その後、この場にいた人達で侃侃諤諤の議論が行われ。
最終的に、ヴィヴィオの存在は当面は特に報告や公開はせず、聖王オリヴィエに似ているだけの一般人として扱う事になった。但し、この場での邂逅と聖王オリヴィエの記憶がある事を除いて必要以上の隠蔽もせず、不自然さを覚られない事を優先する方針。
決め手は本人の意思だけど、その時のやり取りはこんな感じ。
「私は確かにゆりかごの王と呼ばれる立場に立っていましたが、既に国は無く、ゆりかごも稼働していないのですから、王を名乗る資格は最早ありません。
それに今は平和なのですから、無闇に騒動を起こす事は好ましくないでしょう。王という存在は強力な指導者や何らかの象徴が必要な場合にしか有効に機能しないものです。
出自としても問題があります。盗まれた聖遺物の血痕から作られたクローンなのですから、盗難に加担した人物を祀り上げる事にもなりかねません。
……と色々言いましたが、何より、私も普通の人として、平和な世界で過ごしたいのです」
「所謂あれです。普通の女の子になりたい、ですよ」
「黙れ
「いいえ、エヴァさん。その言葉は、こちら……特に時空管理局にとって、とても重い意味を持つわ」
「……リンディ、冗談だよな?」
「いいえ。随分前の話だけれど、時空管理局の広告塔をしていた女性魔導師が、多くの人の前でその言葉を言って自身のリンカーコアを砕いた事件があったの。しかもその女性は、退院の少し後で犯罪者に襲われて死亡。人気があっただけに、組織としてもかなり動揺したという記録が残っているわ。
これが教訓になって、今は魔導師の英雄化や過剰な露出を避ける事が、時空管理局とマスメディアの基本方針になっているのよ」
「その少女も、当初はノリノリでしたからね。
知名度が上がるにつれて増える、犯罪者からの圧力に耐え切れなかったようです」
「それに、崇拝対象として扱われる事を納得出来る程、私の手は綺麗ではありませんから」
というわけで、とりあえずは各権力や組織から最も遠く、安定した生活基盤と防衛力があるお姉様が何らかの方法で匿う、という事で落ち着いた。言葉には出してないけど、要するに当面は別荘に隔離するという事。最終的には、また八神家に加わる?
そろそろ限度な気がするけど、他の家に行かせるわけにもいかない。
なんでこうなった……うん、だいたい
今までカリム・グラシアにも隠してた事は、ヴィヴィオの気持ちを考えると妥当とは言えるだろうけど、
「で、ヴィヴィオが来る前の質問に、纏めてぶっちゃけるとだ。
例の未来情報では、オリヴィエのクローンとして生まれたヴィヴィオ……本人の記憶は無いから別人のようなものだが、10年後に5歳相当で管理局に保護される事になっていた。クローンを作るのは、恐らく無限の欲望とも呼ばれるジェイル・スカリエッティの関係者。元となるのは聖骸布に残っていた血だ。恐らく、これが予言の3行目に相当する。
4行目は……何だろうな。クローンの続きにも見えるし、この事件で頭角を現す人物がヴィヴィオを支えるとか、そんな意味にも取れるか。
……
「本来の名を名乗らないのですから、概要程度は教えてありますよ。他に私が教えたのは、現在の世界情勢……主にミッドチルダと日本についてですね。それと、ベルカの歴史に、私やエヴァちゃんの事と、今やっている事。概ねこの辺です。
他の理由としては、可能な限り未来を変えたい、という事もあります。未来情報の状況に強制的に至るような力が働かない事を、素直に信じられませんから」
「基本的な事は一通り教えてあるのか。
それと、未来の状況を別の方法で再現してしまう事で、怪しい力を無力化したいという事か……?」
「春の事件の後半についてや、夏に起きた盗難事件についても、事前に情報がありましたからね。
本当に偶然や必然だけで説明が出来ると思いますか?
予知の一種なのかもしれませんが、何らかの理解不能な力が働いていたとしか考えられないのですよ」
(そもそも、何故か私とエヴァちゃんの原作知識は封じられていませんでしたからね。原作知識や前世の記憶が予知を元に作られたものだと仮定しても、2500年前の時点で得ていた記憶と開始時点の状況が一致するなど、異常にも程があるのですよ。
ここが本当に物語の中であれば、それを成立させるための力が働いているはずですし)
「確かに、私達が手を出さない限りは、得た情報通りに物事が進み過ぎているが……その状況を崩したいと?」
(要するに、強制力とか言われる代物を崩したいのか。
私やお前が原作に関わる人や世界に触れる事が出来なかったのも、強制力関係の仕業だ、と)
「ええ。何者かの思惑に操られるのは趣味じゃありませんので」
(ここが謎なのですが、エヴァちゃんは一度地球に来ているのですよ。エヴァちゃんが最初の任務で破壊した塔は、バベルの塔です。聖書に登場するアレで、恐らく地球の魔法文化消失の鍵です。あの時点では、行動そのものすら操られていた可能性が否定出来ないのですよ。
ですが、ヴィヴィオがいる状況ならオリヴィエのクローンを作る必要が無くなりますし、聖骸布を取り返したことで材料も無い状況となっているはずです。
そのままこちらで保護していれば、ゆりかごの浮上も防ぐことが出来るでしょう。
そうすれば結果的に、StrikerSの前提を根底から崩せるのかもしれないのですよ)
「だが、そう上手くいくものか?
もう一度奪われる可能性や、既に必要な作業が終わっている可能性もあるぞ」
(……私はエヴァだ。ヱホバではないし、言語について何かした覚えなど無いぞ。
それより、遺伝子情報の取得に必要なサンプルは本当に取られていないのか? それに、スカリエッティやらにヴィヴィオの存在を知られる事が前提になるし、別の手段でゆりかごを動かそうとする可能性も出てくるだろう。
そういった形で修正される可能性は考慮しないのか?)
「必ずうまくいくとは考えていませんし、無駄な足掻きかもしれません。
ですが、黙って言いなりになる気はないのですよ」
(その検証の為にも、ですよ。
その関係で、なのはちゃんとフェイトちゃんのデバイスに、カートリッジシステムを付けてほしいのです。付けずに別の敵が現れるか様子を見ても良いのですが、やはり、手出しした結果の方が重要だと思いますから)
「……そうか。理由は理解した。
だが、事前に説明くらいはしろこの
お姉様の拳が唸る。
変態を滅しろと轟き叫ぶ!
「……はひ……」
顔面から床にめり込み、頭から煙が立ち上ってる
「まあ、こんな感じだ。解りにくいと思うが……理解してもらえるか?」
お姉様は
やっぱり引いてるけど、ちょっと警戒してる様子もある。
「ええ……未来の情報にも関する事だ、という点は何とか。
ですが、古代ベルカ製のロストロギアを相手にそこまで出来るエヴァンジュさんは、何者なのでしょう?」
「私もジュエルシードの影響を受け、未来の情報とやらを持つ者だ。ついでに過去の情報も色々と持っているだけでな。
そろそろ待ちきれない様だから、魔法談義でもするか。技術者2人はその為にいるのだろう?」
「待ってました! ささ、カリム様はあちらへ」
「シルフィさん、この場の主役にそれはちょっと……」
カリム・グラシアを押しのけ、シルフィ・カルマンが前に出てきた。
口では止めてるけど、マリエル・アテンザも空いた場所に居座ってるし。
「もう……では、後ろで聞かせてもらいますね。
陛下もこちらへどうぞ」
「陛下は止めて下さい。既に王ではないのですから」
「では、ヴィヴィオ様、とお呼びすれば良いでしょうか」
「出来れば、敬称も外してもらえれば良いのですが」
ちょっと憮然としつつ、ちゃっかりとカリム・グラシアはヴィヴィオを隣に呼び、並んで座ってる。
というわけで、今からは魔法の時間。
お姉様と向かい合わせで、マリエル・アテンザとシルフィ・カルマンが座る形となった。
「さてと、何から知りたい?
前提を言っておくと、私の知識は古代ベルカが中心だ。ミッド式や近代ベルカについては、最近学び始めた段階だからな」
「古代ベルカの技術者から見た、ミッドチルダ式や近代ベルカ式の利点や欠点について、ってのはどう?
意識や考え方の差異を見るには、一番だと思うわ」
シルフィ・カルマンが、お姉様から情報を引き出そうとしてる?
でも、情報のすり合わせには一番いいかも。
「ふむ、なるほど。とりあえず、差が解りやすいデバイスの話でいくぞ。
お前達は知っていると思うが、古代ベルカ式のデバイスは、基本的に高効率だが硬直した専用術式の集まりだ。利点は高速、高効率、高耐久性で、欠点は汎用性が無く、融通が利かない事だな。
ミッド式は対極の様だな。汎用性に特化する事で様々な魔法を扱え、それこそ即興で魔法を組む事すら可能だが、速度や効率で不利になり、耐久性も低くなりがちだ。
近代ベルカ式は、ミッド式がベースと聞いている。汎用性のある基盤に特化した部品や術式を追加する事で、ある程度の汎用性を維持しつつ特定魔法の効率を高めたりしているイメージだが……
この時点で、認識の違いはあるか?」
「概要は完璧ね。古代ベルカ式の欠点をきちんと把握してる技術者って少ないから、本物だって期待出来るわ。
というか、マリーにもこの辺は話してあったっけ?」
「いえ、術式は見せてもらいましたが、こういった大雑把な話は聞いてないです。確かに、多少の調整くらいしか出来ない術式という印象を受けましたけど。
それなのに、1対1なら負けは無いと言われる程の強さを発揮出来るんですか?」
シルフィ・カルマンはうんうんと頷いてるけど、マリエル・アテンザが戸惑ってる。
「今で言う古代ベルカの一般的な戦闘用デバイスは、大抵は移動と術者が得意なレンジでの戦闘魔法に特化させてあった。
つまり、自分に有利な距離を維持し、得意で効率の良い魔法を叩き込むのが基本戦術だ。同じレベルの魔力量や技量で撃ち合うなら、特化した古代ベルカ式の方が手数や速度、威力といった面でかなり有利になるからな。
一般的な10の魔法を10回ずつ練習するより、自分に合った2つの魔法を50回ずつ練習した方が、戦術がはまれば有利という事でもある。
だが、その前提が崩れる、つまり苦手な距離で戦う場合は、特化している点が裏目に出る。利点を捨てて多くの魔法に対応したデバイスでない限り、手札が無くなる事が多いんだ」
「それが、1対1なら、の前提なんですか……」
「カートリッジはベルカの人の魔力が少なかったから開発された、って記録があるしね。魔力量で有利なミッドチルダに対抗するには、効率を上げる、魔力をどっかから持って来る、の2つしか道が無かったってわけ。
デバイスの魔法を増やすと部品が増えるから、脆くなったり、反応が悪くなったりしやすいし」
シルフィ・カルマンが補足してるけど、両方を極めようとした結果がコレだと思える。
カートリッジの負荷に耐えられる構造を維持し、それ以外の遊びや調整範囲を削ってでも効率を求めた術式の数々。
アルハザードが健在だった時代と比べてすら、ベルカ後期の魔法の特化振りはかなりひどい。
「それに加え、魔法発祥の世界で戦乱続きだったからな。
長期に渡り改良を重ねてきた多くの術式という資産があった、という点が1つ。
さほど高度な技術が無くてもデバイスを生産出来る必要があった、という点も1つ。
集団対集団では部隊の役目は限られて、汎用性はさほど重要じゃなかった、という点も1つ。
生産性を考えると構造が単純である必要があり、単純であるが故に頑丈で、単純なまま魔法の効率を高めるには専用化するしかなかった。結果的に、主流の部品を集めるなら作る事が比較的容易で、カートリッジの負荷にも耐えやすい物が出来るという事でもあるな。
専用の術式が氾濫し過ぎて、一旦廃れてしまうとまともにメンテナンスも出来なくなったり、後から解析するのも困難になったりしているわけだが……新しい魔法を使う場合は新しいデバイスを組むのが常識だったから、当時は問題にはならなかったようだ」
「でも、ミッドチルダ式の欠点は、それの裏返しなんですよね?」
「そうだな。
汎用性に特化し、様々な状況に対応可能なミッドチルダ式のデバイスだが……一言で言えば、コストがかかる。
実用的な性能のデバイスを作るには、比較的高度な技術と生産設備が必要だ。
魔法を行使するために必要な手順があり、それを実行するだけの魔力と時間が必要になる。
特に、使用時のコストである魔力と発動時間は、戦争では弱点になるからな。デバイスの技術力で補う方針のようだが、それはデバイスのコストに跳ね返るはずだ。
よほど優れたAIを使っていない限りは戦闘中に魔法を組むなんて不可能だから、汎用性があり融通が利くと言っても限度がある。どちらが優れていると、簡単には言えんな」
高度な技術を安定して投入出来るなら、ミッドチルダ式の方が有利になりやすい。
でも、製造技術が安定しない戦乱期なら、古代ベルカ式の方が調達面で有利。
古代ベルカの技術の多くが失われた今となっては、ミッドチルダ式1択だろうけど。
「そして、近代ベルカ式は、両方の長所と短所を抱える可能性がある……
でも、長所も短所も、真逆ですよね?」
「そうだな。性能を上げようとすればコストが上がり、汎用性についても同様だ。
だが、専用化してコストを下げようにも、汎用的な部分が足を引っ張りやすい。
要は何処でバランスを取るかだが……これは古代ベルカ式でも同じだ。融通が利かない分、古代ベルカ式の方が失敗した時の問題が大きいしな。多少は融通が利く近代ベルカ式の方がマシとも言えるか?」
「そうなんですか。
でも、魔法そのものの比較ではないですよね?」
デバイスについての概要は、ここまで。
でも、魔法の話はあまり面白くない。
「魔法自体は発展方向が違うだけで、同系統の技術だぞ。
今の形に近い魔法技術の発祥はベルカだそうだ。正確には知らんが、ベルカ自体は今からだと5000年以上前まで遡れるくらいの歴史があるらしい。魔法の技術を発展させ続けたベルカは、他の次元世界に渡る技術も生み出し、多くの世界に広がっていった。
その行先の1つに、クラナガンという研究者の集まる小さな都市があった。今のミッドチルダ式と呼ばれる魔法は、そこの研究者達がベルカ式の魔法を再構成し、より人に使いやすいものを目指して作り上げたものだ」
「はぁ……今じゃミッドチルダ式が当たり前みたいな感じですけど、昔は違ったんですね。
ミッドチルダ式魔法自体の利点も、やっぱり汎用性なんですか?」
「いや、ミッドチルダ式の魔法そのものは、どちらかと言えば人が使う事を前提に、専門的な訓練があまり必要でない形にまとめてあるイメージだな。極端な最適化を避ける事でデバイスの規格も共通化しやすいが、速度や効率が犠牲になっているし、デバイス自身も複雑になりやすい印象を受ける。
デバイス無しでもそこそこ頑張れば何とかなるし、デバイスがあれば様々な魔法の行使も簡単だが、その分デバイスは高度で繊細。そんな魔法になっているようだ」
簡単に言えば、初心者向きで敷居が低い。生産や調整に必要な技術さえ維持出来れば、汎用性を武器に量産効果でデバイスのコストを抑える事も可能。
だからこそ、多くの世界に広まっていったらしい。
「という事は、ベルカ式は逆……デバイスが無いと発動は難しく、デバイス有りでも色々頑張る必要がある……?
いいところが無いじゃないですか?」
「確かに効率を追求し過ぎた魔法は、デバイスが無ければかなりの訓練が必要になる。初心者用の魔法もあるにはあるが、適性を調べたり、補助的な使い方をしたりする物ばかりだ。
デバイスに用意された魔法の発動は簡単だが、入れ替えは難しいから、決められた魔法しか使えない量産品を何とかして使うか、自分が使う魔法を絞り込んでワンオフで組むしかない。
それを補うのが、デバイスの部品自体はシンプルで生産しやすいと言う点だ。確かに組み合わせる為には職人的なセンスを要求されるが、低い生産技術でも素晴らしい結果を出す事が可能だ。コストや効率を犠牲にすれば、魔法の種類を増やす事も可能だしな。
初心者向きのミッドチルダ式の逆、玄人向きの魔法と言うのが正しいのだろう」
「なるほど……何だか扱い辛いと思ってたんですけど、そういう理由だったんですね」
「そこで登場したのが魔法側の調整も出来る近代ベルカ式、ってわけよ。
決して、決して! 古代ベルカの術式とかデバイスの製造知識が足りないから作ったんじゃないんだからねっ!」
「どこのツンデレだ、お前は。
それでだ、後はここからの派生で導ける話だな。
デバイスが頑丈、術式が効率的だから発動が早い、故に近接戦に向くベルカ式。
多彩な魔法を扱える代わりにデバイスが繊細で発動も遅め、故に後衛や支援向きのミッド式。
例外も多いが、基本的にはそんな感じだ」
「例外、ですか?」
「ベルカにも遠距離や支援用の魔法があるし、頑張れば多彩な魔法を扱う事も不可能ではない。
それに、ミッド式でも近接戦を好む者はいるだろう?
向き不向きと可能不可能は、同じではないからな」
「確かにそうですね」
◇◆◇ ◇◆◇
そんなわけで、その後は2つのグループに分かれて、お話の続きという事になった。
一方は、お姉様、マリエル・アテンザ、シルフィ・カルマンの技術者グループ。
実際の製造に関する話とか、魔法の術式についての突っ込んだ話もしてた。
シルフィ・カルマンの目がキラキラ輝いてたのが印象的。マリエル・アテンザも興味津々、話自体にはあまり参加してなかったけど、面白そうに聞いてた。
逆に、お姉様が近代ベルカ式やミッドチルダ式の知識が欲しいと言った時は、2人が張り切ってた。今後もこの関係を続けられたら、いい感じで生きた情報を入手出来そう。
ただ、術式の利点と欠点を整理して、あれをこう組み合わせたら、いやこっちの方が、そういえばどこかの少数部族が使ってた変わった術式が、とかやり始めてた。近古のベルカ式とミッドチルダ式とマイナーな方式を合わせた何かを作り始めそうで、ちょっと心配。
もう一方は、リンディ・ハラオウンとカリム・グラシアを中心とする、親睦会グループ。当然シャッハ・ヌエラもいるし、成瀬カイゼ、セツナ・チェブルー、プレシア・テスタロッサ、ヴィヴィオもこっち。
「ええと、こちらに来た感想はどう?
随分と常識が大変なことになっていると思うけれど」
お茶に角砂糖を入れながら、リンディ・ハラオウンがカリム・グラシアを見てる。
お互いに疲れた顔をしてるけど、非技術者が技術者の会話を聞いてたからと、あとは
「ええ……ですが、得難い経験は出来ました。
あの方が古代ベルカの知識を持つ事は間違いない様ですし、来た甲斐があったと言えます」
「それは何より。予定では1月程度こちらに滞在するという事になっているけれど、日程は大丈夫そう?
技術面は、あちらの状況次第になるでしょうけれど」
「そうですね、延長出来ないか相談しようかと考えていました。
その場合はお願い出来ますか?」
「他にも、色々な事があり得るけれど……大丈夫そうかしら?
その、精神的な面で」
「今日ほどの事は、早々ないと思いますが……その様子では、まだ他にもある覚悟をしておいた方が良さそうですね。
皆さんも似たような経験を?」
「ええ……自分の常識を、何度も疑う羽目になったわ」
「そうね。恩恵は大きかったけれど……失った
「私はある意味で似た物同士なので、ノーコメントという事で……」
「あの人を同じ人間だと思って扱うと、失敗する可能性はあるね」
カリム・グラシアの問いは、リンディ・ハラオウンとプレシア・テスタロッサにクリティカルヒット。セツナ・チェブルーは人外仲間だからいいとして、成瀬カイゼはなんて失敬な。事実なだけに何も言えないけど。
デバイスについては、半導体製品的に言えばこんな関係。
古代ベルカ:専用チップ寄せ集め(低い技術でも実用性能を出せる)+制御用コントローラ(場合によっては人が担当したりもする)
ミッド:高性能汎用CPU(製造面は技術力で何とかする)
近代ベルカ:中性能汎用CPU+専用チップ(ゲーム用にグラボを刺した一般PCみたいな?)
アルハザード:専用チップ寄せ集め+制御と補助に汎用CPU
極端な話ですが、「電子楽器(デバイス)で音楽を奏でる(魔法を使う)」事を考えた場合。
古代ベルカ:DX-7(初音ミクの衣装モデルとなった、FM音源を内蔵したキーボード)で音楽を弾く事は可能です。うまく弾けない?練習頑張れ。音が気に入らない?別の楽器にすればいいじゃない。
※用途に応じて持ち替える。基本的に人が道具に合わせる、または人に合わせて道具を作る。
アルハザード:Z80でプログラムを動かし、FM音源を制御する事も可能です(PC-88やMSX)。ツールとは名ばかりの文字入力?慣れだ。音が気に入らない?別の楽器を繋げればいいじゃない。
※基本的には古代ベルカに近いが、プログラム可能な分再現は楽。
ミッド:Pentium3は色々な音源(FM音源のエミュレータ等)を実行出来るし、いいツールも動かせるでしょう。音が気に入らない?エミュレータを変えれば違う音も出るんじゃないかな。VP1(巡音ルカの衣装モデル)の音を計算するには性能が足りない?ならばより高速なCPUだ。
※物理的な改造なしに、色々な事が出来る。但し再現するにも限界はある。
近代ベルカ:VP1の音が再現出来ないなら、音源として繋げればいいよね。お金がかかる?じゃあ安いCPUを使おうか。
※ミッドの使い勝手をなるべく維持して、用途が狭まってでも1点突破を狙う。
Z80は1976年、Pentium3(初期型)は1999年。トランジスタ数は8200、950万。製造難易度の差はお察しください、みたいな感じで。
音源の例として使ったDX-7は1983年、VP1は1994年。VP1は実際に弦を擦って震動を作ってるらしいので、揺らぎやらまで含めた完全再現はかなり難しいはず。ちなみに270万円。CPUの値段をケチってどうにかなる値段じゃないのは、気にしちゃダメです。
そして魔法自体についてですが、コンピュータの言語で言えばこんな感じ。
古代ベルカ:アセンブリ言語。熟練すれば超高速なものが作れるよ。
※CPUが同時に実行出来る命令や処理時間まで考慮して組む変態がいたそうです。
ミッド:Java。これなら扱いやすいでしょ。
※Write once, run anywhereを「基本的な術式は誰でも使える」と解釈してみよう。
近代ベルカ:Java+JNI。基本的に扱いやすく、必要なら専用となる事を厭わない。
※部分的に専用の部品を混ぜて、色々やってみよう。
アルハザード:C言語+インラインアセンブラ。古代ベルカを含みつつ、使いやすくしたよ。
※全部カリカリに書くのは大変だし、心臓部以外は扱いやすい方が楽じゃない?
ちなみにアルハザード式は、
当時はミッド式のデバイスを支えられるだけの技術基盤が無い&ベルカの資産が生きている&カートリッジも無い&訓練時間を長く取れる(娯楽が無い)軍国主義国家だったため、最強になれました。
アルハザード式の夜天の魔導書がベルカ式で弄られたのも、ベルカ式の魔法を含んでいるから。でも、アルハザード式の制御機構を変えずに実行部分「だけ」を改変したら、そりゃ暴走もします。
エヴァ製入門用デバイスは一応古代ベルカ式ですが、制御用を兼ねるAIを中心に、初心者用の簡易な魔法を大量に組み込んだ代物。構造自体は近代ベルカ式(むしろアルハザード式)に近いというオチ。だってエヴァ&妹達が一番馴染んでいる形だもの。
扱える魔法の種類を優先している事もあり、大きな魔力は流せません。それでも数回ならAAA級にも耐えます。
ちなみに「普通の女の子になりたい」ですが、
・魔導師としての高い素質は生まれつきなので、魔力の無い/少ない「一般的な女の子」に「戻る」事は出来ない。
・その場で行動しているので「早く」という表現が適切でない。
ため、なんだか微妙な感じに。残念。
そして、オリヴィエを隠そうとしたら、STSの序盤ではやて&なのは&フェイトが報道されなかった理由を好意的に解釈する結果になりました。あれー?
長々と書きましたが、あれですね。
設定厨として、楽しかったです。