別荘から出てからは、比較的平和な日々が続いた。
火曜日に八神家に来たヘルパーは、おばちゃんだった。
空間が不安定で、猫は来れなかった模様。
親戚が見付かって、ひょっとしたら一緒に住むようになるかもと伝えたら、ちょっと寂しそうにしながらも喜んでくれた。
金曜日にはエイミィ・リミエッタが行っていた部屋の確保が完了。必要な機材類の搬入や、家具や必需品等の購入が始まった。
かなり大きな部屋で、高町家のすぐ近く。具体的には徒歩3分。
購入可能な部屋を借りたのは、リンディ・ハラオウンが日本の食事やお菓子を気に入り、将来はこの世界に住もうかしらとか言っていたかららしい。大きすぎて売れ残っていた部屋を賃貸契約で宛がったのは仲介した業者の手腕で、借りたのは時空管理局と関係のある企業名義。アースラのスタッフはまだ日本に戸籍が無いため、無難な処理をしているらしい。
土曜日に、フェイト・テスタロッサとアルフが教育プログラムを修了。
完全ではないものの、比較的自由な行動が可能となった。
これで事件後の後処理も現場で行える事はほぼ終わり、クロノ・ハラオウンも肩の荷が下りたのかようやく報告書を提出する事に。
但し、まだ本局への航路が安定してない。物証などが提出出来ないから、事前報告という扱いになる。
その頃、翠屋に杉並英春が現れた。
尊大な態度は職員以外の人にも変わらないらしく、とても悪い意味で障害者様的な行動が節々に見られる。迷惑そうな目を向けられてもびくともしない面の皮と心臓と神経には驚愕。勿論悪い意味で。
店頭に居たのは高町士郎。高町桃子や高町家のチャチャは裏方から出ず、他の店員は基本的にバイト。原作に登場する女性が現れなくてイライラしてたけど、最終的には怒りながら帰っていった。これで罵詈雑言でも吐いていれば出入禁止や警察の出番に出来たのに。残念。
そして、日曜日の朝、本来は開店前の時間。
予定通り、翠屋に続々と人が集まってくる。
「随分と久しぶりじゃない。もうちょっと顔を見せなさいよ」
「アリサちゃん、会うのを楽しみにしてたんだよ」
「エヴァちゃんは顔を見せなさすぎじゃないかな。
アコノちゃんばっかり来てたって、お姉ちゃんに聞いたよ」
「私にも都合があるし、なのはとはアースラで随分会っていただろう。ある程度は勘弁してくれ」
「こっちに来るのが私だったのは、不満だった?」
アリサ・バニングス、月村すずか、高町なのはの3人が真っ先に集まり、お姉様と主がそこに合流して。
「うう、何か緊張してきたわ。管理局の人と会って、本当に大丈夫なんか?」
「今いる人達は大丈夫。基本的に優しくて、協力してくれる人達」
八神はやてと八神家のチャチャも店に入ってきて。
「小学生のグループに交じる高校生や社会人って、絵面的にどーなんだ?」
「保護者か頼れるお姉さん、でいいんじゃないかしら?
初めまして、真鶴亜美っていいます。よろしくね」
「あ……私は長宗我部千晴だ。よろしく」
地球在住の転生者2人が現れて。
「そんなわけで、これからしばらくご近所になります。
よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「ああ、いえいえこちらこそ」
「どうぞ、ご贔屓に」
ハラオウン親子とエイミィ・リミエッタが高町夫妻に引っ越しの挨拶をして。
「ユーノくん、こっちこっち!」
「ちょ、ちょっと待ってなのは!」
「へー、コレがあのフェレットの中身ねぇ」
「何だか、思ってたよりも可愛い感じかな?」
人の姿で現れたユーノ・スクライアが、到着早々原作3人娘に捕まり。
「何と言うか、肩身が狭いとはこういう状態の事を指すと思い知らされるね」
「ですよねー」
「セツナ様の外見は女性なのですから、堂々としていれば問題はございませんよ」
成瀬カイゼ、セツナ・チェブルー、耳を帽子で隠した犬上小太郎姿のチクァーブの3人が女性軍団から一歩離れた場所で固まり。
「何だか、輪に入りにくそうだね。
俺は高町恭也、なのはの兄だ。君達の事はなのは達から聞いている」
「月村忍よ。戸籍とかの事で相談に乗ってほしいと言われているから、気軽に聞いていいわ」
「私は美由希。よろしくね」
高町兄姉と月村忍は、話は聞いていても見るのは初めての男性組に声を掛け。
「おねーちゃんがいっぱいだー」
「ふふ。アリシア、ちゃんとご挨拶出来る?」
「うん。はじめましてー! フェイトのおねえちゃんの、アリシアです!」
プレシア・テスタロッサと車椅子のアリシア・テスタロッサの登場で長宗我部千晴と真鶴亜美の目が点になり、自己紹介で原作娘達の目も点になり。
「ふふ、ここはまさに天国で「黙れ
姿を見せた直後に地に伏せたナニカがあって。
「遅くなってごめん。部屋の片付けが、思ったより時間がかかっちゃって……」
「急いだんだけどね。ごめんよ」
フェイト・テスタロッサとアルフが、ちょっと遅れて合流して。
「母さん。この人が、この前言ってた美味しいご飯を作ってくれた人だよ」
「こう見えて、フェイトにちゃんとご飯を食べさせた凄い子なんだよ」
「あはは、そんなにすごい人じゃないよ。
あ、初めまして。黒羽早苗っていう、料理好きなだけの子供です」
予定に無かった人が到着した。
「……ちょっと待てフェイト。どうしてそいつを連れてきた?」
今にもため息をつきそうな雰囲気。
「え、駄目だったかな?
あの部屋に行くのは今日が最後だから、母さんに会わせられるのは今日しかないと思ったんだ」
「そうか……いや、悪いわけじゃないんだ、予想していなかった上に報告も無くて驚いただけだから、気にするな。
ああ、驚かせて済まない黒羽。私はエヴァンジュ、お前と同じ転生者だ」
お姉様はこの場は任せろと言わんばかりにフェイト・テスタロッサに視線を送ると、黒羽早苗の正面に立った。
ふと見ると、リンディ・ハラオウンがプレシア・テスタロッサの隣にまで来てるし、他の人達も何だか静かになってる。全員、聞き耳を立ててる模様。
「え? あ、そうなんだ。
いやー、ボク1人かと思ってたんだけど。そっかそっか、仲間がいたんだね」
「それでだ、ここにいるメンツを見て、何か思う所はあるか?」
「ここ? うーん、綺麗と可愛いとカッコいいとカッコ可愛いしかいないなーっては思うけど?」
ぐるっと一同を見回して、黒羽早苗はこてっと首を傾げた。
「そうか……やはり、原作やらの知識は無いか」
「原作? 魔法少女ナントカってやつだよね。
名前くらいは聞いた事ある……と思うけど、中身なんて知らないよ。興味も無かったし」
「なら、ネギまも知らないか。
正確には、魔法先生ネギま、だが」
「串焼きのねぎまなら知ってるけど……魔法先生?」
「そうかそうか、知らないのか。
分かりやすく言えば、ここにいるのは原作か転生に関係する者だけだ。フェイトとアルフ……お前が食事を作っていた2人も含めてな。
というわけで、お前には選択肢がある。
ひとつ、今までの常識に生きたい、危険な事から距離を置きたい……つまり原作や転生に起因するアレコレに関わりたくないなら、ここで帰る事を勧める。
ひとつ、危険があろうが構わないから、このまま関わり続ける。
魔法少女という名で予想が付くと思うが、一般的な日常から外れる世界に踏み込むかどうかの選択だ。どちらにしても最低限の情報は私が教えるから、全く情報が無いと言う状況に陥る事はない事だけは保証しよう。
急で悪いが、どうしたい?」
「うーん、特に気にしないかな? こんな女の子達がそんなに危険な事はしないでしょ?」
「そうでもないから困るんだがな。
先週震源不明の地震があっただろう? アレはこいつらの半分以上が関わり、下手をすれば地球が壊滅する危険すらあったものに関係するんだ。
結果的に全員無事で済ませる事が出来たが、原作では生死不明者……実質的な死者も出ていた。
踏み込む先には、命に係わる危険があるという覚悟はしておいてくれ」
「覚悟、かぁ。危険だって言われてもよく解んないけど、ボクに友達を助ける力はある?」
「お前の持つ能力次第だろうな。転生する際に、何を望んだ?」
「特典ってやつ? それはあんまり役に立ちそうにないかな。
みんなにおなかいっぱい食べさせたい、食べた人には元気になってほしい、元気になったら笑ってほしい、ってくらいだし」
何という食道楽。
どこまでも食にこだわる料理人的な?
おサルのオーラの原因が未だに理解出来ない。
「食とその派生だけか……いや、フェイトの体調が良かったのはお前の料理のおかげという事になるのか?
通りで、竜巻相手に多少なりと戦えていたわけだ」
「あら、フェイトは弱くないわよ?」
プレシア・テスタロッサの横槍?
でも、当時の状況を思い出すべき。
「フェイトが弱いわけじゃなく、相手が悪かっただけだ。
話を戻すぞ。とりあえず、お前の料理は助けになる可能性はある。無理しがちな連中も体が悪い連中もいるし、希望に近い効果を得られているようだからな。
それと、魔力もかなり多いから、鍛えれば戦力としても助けになるだろう。但し、魔法に慣れ過ぎた場合は、将来地球を離れるのが最善になりかねない事も覚えておけ。地球では魔法やらは隠匿されている技術だ。大っぴらには使えん」
「なるほど。うん、それはそれで結構楽しそうだね。
転生者仲間なら小学生って演技もいらなそうだし、友達だけを危険な目に合わせるのも何だか嫌だし。
一先ずは、積極的に情報が欲しい、って選択でいいかな? 知った上で距離を置く事は、不可能じゃないでしょ?」
「お前が、それで後悔しないならな」
「うん、大丈夫だよ」
それからしばらくは、自己紹介やらでもみくちゃになった黒羽早苗。
直接の同類にあたる転生者達とは、連絡先の交換なんかもしたりしてる。
「しっかし、増えたのがアルと四葉って、なんつーネギま率だよ」
「何だ千晴、他の話の人物を期待していたのか?
とあるとFateの存在は確認しているが」
「私?」
「僕の元の話かい?」
「いや、お前達じゃなくてな。というか、カイゼは知っていて言うな」
元って何?
説明しよう! 成瀬カイゼの外見の元ネタはフェイト・アーウェルンクスなのだ!
そもそも原作や他の話って?
説明しよう! 転生とは以下略。
未来は変えられないのか、って叫んでたのは云々。
プレシアとアリシアを助けられたんだから、変えられる。変えてみせる。
みたいな会話が、長宗我部千晴とお姉様とフェイト・テスタロッサと成瀬カイゼの間であったり。
「箱入りだったフェイトと仲がいいようだし、なかなかいい腕の料理人みたいじゃない。
今度何か作ってくれないかしら? お礼はするわ」
「うん、いいよ」
「ほほぉ、男の娘との仲を公認ですか。箱から出したと思ったら、随分と気が早いのですね」
「なん……ですって…………!?」
「あ、気付いてくれてなかったんだ。何でいつもそうなのかなぁ」
「この際だ、お前達にも見せておくか。
私は大人として戸籍を確保する事になった。手続きやらが完了した後は、基本的にこの姿で行動する事が多くなるからな」
「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「おお、大人モードでございますか。しかし、エヴァンジェリンの大人バージョンはかなり長身だったように記憶しておりますが」
「別にそっちまで原作依存する必要は無いんじゃないかい?
まあ……実際に見ると、正直に言って予想以上に美人だね」
「か、完璧超人じゃない……いつか見た目くらいは勝ってやると思ってたのに……」
「お、お姉ちゃん……驚いてないみたいだけど、ひょっとして知ってたの?」
「戸籍の事で相談された時にね。
美人でしょ?」
「うん……すごく、大きいです…………」
「すずかちゃん、それはアウトや!」
お姉様の大人モード披露でちょっとパニックになったりしたけど、もうすぐ翠屋が開店する時間。バイトの店員も到着しはじめた。
「はいはい、いつまでもなのはのとこに居座るのも悪いし、そろそろ移動するわよ!」
アリサ・バニングスが手を叩きながら宣言した。
「だけど、この人数でどこへ行くのかしら?」
リンディ・ハラオウンはちょっと心配そう。
確かに、高町夫妻は店があるから動かないとしても、20人を超える人数。
行先はなかなか難しい。
「ふふふ、大学の方で五月祭をやってるのよ。
私達は付属小に行ってるから招待されてるし、祭りだからこの人数でちょっとくらい騒いでも問題無さそうでしょ?」
「なるほど、いいタイミングでやっていたのね」
◇◆◇ ◇◆◇
というわけで、バニングス家でチャーターしたリフト付きの車いす対応大型バスで私立聖祥大学へ。ちなみに、主と八神はやてを迎えに来たのもこのバスだった。
バスの中には月村家のメイドの2人とバニングス家執事の鮫島が待機していて、何かあっても安心の態勢。大学側にも連絡をしておいたらしく駐車場も確保済みと、実にスムーズ。
ついでに、全員に魔導具を渡してある。本邦初投入、認識誘導の魔法がかけてある。認識阻害と違って、特定の情報を意図した方向に認識をずらすもの。方向性が固定される上に大きく変えることは出来ないけど、内容に齟齬が出にくい。
日本は漫画やゲームの文化が発達していて一般的なものになってるから、魔法や転生についての話はそれに関するものだと思わせる事で、認識阻害の効きが悪い人にも効果が出やすい事を確認済み。副作用等も小さいため、お姉様が採用に踏み切った。
だからと言って、喋りまくるとオタクと思われる諸刃の剣。不自然だと思われない程度の効果しかないし、頼り切るのはお勧め出来ない。
というわけで、私立聖祥大学の五月祭に突撃開始。
なかなかの人出だけど、息苦しかったり、人波に流されたりするほどじゃない。
模擬店がいっぱい。謎物体な展示品もいっぱい。怪しいイベントもいっぱい。あちこちに休憩所もいっぱい。
一言で言えば、賑やか。少しくらい魔法や転生関係の会話を聞かれても気にされない程度には、日常から離れた状態とも言える。
「顔見せと親睦会だし、この人数ならいい感じの選択か」
通常モードに戻っているお姉様は、周囲を見回してる。
「ふふん、感謝しなさい。
って、いつの間にたこ焼き買ってんのよ!」
「ついさっきだ。私はあまり表に出ていなかったし、買い食いも祭りの楽しみだろう?」
偉そうに胸を張ったアリサ・バニングスがお姉様にツッコミを入れたり。
「そうか、君も刀を使うのか」
「はい、野太刀と呼ばれる大振りなものです。今は折れちゃってますけど」
「俺達が使うのは小太刀だが……そうだな、知り合いの刀匠に、直せないか聞いてみるか?」
「お願いします……あ、でも、ちょっと特殊な物なんです。
えーと、その辺はエヴァさんと相談してもらえると有り難いです」
「そうか、解った」
高町恭也とセツナ・チェブルーが刀術家繋がりで仲良くなってたり。
「今度は何を買ってきたん?」
「焼き鳥だ。こういう所ではありがちなものだが、食べるか?」
「うん、私もちょっと欲しい思ってたんよ」
「でも、焼き過ぎ」
「学生が焼いているからな。プロの味は無理だぞ」
お姉様が八神はやてや八神家のチャチャと少し焦げた焼き鳥を食べたり。
「うん、うちは下宿を受け入れようとしてたことがあったから、部屋は多いし。
落ち着いた時の行先としてどうかな?」
「それは有り難いけど、逆光源氏計画の香りは気のせいかい?」
「そ、そんな事は、ない……よ?」
成瀬カイゼに突っ込まれた高町美由希の目が泳いでたり。
「今度は焼きそば?」
「ああ。味付けが大雑把かつ薄いが、こういう雰囲気で食べるのが良いんだ」
「そう。少し貰っていい?」
お姉様が主とわけわけしてたり。
「フェイトちゃん、こんなお祭りって初めて?」
「こんなに人の多いところは慣れてないから、何だかぐるぐるで……」
「今は私達も付いてるんだし。そこまで気を張らなくても大丈夫よ」
「何かあっても、大人の人達もいるから」
「でも、あの子……アリシアって言ったっけ。本当にお姉さんなの?」
「どう見ても年下だよね?」
「うん。最近まで事故で仮死状態みたいな感じになってて、成長も止まってたんだ。
だから、そうは見えないと思うけど、アリシアが姉さんなんだ」
「そっか。回復したなら良かったじゃない」
「うん、ありがとう」
フェイト・テスタロッサは高町なのはに加え、アリサ・バニングスや月村すずかともごく自然に仲良くなってたり。
「お前達は、肉がいいか?
フランクフルトを買ってきてみたが」
「おー、いいねぇ。こういうかぶりつけるのを探してたんだよ」
「僕は、別に肉じゃなくても……」
「なんだい、アンタも使い魔ならがぶっといきなよ」
「僕は使い魔じゃないよ」
「ああ、ユーノはこっちが本来の姿だぞ。随分とペット振りが身に付いているようだが」
「え? あっちが元の姿じゃないのかい?」
ユーノ・スクライアとアルフに、お姉様が肉を渡してたり。
「ふふふ、こんな雰囲気は久しぶりです。
平和な世界、賑やかな空気、輝く少女たちの笑顔。とても、とてもいいですね」
「ですが、迂闊な事をいたしますと、何度でも殲滅されますぞ?」
「ええ、それくらいは理解していますよ。
ですが、先週までの空気が嘘みたいじゃないですか。あんなにはしゃいでいるエヴァちゃんを見れるとは、流石はくぎみーですよ。いい選択です」
「ツンやデレはあまり関係無さそうで御座いますが」
チクァーブと
「エヴァさん、今度はタイ焼き食べてるんか?」
「ああ。はやても食べるか? 黒羽もどうだ」
「お、ええな」
「うん、頂くね。
白いたい焼きは、まだ無いんだっけ?」
「アレは……どうなんだ? まだ無くて作り方を知ってるなら、うまくやれば一儲けできるかもしれんぞ」
「簡単に言えば生地に卵黄を入れないだけらしいけど、作ったことは無いんだよね。
それに、そういうので儲ける気は無いよ」
「ほー、料理色々知ってるん?
何か褒められてたし、料理が得意なんか?」
「それしか取り柄が無いくらいにはね」
料理談義を始めた八神はやてや黒羽早苗と一緒に、お姉様がたい焼きを食べたり。
「はい、あーん」
「あーん」
「……随分と慣れているわね」
「子供の相手が本職ですから」
真鶴亜美がアリシア・テスタロッサにうどんを食べさせて、プレシア・テスタロッサに手付を感心されたり。
「君は、その……怖いとか、思わなかったのか?
本来は、こんな命がけの生活を送る必要は無かったはずなんだ」
「そりゃあ、何で私がとか、全く思わんと言ったら嘘になるよ? 夜天の魔導書が無ければ隔離されたりせんで済んだかもしれへんし、その方が幸せやったのかもしれへん。
でも、あれのおかげでアコノさんやエヴァさんと知り合えたのも事実や。
今が不幸やとも思ってへんよ」
「それでも、闇の書の主という立場だと、過去に不幸な目にあった人の風当たりは強いだろう。
それも聞いているだろう?」
「うん、色々と聞いてるよ。
私がちゃんと動けるようになってからになるけど、昔迷惑をかけた人にも出来るだけ返そうと思ってるんよ。そんな人がどれくらいいるか、エヴァさんも知らんらしいけどな」
「そうか。君は……強いな」
クロノ・ハラオウンが、八神はやてと話をしてたり。
「これはどうやって食べるのかしら?」
「紙を巻くように破りながらが一番いいが、やり過ぎるとこぼれるぞ」
「少しばかりコツがいるのね」
「へー、これ美味しいですよ艦長」
「ここでその呼び方は駄目よ?」
お姉様がリンディ・ハラオウンやエイミィ・リミエッタとクレープを食べてたり。
「千晴ちゃん、だっけ。将来はエンジニアなんかを目指してたりする?」
「え? まだ特に何も考えてないけど……」
「あら、そうなの? 何だか
「いやいやいや、私はフツーの女子高生だから!」
月村忍が長宗我部千晴に近付いてたり。
「また何か買ってきたのね。
さっきから食べすぎじゃない?」
「たべすぎだよー」
「これはホットドックで、私の胃袋は特別だ。いくらでも食えるぞ」
プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサにお姉様が呆れられたり。
どう見ても、お姉様は食べ過ぎ。
屋外ステージが見える並木道で、足が止まった。
「エヴァ、どうかした?」
主がちょっと不思議そうにお姉様を見てる。
「帰って、来たんだな……」
「……泣いてる?」
涙目と言うか、涙が流れてる。
「もう、望郷の念など無いかと思っていたが……やはり、駄目だ。
私が死んだのは、ここなんだ。五月祭の打ち合わせから帰る途中だったんだ。あのまま何も無ければ……そこのステージで裏方をやっているはずだったんだ。
去年と何も変わってないんだ……タコの小さいたこ焼きも、少し焦げた焼き鳥も、味が薄い焼きそばも、ケチャップをかけ過ぎたホットドックも……」
「エヴァ……」
「町の様子やらは似て非なるものが多いだけで、違和感がある程度、むしろ古すぎて新鮮に感じるくらいで済んだんだ。
なのに、ここは……どうして、最後の記憶と変わらないんだ。名前が違うのに、私の居場所じゃないはずなのに……もう、忘れていると、忘れるべきだと思っていたのに…………!」
主がお姉様の方に車椅子を向けようとしてると、プレシア・テスタロッサが目配せしながらお姉様を抱きしめた。
「前世とか今世とか、今を生きている貴女には関係ないはずよ。
ここが貴女の現実でしょう? 不自然な記憶に振り回される必要は無いわ」
「私は……見た目通りの年齢では、ないぞ」
「転生や昔の事は、少しクーネから聞いたわ。
前世で20歳少々、アルハザードでも20歳少々、それ以外は眠っていただけでしょう。本来は60歳近い私から見たら親子くらいの差があるし、外見もフェイトとさほど変わらない貴女を子供扱いして、何が悪いと言うの?
そもそもフェイトは目覚めてから4年、アリシアなんて書類上は31歳よ。年齢詐称家族の一員を相手に、細かい事は気にするだけ無駄よ。
それでも甘えるのは子供の特権なのだし、貴女の外見は子供よ。こんな時くらいは誰かに甘えなさい」
「ふん……まるで、母親だな」
鼻で笑いつつも、お姉様はされるがまま。
ホットドックをぶつけないようにしつつ、プレシア・テスタロッサの腕の中に納まってる。
聞かれたくない情報は小声にしたり風の音に紛れさせたりと、無駄にSSクラスの技術力を発揮してるから、プレシア・テスタロッサに任せても大丈夫そう。間違いなく、すぐ横にいる主にしか全部は聞こえてない。
「あら、知らなかったかしら? こう見えてもアリシアとフェイトの母よ。
それに、作られた者として共感出来そうな出生でもあるようだし。
私には前世の記憶など無いけれど、人生を弄ばれた先人として教えられる事や、一緒に悩める事がきっとあるわ。不自然な立場と記憶を持つ娘を生み出してしまった立場や経験からもね」
「……そうだったな。
まったく……現実は非情すぎて困る」
「例えそうでも、現実は捨てたものではないのでしょう?
ところで、いつまでも泣き顔を見せていていいのかしら」
「……はあ!?」
うん、見られてる。
来てる全員に。
「あー、うん。あんたも完璧超人じゃないって事は解ったわ。
だから、前世とか原作とか年齢とか気にせずに、もうちょっと付き合いなさいよ。私達はそんなの気にしてないんだから」
「そうですよ。エヴァちゃんも外見上は美少女なのですから、同世代に見える少女達との付き合いも悪くないでしょう。
何より、美少女には笑顔が似合うのですよ。
せっかくの祭りなのですから、もっと楽しんではどうでしょう?」
お姉様が心配されてる。
でも、周囲に押されたアリサ・バニングスはともかく、
「……プレシア、ありがとう。少し離れてくれるか」
「おや? 何だか、随分不機嫌ではありませんか?」
認識阻害開始、封時結界への隔離完了。
心行くまでどうぞ。
「言いたい事は1つだけだ。
黙れロリコン! 貴様の祭りなど血祭りで充分だ!!」
「1つと言いながら2つ言ったわばっ!?」
2013/03/08の感想で頂いた「エヴァがB級グルメで涙する小話読みたいな」でヒントを得た結果がこれです。何だか原案の形をあまり留めてない&随分遅くなった気もしますが、気にしない事にします。
しかも、現状で主人公側の人員をほぼ全員集めたら、とってもカオスになりました。
更に、鮫島初登場なのに台詞無し。数少ない男性なのに、何て不憫な。
チャチャマルやチャチャゼロや八神家の以外のチャチャがハブられていたり、祭りに高町夫妻&メイド&執事が参加していなかったりするのは仕様です。それでも25人いるし……も、漏れた人いないよね?
ちなみに、早朝の人の動きはこんな感じです(翠屋到着順)。
高町家一行(士郎、桃子、恭也、美由希、なのは、高チャチャ)、翠屋へ。
→全員で開店準備。集合予定時間が近付いた頃、なのはは店頭で待機へ。
※高チャチャは最後まで裏でケーキを作っていたので出番無し。
※道チャチャは生徒が来る予定が無いので実体化していない。
月村家一行(忍、すずか、ノエル、ファリン)、車でバニングス家に移動。
※月チャチャは留守番なので出番無し。
→アリサが乗り、ノエルとファリンが降りる。
→翠屋へ。
忍は恭也の所へ(店の?調理場に並んで立っている描写は原作でもありました)。
すずかとアリサがなのはと合流。
バニングス家にチャーターしたバス(運転手付き)が到着。
→(鮫島、ノエル、ファリン)がバスに乗り、(エヴァ、アコノ)及び(はやて、八チャチャ)を迎えに行く。
※小野家の人達は既に出かけていた。
※近所の人に見られないためにエヴァは本の姿でバスへ。
※八チャチャは迎えの前に八神家入り。
→翠屋へ。
千晴と亜美は、歩いている所をお互いに発見。
→一緒に翠屋へ。
アースラから、(リンディ、クロノ、エイミィ、ユーノ、プレシア、アリシア、カイゼ、セツナ)が翠屋近くの公園に転移。
→待っていたチクァーブが合流。
→翠屋へ
クーネ、直接翠屋へ現れる。
アースラから、(フェイト、アルフ)が片付けの為に借りていた部屋へ移動。
→片付け。
→黒羽早苗に引っ越しの挨拶。この際、主にアルフ主導でプレシアに会わせたいと連れ出す。
→翠屋へ。
2013/09/02 プレシアの台詞が周囲に全部は聞こえてない説明を追加
2015/04/09 ファイル→ファリン に修正(後書きのみ)
2019/09/23 先週地震が→先週震源不明の地震が に変更