日が変わり、日曜日。
今日のお姉様は、主と一緒に高町家の道場にいる。もちろん、道場のチャチャもいる。
成瀬カイゼとセツナ・チェブルーのアースラ在住組が日本に来るという事で、ここが待ち合わせになった。
すると当然、高町なのはがいて、遊びに来ているフェイト・テスタロッサがいて。ちなみにユーノ・スクライアはクロノ・ハラオウンの手伝い、アルフはプレシア・テスタロッサと一緒に黒羽早苗を先生にして料理の練習中らしい。
よく一緒に来る長宗我部千晴と真鶴亜美が来て。
今日は賑やかだなと言っている間に、ここしばらく入り浸ってる夜月ツバサが現れた。
「な、何よこれ……」
現れたのはいいけど、夜月ツバサがへたり込んでる。
そういえば、転生者が複数いるという話はしたけど、今日いるとか、どんな人かと言った話はしてない。
「ああ、お前も来たか。ついでだから紹介するぞ。
夜月ツバサ、なのは達と同じ小学3年だが、他人の悪意に晒され続けて精神的に病んでいた転生者だ」
「何よその紹介は!?」
「事実だろう? それに、過去形で言えるようになっただけ良かったじゃないか。
ちなみに、ここには魔力を感じ取れたせいで恐怖に耐えられなかった者や、犯罪組織で殺人術を叩き込まれた者、魔物と命懸けで戦ってきた者もいるんだ。
普通じゃないという意味での同類がいるぞ」
「古代ベルカと言えば戦乱というイメージがあるけど、エヴァさん自身はどうなんだい?
実力を考えても、平和だったとは思えないんだ」
成瀬カイゼに突っ込まれて、全員の目がお姉様に向いた。
確かに、あまり言ってない事かも。犯罪組織出身という話を流したいという意図が見えるけど。
「確かに戦乱というイメージは間違っていないな。戦場に立った事もある。
これ以上は、一応本物の8歳児が居る場で言う事じゃないだろう?」
「一応じゃなくて、本当に8歳なのっ!」
お姉様は高町なのはを見てるけど、本人に微妙な点を訂正された。
ここに居る中で、唯一の“名実精神の年齢が一致する”はずの人物。なんてレアな。
ついでに、生なの頂きました。
「そうは言っても、とても8歳とは思えん言動だぞ?
6歳の時点で、大事なものを取られた人の心はもっと痛いと言い放つとか……お前も転生者だと言われても、信じる自信がある」
「ち、違うよっ! 違う人の記憶なんて無いよっ!!」
「いや……弄り過ぎた私も悪いが、本来持つべきじゃない記憶を持っていないのは、この場だとお前だけだからな?」
「……あ」
高町なのはの表情が固まった。
ここにいるのは、高町なのは、転生者達、アリシア・テスタロッサの記憶を持つフェイト・テスタロッサ、お姉様の前世の記憶を扱える私達の一員である道場のチャチャ。
私達については知られてないけど、とっても失言。
「ごめん、なのは……」
「フェ、フェイトちゃん!? そんなつもりじゃないよ!」
微妙に落ち込んでいくフェイト・テスタロッサと、あわあわしてる高町なのは。
ちゃっかり真鶴亜美がフォローしに近付いたりしてるけど、それよりも今は、このタイミングで登場したネズミ姿のチクァーブの方が問題。
「おや、随分と賑やかでございますな」
「ね、ネズミ!?」
「はい、ネズミでございます。
見たところ御同輩の様でございますが、間違いございませんか?」
「私はネズミじゃないわよ!」
夜月ツバサが驚くのは予想出来てた。でも、やっぱり弄られ役らしい。
ついでに新しい顔の紹介をしておくという事で、Fate組の2人も呼び出し。
2人ともアースラで魔法の練習をしてたから、すぐ合流に成功。
高町家の庭には、転送用に片付けられた場所が用意されてる。家族に事情がばれてるのは、こんな時に便利。
「ほら、千晴お望みの、ネギま以外の連中だ。Fate/Zeroの主従コンビだな」
「……でっか」
長宗我部千晴の目が点になってる。
馬場鹿乃の身長は210cmを超えてるから、160cmちょっとの長宗我部千晴から見ても、大人と子供くらいの差がある。130cmのお姉様とは比べちゃいけない。
馬場鹿乃の胸辺りまでしか届かない長宗我部千晴の胸辺りまでしかないお姉様。馬場鹿乃と並ぶと腰くらい。
(延々と説明するな馬鹿者!)
「小中学生が多いから、余計に目立つね。
だけど、説明を僕達やアースラに丸投げしたエヴァさんは、この2人をどう扱いたいんだい?」
「あの日は私も色々あって疲れていたんだ、勘弁してくれ。
とりあえず、裏の世界に関わらざるを得ない力を持っているのは事実だ。その警告と、管理局との繋ぎはしたから、あとはこいつら次第だな。
私が積極的に関わろうという気になる相手でもないし」
「酷い扱いだなオイ」
「だけど、私達には何か理由がある、という事になるわよ?」
馬場鹿乃がため息をついてるけど、真鶴亜美はお姉様の言い方が気になったらしい。
打算で関わってると思われたかも。
「理由を言うのは構わんが……聞きたくない者はいるか?
いるなら、席を外してくれ」
お姉様は言ってから全員を見回したけど、誰も出て行かない。
むしろ興味津々。
説明は長いから省略。
簡単に言えば、協力者の成瀬カイゼとチクァーブ、能力のせいで苦しんでいた長宗我部千晴と夜月ツバサ、殺される可能性があった際に見付けられた真鶴亜美、人外仲間のセツナ・チェブルー、主従の主と私達、みたいな感じ。
原作関係者は、闇の書対策で協力が必須。プレシア・テスタロッサを助けたのも闇の書対策に協力してほしかったからだと説明。
「ついでに言えば、亜美はアースラと接触する前だったから私達が教える事だけを提案したんだ。今ならアースラの連中に教えてもらう選択肢も出せるからな。
要するに、アースラという選択肢を出せるようになってから接触した馬場と上羽、ここにいないが黒羽に関しては、立場と状況さえ理解しているなら、魔法やらを教えるのは私である必要は無いという事だな」
「つまり、今からアースラ側に乗り換える事も可能という事かしら?」
「乗り換えたいのか? そうだな、亜美はミッド式のデバイスが入手出来れば大丈夫だろう。特に問題は無いはずだ。
セツナは、戦闘スタイルやデバイスに求める特性を考えると、ベルカ向きだな。
千晴とツバサは、能力を抑える手法が変わると問題が出るかもしれん。特にツバサは特殊な魔法を使っているから難しい。
カイゼとチクァーブは……遠距離魔法の種類や汎用性を考えると、ミッド式の方が向く可能性はあるな」
「我等は、当面はベルカ式を極める事を考えております。
少なくとも、エヴァ様から頂いたデバイスをきちんと使いこなせるようになる事は必須でございます」
「入門用と聞いているのに、出力以外の底が未だに見えないからね。
エヴァさんの技術には驚くばかりだよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
アンタ達、デバイスを貰ってるのか!?」
チクァーブと成瀬カイゼはお姉様に従う方針らしいし、特に不思議じゃない。
馬場鹿乃が妙に反応してるのは、きっと自分達が無償じゃなかったから。
「アコノ以外は、入門用のものだがな。お前達が持っているデバイスの方が、魔法行使に関する性能はいいはずだぞ?」
出力的な意味で、だけど。
多彩さや柔軟性に関しては……うん、お姉様の勝ち。得手不得手や好みを調べるためにも、最大出力と速度を犠牲にして、かなり多めに魔法を記録してある。
反応速度は、黒龍を除けば上羽天牙のストレージデバイスが最速。アースラまで含めたらS2Uになるけど、インテリジェントなデバイスは黒龍並みに無茶な最適化をしない限り、どうしても若干遅くなる。高性能なレイジングハートやバルディッシュでも、傾向は変わらない。
「……慰めにならねぇよ」
「出世払いで、今は借りてる状態なんだけど……」
馬場鹿乃と上羽天牙がどんよりとしてる。
ベルカ組にはお姉様が無料であげたり貸したりしてるから、扱いの差は大きい。
その様子を見てか、真鶴亜美は乗り換える事を検討する気が無くなった様子。なんて現金な。
「私が使う魔法や作るデバイスはベルカ式だ。ミッド式は私が教えてほしいくらいだしな。
それに、アースラと交渉する前に会っている連中は、私がベルカ式を教えるか、魔法に関わらせない選択肢しか無かったんだ。アースラの連中だとベルカ式は知識不足の様だから、引き継ぎも出来んしな。
だからと言うわけではないが、はやても私の管轄にする。異論は認めん」
ついでに、お姉様の名前が八神エヴァンジュで、八神はやての親族と認められない程度の血縁者になる事を説明。大人モードになり、これが地球での“公式設定”になったと宣言した。
ちなみに、月村忍や五月祭の時に見せた時と同じ、グレーのスーツ姿。
「あれか、闇の書で助けたい人関係って事か?
どんだけガッツリ介入するんだよ」
長宗我部千晴の目が点と言うか、呆れ方向に突き抜けた感じの半目になってる。
「まあ、アレだ。闇の書を夜天の魔導書に戻すために、使えそうな手は打っているという事だ。
はやても子狸の片鱗くらいは見せる事もあるが、可愛い娘だ。アコノやなのは達とも仲良くしているしな」
「もう何も言わねーから好きにしてくれ。
とりあえず、もう守護騎士に襲われるって事は無いんだよな?」
「無いな。そんな事は私がさせん。
もっとも、必要があればリンカーコア蒐集への協力は頼むかもしれんが……特殊な能力がコピーされると不味いから、恐らくそれも可能性は低いだろう」
「解った解った。世話になってるんだし、必要なら協力するって」
「可能性の低い話だし、本当に必要になった時は改めて説明するさ。
そろそろ私の本来の目的だ。セツナとカイゼ、ちょっと来い」
「はい、何でしょう?」
「日本を観光する予定だったけど、目的があったのかい?」
お姉様に呼ばれたセツナ・チェブルーと成瀬カイゼ。
普通に歩いてくるけど、ちょっと不思議そう。
「お前達用の、新しいデバイスだ」
「え? いいんですか?」
「今のデバイスも使いこなせている気がしないけど、大丈夫なのかい?」
「お前達の魔力量に出力が追い付いていないからな。スタイルもある程度見えてきたし、空間が安定したらミッドに行って嘱託魔導師の勉強と試験だろう?
なら、渡せるうちに実力の伸びを見込んだデバイスを渡しておくべきだろう。
セツナには刀に近い型、カイゼには銃型を用意した。シグナムの剣とティアナの初期の銃に近いものだと思えば間違いない。共に管理局でカートリッジを入手出来る仕様のカートリッジシステムを組み込んでいるが、扱いには気を付けてくれ。
新しいデバイスは実用性重視だから、今のデバイスはそのまま教師役として持っているといい。
あと、セツナには悪いが……大きさや形は野太刀をベースにしたんだが、刀と言うよりは木刀に近いもので、物理的な刃は付いていない。魔力刃は展開出来るから、当面はこれで我慢してくれ。
正直言って出来に納得していないし、刀匠とも話をしているから、次でリベンジする予定だ」
刃を外したのは、質量兵器に該当する可能性を懸念しての事。
でも、Vividにバスを切り裂いてるアスリートがいる事を忘れてたお姉様。
設計中、刃をどうするか決める前に相談してくれれば、付けられたのに。
(……メンテナンスの手間と、日本で見られても違法にならないように、って理由も一応あるんだぞ?)
後付けの言い訳オツ。
「いえ、充分です。また刀を振れるなんて……」
セツナ・チェブルーが、嬉しそうに刀として実体具現化したデバイスを抱きしめてる。
何と言うか、危ない人にしか見えない。
「デリンジャーをモデルにして、管理局仕様のカートリッジを組み込んだのかい?
良く準備出来たね」
成瀬カイゼは中折れ式の銃を弄りながら、感心した様子で呟いてる。
何をどうしたのかをきちんと理解出来るのは、魔法を使う犯罪組織であっても銃の知識が必要だったからかも。
「カートリッジについては、アースラ経由で情報を貰っただけだ。本局との通信はどうにか繋がっているからな。
CVK792の型番号は原作で知っていたから、それとそれに使えるカートリッジの情報さえ解れば、後はどうにかなるさ。元々、聖王教会で保管されていた真正古代ベルカ式のデバイスを参考にして、ミッド式で使えないか試していたものらしいしな。一般的でないだけで、ベルカ式としては古くからある代物だ。
ただ、かなり廃れている技術で、ごく一部の物好きが使うレベルだから生産量はかなり少ないようだし、聖王教会でも主流ではないようだ。魔力の充填は自分でも出来るから、余裕があったら覚えておいた方がいい」
「でも、カートリッジ、って何ですか?」
成瀬カイゼはこれが何か理解してるけど、セツナ・チェブルーは知識不足。
お姉様が使っているところは見ても、それが何かは解っていなかったらしい。
「悪い言い方をすれば、魔力ドーピングシステムだな。
自動車に
「えーと……危険性は……」
セツナ・チェブルーの顔が引きつってる。
お姉様が腕に怪我を作っていたのは見てるはずだから、それを思い出してるかも。
「もちろん、ある。
例えば、私がやった様な数十発の同時ロードなんて、普通の人間がやったら間違いなく体が吹き飛ぶぞ。使い方を間違えれば死ぬという極端な例だな。
もっとも、渡すデバイスの装填数は2発で、2発使う場合でも順にロードする必要がある。装填も手動だし、お前達の魔力量なら多少失敗しても怪我や体調悪化で済むレベルだ。
扱いを間違えなければ頼りになる切り札になるものだから、うまく使ってくれ」
「そ、そうですか……」
ぽんぽんカートリッジを使ってたA’sやStrikerSを知らないセツナ・チェブルーは、かなり警戒してる。でも、成瀬カイゼは納得の表情。
「エヴァさんは、命がかかった場面、譲れない状況なら使える手は使えと言っているだけだよ。
もちろん、普段は無理しない方がいい。そういう事だね?」
「そういう事だ。ある程度扱いに慣れるための訓練はしておく事もお勧めするがな。
それに、お前達の魔力はかなり多いんだ。相対的にカートリッジの負荷は小さいし、頼る必要のある場面も多くは無いだろう。
そうだな、効果も見せておくか。アコノ、封時結界を頼む。黒龍セットアップ」
お姉様、大人モードのまま防護服を展開。
服装自体は通常状態と……変わってる。長袖になってたり、スパッツというか最早長ズボンになってる上にスカートもロングになったりしてる。
ただでさえ魔法先生ネギま12巻の武道会での服装より露出が減ってたのに。どれだけ素肌を見られたくないんだと、問い詰めたい。
その間に主も東風檜扇と南風末広を起動、カートリッジ4発を使って封時結界を展開。
「まずは、未使用状態だ。
今の私の魔力量はC相当。馬場鹿乃と同水準で、お前達はおろか、武装局員と比較しても少ない量だな。
セツナ、新しいデバイスで……っと、名前を教えていなかったな。そのデバイスの名前は不知火だ。ちなみに、カイゼのは天津風だぞ。
とりあえず、それで高速狙撃弾を撃て。
「え? でも、その障壁では……」
「心配するな。抜かれようが、当たらなければどうと言うことは無い」
「はぁ……解りました。ちゃんと避けてくださいね。
不知火セットアップ。行きます、
新撰組っぽい恰好になったセツナ・チェブルーが放った魔法弾は、お姉様の障壁をあっさりと破壊。
僅かに体をずらしたお姉様の左腕のすぐ横を通過して行った。
「とまあ、こんな感じであっさりと抜かれるわけだ。
ここで、カートリッジを使うとどうなるか。ロードカートリッジ、
ぱしゅんぱしゅんぱしゅんぱしゅん、と4発の連続ロード。同時ロードより時間がかかるけど、この方が負荷は少ない。
展開した障壁はさっきより明らかに厚く、存在感がある。
「では、いきます。
再びセツナ・チェブルーが放った魔法弾は、今度は障壁で小さな爆発を起こした。
さっきより調子の良さそうな感じだったけど、不調じゃなければ別にいい。
「こんな感じで、障壁を硬くすることも出来るわけだ。
装填してあるから、今度はカートリッジを1発使って撃ってみろ」
「は、はい。えーと……ロードカートリッジ、
ぱしゅっと薬莢が排出され、撃ち出された魔法弾。
それは一瞬障壁の表面で雷撃を放ったかと思うと、あっさりと突き抜けてお姉様の左腕を抉っていった。
「おお、凄いな。予想よりだいぶ威力が上じゃないか」
「凄いなじゃないです! 避けるって言ってたじゃないですかっ!!
だいたい、非殺傷設定とかいうので怪我しないはずじゃないんですか!?」
「ロードカートリッジ、
ちょっと涙目で露出した骨を見てるお姉様と、涙目でお姉様に詰め寄るセツナ・チェブルー。
その隙に治癒魔法を準備してた主があっさりお姉様を完治させて、何事も無かったかのような顔をしてる。
ちなみに、治癒の為に4発の連続ロード。同時じゃないから主に怪我とかは特に無いけど、詰め寄る時間は充分あった。
「いや、本来はカートリッジ1発でここまで威力が上がるわけが無いんだが……それと、私は魔導具で、この体は魔力で出来ているんだ。死にはしないが、純粋魔力攻撃など急所攻撃に等しい代物だぞ。消費を抑えるために少々脆くなっているのは認めるがな。
まあ、あれだ。観光の後でいいから、ちょっと検証に付き合ってくれ。お前も安心して使いたいだろう?」
「は、はあ……」
ちょっと涙目のままなのに、お姉様は何だか嬉しそう。
魔力抑制に伴う希薄な実体の脆さが出ちゃったけど、その分コアは超圧縮状態でアルカンシェルすら耐えかねない状態だし。主の治癒魔法無しでも簡単に復元可能だから、大きな問題は無い。
……無いよね?
「よし、ついでだ。ここにいる中で、魔力量を増やすトレーニングをしたい者はいるか?
高負荷と開放を繰り返すアレだ。有り体に言えば、Vividで行っていたものだな。
10代前半が最も効果が大きいが、お前達ならそれなりに伸びる年代のはずだ。
さあ、どうする?」
◇◆◇ ◇◆◇
結局、高町なのはとフェイト・テスタロッサを含む、殆どの人がトレーニングを希望。逆に言えば、存在維持に魔力が必要なお姉様、主、私達、それにチクァーブが対象外となった。
観光はまた後日という事になり、この日は説明と訓練で終了。
解散の時、少し離れたところに東渚がいたけど、見送りに出た主がそれを説明して別の道から帰らせた。ついでに視線で牽制、余計に主が敵意を買う結果に。
その頃、お姉様はセツナ・チェブルーを他言無用の約束をした上で別荘に連れて行き、カートリッジ使用の際の予想以上の威力上昇や、気に関する集中調査。
その結果。
「電気の変換資質は解っていたが、集束に関する高い能力とそれ以上のカートリッジシステムへの適性。それに……魔力素を直接制御する力、か。
まさか、原油で飛行機を飛ばす様な技術を本気で確立しているとは……」
判明した気の正体。魔力素を直接使用した、身体強化や魔法に似た効果の発現。
StrikerSで登場した
お姉様の虚数空間再現方式の
反応があった魔力は、魔力素を集束する際に一緒に集まる魔力の反応だった模様。
魔力素の濃度や質を測る技術はあるけど、動きを捉えるのは困難。ミッドチルダに良い技術が無いか調査したいけど、変に情報を漏らせない。
内容を考えると、咸卦法は無意味かも? 魔法には劣化ガソリンを使う様な物だから無意味。気の技に魔力を混ぜた際の影響は要調査。
「えーと、つまり、まだ隠していた方がいいんですよね?」
「今のところは、そうなる。薄氷の上に成立している技術に思えるから非殺傷にするなど悪夢のような作業になるだろうし、仮に理論が出来ても使える者が現れると思えん。
だが……いや、まだ可能性でしかないな。
今後の調査次第では、ひょっとするかもしれん程度だ。とりあえず、私達に気の使い方を教えてくれないか? 生命力云々ではなさそうだし、私達にも使える可能性がありそうだから、今はもっとサンプルが欲しい。もちろん、信用出来る相手にしか伝える気は無いぞ」
「あ、はい。解りました」
ようやく出た、この話での「気」の正体。魔力素を直接用いる魔法もどき。生命力云々、ではありませんでした。
やっぱり対AMFで効果を発揮します。対AMF最強かどうかは……どこまで使いこなせるかと、物理装備の可/不可によるかと。AMFは科学兵器に無力ですし。
原油(魔力素)からガソリン(魔力)を得る方法(リンカーコア)がある時に、原油で動くエンジンを作ろうとする人は稀でしょう。技術的に難が多く、得る物が少ないですから。
リンカーコアを知らない文化だと、そもそも魔力素の存在にどうやって気付くかという壁があります。
なお、
今後の投稿についてですが、もうしばらく木曜投稿を維持する方向となりました。
正月の企画は無理そうですが、完結までペースを維持出来るといいなぁという方向で頑張る予定です。
2013/09/20 デリンジャーをベースにして→デリンジャーをモデルにして に修正
2018/10/10 馬場鹿野→馬場鹿乃 に修正