その後、お姉様はばっちり撮影出来てたビデオを警察に提出。
最初の光についてはよく解らないという事で、怪我や映像の調査は全て任せるという立場を取った。怪我についても日本で可能な治療以上をする予定は無く、警察用の情報収集を兼ねて病院で治療を受けてる。
傷自体はそれほど深くないけど、通院はそれなりの期間になりそう。公的に使える記録を残すためだけど、お姉様は面倒そうにしてた。
情報を受け取った警察は強盗未遂事件として捜査中。担当者は裏に関わってないようで、ものすごく困惑してる。ただ、こんな美女に傷を付けるなんてという男の下心的な義憤の後押しもあってか、やる気はあるらしい。
映像を元に、2人の映像公開と情報の募集は行われた。地球に居ないから絶対に見付からないけど、月村家か高町家から裏に情報を流す事も検討中。私達としてはどちらから流しても問題無いから、手法や内容については後で相談する予定。
エイミィ・リミエッタ経由で情報を受け取ったリンディ・ハラオウンは、それをクロノ・ハラオウンとレティ・ロウランに渡し、警戒と監査の役に立たせるように伝えてた。
地球からの提出は、ジュエルシード事件で名前が出てるお姉様が情報元になる。リンディ・ハラオウンも現地の魔導師との関係を壊される事を警戒して、管理外世界での魔法行使に関する調査を依頼したという言い訳が立つ。
映っているのは、無許可で管理外世界に行った魔導師と現地住民。管理外世界の現地住民との不用意かつ害意のある接触、しかも魔導師側だけが魔法を使い、現地住民を傷付けたという内容。表に出れば問題となるのは間違いない。
だけど。
『だが……転送ポートの使用履歴に情報が残っていなかったし、外見が似た管理局員は別の管理世界で任務中だった、という調査結果になったらしい。
あの映像だけを根拠に処分するには証拠が弱く、外見を頼りに手配はするが逮捕は期待出来ないだろう、だそうだ』
「結果が出るのがやけに早いが、そんな事だろうと思った。そもそも誰も履歴に残っていないだろうから、来ていないという証拠には弱いんだがな。マーカーやら魔力の質やら声紋やらで、本人なのは確認済みなんだが……その資料を提出しても結果は同じだろうし、これは保留するか。
現時点でも、迂闊に手を出すと余計な手間がかかると思わせられただろうから。これで少しは干渉する気が減るといいが」
今はお姉様がアースラの現地拠点に来て、通信でクロノ・ハラオウンと話してる。エイミィ・リミエッタは台所にいてこの話を聞いてないから、2人だけの秘密の会話。
時空管理局側の結果は、クロノ・ハラオウンの言葉が語ってる。要するに、握りつぶされたという事。
金子狗太にも映像を見せてたけど、何で守護騎士がデバイスを持ってないんだ、何でもう子犬なんだ、何だこの美人は、とか言いながら唖然としてた。
服装のせいか雰囲気のせいか、それとも私達が調整したせいか、お姉様がエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの大人バージョンだとは気付かれなかった。金子狗太の情報は現実との齟齬がそこまで大きいのか、役に立たない、という評価に落ち着いてきたから、結果は上々。
非殺傷でも怪我をした事に動揺して追撃が無かった事を考えると、来た局員はまだ悪人に染まってはないと思える。どちらかといえば無能な上に振り回されてる様子が見えるから、当人を主目標とした報復攻撃は保留の方向。
1日程度の調査任務の内容をすり替えていたみたいだから、裏側もだいぶバタバタしてる。せめて数日の調査任務をでっち上げるか、数回に分けて、じっくり調査すれば良かったのに。証拠の隠蔽やらが面倒になりそうだけど。
『僕の方には映像の人物のうち、現地住民のように見える人物について調査するよう命令が来たよ。間違いなく現地の住民だと確認出来る資料を渡しておいた。管理外世界とはいえ、それなりの文化と歴史を持つ国が発行した書類を含むから、証拠として問題無いはずだ。
外見についての情報も渡ってしまったけれど、それは構わないだろう?』
「外見を知られたくないなら、映像など渡すものか。
ところで、話はこれだろうが、相談というのは何だ?」
『ああ、相談と言うよりは提案なんだが。
今のうちに、ユーノから蒐集しておくのはどうだろう』
「ユーノか……理由は?」
魔力量はさほど多くない。
他にやるべきことがあるなら、そちらを優先すべき人材のはずなのに。
『ジュエルシードの事故があった世界の人物が一時的に魔力を失う現象が発生している、という噂になっているんだ。
これをもう少し拡大して、その世界に滞在した人物にも同様の現象が発生すると思わせられたら、そちらに行こうとする魔導師を牽制出来るかもしれない』
「そもそもジュエルシードと言われているのは、やはり地球という共通項からなのか?
管理局で捕らえられてるアレは、ジュエルシードの騒動があった時はかなり遠くで監禁されていたんだが」
『本局やミッドチルダから見れば、ロストロギアがばら撒かれた管理外世界、という認識だ。
管理外世界よりもロストロギアの方が印象に残るからね』
「ふむ……その意味では、この前来た連中から1人か2人選ぶのもありか?」
『そっちはもう少し裏を調べられてからにして欲しいし、他にも理由がある。
プレシアについての裁判がそろそろ大詰めなんだが……正直に言えば、ユーノが暇になる。
今までは色々手伝ってもらっていたんだが、後は法廷の場だ。証人として居てもらう必要はあるけれど、逆に言えば、それ以外にやる事が無いんだ。
無限書庫に放り込むなら、それまでに回復出来る今を逃すと、タイミングが無いだろう?』
「そうだな……確かに、無限書庫の調査に入ったら蒐集は無理だな。
終わるタイミングが合うか判らんし」
『それに、2人を蒐集した時の映像を見たんだが、あれが人前、具体的には本局で人がそれなりにいる場所で行ってもばれない隠蔽なら、そういう場所でやってほしいんだ。
僕達が怪しい事をしていないという根拠にしたい』
「疑う連中は、それでもやっていない証拠にはならないと言うだろうが……目の前で見せれば、他の可能性を考えざるを得ない、という事か」
『そういう事だ。
どうだろう?』
提案自体は賛成。オーバーSクラスがゴロゴロいる状況でもない限りは、隠し通す事も可能。
具体的には、ギル・グレアムとプレシア・テスタロッサが近くにいる程度なら、蒐集する間くらいは何とか出来る。最初から全力で警戒されてると厳しいけど。
「悪くないが……お前からこんな提案があるとは思わなかったな。
悪い言い方をすれば、知人を生け贄にするんだぞ?」
『解っている。
ただ、目的と手段と結果を見て、何が正しいのか……正直に言えば、迷っている。
世界の平和を目指し、犯罪者すら利用して、それなりに安定した世界を維持している時空管理局。
姉を助けるため、全てを利用して、闇の書の悲劇を終わらせようとしている君。
組織と個人の違いはあるのは解っているが、君の方が優しい手段、望ましい結果を目指している気がするんだ』
「買いかぶり過ぎだ。私は、私の目的の為にお前達も利用しているんだぞ?
それに、法の守護者であるべき執務官は、法を無視する私のやり方を認めない方がいい」
『それでも大きな禍根を残さない様に動いているように見えるし、表立った問題も起きていない。
しかも、決定的な証拠は見付けていないが、状況証拠を積み重ねると、君達の情報はかなり正しいと判断出来た。出来てしまったんだ。
時空管理局は、裏で犯罪者と手を組んでいる。全てが綺麗事で済むことは無いとしても、そういった手段を恒常的に取らざるを得ないなら、今の法や体制には問題があるという事だ。
その問題を解決する、今の問題がある中で緊急の課題を解決する……そういった時は、今の枠に捕らわれない君の様な人が力を発揮するはずだ』
「もう一度言うぞ、買いかぶり過ぎだ。しかも、私はどちらかと言えば悪人だぞ。
私は私の手の届く範囲しか守る気は無いし、自分の為にしか動く気が無い。勝手に期待しても、後で裏切られたと思うだけだ」
『僕の目も節穴じゃない。見るべきところは見ているつもりだ』
「その自信が砕けなければいいが。
それで、ユーノには説明はしておくのか?」
『いや、建前の方だけを話して、可能性があるとだけ伝えておくつもりだ。
プレシアやセツナ達も、同じ対応でいいね?』
「事後にでもきちんと説明するなら、それでいい。
決行前に準備が必要だし、タイミングを合わせる必要もあるからな。舞台が決まったら早めに連絡してくれ」
『了解だ』
◇◆◇ ◇◆◇
そんな話の数日後。
諸々の手続きが終わり、今は嘱託魔導師の試験の真っ最中。
挑戦者は、フェイト・テスタロッサ、成瀬カイゼ、セツナ・チェブルーの3人。
昨日の筆記試験は、3人とも合格ラインをクリアしてる。余計な手出しをされない限りは大丈夫だし、細工しようとした時点で潰すために監視もした。結果的に問題無し。
事故で入院した試験官? ナンノコトカナ?
というわけで試験2日目は、実戦を想定した戦闘試験。場所はミッドチルダ郊外で、天気がすごく悪いけど試験は豪雨決行。雨が降った程度で戦えなくなるモヤシは要らんと言わんばかりに、予定の変更は無かった。
異世界の魔導師やベルカ式に興味を持ったという名目で集まった、比較的大勢の観客が近くのビルから見守る中、試験は進められてる。
もちろんユーノ・スクライアもいるし、近くに八神シャマルと私達が隠れてる。
他にいる知り合いは、カリム・グラシア、シャッハ・ヌエラ、アルフを含むテスタロッサ一家、ハラオウン一家、レティ・ロウラン。
聖王教会や最高評議会関係者の指示で来てる人も、チラホラいる模様。これは想定内だからとりあえず問題無い。
個別にみると問題ないけど、豪華すぎるのは問題。集まり過ぎ。
試験1人目は、セツナ・チェブルー。
相手はAA+クラスの空戦魔導師。結果を一言で言えば、ドンマイ☆試験官。
基本戦術が遠距離狙撃型で精度重視の魔導師では、高機動近接型のセツナ・チェブルーから逃げるのは無理があった。
更に、セツナ・チェブルーは狩人さんな世界で、悪天候での戦闘を何度も経験してる。そのせいか、視界が悪くても躊躇せず突撃出来る度胸と技術は感嘆モノ。おまけに、機動性を維持するためにバインド回避とバインドブレイクを重視してたせいで、足止めも碌に効かないという有り様。何気に3人中トップの魔力量に育ってる上にカートリッジシステムも馴染んでるせいで、持久戦でも短期戦でも力を発揮出来る状態。
気に関する技術を全く使わなくても一方的になるのは仕方がない。見てて安心と言うか、試験官が可哀想と思える展開だった。
試験2人目は、フェイト・テスタロッサ。
雨にも負けず、風にも負けず、嵐だと雷を味方に威力が増し増しになるフェイト・テスタロッサは、悪天候での空中戦を見ててハラハラする内容で制した。
相手は先ほどとは別の、AAA-クラスの空戦魔導師。世間知らずの小娘を叩き潰して来いと指示されてたはずだけど、雷撃で焼き殺さないのは難しいんだと言わんばかりに手加減されて、撃墜されてた。
ハラハラの理由の1つは、天然の雷を利用した雷撃の制御ミスで殺さないか。もう1つは、手加減し過ぎて撃墜されないか。
要するに、雷撃での攻撃をある程度縛った状態での戦闘でミスをしないかを心配されてただけ。これで実力不足を理由に不合格とするなら、楽しい事にする予定。ちょっと楽しみ。
試験3人目は残る1人、つまり成瀬カイゼ。
相手はセツナ・チェブルーの相手をした魔導師、現在自信喪失気味。体力や魔力についてはそれなりに回復してるけど、精神的な傷はどうにもならなかった模様。
ヤケクソ気味の攻撃では、雷光を利用して姿を消す成瀬カイゼを捉えられない。それなりに防いでるからまだ墜ちてないけど、時間の問題に見える。
というわけで、そろそろ頃合い。
ユーノ・スクライアは時空管理局関係者の中では割と端の方にいる。クロノ・ハラオウンも近くにいるけど、何かを隠せる状態でも、バレずに手を出せる状態でもないから、問題ない。
超隠蔽型の幻影で、ユーノ・スクライアの胸元を隠して。
先生、またお願いします。
(はやてちゃんに聞いたんですけど、それって、時代劇とかいうお話で、悪役が強い護衛を呼ぶ時の掛け声ですよね?)
気にしちゃダメ。
現実問題として、良い事をやってるわけでもないし。
試験が終わっちゃう。人が動かない間に、急いで急いで。
(もう……)
ため息をつかれた。
でも、蒐集は速やかに完了。クロノ・ハラオウンが「まさか君もなのか!?」とか言ってるけど、周囲の人達はほぼ騒然としてるだけ。医療部に連絡してるカリム・グラシアが例外的なのはどうなんだろう。
少なくとも蒐集はばれてないし、理解出来ない何かがあったとしか認識されてない。
予定通り、八神シャマルは速やかに撤収へ。
嘱託魔導師の試験は、観客側の騒ぎに気を取られた試験官が撃墜して終了。なんてあっけない。
というわけで、お疲れ様でした。
◇◆◇ ◇◆◇
「結果として、疑いは晴れたんだな?」
その日の夜、アースラの現地拠点へお姉様が出向いて、クロノ・ハラオウンと情報交換。
前回同様に時空管理局の本局との通信で、エイミィ・リミエッタも席を外してる。
『君達の隠蔽技術のおかげだ。今回は目撃者も多いし、疑惑は無くならないだろうけれど、当面は強く疑われずに済むだろう。
圧力が減った代わりに、調査命令や問い合わせは来たけどね』
「それは仕方ないだろう。
原因不明で通すしかないだろうが……まあ、頑張ってくれ」
原因の特定は大人の事情等々により無理だから、考察としてジュエルシード絡みじゃないかと言うのが精いっぱい。
問い合わせは鬱陶しそうだけど、守秘やら未確定やらで誤魔化す事が出来る分、命令よりは平和かも。
『これくらいは想定内だから、問題無いよ。
それと、3人の嘱託資格も取得はほぼ確実だろうという話だが……また君達が何かやったのか?
試験官が1人、入院したという情報があったんだ』
「知らんな。全員が合格する必要も無かったし、裏工作が必要だとも思っていなかったからな。
実力が不足する者に資格を与えるのは互いに不幸になるという事は知っているから、実力不足で不合格になるなら当然だ」
うん、お姉様は本当に知らない。
試験の結果はともかく、試験官の交代理由なんて、どうでもいい場合もあるし。
『そうか。話を戻すが、資格を取得しても、フェイトには証人としてもう少しこちらにいてもらいたい。プレシアの裁判が終わるまで、見込み通りに行けばあと10日程のはずだ。
本人にも確認したが、やはり母の近くに居たい気持ちが強いようだ。構わないか?』
「その内容で駄目だと言う程、私が鬼畜だと思っているのか?
それに、仮に3人全員が失敗しても、別の方法でカリムを地球に連れて来ることが出来れば問題ない。この辺の話は聞いているか?」
『ああ、聖王教会に少しばかり肩入れする形になったと聞いている。
目的はベルカ関連の足場なのか?』
「ある意味ではそうだが、それだけでもないな。どちらかと言えば、ベルカの過去がどう伝わっているのか、どの程度技術が残っているかといった、知識面を期待している。
平凡な話がどれくらい脚色されているか……もとい、今の常識がどうなっているのか、知っておいた方がいいだろう?
個人的にはカリムの予言能力を解析してみたいものだが、これは本人の協力が必須だからな。のんびり交渉するさ」
人の噂とか、個人の主張が混じりやすい資料とかじゃなく、聖王教会の公式見解的な意味で。
聖王教会内部での扱われ方、でも可。
だけどカリム・グラシアのレアスキル“
『……関係を拗らせる事だけは避けてくれよ。
とはいえ、本質的には興味本位とは』
「とはいえ、
闇の書がベルカ製だと多くの人に知られている以上、何とかした後に直接関わる可能性が極めて高い相手でもある。ある程度は見極めておかんとな」
『時空管理局員として、コメントに困る事を言わないでくれ。
とはいえ、今の時空管理局に任せて安心かと聞かれると、少々困るんだが』
「まあ、そういう事だ。
やましい気持ちで接触しようとしているわけじゃない。その辺は、安心してくれていいぞ?」
今年の投稿は、これで終了です。
今年の正月の様な本編の連続投稿は余力的に無理でしたが、企画を元旦に、本編を2日に予約しました。
正月明けまでPCを使えないので、感想の返信は少々遅れます。
オマケ:登場(?)人物の現在の所在地
八神家
エヴァ、アコノ、八神チャチャ
はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ
日本、アースラの拠点あたり
エイミィ、武装局員少々
日本、各自の自宅(八神家以外)
高町家一同(士郎、桃子、恭也、美由希、なのは)
月村家一同(忍、すずか、ノエル、ファリン)
アリサ、鮫島
千晴、亜美、ツバサ、早苗、鹿乃、天牙
間宮萬太、東渚
本局
リンディ、クロノ、フェイト、アルフ、カイゼ、セツナ
レティ(本宅は別の管理世界)、グレアム、リーゼアリア、リーゼロッテ
マリエル・アテンザ
カリム、シャッハ
ヴェロッサ、クレスタ・ビガー
プレシア(留置所)、アリシア(病院)
ミッドチルダ
金子狗太(留置所)
ユーノ(病院:ミッドでリンカーコア異常となったため。本来は本局)
ディラン・ヒューイット、レジアス、ゼスト、ゲンヤ
スカリエッティの拠点?(ミッドの拠点からは追い出された)
スカリエッティと愉快な戦闘機人達(名前が出たのはクアットロ、チンク、セイン、ディエチ)
ギル・ガーメス、杉並英春
その他
チクァーブ(分身していろんな場所に出没)
クーネ(主に本局やミッドチルダに?)
高町家のチャチャ、月村家のチャチャ(各家に住み込み)
道場のチャチャ(必要に応じて出没)
チャチャゼロ(別荘、又はエヴァの傍)
チャチャマル(別荘、又はアコノの傍)
こうして見ると、大変な人数ですねぇ……
2014/01/05 指名手配→映像公開と情報の募集 に修正
2016/04/06 試験官が可愛そう→試験官が可哀想 に修正