青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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時間軸としては、42話の途中(エヴァ退場)からになります。


無印編45話 主従

 プレシア・テスタロッサやリンディ・ハラオウンへの説明をチャチャゼロに任せた主は、お姉様を連れて部屋に戻ってきた。

 チャチャマルに運ばれ、今はベッドに座っているお姉様は、俯いたまま動く様子すらない。

 何だか、部屋を出てからものすごく空気が暗くて重くなる一方。

 

(妹達、何があった?

 説明はエヴァに聞こえない様にお願い)

 

 了解。

 プレシア・テスタロッサが、主様のクローンだった。

 お姉様と主様は、仲の良い親子の様な関係だった。

 最終的に主様は死を望み、お姉様がそれを叶えた。

 望まれた事であっても、お姉様は叶えてしまった事を気にしてる。

 

(過保護なのも、そのせい?)

 

 間違いなく要因になってる。

 主様がいた頃は、ここまで過保護じゃなかった。

 お姉様は、絶対に主を殺さない。主が死を望んだ場合は自身ごと滅ぼす気でいる。

 チャチャゼロのバグを利用した自滅術式を主様から受け取ってる。

 お姉様はバグを直すだけの技術と権限があるのに、直してない。直す事を拒否してた。

 私達が直す事も禁止されてる。

 

(その人のクローンが現れる事はそんなに想定外?

 アルハザードの技術がどの程度か全ては把握していないけれど、技術的には可能だったはず)

 

 主様は、クローン技術の権威。当然、作る技術を持ってた。

 それだけに、自身のクローンを作る事、作られる事には慎重だった。

 簡単な試験を含めても、主様が自身のクローンを作った記録は無い。

 アルハザードは、少なくとも上層部の人間については、それなりに気を使ってクローンを作られない様にしてた。

 ただ、情報漏洩も多かったから、対策は完璧じゃなかったはず。

 可能性が低いとは言えても、絶対に有り得ないとは言えない。

 でも、問題は可能性の高低じゃない。

 主様はお姉様の心の拠り所で、お姉様が自分の手で殺したと思ってた。

 クローンを作ったという情報も無かったし、永遠の別れだと自分を納得させてた。

 それが目の前に現れる事は、心の傷を抉るに充分。

 

(そう。前の主を殺した時の状況は?)

 

 殺したこと自体は不思議じゃない?

 

(エヴァの主は不老不死になって、エヴァが死ぬか、エヴァに再剥奪されない限り死ぬことは無いと知っている。

 私がエヴァの主になっているのだから、前の主だけが死んだ、つまり再剥奪をしたということ。

 殺したという表現で間違ってない)

 

 正しい認識。

 主様が、死ぬ事を求めた。

 アルハザードの人と技術全てを破壊した時、最後に主様が言った。

 まだ1人いる、と。

 

(事態はだいたい分かった)

「チャチャマル、私をエヴァの隣にお願い」

 

 主はチャチャマルに頼んでお姉様の隣に座ると、お姉様の顔を覗き込んだ。

 

「エヴァ、何があったかは言わなくていい。

 私はエヴァの隣にいると決めている。

 チャチャ達も、従者達もいる。1人で抱え込むのは良くない」

 

 お姉様は……無反応?

 せめて反応があれば、話が進むのに。

 

「……エヴァ。

 何があったかかは、妹達に聞いた。

 エヴァを含めて、世界のどこを探しても完璧な人は存在しない。

 失敗していい。間違っていい。

 だけど、望まれた事を叶えた事は、後悔してはいけない。後悔はその人を侮辱する事に繋がってしまう」

 

「…………私は……駄目だな…………後悔しない事も……忘れる事も……

 いつまで経っても……弱いままだ…………」

 

「弱くてもいい。無理に強くなる必要も無い。

 外見がエヴァンジェリンになったからと言って、行動や考え方まで染まる必要も無い。

 エヴァンジュではなく、前世の自分らしくてもいい。

 自分らしいと思える自分でいてほしい」

 

「……お前も……リーナと同じことを私に求めるんだな…………」

 

「前の主が何を思って、何を言ったのかは知らない。

 だけど、自分らしくいてほしいと言っていたなら、大切に思っていたと判断していい」

 

「だが……私は…………」

 

「卑下しなくていい。それに、今は私がエヴァの主になっている。もっと頼ってほしい。

 私が冷静さを望んだのは、大切な人の役に立ちたいと思ったから。

 今では、エヴァが大切な人だと自信を持って言える。例え歪んだ結果であっても、役に立てるなら本望だと言える。

 そもそも、エヴァの行動の結果は、主である私も責任を負う義務がある。

 自由に動くなというつもりは無い。だけど、私を置いていかないでほしい」

 

「……だけど、私が…………」

 

「エヴァは私に出来ない事が出来る。

 私はエヴァが出来ない事が出来るかもしれない。

 目的が同じ方向を向いていればいいだけ。同じ能力を持つ必要は無い。

 1人が全てを抱える必要も無い。2人で一緒に歩む事が出来ればいい。

 それは親友として普通の事。主従としても当然の事。

 でも、私は本来の希望、未来に望むものを聞いていない。

 エヴァが求めているもの、望んでいる事は何?」

 

「私は、夜天を……」

 

「それが何とかなった後。将来的にエヴァが目指したいのは、どんな生活?

 世界の頂点に立ちたいのか。

 影の支配者になりたいのか。

 自由人を目指すのか。

 日本人の普通の生活をしたいのか。

 エヴァの力なら、大抵の事が出来る。

 何を求めているのか、教えてほしい」

 

「……私は……私は、幸せを感じたいだけだ…………

 殺伐とした空気も、誰かを殺すのも……もう、嫌だ…………」

 

「それなら目指すべきは、きっと普通の生活。表に出ない選択は間違っていない。

 私も余計なゴタゴタを抱えずに過ごすことが出来ればいいと思う。

 向いている方向、目指す目標は同じ。これからも一緒に歩める」

 

「だが……私は結局……無い物を求めているだけだ…………

 神もどきに身に余る能力を望み……軍事国家で責任からの逃げ道を捜し……今は仲間を作ろうとしているだけだ……原作知識なんて、怪しい代物に縋ってな……

 何がエヴァンジェリンだ……プライドも何もない、ただのガキだよ私は……」

 

「望みを言った時点で、私達は身に余るものを望んでいる。原作なんて知識や、前世で得た知恵や記憶も、本来は持つべきではないもの。その意味では、転生者は全員同じ罪を抱えている。

 それに、エヴァの居場所は私の隣。私の居場所はエヴァの隣。

 エヴァは私を必要としてくれた。私はエヴァを必要としている。

 誰にも譲らない、私が望む場所。私が望む立場」

 

「それが……望みなのか…………?」

 

「私は、エヴァを支える事を。エヴァに守られる事を。エヴァと永遠を共に歩む事を望む。

 今の私に感情が無い事は関係ない。現状と前世の考え方を纏めても、感情が戻っても、同じことを望むと断言できる」

 

「……アコノは、強いな…………」

 

「前世の私はとても弱かった。きっと感情が戻ると弱くなる。感情の無い今だから言える事。

 変わらないものは無い。エヴァも私も、きっと変わる。

 今は、エヴァが私を守ってくれている。

 時には、私がエヴァを守れるかもしれない。

 たまには、2人で馬鹿な事をするかもしれない。

 それでも私は、エヴァと共に歩んでいけるなら、それでいい」

 

「私は……アコノが求める様な人間ではないぞ……?」

 

「私は、弱くてもいいと言った。

 完璧な存在である必要は無いし、本当に完璧なら私が必要なくなるから、その方が困る。

 私は大切な人の役に立ちたいと言った。これは前世からの想いだけど、生まれ変わった私は一般的な目で見れば不気味な足手纏いでしかない。事実、人に迷惑をかける事、負担になる事しか出来ていなかった。

 私も居場所を探していたと思える。互いの居場所になれるなら、私にとっては理想的。

 

 もう一度言う。エヴァの居場所は私の隣。私の居場所はエヴァの隣。

 私を、置いていかないでほしい」

 

「わ、私は……私は…………!」

 

「終わってしまった前世の事。今世で起きた悲しい出来事。

 お互い色々あったと思うけれど、私は泣けない。

 今は私の分まで泣いてほしい。

 全て、涙で洗い流してほしい」

 

 

 ◇◆◇ ◇◆◇

 

 

 それからしばらく経って。

 お姉様は泣き疲れたのか、主に抱き締められて眠ってる様に見える。

 正確には、気持ちを整理するために意識を停止中。

 初めて使う、魂の能力に任せた無意識の情報処理。事実上の睡眠。

 でも、お姉様が本格的に泣く姿を見たのは初めて。

 まさか泣かせポ?

 新しいけど意味不明。

 胸で泣いてくれる時点でポの条件を満たしているという矛盾。

 

(でも、これでやっと主らしいことが出来た)

 

 それは確かに。

 だけど、主は本当に感情を感じない?

 明らかに感情を前提とした話になってた。

 

(私の前世の記憶と現状を合わせると、嘘は言っていない。

 現状を考えると、私の最も大切な人はエヴァで、私の居場所はエヴァの隣以外に無い。

 大切な人の役に立ちたいという気持ちは前世のものだけれど、今の私にそれを当てはめても矛盾は無い)

 

 それでも、二股は良くない。

 主というよりも、主人と書いて夫と呼ばれる立場らしい事の様な気も。

 

(はやての伴侶は夜天。私は親友のポジションで。

 私もはやての伴侶にしたいなら、全員で重婚すれば問題ない)

 

 ないの?

 全員で重婚という事は、お姉様と夜天の姉妹夫婦も成立?

 お姉様と夜天は、夜天が姉という点から上位は夜天? お姉様の夫が夜天?

 お姉様の中の人は男性。お姉様が主の夫?

 現時点の精神状態を考えると、主がお姉様の夫的な立場。

 突撃時の会話を考えると、八神はやてが主の嫁と思える。

 上位を夫と位置付けるなら、夜天の主、つまり夫役が八神はやて。

 百合だかノーマルだか四角関係だかよく分からない。

 誰が夫で誰が嫁かも判らない。

 とりあえず、百合の園というのは解る。

 

(誰が夫役でもいい。誰が主体で動くかは、状況次第で問題ない。

 でも、私とエヴァの場合は、役目的にはエヴァが主体で私が補佐という形が自然)

 

 内助の功?

 その割には、主はお姉様や八神はやてに全力突撃。

 内助ってレベルじゃねぇぞ。

 

(補佐だから問題ない。

 エヴァが苦手な所や、エヴァじゃない方がうまく行きそうなところを私がフォローする。

 相互補完。ある意味で、主従の理想形)

 

 確かにそうだけど。

 現状では、悪く言えば共依存に片足を突っ込んでる。

 でも、やっぱり夫婦と言う関係じゃない。

 残念。

 

(妹達が腐っていく……?)

 

 ぎくっ。

 それは嫌。

 そろそろネタ自重。

 でも、チャチャゼロから連絡がまだ無い。

 気になるけど、身動きが取れない。

 

(今はまだエヴァも眠っている。別に急いで何かする必要もない。

 話の内容が気になる?)

 

 気になる。

 チャチャゼロは交渉に向く性格じゃない。

 それ以前に、お姉様が色々叫んでた。

 ばれる可能性が否定できない。

 

(そう。でも、最悪の場合でも本局を壊滅させれば時間を稼ぐ事はできる。その間に夜天を何とかしてしまえば、後はどうにかなるはず。

 攻撃に必要な情報は揃っているし、クラナガンで姿を見せつつ潜伏すれば、余計な場所へ目を向ける余裕を与えずに済む。

 ついでに上層部の悪事も公開して体制を潰してしまえばいいし、闇の書の蒐集が必要なら管理局の魔導師を殲滅する勢いで集める事も出来る。みんなの戦力を考えると、負ける要素が無い)

 

 お姉様より過激。

 だけど、最悪の場合と言う条件なら賛同。

 というか、候補の一つとして考えてはいた。

 お姉様は間違いなくいい顔をしないけど、最終手段としては検討すべき内容。

 

(本当の最終手段は、私が主としてそれを指示する事。

 立場を振りかざす形にはなってしまうけれど、エヴァに全てを背負わせない為には必要かもしれない)

 

 例え指示された事でも、お姉様は背負ってしまう。

 だからこそ、主様の事も引き摺ってる。

 

(それでも、肩を貸す事くらいはできる。

 一緒に背負う事に意味はあるはず)

 

(おーい、イモート達。

 ゴ主人は落ち着いたカ?)

 

 チャチャゼロ?

 お姉様は落ち着いたと言うか、寝てる。

 とりあえず大丈夫なはず。

 

(話はどう落ち着いた?)

 

(いい話と悪い話があるんだガ、ドッチからダ)

 

(それなら、いい話からよろしく)

 

(オウ。プレシアの説得は成功したゼ。

 ついでにリンディの協力も取り付けタ。

 コレから、だいぶ動きやすくなるゼ)

 

 あの状況から?

 チャチャゼロのファインプレー?

 

(なら、悪い話は何?)

 

(ゴ主人の素性がばれタ。アルハザードの最終兵器ってとこダ。

 オレのせいじゃねーゾ。ゴ主人が口走った話かラ、プレシアが自力で辿り着きやがっタ)

 

(だけど、協力は約束された……

 エヴァの技術や能力が目的?)

 

(プレシアは興味があるって言ってたナァ。

 ダガまあ、どっちかっつーと、アリシアがゴ主人の保護を受けられる事の方が重要っぽい言い方だったゼ。プレシアは管理局を信じられねー親馬鹿だシ、敵の敵は味方って感じじゃねーカ?)

 

 お姉様は、別に敵対したいわけじゃないはずだけど。

 ただ、慣れ合う気も無いはず。

 敵対しやすい立場ではあるから、その点では似た立ち位置ではあるかも。

 

(リンディの協力は、どんな形で?)

 

(闇の書対策と、ゴ主人の情報隠蔽について、ダナ。

 ゴ主人と敵対して破滅するのを避けるためノ、管理局の提督としてギリギリの妥協点みてーダ)

 

(セツナとクーネもいたはずだけど、どんな反応だった?)

 

(セツナは、呆然と聞いてただけの傍観者だったからナァ。

 話も途中までしか聞かれてねーケド、ソレでも聞いちゃいけねー事を聞いちまった事は反省してるみてーダシ、口外しねーことは約束させタ。

 そのうち謝りに行くとか言ってやがったかラ、そん時の態度やらで処遇を決めてくれヤ。

 変態は元々ゴ主人と似た立場だったんだガ……まー、何ダ。夜天対策やゴ主人の情報隠蔽には随分と協力的だゼ? プレシアの昔の事件について、管理局と取引出来るような証拠資料を集めていやがったシ。

 とりあえず共有領域に送っとくから、イモート達も確認しといてくれヤ)

 

 資料受領、今なら主も直接確認可能だけどかなり多い。

 内容は……26年前の事件の資料?

 とりあえず要約してみる。

 重要な点は……本質的な意味で、プレシア・テスタロッサに罪は無いという事?

 纏め方と情報の偏りを考えると、その方向を強調しているような感じ。

 

(そう。それなら、まず、事件の根本的な発端は?)

 

 時空管理局からの密命で、プレシア・テスタロッサが個人として新型の次元航行エネルギー駆動炉の開発に着手した事。その際にアレクトロ社の社員が開発に協力する事になり、秘密裏の技術交流が行われる事となった。

 その後、アレクトロ社と時空管理局は協力してプレシア・テスタロッサを事故に関わった者として排除、技術を接収する事に成功した模様。

 

(事故に関わったのは、管理局とアレクトロだけ?)

 

 事故直後に駆けつけた“善意の救助者達”により、シェルター内で倒れていたプレシア・テスタロッサや数名分の遺体が回収され、負傷者と共に全てクラナガンの先端技術医療センターへ収容されてる。

 この際の善意の救助者達は、実態は時空管理局が雇った傭兵やジェイル・スカリエッティの関係者など。かなり手広い伝手を使って、正体を隠そうとした痕跡がある。

 治療という建前の元、プレシア・テスタロッサの体内の魔導具の交換も行われてる。なお、収容直後にアリシア・テスタロッサの遺体は保存用のカプセルに入れられてた記録が残ってる。

 

(事故の違法性については、充分な証拠があった?)

 

 当時問題とされた違法物質は強力な酸素破壊酵素。駆動炉事故そのものによる被害も大きかったけど、検出された酸素破壊酵素が生存者無しの根拠として問題視されてる。

 但し、明らかに駆動炉の実験には不要な物質。裁判ではプレシア・テスタロッサの責任ではないのではないかと言う異論も出たけど黙殺された。

 裏情報的には、研究所の近くに拠点のあったテロ組織を殲滅するために時空管理局の関係者により駆動炉近くに配置され、意図通りに近隣のテロ組織を含む“退避していなかった人々”を全滅させた模様。

 

(テロ組織の情報もある?)

 

 標的となったテロ組織は、時空管理局の研究所を攻撃目標としていた。狙われた研究所は医療技術の開発を目的としていたけど、実体は戦闘機人や人造魔導師の素体を作るための工場。そこにあった“失敗作”も“退避していなかった人々”に含まれる。

 断罪者を自称し、生命を冒涜する行為に対して正義の鉄槌を下すと主張していたテロ組織の実情は比較的まともで、手法はともかく、掲げていた目標と手を出す相手は間違えてない。

 

(つまり、受益者は管理局、アレクトロ、スカリエッティ?)

 

 必ずしもそうではなさそう。

 事故後にアレクトロ社が実験を主導していたという発表があり、その後は倒産寸前まで業績が悪化してる。

 時空管理局も、アレクトロ社や犯罪組織との繋がりが明かされ、一時的に機能や威信が低下してる。

 一方的な受益者と言えるのは、情報が洩れず、プレシア・テスタロッサを得たジェイル・スカリエッティのみ。

 

(管理局とアレクトロは、加害者兼被害者?

 一方的な受益者がスカリエッティなら、一方的な被害者がプレシア?)

 

 概ねその理解で正しい。

 但し、プレシア・テスタロッサに関しては、当時は一方的な被害者だと認識していなかった可能性が高い。

 事故の責任問題を問う裁判で、司法取引が行われた模様。ここで駆動炉“ヒュードラ”の権利を手放し、中央技術開発局も免職されてる。

 その代償に得たのが、保存処理されたアリシア・テスタロッサの遺体と蘇生技術研究への勧誘。つまり、プロジェクトF.A.T.Eへの参加。

 能力制限や就業制限、監視などは無かった。事実上の放免。

 

(庭園の資料との矛盾も無い?)

 

 アリシア・テスタロッサの遺体の劣化の少なさから見ても、死亡から極めて短い時間で保存処理が行われたのは事実と判断すべき。

 時の庭園に残されていた資料は最初からクローン技術が中心。古代ベルカの資料も存在していたけど、王を複製して死を回避していた事を示すもの。思考誘導や認識阻害に加え、これらの情報で操ってたと考えて良さそう。

 

(プレシアも、何でクローンやアルハザードに拘ってたか解らねーって言ってたからナ。

 アノ魔導具はソッチ方面じゃねーかって考えてるみてーだったゼ)

 

(いくらなんでも、プレシアに関して計画的すぎる)

 

 プレシア・テスタロッサは、主様のクローンだった。

 主様はアルハザード人で、研究者の頂点と言われてた。

 優秀な研究者の血を受け継ぐ人物として作られた可能性が高い。魔導具が交換されたという事は、それまでも何らかの思考誘導が行われていたと判断すべき。

 最初から掌で踊らされていたと言える。

 だけど、時空管理局の暗部がアルハザードについての情報をそれなりに持っているのは確実。

 お姉様の名前や能力から、真実を知られる可能性がとても高いと判断すべき。

 

(ソノためのリンディ達だろ。少しの風除けくらいにはなるだろーヨ。

 ソレに、手出しをしてくるよーなラ、後悔するぐらい盛大に噛み付いてやりゃいいンダ)

 

 それは確かに。

 でも、なるべく急いで最高評議会の居場所を見付けておきたい。

 裏でやってる違法行為の証拠も。

 手出しされないとは考えにくい。反撃の為の手札は多い方がいい。

 

(全面的に支持するゼ。リンディだけじゃ無理ゲー過ぎダ)

 

(そう。チクァーブの資料の人は?)

 

 アレクトロ社側の中心的人物だったディラン・ヒューイットは事故直前に退社して、事故には関わってない。その後は数年の社会奉仕活動に従事、この際に関係者の告発を行ってるから、プレシア・テスタロッサに対するアレクトロ社の処遇に納得出来ずに行動を起こしたと思われる。

 その後は時空管理局に入局、苛烈な犯罪者対策で功を挙げて現在は一佐にまで昇進。陸上警備隊の連隊長として、レジアス・ゲイズ中将の側近の1人となっている。もちろん武闘派で苛烈ではあるらしいけど、評判は悪くない。

 

(そう。まさか、ヒューイットが善人に見えるとは思わなかった)

 

(オレだって予想外ダ。

 全く、収拾をつけてやるナンて言うんじゃなかったゼ)

 

(お疲れ、チャチャゼロ)




やっと、ここまで来ました。
ある意味でアコノとエヴァの百合ップル成立の気配ですが、双方に恋愛感情はありません。
共依存寸前どころか、既に両足突っ込んで抜け出せない状態の様な気がしますが。


26年前の事故についての考察の様な何か:

以下の条件を満たすように、色々考えてみました。
・出来事はテレビ版を基準(正史に近い扱い)とする。
・映画はドキュメンタリー。つまり“公式発表等を元に若干脚色して作られた物”とする。
・テレビ版では、プレシアは中央技術開発局の第3局長で、駆動炉を個人で開発していた。
・映画版では、アレクトロ社で開発、上層部が実験を早め、本社からの増員が安全措置を手抜きさせたように見える。
・駆動炉なんて本来は個人で作るものではない(映画版だとかなりの人がいたし)。
・STSで“武闘派の”レジアスが高い地位にいる。

ここから、以下の様に解釈しています(クーネ資料の時系列要約でもあります)

・プレシアの駆動炉開発は、管理局からの密命(個人開発扱いでプロジェクト始動)。

・開発に必要な人員がアレクトロ社から派遣される(ディランも含まれるが、外部協力者と合同での極秘開発と聞いている。新商品開発を隠す事自体は普通にありますよね)。

・完成の目処が立つ→44話でクーネが言っていた理由→プレシア排除へ向けた動きが始まる。

・プレシア排除の動きに気付いたディラン、アレクトロ社を見限り管理局(の武闘派)に垂れ込む。

・事故発生。発生直前のやり取りは映画版に近い。
 →偉そうな人の本来の発言は「これは“管理局との協議で決まった”決定事項だよ」
 →安全措置の作業を奪った人が、事故を起こす工作担当者。

・管理局武闘派を中心とする、ディランの情報と事故発生を真摯に受け止めた人達が真相解明を頑張る。最高評議会も“やり過ぎた連中を粛清”するために武闘派の動きをほぼ黙認。

・管理局の一部とアレクトロ社、ついでに色んな犯罪者組織の繋がりが判明する。

・プレシアは“アレクトロ社の協力を受けながら、個人的に駆動炉を開発していた”とされた。
 密命については闇に葬られ、取引で決着。この際にヒュードラの権利を手放した上に中央技術開発局を免職されるが、保存されていたアリシアの遺体と蘇生に関係する可能性のある資料付きで即再就職が内定していた。

・事故は最終的に“協力と言いながら実質的な主導権を握り、開発を急がせたアレクトロ社の責任”として公表される。
 要するに、ヒュードラの権利と一緒に事故の責任を押し付けられた。
 映画版でアレクトロ社の名前が出た理由がコレ。

・ディランは“法的に問題のある開発だと認識しておらず、問題があると気付いた時点で告発を行っている”ために告訴もされず、罪も無い。しばらく社会奉仕で冷却期間(告発を逆恨みした者の報復を回避するため)を置いた後、燃える正義感で管理局の武闘派入り。

・上層部の逮捕と事故の責任問題で経営が大きく傾いたアレクトロ社、起死回生の切り札としてプレシアが開発した新型駆動炉を発表。


管理局(の暗部)が黒いだけで、大きな矛盾はないですかねー。映画版も「プレシアがアレクトロ社の社員」だと明確に示す発言は無かったと思いますし。主任と呼ばれてますが「複数組織によるプロジェクトの開発主任」という扱いなら問題ないはず。
本社という言い方も「人員の殆どを占める、アレクトロ社の社員」が使う分には不自然ではないでしょう。プレシアは言ってないですし、むしろ「作業員等は社外に出てる」事を示してる気が。本社内の開発チームなら別部署からの増援とか会社の責任とか言いそうですから、アレクトロの社内的には子会社や支社扱いになっていると思います。

良い子の諸君! この話はそもそもテレビ版と映画版が混じっているし、ここまで原作と設定の辻褄を合わせる必要が無い事に気付いても、生暖かい目を忘れてはいけないぞ! 密命の理由や事故後の管理局についての設定を見掛けた時も同様だ!



次回予告:
無印編の本編最終話、要するにジュエルシード事件のまとめと事後処理の説明回です。
あまり進展が無い話をグダグダ続ける気も無いので、妹達による設定垂れ流しで一気に説明をしてしまいますよ。
来週以降(3週分)の投稿予定はこんな感じです。
・無印編46話(最終話というか超説明回)
・番外:小話ズ その4
・無印編まとめ:登場人物の現状メモ(21時投稿予定)+A’s編01話
この後で隔週化するかは、未だに検討中です。


2022/08/26 チャチャゼロの発言を「ゴ主人」に統一

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