青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編07話 チェンジ

 調べたい事、やるべきことが多くある中、平日は平和に過ぎてく。

 とはいっても、お姉様は寝る間も惜しんで……と言うか、眠らなくてよい体質を活用し切って、夜間は従者や使い魔達と気の訓練に明け暮れてる。

 気を使うために必要な資質や、実際の効果の確認をしたいらしい。

 従者や使い魔達は眠る必要があるけど、睡眠時間をずらしたりしながら嬉々として参加。体調には気を使うべきだけど、楽しそうなので何より。

 この頃には八神はやても別荘に招待して、魔法を使っての補助付きで色々楽しんでる。自力ではないけど、空を飛ぶ事だって可能。だけど主の魔法の練習が羨ましいせいか、気の練習に参加する事になった。

 

 火曜日には、お姉様とチャチャ、共に大人バージョンのスーツ姿が、八神家でヘルパーのおばちゃんと会った。

 八神はやてに紹介してもらって挨拶、その後は聞いておくべき注意点などを聞きつつ、おばちゃん最後のお仕事。

 夕方になり、寂しくなると言うおばちゃんに、お姉様は知り合いと疎遠になるのも寂しいだろう、たまに会いに来てやってくれと話をしてた。

 

 その夜、月村忍から連絡があり、2つの手続きが完了した事を知らされた。

 つまり、本日を以て“小野アコノ”は “八神アコノ”になり、お姉様が八神はやての未成年後見人になったという事。どんな裏技を使ったのかは教えてくれなかったけど、随分と手が早い。

 但し、裏の仕事もやってる弁護士から問い合わせが来た事を知らされた。妹の友人を助けるためだと誤魔化したし、後ろめたい手は使ってないから法的な問題は無いけど、注意しろとの事。

 注意はしても、やる事は変わらない。

 水曜には学校への手続きやらを開始、同時に八神はやてが大はしゃぎ、2回目。

 お姉様や八神チャチャを連れ出して、再び主の生活用品の買い出しに行ってた。

 

 この頃にはアースラスタッフの一部や、テスタロッサ家の3人も日本での戸籍を確保し終わったらしい。

 アースラからはハラオウン親子とエイミィ・リミエッタの3人という辺りは、何だか原作のハラオウン家地球在住に繋がりそうな予感。ただ、安定した拠点の確保に使うつもりはあるものの、すぐに何かをする気は無い模様。

 テスタロッサ家は、日本ではアリシア・テスタロッサとフェイト・テスタロッサは双子の姉妹扱いとなった。アリシア・テスタロッサが姉で、事故による仮死状態だった間は成長が止まっていた事に。一応裏側の事例に似た物があったため絶対に無いと言えないらしく、ちょっと怪しいけど何とかなったらしい。

 両家とも住所はアースラの現地拠点で、テスタロッサ家はハラオウン家に居候している扱いにするらしい。アルフはザフィーラと同様にペット扱い。子犬モードを教えたら嬉々として使ってた。

 

 というわけで、大きな問題も無く土曜日になり。

 今日は主の引っ越し。持ち物は少ないし、移動する大物の家具も業者任せ。それもベッド、本棚1架、タンス1棹、机1卓程度。椅子は無い。

 服は少なく、本棚には学校の教材やノート類しか置いてなかった。無趣味を極めるとこうなるらしい。

 八神はやてや八神チャチャと、主の家族との挨拶も滞りなく終わった。

 もちろん、お姉様と八神チャチャは大人モード。地球で誰かに会う時は、基本的にこちらの姿で過ごす事になっている。

 

「それにしても、アコノさん。

 普段ジャージばっかやと思っとったけど、タンスの引き出し2本分しか服が無いのはあかんよ。

 それも、学校の制服とジャージばっかりやし」

 

「別に着飾っても嬉しいと思えない。それに、すぐ小さくなる服にお金をかける意味が無い」

 

「言ったなアコノ。

 お前が着飾ると私が嬉しいし、両親に写真を送る約束もある。それに、不老で成長が止まったから服が小さくなることも無い。

 と言うわけで、服を買いに行くぞ」

 

「おお、ええな。でも、エヴァさんはセンス……自信あるか?」

 

「……元男の私に聞くな」

 

「ふっふっふ、こんな時は助っ人や。ちょっと待ってな」

 

 怪しい笑みを浮かべながら携帯電話でメールを出した八神はやて。原作では守護騎士の服を選んでるし、今の服装……白の半袖フーディーにオールドローズのミニスカートを見ても、別にセンスが無いわけじゃないはずだけど。

 その30分後には、八神宅に7人増えてた。

 内訳は、テスタロッサ家3人にアルフ、監視役のリンディ・ハラオウン、アリサ・バニングスと月村すずか。

 随分と多い。

 

「アリサとすずかは解るが……他の5人を呼んだのは何故だ?」

 

「今からのイベントはな、ふっふっふ……

 エヴァさん、アコノさん、チャチャちゃんのイメチェン大作戦や! いつも似たような服しか見てへんし、みんな美人さんやのに服装に無頓着なのは世界の損失や!

 アリサちゃんとすずかちゃんはセンスありそうやったし、プレシアさんはエヴァさんが何か弱そうやったから呼んだんよ。他の人達は……呼んでへんよ。何でいるんやろ?」

 

「フェイトも黒系の服ばかりだから、他の色も着せてみたいのよ。アルフもガサツな服装だし。

 アリシアは買い物に連れて行かない理由が無いでしょう?」

 

「私は、プレシアさん達の監視役ね。

 それに私は娘がいないから着せ替えも出来なくて。この際、一緒に楽しみましょ」

 

 周囲の人達は、どう見ても強制連行の雰囲気。

 何だか、お姉様からドナドナが聞こえてくるような雰囲気になってる。

 

「……お手柔らかに頼む」

 

 諦め……た?

 強制連行、目標試着室。

 連★行ー!

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 そんなわけで、やってきたのは商店街にある大きな服屋。

 八神家に車椅子対応のバスが記載された時刻表があったから、普通に路線バスに乗って移動。

 車椅子が3脚になるけど、アリシア・テスタロッサのものは軽量で折り畳みも可能。本人も幼いし、プレシア・テスタロッサの膝の上で楽しそうにしてた。

 特に混雑する時間帯でもなく、美女美少女の集団に目尻を下げてた男達がいただけで、実害や問題は無かった。当人が隣の女性に睨まれてたりしても、お姉様達の責任じゃない。

 

「と言うわけで、早速着せ替えや!

 アリサちゃん、エヴァさんはどんなのがええと思う?」

 

「似合うかどうかはともかく、まずはこれよ!」

 

 アリサ・バニングスが持ってるのは、ライトブルーのチューブトップワンピース。肩紐なしでミニスカート。リボン風にデザインされたベルトがワンポイント。総レースで花柄になってるけどあまり主張はしてない。

 本人は白いシャツに赤いオーバーオールスカートなのに、方向性が随分と違う。

 

「ちょっと待て大柄な私にそれは似合わんしそもそもそんな露出の多い服は絶対に着んぞ全力で拒否するぞ無理に着せようとするなら全力で逃げ出すぞ!!」

 

「むー、せめて息継ぎぐらいしなさいよ」

 

「それに、慌てすぎだよ?

 アリサちゃんが持ってるの、フェイトちゃんのサイズだよ」

 

「……あ」

 

 どう見ても子供サイズの服と大人モードの自分の体を見て、お姉様の表情が固まった。

 アリサ・バニングスは困った表情だけど、月村すずかはくすくす笑ってる。

 

「それなら、次はこれや」

 

「オトナのミリョク~」

 

 八神はやてとアリシア・テスタロッサが持ってきたのは、黒いロングのシフォンチュールワンピース。当然の様にノースリーブだけど背中が開いてない分、八神家で最初に設定した物よりは露出も少な目。

 今回は、どう見てもお姉様のサイズ。

 

「……私をどうしたいんだ」

 

「最初のドレスの破壊力が抜群やったから、もっかい見せてもらお思ってな?

 それに、あの可愛さに対抗しよう思たら、これくらいの威力が必要や!」

 

 八神はやての視線の先には、アリサ・バニングスに服を着せられようとしてるフェイト・テスタロッサが。

 このタイプの服は見慣れてないのか、着る前からちょっと恥ずかしそうにしてる。バリアジャケットはアレなのに。

 

「……一度着るだけだ。絶対に買わないからな」

 

「よっしゃ、勝った!」

 

「何が勝っただ……」

 

 お姉様はため息をつきながら試着室に。

 その間に、月村すずかが次の服を持ってきた。

 

「はい、アコノちゃんの分」

 

 クリーム色のTシャツに、似た色のシフォンスカート。赤いカーディガンと茶色のニーハイソックスまで持ってきてる。

 明らかに試着を前提にしてない。しかも、スカートと靴下の長さを考えると絶対領域が姿を見せるはず。

 恐るべし月村すずか。ダークブルーのワンピースにライトブルーのカーディガン姿とは思えないくらい可愛い感じにまとめてきた。

 

「じゃあ、これで」

 

「試着はしないの?」

 

「ソックスは試着できないし、試着も車椅子だと手間がかかる。

 だから、今度会えそうな時に着る」

 

「そ、それでいいんだ……」

 

 確かに、試着は大変そうだけど。

 魔法を使えば簡単なのに。

 

(こんな事で、秘匿に注意しながら魔法を使うのは良くない)

 

 さいですか。

 そうしているうちに、お姉様は八神はやてに写真を撮られた上で、プレシア・テスタロッサが持ってきた服を着させられてる。

 デニムベースでレースをあしらったノースリーブのシャツに、明るい色のスキニーパンツを合わせてる。

 

「うーん、いまいちね」

 

「……そうか」

 

 お姉様は、悟った様な諦めたような、とりあえず疲れの見える表情で遠い目をしてる。

 でも、プレシア・テスタロッサの後ろにいる、ワクワクした目をしたアリシア・テスタロッサが持ってる服よりもいいと思う。

 具体的には、普通の服だったという点で。

 

「つぎは、これー!」

 

 そう言って出されたのは、処分品のタグが付いたもの。

 袋には、クリスマス衣装・猫娘(黒、猫耳カチューシャ付き)って書いてある。

 

「あ・ほ・かー!」

 

「きゃー、おこったー」

 

 きゃっきゃと笑いながら、アリシア・テスタロッサが逃げてく。

 逃げて行った先には八神はやてと、赤いポロシャツにデニムのオーバーオールを着させられて、どことなく真理夫風になったアルフの姿が。

 

 その横には、月村すずかに服を乗せられてる主の姿もある。試着してくれないから、あててみる事だけでもしたいらしい。

 服は、デニムのワンピースに白ニットのシャツ。ベージュのジャケットは普通に着てる。

 

 それを手伝っている八神チャチャはというと、アイボリーのブラウスと紺のロングスカートを着てる。コルセット風の大きなベルトがポイント。

 選んだのは、すぐそばに居るリンディ・ハラオウン。

 

「……アコノ達は平和だな」

 

「素材も反応もいいものだから、色々とやりたくなるのよ」

 

「…………勘弁してくれ」

 

 プレシア・テスタロッサの手にある、黒のチューブトップと薄紫のカーディガンを見て、お姉様がげんなりしてる。

 良く見るとチューブトップが凄く短いから、胸元や腹を見せるための組み合わせらしい。

 お姉様は、逃げ出した!

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 しかし、回り込まれた! 大魔お……大魔導師からは逃げられない!

 というわけで、それからも延々と着せ替えは続き。

 夕方になり、今から帰って食事の準備をするのも面倒だという事で、一緒に食事をする事になった。

 入った店は、創作料理を出すらしい居酒屋。駅近くの割には店内が広く、ゆったりしていたのが選択理由。

 

 ちなみに、お姉様の今の服は、明るいグレーと黒のストライプの長袖シャツに、濃い紺のデニムレギンス。胸元は下に着てるチュニックでカバー。

 素肌はあまり見せてないけど、体の線は結構出てる。シャツの裾を括ってヘソ出しにさせられそうになったのは、全力で拒否してた。

 

「疲れた……」

 

 お姉様はワインを手に、垂れてる。

 めっちゃ垂れてる。どこぞのスライム熊猫みたいに。

 

「視線が気になると言っても、その容姿なのだからどんな服装であろうと注目されるわ。

 早めに諦めるか慣れるかしなさい」

 

 ソルティードッグを手に、プレシア・テスタロッサが笑ってる。

 今の普段着がシンプルなライトグレーの長袖チュニックと、グレーのロングスカート、共にちょっと青みが強い感じ、しかも胸元はちゃっかりダークグレーのチュニックでカバーしてるという事を考えると、あまりお姉様の事を言えない気もするけど。

 時の庭園で着てた防護服は……半胸ヘソ出し腰出し。うん、お姉様に薦めてた服の趣味は露出狂寸前のこっちに準拠するみたいな?

 

「そうね、容姿にまつわる視線は、余程の事でもない限りは無くなる事が無いし。

 その姿が公式のものになっている以上、どうしようもないわ」

 

 リンディ・ハラオウンはというと、黒いタートルネックのアンダーに白いシャツ、砂色のベストを着てる。焦茶のタイトスカートの下にはダークグレーのタイツも穿いてるから、お姉様より露出は少ない。胸元的な意味で。

 その手にあるのは、梅酒。ロックで飲んでる。

 

「慣れたら犯罪者に後れを取りそうでな……

 私は、無意識に視線を選別出来る程器用じゃないんだ。近くの明確な味方しか区別出来ず、殲滅戦しか出来ない、戦場での私の不器用さを舐めるな」

 

「それは自慢にならないわよ。

 だけど、最終兵器なのに戦闘訓練をしていないと言っていたのはどうしてかしら?」

 

 リンディ・ハラオウンが首を傾げてる。

 確かにお姉様はそう言ってたし、本来の立場がばれたら疑問に思われるのは仕方ない。

 

「言っただろう、私は不器用なんだ。本来の役目は情報管理や研究開発だから、訓練も魔法制御に関する物ばかりだった。そもそも私の能力自体が広域無差別に寄っているから、それを封じたら戦力として凄まじく劣化するぞ。

 そんな基本無差別な攻撃しか出来ん、友軍を避ける事もままならんモノが、戦場で通常兵器になるわけがないだろう」

 

 前線に立つ事を嫌がったお姉様が、アルハザード上層部に対して使っていた話。お姉様最強の手札は広域剥奪で、魔力量での選別は出来るけど敵味方の識別は不可。私達や使い魔達としか訓練していないから多対多の戦闘は本当に苦手だし、私達の補助が無いと敵味方の区別が怪しいのも本当。

 私達が補助出来ても適性的に向かないのは事実だから、嘘じゃない。

 

「つまり、最終兵器と言うのは……」

 

「友軍もまとめて吹き飛ばす玉砕戦、または私1人で飛び込む蹂躙戦でしか使えない、普段は使い物にならない兵器という意味だな。

 リンディは、私が変態(ロリコン)に幼女天使などと呼ばれかけた場にいただろう? 友軍と戦場に行く際の私は、基本的に後方での医療担当だった。それも、戦況が悪化したら即座に撤退を開始する様な位置や立場で、だ。

 そこまで攻め込まれた、つまり前線が完全に崩壊した負け戦が、兵器としての私の出番だ。撤退する司令部の殿として、追ってくる全てを破壊する。その中に助けを求める友軍の生き残りが居ようと関係なくな。

 私の力を考えると、何も間違っていない。実に正しい運用法だ」

 

 お姉様的に1番きつい例を出さなくても。

 でも、1人で敵陣や拠点や国を破壊しに行く話と比べて、どっちがマシか判断に苦しむ。

 

「だけど、それはまるで……」

 

 リンディ・ハラオウンの顔色がちょっと悪くなってる。

 振る話題を間違えたと思ってるかも。お姉様も何だか愚痴っぽいし。

 

「忘れたのか? 所属していたのは軍事国家で、私は魔導具なんだ。

 人が使い捨てにされる時代の、人ですらないモノなんだぞ?

 人ですら傀儡兵の様な扱いを受けるんだぞ?

 命令通りに動かない魔導具なんて、動かない機械以下の扱いだぞ?

 変に自分の意思で動く分、動かない道具よりも危険物扱いされるんだぞ?

 私は、日本人なんだ……意識だけだろうが、人間なんだ…………本当に究極なのはクズさだけで実情なんて張りぼてで誇張で粉飾ばかりじゃないか……」

 

 お姉様の変なスイッチが入っちゃったー!

 一緒にお酒を飲むからって、食糧成分効果の一時適用をここまで有効にしちゃダメー!!

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

「さてと、ちょっと真面目なお話しをしましょうか」

 

 お姉様も一応落ち着き、夕食もある程度食べて、アリシア・テスタロッサが眠さで目を擦り始めた頃。

 リンディ・ハラオウンがライムサワーを片手に、気軽そうな声に似合わない真剣な目でお姉様を見てる。

 お姉様の手には桃のチューハイ、プレシア・テスタロッサはブルーベリー酒を飲んでる。

 ちなみに、見た目16歳相当のアルフを含む子様達はジュース、八神チャチャはお茶。酒を飲んでいるのは3人だけ。

 

「真面目な、か。さっきの様な話は勘弁してくれ」

 

「大丈夫よ、傷痕を抉る趣味は無いから。

 単刀直入に言うと、闇の書……夜天の魔導書を、どんな手段で何とかするかを聞きたいの」

 

 確かに、詳しい話はしてない。

 協力する約束はしたけど、どう動くかもあまり伝えてない。

 プレシア・テスタロッサは静かにお姉様を見てるから、聞きに徹するつもりらしい。

 

「そうだな、そろそろ伝えるべきか。

 まず、一番大事な点は、原作で夜天が死を選ぶ最大の理由は、自身を直す事が出来ないからだという事だ。

 闇の書の闇、狂った防衛プログラムを一旦停止させることに成功しても、また再生してしまう。歪められた基礎構造をどうすることも出来ない。だから、夜天は主であるはやてに守護騎士や自身の想いを託して消滅する事を選び、周囲もそれを受け入れたんだ」

 

「つまり、直す事が出来る何かがある……そう言いたいのね?」

 

「そうだな。夜天は、本来の姿が消されてしまっているから修復が無理だと嘆いていた。

 だが、本来の姿、夜天の初期構造は、私が知っている。

 つまり、防衛プログラムの停止と、主であるはやてが管理者権限を行使出来る事。恐らくこの2点を満たせば、後は私が情報を渡すだけで夜天自身での修復が可能だろう」

 

 少なくとも原作のリインフォースの発言を検証する限りでは、こう判断出来る。

 八神はやてによる管理者権限の行使は必須じゃないかもしれないけど。

 

「だけど、そのためには……」

 

「闇の書の完成が前提になる。だから、これが最後の手段だ。

 それに、改変の時間が足りなければ、家族になる守護騎士も消滅する事になりかねん。初期構造と今の姿は、大きく変わっているからな」

 

「そう。どれくらい変わっているか、把握しているのかしら?」

 

「暴走する防衛プログラムが最悪の改変だな。これさえ何とかなれば、後は細事だと言っていい。

 マシな変更点は、守護騎士の追加くらいなものだろう。

 これ以上は防衛プログラムが邪魔で、調べられていないんだ。管制人格とも話が出来ていないしな」

 

 少なくとも無限再生はおかしいはず。経年劣化や破損からの回復を意図してるけど、防衛プログラムがあんなグロ……妙な再生をするのは、明らかに暴走した結果。

 これ以外は、情報不足。

 

「最初に目指すのは、管制人格との対話という事ね」

 

「そうだな。闇の書が起動した時点で会話が出来れば一番いい。

 起動時が駄目なら、ある程度蒐集する必要があるんだが……その時は、リンディに頼みたい事がある。

 守護騎士達を、犯罪者対策に参加させてやってくれ。

 戦力としてはかなり上等、リンカーコアを蒐集する事で魔導師を無力化することも出来る。

 死なないが再生出来ない状態まで蒐集すると、凶悪魔導師の永久無力化も不可能ではない。

 悪くない話だと思うし、合法的に行うならこれくらいしか思い付かないんだ」

 

「合意の下での蒐集も、合法ではあるわよ?」

 

「訴えられたら傷害事件にされる。信頼出来る一部の者はともかく、誰でもいいと言うわけにもいかんだろう?

 闇の書の情報拡散を防ぐためにも、合意だけでは量の確保が難しいと思うぞ」

 

 リンカーコアの異常な収縮という被害を与えるのは事実。

 事情説明の仕方も問題になる。手間に見合うとは考えにくい。

 

「そうね……エヴァさんや従者の人達はどうなのかしら?」

 

「私は魔導具だぞ? 魔力を奪われる事は、実質的に命を削られる事と同義だ。

 それに、私の古い呼び名を知ったんだ。私が知る魔法を闇の書の魔力でポンポン使われると、地球くらいは簡単に滅びる事くらいは想像出来るだろう。一応闇の書を完成させるプランもあるんだから、そのリスクは避けたい。

 従者は、そもそもリンカーコアが無くて魔法を使えないんだ。蒐集する物が無いから論外だな」

 

 使い魔は可能だけど、アルハザード等の現存しない魔法を知ってるから、やっぱり駄目だし。人工リンカーコアも、素材の時期を考えると同様。

 

「ままならないわね」

 

「簡単にどうにかなるなら相談や頼み事などせん。本当に、現実はままならん事ばかりだ。

 あ、酒の注文を頼む。次はカルーアミルクで」




今回出てきた「食糧成分効果の一時適用」ですが、本質は「酔ったり、体が温まったりする効果のエミュレーション」です。なので、無効にすれば短時間で通常状態に戻りますし、効果の強さも割と自由に設定出来ます。
また、食事自体が効果を発揮しているわけじゃないので、飲んでないのに酔う事が可能だったり、毒性再現は限定的でフグを丸かじりしても多少痺れを感じる程度だったりします。でも、不味い料理の吐き気や精神的ダメージは(成分ではなく味覚によるものなので)本物。
普段も食事を楽しむためにそこそこのレベルで設定していますが、今回は着せ替え人形の現実逃避で、後先を考えずに再現レベルを上げて(あえて効果を高めて)酒に逃げようとしました。失敗しましたが。


というわけで、2013/06/14に感想で頂いた「まともになったプレシアとアリシアに着せ替えお人形さんにされるエヴァ」です。さほど弄れませんでしたが……服の好みとしては問題無いかな?
センスと語彙が不足しているのは私の仕様ですから、通販の写真やコーディネートの写真投稿サイトやWikipedia等を参考にしました。サマになってるといいなぁ。
ちなみに着せ替え対象じゃない人の服装は、原作で着ていた物をイメージしています。意外にテレビ版と映画版で服装(普段着)が変わってないんですね。


そして、正月風景#3の「アコノに荷物のまとめ方を聞くはやて」の根拠がコレ、アコノが八神家入りする時の引っ越しです。「タンスの中程の段しか使っていなかった/引き出し2本分」とかなので、コツなんて知らなかったわけですが。あえて言えば、荷物を減らす事ですかね?
ちなみに、正月風景の初期案では妹達代表(現在の八神チャチャ)もいました。基本フルネームで呼ぶ妹達ですが、「八神エヴァンジュ」を「お姉様」、「八神アコノ」を「主」と呼ぶので、姓が変わっていてもばれないから問題無かった……のですが、会話が変になったので退場する事に。残念。


2013/09/29 何でや?→呼んでへんよ。何でいるんやろ? に変更
2016/04/06 出来なかい→出来ない に修正
2017/01/18 スキニ―→スキニー に修正
2020/01/29 ―(横線)→ー(長音符) に修正

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