娘を直接傷つけてしまったりするなど、想定外もいいところだっただろう」

 

「フェイトさんの心を傷つける様な事を言っていたのは?」

 

「無理して行使した次元跳躍魔法で体調を更に悪化させてしまったプレシアが、事後処理を自分の不完全なクローンに任せたのは最大の失敗だったな。愛娘の心を傷つけ、あまつさえせっかく封印したジュエルシードを暴走させるなど、クローンは何を考えていたのやら。

 真相は、虚数空間に落ちてしまったクローンに聞いてみないと分からない事だ。永遠に闇の中になってしまったな。

 

 ……という筋書きにしたくて、色々と小細工中だ」

 

「……え?」

 

「小細工っていったい何を!?」

 

 リンディ・ハラオウンとプレシア・テスタロッサの驚いた表情が、何だか似てる。

 クロノ・ハラオウンは、やっぱり元気。

 

「時の庭園を虚数空間に落とす事が可能な状況を維持する為に、次元震を低レベルで維持しているんだ。

 結構面倒なんだぞ、これ」

 

「そ、そんな理由で止めていなかったのか……?」

 

 クロノ・ハラオウンの表情が引き攣ってる。

 完全に呆れを通り越した模様。

 

「他に理由なんてあるか。だが、こうでもしないと私を隠したままプレシアとアリシアの件を説明出来ないし、罪も軽くし辛いだろう?

 ああ、プレシアが持っていたジュエルシードは時の庭園を消失させるために数個犠牲にするが、残りは本物のプレシアがクローンから取り返して自主的に提出した事にするからな」

 

「だからと言って、やり過ぎだ!

 完全に罪の隠蔽じゃないか!!」

 

 Exactly(そのとおりでございます)

 でも、これくらいしないと、プレシア・テスタロッサを助ける意味が無い。

 

「プレシアの裁判が長引けば、はやての命が持たん。はっきり言うが、今年の年末でもかなりギリギリだ。

 ある程度の司法取引やらは可能だと思っているが、それでも数か月の拘束はあり得るぞ。若返った事の調査だのと言われてな。

 これを問題視するなら、私を穏便に公開する方法か、私抜きで夜天を助ける方法を持ってこい。納得出来る内容なら採用するが、案も出せないなら不要な騒乱を防ぐ為だと理解して諦めろ」

 

「だ、だが、裁判もきちんと話せば……」

 

「精神操作を受けた人物の罪は、誰が背負うべきなんだろうな。

 被害者に全てを押し付けて満足か?

 精神操作を受けていた人物に充分な意思能力があると断言するのか?

 しかも、26年前の駆動炉開発に係わっていた会社員が、今じゃ管理局で佐官だぞ?

 精神操作に管理局が絡んでいる可能性すら濃厚な現状で、公正な裁判結果が出ると無邪気に信じる事が出来るか?

 少なくとも、私には無理だ」

 

「な、何だって!?

 あの事故の関係者を調べられたのか!?」

 

「意図的に調べたわけではないが、情報は掴んだ。

 ヒュードラ開発で実質的な助手をやっていたアレクトロ社の元社員が、マトモな裁判もされないまま管理局の地上本部で一佐になっているらしい。明らかにおかしいと思わんか?」

 

 チクァーブが見付けてきた資料が、これ。

 26年前の、ヒュードラの事故当時の資料の一部。

 相当奥深くに隠されていたはずの情報を良く見付けてきたと称賛。内容は酷いけど。

 

「あの事件に関しては、色々あったけれど……誰を言っているのかしら?」

 

「ディラン・ヒューイットとかいう名前らしい。

 当時はアレクトロ社の社員で、しばらく社会奉仕をした後に管理局入りした様だぞ」

 

「あの男が……事故の少し前から見なくなっていたけれど、管理局と取引でもしたという事かしら?」

 

「立場の変遷を知っただけだから、裏で何があったのかまでは解らん。

 だが、事故の翌年にアレクトロ社が新型の駆動炉を発表しているのは事実だ。資料を見る限りでは規模や出力がヒュードラとほぼ同じだが、これは偶然で済ませて良い話なのか?

 この辺の情報も使えば、裏に関わっていない相手なら司法取引を引き出しやすいだろう。逆に、裏に関わっている連中は全力で潰しに来る可能性もあるがな。

 さて、真っ当な裁判を推奨する執務官としては、これをどう判断する?」

 

「まあまあ、エヴァさんもあまりクロノを苛めないで、ね。

 だけど、時の庭園を崩壊させるとなると、かなり大事よ?」

 

 苦虫を100匹ほど噛み締めたような表情のクロノ・ハラオウン。

 流石に見かねたのか、立ち直ったリンディ・ハラオウンが話題を変えてきた。

 

「虚数空間に落とすくらいならどうにかなる。

 今もかなりギリギリの状態で保っているようなものだからな。少し大きめの揺れを起こせば、割と簡単にいけるぞ?」

 

「そのためにジュエルシードを犠牲にするわけね?」

 

「遠隔で次元震を起こす出力を出すのは難しい。外部から消失させる出力を出すには周囲の世界に被害が出る規模にならざるを得ない。となれば、内部から崩壊させるしかないだろう? アースラの記録に残る事を考えても、外部から手出しした痕跡は残さない方がいいしな。

 共に虚数空間に落ちる危険を覚悟で回収するなら止めはしないが……そこまでリスクを取る意味のある代物か?」

 

「そう。あくまでも被害を抑えた上で、余計な痕跡を残さないためという事ね?」

 

「そうだな」

 

 何だか、リンディ・ハラオウンの表情が笑っているようにも見える。

 ばれてーる?

 でも、周囲の世界に影響を出さずに時の庭園を消失させる方法と言うのは……

 

「……本当だぞ? 仮にここで奪ったところで、ホイホイ使える代物じゃないんだ。

 お前達の目の前で使えば、私が何かをしたのがばれるんだぞ」

 

「ふふ、そういう事にしておきましょう。

 必要なジュエルシードは何個かしら?」

 

「3個だな。2個では恐らく出力が足らん。

 ところで、プレシア。この時の庭園に未練はあるか?」

 

「……この26年で、庭園も随分と荒れ果ててしまったわ。

 壊れた過去と一緒に捨て去るのもいいかもしれないわね」

 

 なんだか、プレシア・テスタロッサは落ち込んでる。

 自分の過去と罪を見せ付けられてる様な気分になっているかも。

 

「そうか。なら、優先して確保しておきたい物を言ってくれ。

 長年暮らしていたんだ。私物やら資料やら、色々あるだろう?

 可能な範囲で確保しておくぞ」

 

「もう、何もいらないわ……アリシアが居れば、それでいい」

 

「全く……せめてフェイトも入れてやれ。

 とりあえず司法取引で使えそうな資料辺りを探して確保しておくが、構わんな?」

 

「ええ、好きにして頂戴」

 

「よし。なら、次はこれを説明しておくか」

 

 そう言いながら、お姉様が小物の転送魔法を使って取り出したのは、1本の黒いボトル。

 

「プレシアとアリシアには、アースラに戻った後でこの中に入ってもらう」

 

「今度は何を言い出すかと思えば……どうやって入るって言うんだ?」

 

 立ち直ったと言うか、別の話になって頭を切り替えたと言うか。

 クロノ・ハラオウンが会話に復帰してきた。

 

「生活可能なデバイスの格納領域の様なものだ。中に医療施設や食料を用意してあるから、ゆっくり休んで来い。

 80倍の時間加速付きで、中にいることが出来るのは3ヶ月だ。

 分かりやすく結果を言えば、明日の夜には3ヶ月療養して出てくることになる。若返りもその間に完了する。計算上では、概ね30歳の状態に戻るはずだ。」

 

「なっ……!」

 

 絶句してるクロノ・ハラオウンの驚く顔がだんだん楽しくなってきた。

 でも、ΩΩΩ(ナンダッテー)の出番が微妙に無い。

 

「だから3か月前ね……そんな物を用意出来ること自体が驚きだけれど、用意が良すぎでしょう。

 まさか、それもジュエルシードを使った結果という事かしら?」

 

 リンディ・ハラオウンは、驚くことを諦めた?

 なんだか、どんどん笑みが深くなってる気がする。

 

「起動にジュエルシードの魔力を使うが、物自体は……今だとロストロギアと呼ばれるのか?

 だがまあ、使い捨てだし、今作ろうにも部品やらの入手は無理だろう。使えば内部の時間で老化するから、利点ばかりの道具でもないしな。

 というか、デバイスの格納領域のような、生成した空間を居住空間にする事自体は一般的ではないのか? 都心部や居住可能な土地の少ない世界だと重宝しそうなんだが」

 

「空間を維持するための魔力を供給するマスターは外にいる必要があるし、生活できるだけの空間をずっと維持できるだけの力を持つ人はそういないわ。仮にそれを外部からの魔力供給で補っても、デバイスの盗難や魔力供給に支障があると致命的な事になるし。

 危険性が高いから、個人で人が入る様な空間を作る事は禁止されているわね。小物入れとして使っている人はそれなりにいるんじゃないかしら? 組織としても大抵の場合は土地や空間を用意する方が安上がりだから、一般的ではないわ」

 

 なんてこったい。

 リンディ・ハラオウンは時空管理局の提督だし、嘘を言う必要は無いはず。

 内部からの魔力供給の技術は公開されていないか失われてる?

 費用の問題が大きいだけかも?

 でも、有り得ない話ではないらしい。ギリギリでセーフと言えそう。

 

「そうなのか。

 まあ、今は管理世界の人間ではない私が管理するし、安心して行って来い。今までの分も合わせて、しっかりアリシアを甘えさせてやれ。

 だが、フェイトを忘れるなよ?」

 

「……そうするわ。入るにはどうすればいいかしら?」

 

「魔法で内部に転送する。その辺は、アースラに着いてからだな。

 中に機械仕掛けの自動人形がいるから、入った後で分からない事があったら遠慮なく聞くといい。転送時に注意事項も送るから、中で確認してくれ」

 

「そう、分かったわ」

 

 注意事項は、アリシア・テスタロッサの人格変化及び記憶欠損の可能性。

 魔導師としての素質の向上、主にリンカーコアの強化に関して。

 機能訓練(リハビリ)の必要性と内容。

 プレシア・テスタロッサ自身の、若返りに関する体調変化について。

 証拠映像との齟齬を防ぐため、戻る時まで髪型等はなるべく現状を維持する事。

 概ねこれくらい。

 

 時の庭園内の資料の回収は完了、チクァーブや高町なのは達も撤収済み。

 あとは、消失させるだけ。

 

「さて、庭園消失に合わせて、アースラに戻るぞ。

 プレシア、戻る際になるべく姿が隠れる様に、このローブを着てくれ。一応幻術で誤魔化しはするが、帰還時の記録までは弄れんし、若返った姿と完全には一致しないだろうからな」

 

「そうね、若い頃の姿なんて自分でも思い出せないわ。

 少し暑苦しそうだけれど、それを着て脱出を装えばいいという事ね?」

 

「随分徹底しているけれど、その時の映像位なら隠せなくもないわよ?」

 

「あまりにも不自然だと問題が出るぞ。

 不鮮明だろうが何らかの映像を残す方が、無いより疑われにくい。まあ、あまりにも問題がある姿しか残らなかったら、隠してくれ」

 

「ふふ、解ったわ。

 あまり納得していない様だけど、よろしくねクロノ?」

 

「はあ……艦長がそう判断するなら」

 

 リンディ・ハラオウンは完全に笑ってるけど、クロノ・ハラオウンは物凄く渋い顔をしてる。

 執務官としての矜持と、上司で母の指示との板挟み。

 完全には納得出来ていない模様。

 

「さて、そろそろ動くぞ。

 時の庭園が消失して、ジュエルシード事件は終わりだ」

 

「いや……資料は集めなくていいのか?

 司法取引で使うと言っていたが……」

 

「ああ、それはもう終わっている」

 

「なんだって!?

 まったく、どれだけ規格外なんだ……」

 

 ΩΩΩ<ナンダッテー?

 KYとか呼ばれてるクロノ・ハラオウンは、こんな所で不意を突いてくるから困る。

 

「夜天の妹だと言っただろう。技術が常軌を逸している事ぐらいはそろそろ慣れるべきだぞ、執務官殿?」




なんだか、私がはっちゃけた回になった気が。ごめんね。設定垂れ流しで読みにくくてごめんね。
でも、よかったねプレシア。望み通りに、(約3か月の)過去が(情報捏造的な意味で)変わって、やり直したいと望んだ時(くらいの身体年齢)に戻って、アリシア(やフェイト)と過ごせるよ! やったね☆

10歳くらいまで若返らせて、魔法少女リリカルプレシアが……始まったりは、しませんでした。


プレシアの服に関しては、テレビ版12話の終わり付近、アリシアと虚数空間に落ちるシーンを参照してください。胸元と腹に留め具はありますが、半胸で鳩尾やヘソも出てますから。どう見ても約60歳の恰好には見えませんし、クロノが正面からじっくり見ていい服でもないですが、原作がそうなんだから仕方ありません。
※プレシア28歳で出産(小説版。NanohaWikiより)+26年前の事故当時アリシア5歳(テレビ版)=59歳の計算です。既に60かもしれない? 細けぇことはいいんだよ。


ここで出た佐官(一佐)の人ですが、とっても管理局ヘイトに見えます。
ええ、解っていて書いているのですが、こんなのがあるからアンチ・ヘイトのタグが必要なんですよねぇ。
というわけで、6月16日の活動報告にて、タグ&キーワードに関してのご意見募集中です。


え? 2012/11/23に感想の返信に書いてた件ですか?
もうちょっと待って、と言っておきます。


2013/06/21 以下を修正
 形は、六角形で上下が→六角柱の上下が
 いいかもしれないわ→いいかもしれないわね

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