青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編28話 開かれた扉

 アースラに帰港命令が出た2日後。関係者達に連絡だけ行い、アースラは本局へ帰っていく。

 エイミィ・リミエッタと武装局員、それにカリム・グラシアや技術者達は地球に残留してるし、事態が事態だけに転送ポートの使用許可も下りやすいという事で、大きな変化は無い模様。

 今回は本局に直行、アルカンシェルの搭載完了と同時に地球に移動する予定。どこかに寄る理由は無い。

 

 テスタロッサ一家は、改めて住居を見始めたらしい。

 すぐに引っ越す気は無いけど、事件が落ち着いたら普通に家族として暮らしたい、その為に色々知っておくべきだと判断したとの事。

 八神家と高町家の近くを重点的に調べてる理由は、聞くまでも無い。

 

 というわけで。

 

「意外な事に、千晴やツバサも特典破壊は消極的だったな。

 まあ、自力で対策が可能になった以上は、破壊の副作用の方が心配か」

 

「歪んでいても、望んで得た力を簡単に捨てたくは無いという事もあるかも。

 気持ちは理解出来なくもない」

 

 今はお姉様と主が、転生者達からの返事の一覧を見ながら話してる。

 ちなみに馬場鹿乃は、逆ナデポを使ってもらう可能性を考慮して、破壊を拒否。月村忍は壊してもいいと言ってたけど、この辺は覚悟の問題もある。

 

「まあ、そうだが。

 とりあえず、情報隠蔽に関わった現地魔法関連組織が再犯を予防するために行動する、という形式は成立した。

 同様に隠蔽の為に奔走した管理局も協力して、東渚の魔力を永久封印する。

 実行時に表に出るのは、ザフィーラとアコノ。蒐集はシャマルが担当だ。

 時空管理局からクロノも協力してくれるが、基本的に裏方でイレギュラー対応だ。

 私も裏方で、指揮と切り札を担当……これでいいな?」

 

 ここはアースラの現地拠点で、お姉様と主を中心に、実行担当者が集まり最終確認中。

 クロノ・ハラオウンは転送ポートを使って呼び戻してあるし、ザフィーラもいる。

 偽装ザフィーラの服装は太公望。無双の。髪が白い事と、意外に顔の線が細い事からお姉様が選択。この世界でまだ発売していないゲームからの採用で、転生者と思われる効果も期待。

 だけど、随分とイメージの違うキャラを持ってきた。声帯操作型のボイスチェンジャーや認識誘導も使う予定だし、口調だけでは簡単にザフィーラと関連付けられないと予想。

 という訳で、コードネームはタイゴン。

 

「ニコポ対策を考えると男性を中心とするのは解るし、今まで人の姿を殆ど見せていないザフィーラを現地の関係者に仕立てるのも解るんだが……

 何というか、随分不機嫌じゃないか?」

 

 クロノ・ハラオウンは、お姉様の顔色を窺ってる。

 基本的に控えだから、結果的に気を使うのが役目になってる。

 

「当たり前だ。アコノを危険な場に立たせるのは、意図は理解出来ても納得出来ん」

 

「大丈夫。精神干渉の魔法の準備もしてある」

 

「……余計に心配になったんだが」

 

 主が余計な事を。

 ちなみに、準備したのは高揚、鎮静、激昂、狂化。

 高揚だけで済めばいいな、的な感じ。

 

「大っぴらには使わないでくれよ?

 一部の特例を除いて、精神系の魔法は禁止されているんだ」

 

 やっぱり。

 執務官の指摘だから正しいだろうし。

 

「……認識阻害もか?」

 

「機密保持のために必要だと認められない限りは。

 魔法文化の無い管理外世界での情報隠蔽や、時空管理局が個別に許可した場合等が特例に該当するんだが……心当たりがあるのか?」

 

 とりあえず、黒の騎士団が使ってる。

 まあ、元々グレーというか、黒を見逃してもらってるようなものだし。

 

「……小学生の1人暮らしという不自然な状態を隠すために使われていたな。

 まさか、管理外世界での隠蔽に該当するから問題無い……のか?」

 

「そんなわけがないだろう。魔法の隠蔽は許可されても、そんな……ああ、そういう事か。

 グレアム提督が行っていた隠蔽は、違法な手法だ。管理外世界で行っていたとしても、管理世界の住人がやっていた以上は罪に問うことも可能だ」

 

「やはり、その認識でいいんだな。

 落ち着いてから解除したのは、正しい判断だったわけだ」

 

「そういう事になる……いや、今はそんな事よりもだ。

 ザフィーラ、いや、タイゴンが前衛で説得と挑発を、アコノが後衛で結界を担当。

 特典無効化の能力を使わせてから、シャマルが旅の鏡を使って不意打ちで蒐集を行う。

 僕は潜んでおいて、予定外の乱入者やトラブルがあった場合の対処。

 この流れでいいんだね?」

 

「ああ。使う魔導具は既に渡して、テストも済ませてある。

 問題や質問は無いな?」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 というわけで、日が沈む頃。

 人気のない公園で東渚が魔法を練習しているのを捕捉してるから、現地へ転移。

 そして、気付かれる前に主が封時結界を展開。

 

「なっ!?」

 

 景色の色調が変わって異常事態に気付いたらしく、割り箸風デバイスを手に周囲を警戒してる。

 

「魔法を使っての破壊騒動や、度重なる隠蔽を軽視した魔法の行使。

 これ以上見逃すわけにはいかん」

 

 前衛担当のタイゴンが、ずんずんと音を立てて近付いてく。

 その斜め後ろに主がいるけど、主は祈るように目を閉じ手を組み、光るカードを空中でくるくる回してる。

 見た目だけの魔導具だけど、特典の能力に見えたらいいなという事で投入。

 実際に使ってる魔法は、高揚の精神干渉だけど。

 

「まさか、太公望か? 本物の仙人……の筈がないな。それに、木乃香……2人とも転生者か」

 

「我等の出自に意味は無い。

 お前の魔力、封印させてもらおう」

 

「おいおい……そりゃないぜ。巻き込まれただけなんだぞ?」

 

「先日の襲撃に限っては、同情すべき点も無いわけではない。

 だが、被害全てを放置した事は看過出来るものではなく、日常的な行使についてもこれ以上見逃せん。

 それとも、これまでの隠蔽にかかった、そして、これからもかかるだろう費用や手間。それらを負担する気があるか?」

 

「そんな余裕は無かったんだよ! 普段だって人目に付かない様にやってるだろ!!」

 

「だから見逃せと言いたいのか。

 馬鹿を言うな。特に先日の件は、記憶改変処置を行わねばならん程の被害と影響が出ている。

 その償いを全て背負うならば、背負うがいい。出来ないのであれば、魔力の封印で手を打とう。

 そういう話だ」

 

 実際は、記憶の措置はしてないけど。

 でも、お姉様と私達が介入しなかったら、実際に行わないと問題になった可能性はある。

 この辺の言葉は、何種類か用意した台本の通り。それに合わせて、主が激昂の精神干渉を開始。

 

「……ふざけるな!」

 

 切れた東渚、魔法弾射出。

 タイゴンは光の盾……ぶっちゃけて言えば光鷹翼的なモノを展開して防御。動く必要すらなく、魔法弾は盾で爆発して消えた。

 これもお姉様が用意した魔導具で、魔力さえあれば障壁が苦手な人でも盾を作れる。ザフィーラ自身の方がよほど強固な障壁を作れるけど、展開速度だけは優秀なはず。

 

「それが能力か……いいもの貰いやがって。

 だがな、お前らが来たのは間違いだ。特典を破壊されたくなきゃ、とっとと消えろ」

 

「自身の能力が消えるのが怖くて使えないのだろう?

 それに、罪だとすら思っていない事は理解した。

 叩き潰されてから封印されるか、大人しく封印されるか。好きな方を選べ」

 

「黙れ! 叩き潰されるのは貴様等だ!!」

 

 必要以上に、激昂が効果を発揮してる。

 東渚が突撃しながら魔法弾を射出、光の盾で防いだ爆風を目晦ましにタイゴンの横に飛び込んで。

 

「壊れな幻想! 特典殺し!!」

 

 叫び声と共に、ガラスが割れる様な音が響いた。

 術式は……不明。魔力及び魔力素の動きは感知出来たけど運用方式が不明というか未知。記録はしたけど、解明できるか微妙。

 今の私達の気持ちを表すと、(´・ω・`)ショボーンな感じ。

 

「ククク……あの世で後悔しうぉあぐっ!?」

 

 高笑いしそうな東渚の両手両足と頭、正確には目を光の輪が捕らえ、直後に胸からシャマルの手が生えた。

 

「こ、この感触は……うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ズキューン、と効果音を付けたくなる感じで、蒐集も完了。

 シャマルの手が消え、東渚の意識も落ちた。

 

「……状況終了。

 問題や何か変化は無いか?」

 

「ん……特に変化を感じない事が、問題と言えば問題。

 見込みが外れたかもしれない」

 

「悪影響があったのでなければ、エヴァンジュも安心するだろう。

 それを回収して戻るとしよう」

 

 任務完了、撤収へ。

 お姉様とクロノ・ハラオウンの出番が無かったのは、とてもよかった。

 目に見える問題が無かったと言う意味で。

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

「それで、本当に影響は無いのか……?

 少なくとも、肉体的、魔法的な影響が出ている様子は無いが」

 

 東渚の魔力がほぼ消失した事と、封印処理も完全な事を確認し、東家のベッドに放り出して。

 アースラの拠点に戻った一行は、内密な話をするための部屋へ集まった。

 お姉様は即座に、主の状態を確認。少なくともお姉様の中にある本体に直接影響があった感触は無かったし、本体が影響範囲内である必要があるなら効果が無かった可能性もある。

 

「少なくとも、自分で解るような影響は感じてない。

 ただ、すぐには効果が出ないだけかもしれないから、様子を見るしかない」

 

「そうか……何かあったら、すぐに言うんだぞ」

 

「解った」

 

 という訳で、効果不明という事になった。

 用件は以上で終了だから、主とザフィーラは先に帰宅。そろそろ夕食の時間だし、遅くなると心配される。

 

「この件に関しては、僕達が手伝えることは無いかもしれないが……やはり、術式などは不明なのか」

 

 その様子を見てたクロノ・ハラオウンが、ちょっと不思議そうにしてる。

 別に、お姉様や私達は何でも知ってるわけじゃないのに。

 

「そうだな。少なくとも、私が知る方式ではない事だけしか解らなかった。得た記録で調査出来ればいいが……どうだろうな。

 これなら、まだカリムの予言の方が解析しやすそうだ」

 

「……予言のレアスキルは、解析出来る様なものなのか?」

 

「血に刻まれた魔法なのか、魔導具やデバイスの類か、両方揃う必要があるか……条件はともかくとして、わざわざ古代ベルカ語、それも知識層が使うような文語や、比較的マイナーな詩語まで使ったものを吐くんだ。

 その言葉が使われた時代の文化人も制作に関わった魔法の一種と判断すべきだろう」

 

 この辺は、実際に予言をするところを調べてみないと何とも。

 必要な“月の魔力”が魔力量の問題なら、高濃度の魔力で満たした部屋を用意すれば何とかなるかも?

 古代ベルカの魔法をミッドチルダで使うための条件的なものが、他に必要かもしれないけど。

 

「そうか……確かに、行使者の知識の影響を受けていないなら、そうなるのか。

 ところで、闇の書の蒐集はどんな状況になったんだ?」

 

「馬鹿魔力だったから、だいぶ稼げただろうな。

 まだ予定に届かないし、管制人格の起動はアースラが戻ってからしか行わん。お前達もその方がいいだろう?」

 

「横槍の入りにくさを考慮すれば、確かにその方が無難だ。

 マリーの話だと、その時にレイジングハートとバルディッシュの強化パーツも運ぶ事になりそうだが……大丈夫か?

 大事な時に使えないとかは止めてくれよ」

 

 大出力過ぎて一般的なものでは耐えられず、フレーム強化用部品の手配が遅れてるらしい。

 バルディッシュもかなり強化するつもりでいるし、恐らく原作での強化を超える水準になる。つまり、2機分の特注部品の手配になったから仕方ない。

 

「問題無い。むしろ、タイミングとしては一番いいくらいだ。

 私としては、アースラが戻る頃になのはとフェイトを蒐集させてもらい、デバイスは2人の回復待ちの間に改造。2人の回復とデバイスの完成後に管制人格を起動するのがベストだろうと考えているんだが」

 

「2人を?

 確かにジュエルシードの言い訳も使えるし、闇の書の主の友人だから善意で協力した事にも出来る。問題が起きにくい人物ではあるんだが……」

 

「2人の性格上、何もしないと言う選択肢は取らないだろうと思ってな。

 それに、2人とも魔導師としての訓練を優先しがちだ。日本では学生なんだから、その本分を全うする事も必要だろう?」

 

「確かにこちらの世界の住人である以上、それを疎かにするのも問題だ。

 さて、僕もそろそろ戻る。あまり遅くなるのも問題になりそうだ」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 この後しばらくは、色々と様子見や今後の準備。

 

 主は、特に何もない。

 自覚出来る程度の変化は、これからだと期待したいところ。

 

 東渚は、目覚めたら呆然としてた。

 特典消失と魔力消失については、自覚があるはず。

 本人は知らないけど、原作知識も役立たずに成り下がりつつある。

 この先、一般人になれるかどうかは、本人次第。

 

 という訳で、アースラが本局に到着。早速ドック入りし、臨時メンテナンスとアルカンシェル搭載作業が開始された。

 リンディ・ハラオウンは、関係各所への協力依頼やら、状況説明やらに追われてる。

 クルー達は、長期任務に備えた臨時休暇。次の任務が闇の書関連という話は伝わってるから、今生の別れになる可能性が普段の任務より高い事を知らされての、水入らずの時間。

 

 そんな中、クロノ・ハラオウンとユーノ・スクライアは。

 

「そうか、君がスクライアの少年か。

 話は聞いているし、無限書庫の調査についての手続きも進めてある。

 スクライアの探索技術に期待させてもらうよ」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 ギル・グレアムとの面会中。

 もちろん、リーゼロッテやリーゼアリアもいるわけで。

 

「私は調査に直接協力する事は出来ないが、何か手伝える事はあるかね?」

 

「はい。リーゼ達にも無限書庫に来てもらえたら、と」

 

「食っていいの!?」

 

「いっ!?」

 

「ああ。作業が終わったら好きにしてくれ」

 

「なっ!? お、おい、ちょっと待て!」

 

 なんてどこかで聞いたような会話もあったりしたけど、当面は新人教育の引き継ぎや残務処理の合間を見て、それが終わったら全面的に協力するという事になってるらしい。

 というわけで、最低限の手続きも終わってるし、やり方を考える為にもとりあえず一度行ってみようという事で、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア、リーゼアリア、リーゼロッテの4人は無限書庫へ。

 

「そういえば、探索魔法やデバイスの準備もしてあるって言ってたよね。

 自信のほどは?」

 

 道中、魔法担当のリーゼアリアがユーノ・スクライアに近付いてきた。

 何をするのか、どの程度の事が可能なのか、気になるらしい。

 

「一族の皆に、書庫の調査で使える魔法を教えてもらっています。

 僕だけでも使えますけど、エヴァさんが専用のデバイスを組んでくれたので、かなり効率よく調べられる事も確認しました」

 

「……あの女か」

 

 お姉様の名前が出た途端、リーゼアリアの顔が歪んだ。

 憎悪とか、そんな感じの感情がありありと見えてる。

 

「恨むのは解るし、僕だって恨まれても仕方ないんだが、これだけは言わせてくれ。

 彼女は、闇の書の対策としては理想的な道を歩んでいる。

 納得出来ない部分があっても、目的や結果を見ると、間違っていたと言えない程度にはね」

 

 クロノ・ハラオウンの、庇う!

 ……いまいち庇う気が微妙な感じだけど、庇ってる! 多分。

 

「解ってる。だからといってアレは許せないし、許す気も無いけどね。

 ああ、言いたい事は想像出来るし、理解もしてるけど、感情は別だから」

 

「同感だ。僕だって、あそこまでするとは思っていなかった。

 っと、ユーノ。ここが無限書庫の入り口だ」

 

 見た目は、他と大きくは変わらない自動ドア。

 無限書庫のプレートが、小さく掲げられてるだけ。

 

「色々と危険もあるから入室制限は厳しいんだが、あまり有効利用も出来ていないからか、扱いはこの程度なんだ。

 エヴァンジュの話だとそれも何とかしてくれるらしいから、フェレットもどきには期待している」

 

「誰がフェレットもどきだ、誰が」

 

「君の事だが。

 だけど、君はデバイスを使わない主義じゃなかったのか?」

 

 クロノ・ハラオウンは、お姉様製デバイスを受け取ってるユーノ・スクライアが不思議らしい。

 使わない主義とは、ちょっと違うのに。

 

「部族の方針と、遺跡探索の手法のせいなんだ。

 長期間の探索だとデバイスのメンテナンスが出来ない事もあるし、事故に巻き込まれた時に可能な限り生き残れるよう、出来るだけデバイスに頼らないよう鍛えられてる。

 特に僕は、魔力不足を場に応じた最適化でカバーする方法に慣れちゃってるからね。普段使う魔法は、かなり高度なインテリジェントデバイスじゃないと任せられないよ」

 

「だが、慣れない魔法を任せる事は出来るだろう。普段はそれもしていないじゃないか」

 

「一般的なデバイスは、変身魔法を使って狭い隙間を通る時に邪魔になるから。

 それに、魔力不足で使いこなせなかったけど、レイジングハートは僕が持っていたんだ。封印処理とか、必要な時に必要な力を借りる事まで避けてるわけじゃない」

 

「なるほど、そうだったな。

 辺境や無人世界での遺跡発掘を生業にするスクライア一族らしい方針だ」

 

 そんな感じで、無限書庫の中へ。

 正確には、部屋の中からゲートを使って転送された先が無限書庫。

 中は無重力状態で、ひたすら先に延びる空間の壁全てが本棚になってる。

 でも、この感じは。

 

「ここが、無限書庫……管理世界の全ての書籍やデータが収められた、超巨大データベース……」

 

 ユーノ・スクライアの目が輝いてる。

 幾つもの世界の歴史が丸ごと入ってるから、歴史好きには堪らない。

 

「だけど、ほぼ全てが未整理のまま。ここでの調べ物は大変だよ?」

 

「とりあえず、少しやってみます。

 ルース、やるよ」

 

『Yes, master』

 

 ユーノ・スクライアがポケットからカード型デバイスを取り出して、探索開始。

 お姉様製の、情報処理に特化した、一部に古代ベルカ式を混ぜたミッドチルダ式、みたいな使用感と見た目になる様に作られた古代ベルカ式デバイス。使える魔法を数種類の検索魔法のみ、それも情報処理の補助を主要機能にすることで実現。

 ついでに、私達からの介入開始。能力のブースト及び、気になる点の調査もやっちゃう。

 

「こりゃまた、凄い代物を持ち込んだもんだ。

 というか、魔力が多すぎない?」

 

「僕の魔力だけで、こんなになるはずが無いんだけど……」

 

 そりゃあ私達の魔力も使ってるわけで。

 というか、気になってる点の確認が完了。

 事前情報通り、ロストロギア認定されるに足る代物だった。

 お姉様の空間生成技術をベースにした、人造空間。予想通り。

 各世界の書籍などを自動収集する機能を確認。お姉様や私達も知らない、古代ベルカ式の術式。

 情報が増えすぎて機能不全に陥ってる、管理システム。お姉様が作ってあえて流出させた、資料庫の管理システムとほぼ同一の内容と仕組み。容量に対して、集めた量が多すぎるだけ。システム的な限界には達してない。

 

 結論。お姉様管理下のアルハザードの資料庫を一部変更して、書籍の自動収集機能を追加したもの。

 管理システムの能力を上げれば、検索機能等が復活する。

 

「でかしたユーノ!

 無限書庫の真価が判明したぞ!!」

 

 あああ、お姉様の転移が早すぎ。

 とりあえず、捜索(サーチャー)整理(インデックス)の集合と増員宜しく。

 協力要請、急いで。

 

「エヴァンジュ!? こんな所にまで来るのか!」

 

「可能性は考えていたが、本当にそうだとはな。

 接続は……やはりゲスト権限か。殆ど機能停止しているし、どうやって叩き起こすか……」

 

 お姉様は急ぎすぎだし、会話が成立してないし。

 とりあえず、もっと積極的に他人を使う事を覚えるべき。

 というわけで、こちらが協力を要請した長宗我部千晴とチクァーブです。

 

「……早すぎないか?」

 

 こんな事態を想定して、予め連れてきてただけ。

 日本は土曜日だし。

 協力が不要だったら、普通に本局やミッドチルダを観光して帰ってもらう予定だった。

 

「というわけだから、さっさとやる事やって、観光したいんだけど……

 ぶっちゃけて言えば、コイツとユニゾンしてる時間を減らしたい」

 

「誠に申し訳御座いません」

 

「……それなら、私にここの管理システムの管理者権限を付けてくれ。

 後は、こっちで何とかしよう」

 

「ん、了解。

 ほら、とっととやるぞ。変な事したら承知しねーからな」

 

「勿論で御座います。

 では、参りますぞ」

 

 チクァーブが長宗我部千晴の中に入り、髪の色が銀色に変わって。

 服装は特に変化しないまま、姿が消えた。

 原作組の3人は、唖然としてる。止めようという発想すら出ないらしい。

 

(おーい、なんか、管理者権限以外に、開発者権限みたいなのが隠れてるっぽいんだけど)

 

(……早いな。というか、その裏口までそのままなのか。

 それも頼む)

 

(あいよ、と。

 全体を起動するとダウンしそうだけど、大丈夫なのか?)

 

(ちょっと待ってくれ、接続は……よし、コア部分は大丈夫だな。

 機能不全を起こしている部分は一旦停止させて、能力を増強するさ)

 

(なら、これでいいんだよな?)

 

(ああ、ありがとう。ここから先は、私達の仕事だ)

 

(ん、役に立てたなら何よりだ)

 

 長宗我部千晴の姿が現れ、チクァーブが分離して。

 軽く手を振った後で、2人(?)をミッドチルダへ転送。この後は観光をお楽しみください。

 

「よし、と。

 あとは、脆弱なここの基盤を……」

 

「ちょっといいかエヴァンジュ。いったい何をどうしたんだ?」

 

 クロノ・ハラオウンが頭を押さえながら、聞きたくなさそうに口を開いた。

 リーゼアリアとリーゼロッテ、ついでにユーノ・スクライアは、まだ呆然としてる。

 

「ん? 一言で言えば、無限書庫の正常化……の、第一歩といったところか。

 私が作ったシステムをほぼそのまま流用していたようだからな。とりあえず管理者として全機能を掌握したんだが……残念なくらいキャパシティオーバーしてるからな。能力を底上げしないと、使い物にならん」

 

「つまり、あれか。無限書庫を支配した、という事か……」

 

「私は眠る前に資料庫の管理者をしていたし、ココはまともに機能していなかったのだろう?

 そうだな……とりあえず、増強が終わったらお前達にも接続権を与えればいいか」

 

「ちょ、ちょっと待って! いいって、何が!?」

 

 ユーノ・スクライアが叫びながら再起動。

 

「その前に、勝手に改造するのは問題だ!」

 

 クロノ・ハラオウンも叫んでるけど、気にしなーい。

 

「ここを独占する気は無いし、どうせ一朝一夕でどうにかなるものでもない。当面はユーノ達の捜索魔法頼りという点は変わらんぞ?

 まあ、私も少しは手伝うか」

 

 既に1万人態勢で調査中だけど。やってて良かった人数増強。

 無限書庫の改造にも着手。検索機能の早期稼働が目標。

 お姉様の手は、あまり借りずに済む予定。

 ふふふ、腕がじゃらじゃら鳴るぜぃ。

 

「おや、なかなか面白い事になっているようですね」

 

 って、何で変態(ロリコン)が?

 ここへの転移は……ああ、ユーノ・スクライアがいるから。

 既に主になってる事も忘れられてそうだけど。

 

「何をしに来たロリコン!」

 

「こんな楽しそうな場所に入れるのですよ?

 呼ばれて無くても即参上です」

 

「だから、何をしに来たと聞いている!」

 

「調査の御手伝いですよ。

 これでも、文化の調査が本業ですからね。書庫の調査も慣れていますから、協力出来る事は多いと思いますよ。

 それに、エヴァちゃん自身が調査に集中するわけにはいきません。公開用の資料作成は重要ではありませんし、ここの調査もさほど急ぐ必要は無いでしょう?」

 

「確かにそうだが、管理するための基礎部分は早々に組み上げるぞ」

 

「ええ、それはお任せしますよ。

 ですが、チャチャちゃんが可能な部分は任せて、今ははやてちゃんや地球の人達を重視して下さい。精神的な柱なのですから、度々不在になるのは好ましくありませんよ」

 

「……そうだな」




太公望が登場する大蛇無双の魔王再臨は、2008年発売です。
某狩人さんの装備(2003年に無い装備を、はやてが参考にしたデザインとして使っている)と扱いが違うのに気付いちゃ、めっ! であります。


2014/02/26 住人何である→住人である に修正
2015/03/10 以下を修正
 到達→到着
 前情報→事前情報

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