青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編25話 喧騒、来たれり

 夕方になり、今日はここまでという事で、八神家組は帰宅へ。

 ヴィヴィオもお姉様預かりなので、一度連れて行くことになってる。でも、しばらくは別荘行きが無難。戸籍等の設定が出来るまでは、変に出歩かない方が良い。

 

「お帰りエヴァさん。また増えるんか? なんか、一気に大家族や。

 初めまして、八神はやていいます」

 

「初めまして八神はやてさん、ヴィヴィオ・ルアソーブと申します。

 長い付き合いになるかと思いますが、よろしくお願いしますね」

 

「恐らくそうなるが、当面は別荘に住んでもらうぞ。

 色々省略するが、簡単に説明すると、別世界の昔の王の記憶を持っている人物だ。

 こっちは、私が保護者をやっている、八神はやて。一応この家の所有者で、闇の書の主だ」

 

「この方が闇の書の主なのですか。

 かなり危険な魔導具だという事は知っていますし、何とかする予定だと聞いてはいるのですが、詳しい説明はして頂けますか?」

 

「闇の書と呼ばれるようになった原因は私が何とかするが……詳しく聞いていないのか。これについては長くなるから、後で説明しよう。

 この家の住人は全員、テスタロッサの魔導師組とハラオウン親子も事情を知っているが、あまり言いふらさないでくれよ?」

 

「そうですか、解りました。今は災厄の種でなくなる見込みがあるという事を理解しておけば大丈夫ですね」

 

 こんな感じで挨拶した後は、ヴィヴィオはそのまま別荘へ。

 部屋の準備は間に合ったし、後は別荘の管理担当のチャチャが注意点を説明。食事の準備等は従者達に任せても大丈夫だし、生活に問題は無い。

 その後、どんな設定がいいか、月村家のチャチャ経由でいろいろ相談。お姉様が海外にいた頃の友人で、仕事の助手として招くのが無難じゃないかという事になった。

 出会いは4月、ジュエルシードの影響で記憶が目覚めた頃のお姉様が街角で見掛けて、思わず声を掛けたのが出会いという事に。4月に設定を詰め込み過ぎになるけど、日本に来てから出会ったのでは遅いし、ジュエルシードが降ってくる前も言い訳的に問題。ここしかなかった。

 ヴィヴィオ本人は、曲がりなりにも元聖王。人の上に立つことは慣れてるはずだし、Vividのヴィヴィオを見る限り体より頭を使う方が得意なはず。本人もそれを認めてるから、扱いとしての問題は無い。ちょっと若すぎるだけで。

 というわけで、今後しばらくはお勉強という事になった。日本語は教えられてるみたいだけど、他に最低1つは翻訳魔法を使わずに扱えないとまずいし、文化等も知っておく必要がある。お姉様の記憶を使えた私達や、闇の書が起動前に集めた主に関する情報の一部が与えられるらしい守護騎士とは、前提がちょっと違う。

 未知の物を知るわくわく感という意味で、本人も乗り気。短期での成果に期待。

 

 今日の話し合いの間、高町家を訪れていたフェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、アルフの3人だけど、最終的に気の訓練を開始する事になったらしい。

 素質としては多分3人ともそれなりだけど、さっき名前を挙げた順に適性がある。結果に期待出来そう。

 

 そんなわけで月曜になり、転入の手続きは行ってるけど準備が整ってない成瀬カイゼとセツナ・チェブルーは、八神家でみんなとまったりしてる。

 お姉様も必要な時以外は会社に行かないから、八神家や別荘にいる事も多い。本来は色々と話したいだろう派遣組の3人(カリム&マリエル&シルフィ)は現在、打ち合わせや報告、ついでに現地文化の理解に手を取られてる。

 つまり、割と時間と状況に余裕があるから、色々気になる事を解消。

 

「ふむ、一番適性がありそうなのはセツナだな。

 というか、アコノや私を超える可能性すらある水準の様だぞ。あの時のカートリッジの異常効率は、これが原因か……?」

 

「そ、そうなんですか?」

 

 セツナ・チェブルーの気の素質が相当高い水準だと判明したり。

 

「チクァーブとヴィヴィオも、高めの素質だと言えそうだ。

 これは、集束よりも魔力供給への適性によるものか……?」

 

「かもしれませんな。我等の本来の魔力量を考えますと、エヴァ様より頂いた魔力を問題無く扱うというのは、なかなか高難易度の様に思えますぞ」

 

「ゆりかごの適性を判断する為に、どの程度供給出来るかの検査を行った覚えがあります。

 適性があると判断されたという事は、多くの供給を受け入れられるという事でしょうか」

 

 こんな感じで、この2人も素質ありという結果になったり。

 

「シグナムとヴィータも、そこそこ適性があるな。カートリッジの使い手として、問題ない水準だろう。

 カイゼとシャマルは微妙な感じだが……乱用しなければ問題ないだろうな」

 

「そうか。主を守るに足るなら、それでいい」

 

「だな。前に立つアタシ達が向いてなかったってんじゃ、情けねーし」

 

「でも、私はあまり適性が無いんですよね……クラールヴィントにカートリッジシステムが無いのは、そのせいなんでしょうか?」

 

「そうかもしれないね。

 それでも、サポート役として充分な実力があると判断されたからこその構成だろうね」

 

 守護騎士の残り3人や、成瀬カイゼの気の素質も調査したり。

 

「いえ、今のデバイスも充分に良い出来だと思いますけど。

 それに、お世話になってばかりですし……」

 

「私はお前の腕を知っている。一流の腕に持たせる武器が二流だなど納得出来るか!」

 

 とか言いながら、かなり強引だったけどお姉様はセツナ・チェブルーを刀匠の元に連行して、新しいデバイスの元とする野太刀についての打ち合わせをしたり。

 

「カートリッジって、ベルカ式の……? 大丈夫なの?」

 

「バルディッシュ、どうしよう?」

 

『No Problem』

 

『Please』

 

「デバイス達の方が乗り気じゃないか。まあ、無理に使えとは言わん。むしろ、当面は使わずに済めばいいと思っている。

 だが、今やっている鍛錬が実を結ぶ頃には使えるようになるはずだ。ある程度扱い方に慣れる為にも、早めに組み込んでおこうと思ってな」

 

 などと、カートリッジシステムの実装に関して高町なのはとフェイト・テスタロッサを説得したり。

 確かに、修正力的な何かの存在を考慮すると、余計な敵を用意されるよりは先に組み込んでしまう方が平和な気がしないでもない。変態(ロリコン)が発案という点だけが気に入らないけど。

 とりあえず了承という事で設計に着手、原作A’sで追加されたCVK-792-AとCVK-792-Rを組み込む事になった。現在は、補強部品と併せて手配を依頼中。シルフィ・カルマンはノリノリだけど、マリエル・アテンザはちょっと困惑してた。

 

 その後、高町家の道場で模擬戦に誘われたフェイト・テスタロッサが。

 

「え、ど、どうして美由希さんが魔法を!?」

 

「ふふっ、驚いた?」

 

 驚いたまま撃墜されたり。

 

「ええっ、どうしてなのはがそんな動きを!?」

 

「頑張ったんだよっ!」

 

 やけに体術面が向上してる高町なのはにも驚いて撃墜され、フェイト・テスタロッサが落ち込んでたり。

 

「全く……新しい技術を見付けるなとは言わないが、これもまた危険な火種に見えるんだが」

 

「日本の漫画やらでありがちな、気に類似した技術だからな。それに、意識せずに使っていた高町家という実例もある。

 私が見付けなくても、そのうち何らかの形で広まっていた可能性は否定出来んぞ」

 

「だからこそ、何だが。

 だけど……」

 

「あら、クロノ。嫉妬してるの?」

 

「母さんが今以上に若くなるのは、将来が不安なだけです」

 

「いいじゃない。エイミィもいるんだし」

 

「どういう意味ですか?」

 

 こんな感じで、クロノ・ハラオウンの素質はそれなり、リンディ・ハラオウンはかなり高い事が判明したり。

 

「ふふ、元々年齢について色々と言われる事もあったけれど、こんな事が原因の可能性があるなんてね。

 大魔導師を名乗れた実力に感謝すべきかのかしら?」

 

 プレシア・テスタロッサの素質が超高い事も判明したり。

 恐らく、主達に匹敵する水準。

 

「ユーノは、クロノより低めの様な感じがするが……まあ、それなりだろう。

 良かったなユーノ。最近影が薄いから、跡形もなくなるんじゃないかと心配していたぞ」

 

「誰の影が薄いって!?」

 

「お前だ。しっかりアピールしないと、フェイトになのはを取られるぞ?」

 

「ちょ、な、なのはとは何もないよ!?」

 

「だから取られるんだろうが」

 

 等といぢりながら、ユーノ・スクライアの素質が並(お姉様的基準で)だと判明したり。

 ちなみにユーノ・スクライアはアースラ在住で、時々現地拠点や高町家に顔を出してる。ジュエルシードの影響に関する調査に協力する民間協力者、という位置付け。

 

 そんな感じで、手続きやらを調査やら訓練やらで日が過ぎた水曜日、空が暗くなった頃。具体的には夕食の準備をしていて、お姉様と主が部屋にいる時。

 多数の転移反応を感知。

 気配と人相が怪しい。服装(パターン)黒、騎士団を気取りたいようです。

 襲撃者と予想、要警戒。

 

「はやて達は全員家にいるな。

 他の連中の様子は?」

 

 アースラの現地拠点は、テスタロッサ家を含む全員と黒羽早苗がいる。戦力的には問題ない。

 高町家は兄妹の3人、ユーノ・スクライア、真鶴亜美、夜月ツバサ、道場のチャチャ。

 長宗我部千晴は自宅。付近にチクァーブがいる。

 翠屋は夫妻とバイト、それに一般客。襲撃対象となるか微妙だし、高町家のチャチャがいる。

 魔法的な戦力があると言えるのはここまでだけど、私達の戦力化は慎重に。

 

 バニングス家は良くも悪くも一般人。襲撃理由はお姉様達との関連性しかない。

 月村家は、最低限の戦力はある。現地の協力勢力扱いのはずだから、アースラからの支援も期待出来る。

 馬場鹿乃、上羽天牙、間宮萬太は自宅。東渚は公園にいる。襲撃されるか不明だけど、この4人は襲撃されたら危ない。

 

「……東と間宮は見捨てるぞ。アレにも行くなら、連中の手柄として喰わせる。

 他は、少々の怪我までは許容する。なるべく力は隠す方向だが、命に係わる場合や誘拐されそうになった場合は保護を優先、余計な連中に情報が漏れなければいい」

 

「特典無効化は?」

 

「私達やアースラの拠点はともかく、アレに行くなら目的は情報収集だろう。

 いきなり殺される可能性は低いから、持ち帰ったところを襲撃するなりするさ」

 

「わかった。守護騎士の力は見せる?」

 

「……可能な限り避けたいところだな。出来れば、一般人だと認識して帰ってほしいところだ。

 タイミング的に最高評議会かスカリエッティだろうから、誤認してくれるとありがたいが……」

 

「表向きは、エヴァはCで私がBという事になっているはず。

 実態はともかく、セツナとカイゼの2人だけで大丈夫?」

 

 八神チャチャは魔導師として認識されてないし、ヴィヴィオは出せない。守護騎士を戦力外とする場合、保護対象が多すぎる。

 転移してきてるのは50人、魔力量としては多くてAA、ほとんどはAからBくらい。

 但し、実戦慣れしてそうな雰囲気。恐らく裏側の人間だし手段を問わないだろうから、魔導師ランクとしてはニアSからA辺りに相当すると互角と予想。連携慣れしてるなら、もっと高い実力の可能性もあり得る。

 

「……馬場と上羽も一旦捨てるか。

 黒羽はリンディ達の所に留まる様に連絡を。ついでに、襲撃の情報も伝えておこう。

 道場にいる2人も同様だ。恭也と美由希にはカートリッジを使った魔法を隠さなくてもいいと連絡、必要なら道場のチャチャも動け。

 チクァーブには、千晴を守るよう連絡。恩を売れるかもしれんから、嬉々としてやってくれるだろう」

 

 探知魔法の発動を確認。明確に各転生者の居場所を探ってる。

 上羽天牙と間宮萬太は含まれず。所在地までの距離や報告されていない事が原因と予想。

 襲撃者が散開。各個撃破を目指す模様。

 

「こっちに来るのは何人だ?

 どう動こうとしている?」

 

 恐らく、八神家に24人。最精鋭を含むし、最大戦力をぶつけに来る。

 高町家及びアースラ拠点方面に18人。話の内容からすると、8人と10人。

 長宗我部千晴、馬場鹿乃、東渚に2人ずつ。

 移動しない、恐らく転移場所の確保に2人。

 

「ここは流石に多いな。だが、アリサや月村、翠屋は大丈夫そうか。

 アースラからの援護を封じている間に、転生者と闇の書を抑えるつもりか?

 ここは……表向きだと、やはり戦力不足だな」

 

「闇の書に対して本気なら、必死で確保しにくるはず。

 手札を切る事も考慮するべき」

 

 こんな事もあろうかと、八神チャチャマルの戸籍も確保済み。

 立場はお姉様及び八神チャチャの妹、設定年齢15歳。

 補助リンカーコア装置が見られてて、ハラオウン親子には魔力の補助装置として認識されてる。

 カートリッジの古い機構と説明すれば、それほど特殊とは思われないはず。私達を戦力化する場合も同様の言い訳を推奨。

 

「……チャチャマルの戸籍なんて、いつの間に用意していたんだ?」

 

 今ここで、渾身のドヤ顔。

 えっへん。

 

「解った、チャチャマルも防衛戦に参加だ。前線に出すが、補助リンカーコア装置は使わず、私の予備用に作ったデバイスを使わせる。魔力はカートリッジで補うぞ。

 あと、アコノはAMFの使い方は覚えているな? ミッド式で再現されている方のベルカ版だ。守護騎士達はある程度強力なAMF内でも存在可能な事を確認済みだから、シグナムとヴィータに肉体言語で語ってもらうために使う。

 ……これでいけるか?」

 

「多分。最悪の場合でも、私達が制限を外せばどうとでもなる」

 

「そうだが……まあ、その場合は私がするぞ。連中を可能な限り有効利用するためにもな」

 

 

 ◇◆◇ アースラ現地拠点の場合 ◇◆◇

 

 

「警告通りの人数で間違いないか。

 エイミィ、予定通り封時結界を」

 

「オッケー、クロノ君。対象の人も予定通りで、いっくよー」

 

 こんな感じで、10人が襲撃に来たアースラの現地拠点。

 事前に情報を渡しておいたおかげで、戦闘準備はばっちり。全員捕らえる気満々で待ち構えるクロノ・ハラオウン、フェイト・テスタロッサ、アルフ、プレシア・テスタロッサの4人が、襲撃者10人と共に封時結界に消えた。

 リンディ・ハラオウンは全体管理、シャッハ・ヌエラと数人の武装局員は念のため護衛として残る事になってるし、料理ばかりしていて魔法は知識が少々あるだけの黒羽早苗も保護対象となってる。

 

 他の襲撃者が増援として来ることを警戒しつつも、残ってる人達は呑気に喋ってる。

 

「さて、どれくらいで殲滅してくると思う?

 私は5分くらいと見てるんだけど。マリーちゃんは?」

 

 というわけで、シルフィ・カルマンが終了時間の予想大会を開始。

 

「わ、私ですか?

 えーと……こちらの戦力は、条件付きSS、AAA+、AAA、AA-ですよね?

 相手はAくらいが10人ですから……遠慮や説得をしなければ、1分で終わっちゃう可能性すらあると思います。

 カリムさんはどう思いますか?」

 

「そうですね、クロノ執務官がどの程度説得に時間を使うか、嘱託の資格が無く立場が微妙なプレシアさんをどこまで使うか次第ですから、恐らく、15分以上かける事になるでしょう。

 リンディさんはどう思われますか?」

 

「襲撃が複数個所で同時に行われると予想出来る以上は、速やかに鎮圧する事が最善となるでしょう。もちろん、話し合いに応じた場合は相応の時間を取られるでしょうけれど……

 相手次第ね。早くて2分、遅くて20分といった所かしら?」

 

「指定された場所に武装局員を向かわせる手筈は整えましたけど、大丈夫かなぁ……

 艦長、どれくらい情報を貰えたんですか?」

 

「襲撃してくる人数とおおよそのランク程度よ。

 戦力的に危ない人の情報は貰えたし、大半は大丈夫だけど数人は攫われるかもしれないと警告もされたけれど、どう人を動かすかまでは口を出す気は無いみたいね。誰をどう守るかを誰が決断すべきか、言わなくても理解してもらえているという事よ。

 こちらが違法渡航を感知する前に24人に襲撃されそうだと伝えられたのだから、凄いとしか言えないわ」

 

「どう見ても、あっちが本命ですよねぇ。

 でも、艦長。こっちの重点監視エリアから微妙に外れた場所への転移って、出来過ぎじゃないですか?」

 

「そうなのよね。何か、見落としてはいけない裏があるのかしら……」

 

 襲撃者の戦力が最も集中してるのは、明らかに八神家。

 転生者の集まる特異点でもあるけど、古代ベルカの情報以外の何かもあると、カリム・グラシアに感付かれるかもしれない。

 

 

 ◇◆◇ 長宗我部千晴の場合 ◇◆◇

 

 

「……ん? また出てきたのかよ」

 

「いえいえ、今回は必要があって参りました。

 先ほど、敵勢力と思われる2人の魔導師の襲撃が御座いました。

 無事撃退に成功いたしましたので、念のため報告をする次第で御座います」

 

「はぁ?」

 

 うん、長宗我部千晴本人が知らない間に、事が終わってた。

 ここに来たのは、Aクラスが1人と、Bクラスが1人。

 Sクラスの人工リンカーコアの魔力を分散、96匹のチクァーブがデバイス無しでの誘導弾を放って攻撃。Sクラスの魔力量を使って放たれる96発の弾幕、それも個別完全制御状態は、いくら技術があってもAとBの魔力量ではどうにもならなかったらしい。

 というわけで、現在バインドでぐるぐる巻き。やっぱり96匹で束縛中、回収待ち。

 

「詳しい説明はエヴァ様かリンディ様から行われると思われますが、その際の前提情報として、記憶の片隅にでも置いて頂ければ充分で御座います。

 では、下手人の引き渡し等が御座いますので、失礼致しますぞ」

 

「はぁ……?」

 

 そして、本人が理解する前に、チクァーブ撤退。

 えーと……説明から逃げた?

 

 

 ◇◆◇ 高町家の場合 ◇◆◇

 

 

 襲撃者は8人。デバイスを構え、空を飛んで高町家に到着。

 攻撃魔法を放った瞬間、不意打ち封時結界担当のユーノ・スクライアの手で、あっさりと隔離に成功。神速と身体強化と空中疾走を組み合わせた不意打ち無力化担当の2人、つまり高町恭也と高町美由希の手であっさりと全員の気絶が完了。

 放たれた攻撃魔法は高町なのはが広範囲防御で完璧に防いだから、被害なし。

 

 ……ホントに終わっちゃった?

 とりあえず、無力化して捕縛。魔法を使う瞬間の映像も記録済みだし、後はアースラ組に引き渡せばいいや。

 

 

 ◇◆◇ 東渚の場合 ◇◆◇

 

 

 襲撃者は2人。東渚は、公園で魔法の練習中。

 丁度探知魔法の練習をしていた様で、空にいる何かに気付いた模様。

 

「何だテメーら!?」

 

「不意打ちは失敗か。相手は魔力が大きいだけのシロートだ、ヘマはするな」

 

「言われなくとも」

 

「だから、何だってんだ!」

 

 散発的な魔法弾をシールドで防ぎつつ、東渚が叫んでる。

 たまに反撃もしてるし、割り箸型ストレージデバイスの反応速度は意外に早い。

 出力は魔力量に対して決定的に不足してるけど。

 

「意外だな。だが、そろそろ終わりだ」

 

 襲撃者が呟くと、東渚をバインドが捉える……が。

 

「うらぁ! アッタマきた、ぶっ潰してやるぜ!!」

 

 馬鹿魔力にモノを言わせた力技でバインドを破壊、微妙な集束を開始。

 デバイスがビリビリ言ってるけど、構ってない。

 

「不味い、退避!」

 

「逃がすか! エターナル・フォース・ストーム!!」

 

 ちっちゃい短距離スターライトブレイカー的な何か、発射。

 1人直撃。偉そうでちょっと強い方が撃墜。

 

「もう一匹も、墜ちやがれ!!」

 

「これ以上は時間を掛けられん……已むを得んか」

 

 もう1人の襲撃者、魔法弾を掻い潜りつつ倒れた襲撃者を回収して撤退。

 周囲はボロボロ、結界も使ってなかったから、人が集まり始めてる。

 今はまだ怖くて近付く人がいないだけで、警察が来たり、好奇心に負ける人がいたりした時点でアウトになる。

 

「やっべ、見付かる前に逃げねーと」

 

 東渚、こそこそと逃走。

 ……あーあ、勝っちゃった。成功例の餌とかにする予定だったのに。というか、この公園の惨状は、あまりにもヤバいんじゃ?

 

 

 ◇◆◇ 馬場鹿乃の場合 ◇◆◇

 

 

 馬場鹿乃の方にも、襲撃者は2人。居場所は自宅。

 本人はデバイスを手に瞑想中、親代わりのロボット執事もどきは料理中。

 

『操者よ、怪しげなオノコが近付いておるぞ、むん!』

 

「何回でも言うけどよ、いちいちポーズ付けるのは何とかなんねぇのか?」

 

『ならぬ、むん!』

 

「で、怪しげな男って、コソ泥とかチンピラとかか?」

 

『デバイスを持つ、いきり立った魔導師であるぞ、ふん!』

 

「え? ……マジか!?」

 

『冗談で言う事ではないであろう、むん!

 操者と比べ何と貧弱な筋肉であろうか、ふん!』

 

「そんな事言ってる場合じゃねー!

 じーさん、敵襲だ! ええと、まずは何だ、封時結界だったか!?」

 

 ばたばたと階段を駆け下りながら、馬場鹿乃が叫んでる。

 執事もどきはそれを聞いて火を止め、エプロンを外し始めた。

 

『落ち着くのだ操者、まずはセットアップだ。

 我等の筋肉美、見せ付けてやろうぞ、むぅぅん!』

 

「結局はそれかよ!」

 

 叫びつつ、馬場鹿乃はデバイスを起動。

 例の、艶々ワックス黒ブリーフにリストバンド姿。

 そのまま玄関に手を掛けたところで、動きがフリーズ。

 

「……こんな姿で外に出れるか!」

 

『敵が近付いたところで結界を展開すればよいであろう、ふん!』

 

「頭ン中でポーズ決めんな、見なかった事に出来ねぇだろうが!」

 

『見せておるのだ、本望である、むん!』

 

「で、いつ来るんだ? もうチョイか?

 じーさん、本当に戦えるんだろうな?」

 

「魔法は使えませぬが、戦闘に問題はありませぬ」

 

 執事もどきは、重量挙げで使うバーベルのシャフトを握りしめてる。

 そこそこ重いはずだけど、特に支障は無いように見える。

 

『結界範囲まで、あと30秒程であるな、ふん!』

 

「……これって、先制しても正当防衛になんのか?

 言い訳の為に一当てさせたら、色々ヤバい気もすんだけどよ」

 

(構わん、どうせ管理外世界への違法渡航だ。

 しかも、大っぴらに飛んでいるから、こちらの裏側としてもアウトだ。先制しろ)

 

「うぇっ、エヴァ!?

 見てるなら助けてくれよ!!」

 

(こっちには20人以上来ているんだ、贅沢を言うな。

 アースラの武装局員が出撃準備に入っているようだから、連中が着くまでしばらく耐えろ)

 

「……色々厳しいこって」

 

『操者よ、連中が範囲に入るぞ、むぅん!』

 

「仕方ねぇ、何とかやるしかないってこった。

 封時結界展開、行くぜ!」

 

 襲撃者2人が射程に入ったところで、馬場鹿乃が家を飛び出して。

 

「爆・烈・拳!」

 

 短距離砲撃をかまし、あっさりと避けられた。

 

「あ、あれ?」

 

「こんなものか、所詮は素人だな」

 

 鼻で笑った襲撃者は左右に展開、少し距離を置いて、魔法弾を放ち始める。

 馬場鹿乃は自分と執事もどきを護る為に盾を2枚展開、膠着した。

 

「坊ちゃん、しばらくなら耐えられます。攻撃を」

 

「け、けど、射撃魔法を鉄棒でなんて……」

 

「大丈夫です」

 

 はっきり言い切ってるけど、少なくとも無傷では済まない。

 それに、時間稼ぎが出来ればいいんだから、無理に攻撃する必要は無かったりもする。

 けど、何もしないわけにはいかない。スフィアが横から狙ってる。

 

「! 坊ちゃま!」

 

 そのスフィアから放たれた魔法弾を、執事もどきがバント。

 びーん、とシャフトが振動するけど、とりあえず無事。

 

「ええい、行くぜ!」

 

 覚悟が決まったのか、一方の盾をそのままに、もう一方の盾を押しながら突撃。

 なんて器用な近接特化。

 

「赤熱拳! 赤熱拳! 赤熱拳!」

 

「……ぬるいな」

 

 魔力を乗せたパンチを、軽いステップで躱す襲撃者。

 その間も、魔法弾は馬場鹿乃に当たってる。効果はあまり出てないけど。

 

「くっ……まだまだっ!」

 

 その間に、執事もどきが被弾。

 まだ戦えてるけど、抉れた部分から機械部品が見えてる。あと、ちょっと動きが鈍くなった。

 

「じーさん! クソッ、筋肉閃光、拡散型!」

 

「うおっ、眩しっ!?」

 

 馬場鹿乃が腕をクロスさせ、光った。

 うん、元々威力が微妙な技を拡散させたせいで、ただの目晦ましになってる。

 

「捕らえたぜ!」

 

 正面から首と足に手を回し。

 

「うらぁ、落ちろ!!」

 

 緩衝防壁を無効化しつつの、キャプチュード。

 頭から叩きつけて……首がやばそうに見えるけど、とりあえず1人撃破。

 

「じーさん!」

 

「焦りは禁物ですぞ!」

 

 注意を向ける相手が1人になったせいか、執事もどきの被弾が減ってる。

 でも、傷はだいぶ負ってる。所々でパチパチ言ってるし。

 

「……不味いか」

 

 襲撃者が、戦法を変えてきた。具体的には妨害主体になり、撤退の隙を作ろうとしてる。

 馬場鹿乃が何度も拳を振るい、捕らえようともするけど、ひらりひらりと躱されてる。

 

「このっ! いい加減! 捕まれ!!」

 

「断る」

 

 微妙にノリがいいかもしれない襲撃者は、じわじわと引いてる。

 そうこうしてるうちに、武装局員が4人到着。

 

「無事か、馬場!」

 

「お、おう!」

 

「早すぎる……やむを得んな」

 

 未だ倒れてる襲撃者の方をちらっと見ると。

 

『Strange-F Flash』

 

 5つの閃光弾を放って。

 

『H・N・T・A Feel sad』

 

 意味不明な名前の魔法を発動させると、衝撃波をまき散らしながら飛んで行った。

 

「な、なんだありゃ!?」

 

 6人が唖然とする中、封時結界を突破したところで別の飛行魔法に切り替えた模様。

 凄い勢いで逃げてく。

 

「逃げられたか……もう1人は逃げていない。まずは、そちらだけでも捕らえよう」

 

「お、おう」

 

 とりあえず、1人捕縛で1人逃亡。

 執事もどきは破損部分を服で隠してるし、この辺はまだ公開する気は無いらしい。

 結界で現実への影響は抑えてたし、このまま連行して終了の気配。

 経験値不足の身としては、良く頑張った。




襲撃者との戦闘は、全然下手さを隠せてませんね。
しかも、馬鹿はネタにまみれ過ぎた感がひしひしと。


2017/04/25 以下を修正
 全員捉える→全員捕らえる
 バンド→バント

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