青の悪意と曙の意思   作:deckstick

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A’s編30話 絆の形

 そんな感じで、ユーノ・スクライアとプレシア・テスタロッサによる調査が進められて。

 中間報告に見えるモノも適当に提出して成果が上がっている事を示しているからか、政治的な圧力も弱く。

 そんな感じで表向きは順調に、アースラが地球に到着した。

 

「そろそろ、情報を纏めて報告書を提出する頃合いかしらね」

 

 地球側の纏め役という立場に立ったリンディ・ハラオウンが、お姉様とプレシア・テスタロッサと一緒に、打ち合わせ開始。

 というか、今からすべきことの確認中。

 

「そうだな。早めに管制人格を起動したいし、その為にも、表立って蒐集するための建前を準備したいところだ。

 話を通した後、即というわけにもいかないだろうが……」

 

「蒐集は、あとどれくらいかしら?」

 

「300ページは超えているから、起動の前提はもうすぐ整いそうだ。

 なのはとフェイトでかなり稼げるだろうし、残りは、手頃な魔力を持っている人物から蒐集すれば充分だろう」

 

「フェイトから蒐集するつもりなのね。

 何かあれば、即座に敵対する事になるわ。解っているの?」

 

 プレシア・テスタロッサの眼光が怖い。

 親馬鹿が極まってる。

 

「心配するな。意図的に再生不可能なレベルまで蒐集した2人以外は、特に後遺症も出ていない。

 ユーノ、馬場、上羽の3人については、魔力量の増加も確認出来たくらいだ。

 危険性が無いとは言えんが、悪い事ばかりでもないだろう?」

 

「あの2人だと、進んで協力してくれそうと言うか、話さなかったら拗ねそうですらあるし……強制や依頼にならない範囲で、話をしてみましょう。

 それと、犯罪者対策と言っていた件ね。局員や無関係な一般人を巻き込まないという意味では、公然と蒐集するには最適だけれど……関係各所を説得する時間は貰えるかしら?」

 

「その程度の猶予はあるぞ。問題無い」

 

 というわけで、管制人格の起動を目指して蒐集する事が必要、という報告書を提出する事に。

 打ち合わせから2日後の土曜日。高町なのはとフェイト・テスタロッサ、2人の家族にも現状を説明。結果、あっさりと同意を貰い、アースラの医療施設で2人を蒐集。

 翌日の夕方まで、2人はベッドで仲良くオベンキョウの時間。ここしばらくは魔法の練習に時間を取られ過ぎてたし、成績やらの事を考えると必要な事。

 同時に、お姉様はシルフィ・カルマンやマリエル・アテンザと共に、レイジングハートとバルディッシュの魔改ぞ……もとい、強化に着手。カートリッジシステムの搭載と、それに耐えられるフレーム強化が中心。細かい点は、2機の意向も取り入れながら調整する予定。必要と判断した部品は既に取り寄せてあるし、全力を出せない脆弱性など許さない。

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

「さてと、時間に余裕も出来たし……少し置き去りにし過ぎた件の消化と、状況の整理をしておくぞ」

 

 夜、別荘に来たお姉様。

 やる事は、要するに報告会。

 まずは、何から?

 

「アコノは何も言っていないが、本当に影響は出ていないのか?

 話した感じも、ほとんど変化は無いが……」

 

 精神的な揺らぎは、大きくなってる感じがする。

 表には出てない。

 封印が長かったから、感覚が戻るまでに時間がかかると予想。

 八神はやてやアリシア・テスタロッサと同じく、機能訓練(リハビリ)が必要なのかもしれない。

 

「……突然感情的になるよりはいい、とでも考えるべきか。ある程度感情面をつついて、様子を見ながら対処するしかないな。

 特典やジュエルシードの解析は?」

 

 進んでない。

 ジュエルシードに記録されてる術式自体は、欠陥品ばかり。誤動作の結果を予想するのは困難。

 特典行使時に感知出来た範囲の魔力の動きを再現してみても、それらしい効果は現れず。

 手応え的に、肝心な部分が感知出来てない感じ。

 

「まあ、そんな事だろうと思った。

 私達の感知能力に制限がある可能性は、エイミィに亜美を調べてもらった時に否定的な結果が出ているし。未知の何か、もしくは特典自体に妨害処理が含まれているんだろうな」

 

 きっと、そう。怪我の治し方も意味不明だったし。

 研究は進めるけど、ジュエルシード自体は魔力タンクとしてしか使い道が無いかもしれない。

 自律制御だけでも可能になる様に、制御AIは矯正中。基本的な魔法も少し追加してみた。

 普通の魔法の制御自体は、問題が無いわけじゃないけど、それなりに可能になってきた。

 

「実験用だとしても、酷過ぎるな……元々私達が入れていた魔法すらまともに発動出来んなんて、何をやりたかったのやら。

 危険物繋がりで、スカリエッティや最高評議会の動きは?」

 

 ジェイル・スカリエッティ一味は、人の少ない管理世界にある施設へ移ってる。

 嬉しそうに杉並英春の体を弄りまわしてるけど、それ以外は平和。

 聖骸布の件で、ギル・ガーメスが何でそんなことしたんだとか騒いだりしてたけど、最高評議会(スポンサー)の意向だったと言われてそれ以上の追及は諦めてた。捜査も妨害される予定だったのだがね、と言ってたから、カリム・グラシアの行動力は予想以上だったらしい。

 その最高評議会(スポンサー)は、常に色々やってる気配があるから、変化がよく判らない。ギル・グレアムやリンディ・ハラオウンの監視を強化しようとする動きがあるから、そっち方面に目が向いてるのかもしれない。

 

「スカリエッティは平和か。最高評議会は……直接的な手出しをしてくる様子が無いなら、まだ藪を焼き払う必要も無さそうだな。

 聖王教会は落ち着いたか?」

 

 少なくとも、カリム・グラシアを問題視してた一部のお偉方は沈黙した。

 上層部に取り入ろうという動きを見せず、むしろ中央から離れた事で、安心した人がそれなりにいたらしい。役目を終えたから潜伏するのではと心配する声も残ってたけど、闇の書の件で潜伏が不可能になり、現地の重要人物であるお姉様とそれなりに仲良くなってる実情を無暗に突くわけにもいかず、矛先をどう向けていいか困ってるという現実も。

 騒いでた人の側近に、最高評議会の息がかかった人が混じってる気配がある。踊らされた人もいる模様。本気で内通を心配した人と踊らされた人は、半分ずつくらいかも?

 

「立場や期間から見たら異常な功績や状況だから、疑うのも解らんではないが……だから無理はさせるなと言ったんだ。それでも、それなりに落ち着いたならまあ良しとするしかないか。

 次だ。関係者の訓練はかなり進んでいるようだが、評価するとどの程度になった?」

 

 主は、全力ならSSが見えてきた。曙天の主としての才能と基礎技術は充分。あとは経験と慣れと応用という段階に踏み込みつつある。

 陸戦魔導師として訓練してるのは、馬場鹿乃と上羽天牙がCに相当。

 ヴィヴィオは飛ぶのが若干不得手で、聖王核と思われるものは存在するけど非活性。本来の技術と魔力では陸戦のS相当と思えるけど、義手ではない自分の手の感覚に慣れてなくて苦戦中。実戦を想定した場合はAA相当まで落ちるかもしれない。

 空戦魔導師は、成瀬カイゼ、セツナ・チェブルー、高町なのは、フェイト・テスタロッサがAAA相当。魔力的にはセツナ・チェブルーがSに達してるけど、まだ使いこなせてない。

 八神はやて、真鶴亜美、長宗我部千晴、夜月ツバサは、補助や自己制御に特化。ランク付けは微妙だけど、基礎技術のレベルはDからBと予想。

 黒羽早苗は、プレシア・テスタロッサからデバイスをプレゼントされて、今は料理の片手間程度にのんびりと基礎を練習中。技術レベルとしてはEかFになる。

 高町恭也、高町美由希、月村忍、月村すずかは、才能とやる気の恐ろしさを見せ付けてる。既に魔法だけで評価してもDランク前後。今のところは高町恭也が一歩リードしてるけど、高町美由希も伸びてきてる。

 

「……流石遅咲きの天才、か?」

 

 カートリッジシステムとの相性だけで言えばかなり高いレベル。この点だけなら、お姉様や主に匹敵する。異常効率を叩き出すセツナ・チェブルーは別次元だから、比べちゃいけない。

 八神はやて、高町なのは、高町恭也、月村すずかが少し離れて続き、月村忍やヴィヴィオはもう少し遅れる感じ。

 フェイト・テスタロッサや長宗我部千晴は八神シグナムや八神ヴィータと同レベル。エイミィ・リミエッタと月村忍の間くらい。

 真鶴亜美と馬場鹿乃はエイミィ・リミエッタやザフィーラと大差ない。

 適性が低めの八神シャマルやアルフ、成瀬カイゼについては、カートリッジを使うとしても切り札としての利用に留めるべきかも。

 上羽天牙のカートリッジ使用は非推奨。アリサ・バニングスはお察し下さい。

 

「……だいぶ細かく調べられるようになってきたな。細かく調べられてないのは?」

 

 プレシア・テスタロッサは大魔導師らしく高水準。リンディ・ハラオウンも適性が高そう。美容効果に惹かれてか、この2人も高町家での訓練に顔を出したけど、本格的にはやってない。

 クロノ・ハラオウンはそれなりみたいだけど、忙しくて訓練に参加してない。

 黒羽早苗は使わない方がいいみたいだから、使わせない。

 この4人については本格的に訓練してるわけじゃないから、細かい評価は追々。

 チクァーブは分身するから評価が難しいけど、月村忍と同水準と判断して良さそう。

 

「やはり、外部の魔力を実用で使える連中は素質が高めか。

 エイミィやリンディ達から見た、この技術の評価は?」

 

 美容効果への期待を除外しても、意外に受けがいい。

 特にリンディ・ハラオウン。高ランク魔導師の選民意識を崩す可能性を見出してる。

 雑談としてカリム・グラシアにも概要を説明してたし、その場にいたシャッハ・ヌエラとシルフィ・カルマンがものすごい勢いで喰い付いてた。

 

「……その3人とマリーも、そのうち別荘に押しかけてきそうだな。

 次だ。ヴィヴィオの戸籍もそろそろ用意すべきか?」

 

 今は故郷に設定した北欧の方で、過去の情報を作成中。ばれた時に色々危険だから、関係者の記憶や紙の書類まで含めて、念入りにやってる。

 併せて、仕事で日本へ渡航するための前準備を開始済み。でも、ダイニングの椅子が足りないから、テーブルの広さと併せて何とかしないと。

 そういえば、あっちの政府から話の通じる担当者を付けられたから色々と楽だったけど、ちょっと注意された。

 地球で魔法を公開しないのは、時空管理局の介入を予防するためという意味もあるらしい。

 

「ちょっと待て。つまり、独立を維持するために、政府もグルで……という事か?」

 

 真偽は不明だけど担当者はそう言ってたし、嘘を言ってる様子は無かった。

 ヴィヴィオの写真を見て噴き出してたから、それなりに管理世界側の知識がある人物なのは間違いない。

 現実的には、管理世界入りは難しいと予想。地球の魔力持ちの少なさが障害になるはず。

 これをひっくり返し得るのが、気に関する技術。

 

「……うん、気に関する技術も、高町と月村、それに転生者辺りで止めよう。カートリッジの補充の都合で簡単には広まらんと思うが、土足で踏み込まれる理由にされるのは嫌だからな」

 

 そう思って、関係者に念を押してある。

 でも、ロストロギアに関する件もあるから、時空管理局と無関係というのも良くないらしい。

 アースラの現地拠点程度の、必要に応じて協力する関係が望ましいと言ってた。

 あちらの政府としては、現状の関係を維持する事を希望してる。

 

「そうか……今のところは、問題にならないと見ていいな。

 忍も管理局と関係があった以上は、ある程度は弁えているだろうし。それでも、一言言ってくれればいい物を……」

 

 ジュエルシードの時期は2重スパイに近い立ち位置だったし。

 不用意に忠告して関係をこじらせるより、一歩引いた位置から周囲を固めつつ手綱を取る事を選んだのかもしれない。

 戸籍関係も、ある程度相談しながらやってたわけだし。

 

「やれやれ、腹の探り合いはやはり好きになれんし、とっとと終わらせてのんびりしたいんだが。

 それで、私達側でない転生者連中の現状は?」

 

 東渚、引き籠りなう。自分が特別だという根拠の大部分を失い、情緒不安定。

 間宮萬太は、一般的な生活に戻りつつある。力は失ってないけど、精々包丁代が不要になる程度で、あまり有用な力じゃない。原作に関係する場所や人物を避けるような行動を取ってるから、介入は諦めた可能性が高い。

 金子狗太、引き続きミッドチルダ地上本部で拘留中。既に一種の精神異常者と判断されていて、そろそろ刑務所に移動し、更生プログラムを受けることになる模様。裏側的には特殊な変換資質が魅力的らしく、利用する気はあっても手放す気は無さそう。

 ギル・ガーメスは、順調にジェイル・スカリエッティの後付良心回路化、ついでに料理人化してる。その結果ナンバーズの一部に、生活環境、特に食生活が改善されたことを感謝されてる。素人の料理だけど、それでも改善されるレベルだった食生活に、昔のお姉様を思い出して涙が止まらない。

 杉並英春は、自分の足で立つことは出来るようになった。放漫かつ傲慢な性格は、チンクとギル・ガーメスが、鉄拳と食事抜きによる制裁を武器に矯正中。本人の希望で小ぶりな剣を貰っていて、剣を振る時だけ体の動きが良くなるのは、恐らく剣術の才能の特典によるもの。普段はまだ、ほぼ全ての行動に補助が必要な、重度の要介護者。

 

「勢いで人を殺して逃亡した結果、キレイなギルガメッシュになったのか……やっぱり、一度痛い目にあった方が真人間になりやすいのか?

 それで、杉並は今のところ、まともな生活も無理なんだな?」

 

 剣術関連以外について、恐ろしく学習能力や適応力が低い。剣を構えたような体勢での足捌きは出来るけど、普通に歩くのはぎこちない。

 バトンでもいいから、何か棒を構えて移動する方が早いって、人としてどうなんだろう。

 前世の記憶や経験があるはずなのに、箸の扱いすらナンバーズや八神ヴィータに負けてる。

 魔力の扱いも同じ傾向、量はあっても技術が伴わない。今なら上羽天牙でも勝てる。

 

「……相変わらず転生特典が理解出来んが、そういうものだと思って放置すればいいか。

 積極的に排除する必要もなさそうだし、現状維持だな」

 

 了解。

 

「あとは、無限書庫か。少しはまともに動くようになってきたか?」

 

 処理能力の増強に手間取ってる。情報量が多すぎて、生半可な強化では追いつかない。

 試験的に、最近のミッドチルダの情報に絞って、検索準備を整えてるところ。手応え的には、まあまあ。今後の進展に期待。

 必要な情報は集まってるし、焦らず良い物を目指す予定。

 空間生成と自動収集の部分はお姉様製じゃないせいか、かなり厄介。建造物ごと取り込む術式も存在してるし、古い区画ほど入り口から離されて入り組んだ迷宮の様になる実装になってると思われる。

 恐らく研究目的と思われる、詳細な資料がある魔物等を映像化させる術式の存在も確認済み

 要するに、お化け屋敷のノリで行う迷宮探索ごっこが可能な魔法が揃ってる。

 正確な実装内容を把握するためにも、解析を進めてる。

 

「そうか……あれを作った連中は、何を考えていたのやら。

 時間がかかっても問題ない、安全性優先で頼むぞ」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

「……それで、何故私が違法研究所を探る事になっているんだ?」

 

 翌日、とある無人の管理外世界。

 そこに存在してる大きな建物が木の間から見える丘に、お姉様がいる。

 傍に居るのは、八神シグナム、八神シャマル、セツナ・チェブルーの3人。

 こう呼ぶ以上は、黒の騎士団ではなく守護騎士のスタイル。

 

「チャチャさんが、このメンバーがいいって言っていましたよ」

 

「記録を一切残させず、最終的に完全消滅させる事が前提だと言っていたが……

 主の意向にも沿わん。止めるか、方針を変えるなら早めに頼む」

 

 セツナ・チェブルーと八神シグナムはデバイスを起動し、いつでも攻撃可能な態勢。

 だけど、あまり気乗りしてない様子。

 

「とりあえず、気付かれない程度に結界を準備しておきますね。

 情報が洩れたら大変ですし」

 

 八神シャマルが、この場から逃げるように木々の間を飛んでった。

 目的は強力な捕縛結界の準備とかだから、作戦から逃げたわけじゃない。

 

「私は、念のため警戒しておこう。

 どうするか決まったら知らせてほしい」

 

 八神シグナムも同じく、建物の方へ。

 というわけで、残ったのはお姉様とセツナ・チェブルーの2人。

 

「……そもそも、私は違法研究所を襲うから来てほしいとしか聞いていないぞ。

 いつ完全消滅という話になった?」

 

「ええとですね、私に伝えられてる情報だと、ここに烈火の剣精という人がいるそうです。

 剣を使う私とシグナムさんが、偽らない姿で救出するべきだ、と」

 

「はぁ? ちょっと待て、ここでアイツを回収してしまうのか?

 確かに、意味はあるだろうが……はっきり言えば、シグナムが最も相性がいいはずだぞ。

 情報を漏らさないために完全消滅という意図は理解出来たが、何故私とお前が呼ばれた?」

 

「あ、やっぱり原作関係なんですね。

 無限書庫で情報を見付けて、裏付けの調査まで終わっているそうです。

 それで……ええと、踏み込む前に、ちょっとお願いが、ですね……」

 

 セツナ・チェブルーの目が泳いでる。

 がんばってー。

 

「どうした。怖いのか?」

 

「怖い……そう、ですね。確かに怖いです」

 

「以前居た、命がけの世界を思い出すか?

 それとも、人と命のやり取りをする事に慣れたくないか?」

 

「それもありますけど……少し違います。

 死ぬのが怖いと言うよりは……ええと……そうですね、別れるのが怖い、ですね」

 

「別れが、か?」

 

 お姉様が、不思議そうにしてる。

 不死や実力について明確には伝えてないけど、隔絶した実力を持つお姉様(じぶん)に向かって言う事では無いだろう、とか思ってそう。

 

「はい。死ぬこと自体は、まあ仕方ないかと思えるんです。

 本来は限りある命ですし、転生なんてものも経験しています。前の世界で戦っていた時も、また次があるんじゃないか、なんて気楽に思っていたんですよ。

 でも、もし次があっても、きっとまた一人なんです。

 仲良くなった人も、離れたくないと思った人も、そこには居ないんです」

 

「それはそうだろう。

 例え同じ世界に生まれ変わったとしても、時代が変わっているだろうしな。

 それ以前に、会えたとしても生まれ変わったと信じてもらえるか怪しいし、信じられたとしても以前と同じ関係にはなれないだろうよ」

 

「ですから、離れたくない、と思うようになってですね。

 それで、えっと……これって、弱さ、ですか?」

 

「離れたくないからこそ頑張れる事もあるだろう。

 強さの源泉にもなるものだ、弱さとは限らんよ」

 

「そうですか、良かったです。

 この時点で笑われたり拒否されたりしたら、どうしようかと」

 

 セツナ・チェブルーは、ものすごく安堵してる。

 思わずため息なんかついて。

 

「いや、人として健全な感情だと思うが?

 どうした、お前らしくないな」

 

「えっと、それで、その……

 エヴァさん、私を眷属にしてくださいっ!」

 

「……は?」

 

 お姉様に、豆鉄砲が命中。

 鳩の様にぽかんとしてる。

 

「ですから、私を眷属にしてくださいっ!」

 

「ちょ、ちょっと待て、誰から聞いたんだ!

 そもそも、意味を解っているのか!?」

 

「えーと、チャチャゼロさんです。

 エヴァさんの一部になって、実質的に不老不死になる、ですよね?」

 

「あああいつなら確かに知っているというか何故お前はそんなものを望むんだ!?」

 

「息継ぎぐらいしてください。

 何故って、言いましたよ。離れたくないからって」

 

「本当に理解しているのか!?

 不老不死なんだぞ! 死ねないんだぞ!? そのくせ私が殺す事には抵抗出来ないし、私が死ぬ時は道連れなんだぞ!?」

 

「八神の人って、はやてちゃん以外は全員不老不死みたいなものじゃないですか。それに、エヴァさんが殺す気になったら今でも抵抗は無駄ですし、エヴァさんが死ぬ時は結局別れる時ですし。

 親しい人と長く一緒に居たい、というのはダメなんですか?」

 

「親しいって、従者達を見ただろう!

 あんな狂信者になりたいのか!?」

 

「従属属性の付与、ってやつですよね。

 チャチャちゃんが、親愛属性のものを作ったって聞いています。親愛なら今とそれほど変わらないですし、身近に感じられるようになるなら、むしろばっちこいです」

 

「人間じゃなくなるんだぞ! 人間として真っ当な生き方が出来なくなるんだぞ!?」

 

「そもそも翼がある時点で、人間じゃないですし。

 それに、結婚して子供を産んで、なんて生き方は無理ですよ。エヴァさんと同じく感性は男ですから、男に抱かれるのは全力で拒否したいです。

 普通に仕事をしながら生活するとかならエヴァさんもしていますし、別に問題無いですよね?」

 

「成長する事も出来なくなるんだぞ!?」

 

「大人になって男に言い寄られるのもどうかなーと。物語の人物という事は、大人になると美人になりそうでしょう? 大人モードを試した時も、これは無いと自分で思っちゃったくらいに綺麗でしたし。

 今の姿だと軟派男を小僧かロリコン呼ばわりすれば何とかなりますし、大人の姿が必要なら大人モードが使えます。

 魔力は既にSクラス相当だそうですし、少しくらい減っても問題ありません。これ以上はあまり伸びないだろうって言われていますから、こっちの成長は気にしなくていいみたいです。

 それに、月のものが無くなるのも魅力的です。思っていたより辛くて……」

 

「……妹達もどこまで入れ知恵したんだか。

 私の眷属になるという事は、私の所有物になるという事だ。

 私は数十億の死体の上に立つ虐殺者で、草を毟る様に命を刈り取る事が出来る破綻者だ。

 今までの自分を捨て、危険人物の仲間になる事を理解しているのか?」

 

「魔物と戦っていた世界の私は、既にこの手から零れ落ちました。

 その後は、エヴァさんのおかげで今があります。今の私が捨てられるのは、エヴァさんから貰ったものしかありません。

 それに、仲間を見捨てて生き残ってきた私も、現代日本の価値観では異常者気味なんです。最後は私が殿(しんがり)をしていましたけど、それ以前に何回か仲間を犠牲に逃げています。それを当たり前として受け入れていたので、間違いありません。

 私も、人の事を言えない程度には、普通じゃないんです」

 

「だからと言って、より危険な道に進む必要も無いだろう?」

 

「私も転生者で、人外で、性別が異常なんです。普通の道なんてものが見えるわけがないじゃないですか。

 1人で道を探すより、エヴァさん達と一緒に探した方が、きっといい道が見付かります。道が少しくらい険しくても、1人で歩く事に比べれば大したことじゃありません。

 それに、私が知る限り誰も殺さず、仲間を助けようとしているエヴァさんは優しいです。その優しさを無くさせないため、それに、私がこれ以上仲間を見捨てないためにも、傍に居させて下さい」

 

 真剣な目でお姉様を見つめる、セツナ・チェブルー。

 それをしばらく正面から見つめ返してたお姉様は、大きくため息をついた。

 

「まったく……返せるものが思い付かないからといって、自分で返す必要は無いだろう?」

 

「いえ、一緒にいられる時間を貰おうとしているんです。

 頑張って自分が望む道を探したつもりなんですけど……」

 

「そうか。お前にとっては……そうなんだな」

(お前達も関わっているだろう。何故セツナを選んだ?)

 

 本人の説明通り。

 元々は、セツナ・チェブルーがチャチャゼロに相談したのがきっかけ。

 曰く、友人を欲しがっているお姉様と、出来るだけ長く一緒にいる方法は無いか。

 それに対し、チャチャゼロが眷属という方法を教えた。

 私達は問題点を説明。全てを受け入れた上で覚悟を決めたから、舞台を整える事に協力した。

 お姉様には、永遠を共に在ろうとしてくれる友人を拒否してほしくない。私達は意思や覚悟の確認はしたけど、拒絶は出来ない。する理由が無い。

 主とチャチャマルも眷属化に賛同してる。守護騎士達にも説明して理解はしてもらってる。

 

(そうか……ここに来た時点で全てを納得済みで、全員が結託済みか。道理でシャマルやシグナムが離れるわけだ。チャチャゼロがやらなかったのは、セツナ自身に私を説得させるためか……

 親愛属性の眷属の、制限と手法は?)

 

 基本は服従属性と変わらず。

 差異は付与する属性の差異に伴う魂の改変内容。それと、お姉様や私達が強制的に魂に干渉して、全ての記憶を見るのが無理になる事くらい。

 属性もなるべく抑えて、ある程度の親愛の情が湧き、嫌悪感が薄まる程度になってる。元々仲が良ければ効果が見えない程度のはず。

 本来の眷属と違って、お姉様が全権を持つ所有物ではなく、ある程度並び立てる仕様に。これはきっと、書の主にする術式を参考にしたせい。だから、剥奪後に親愛属性の眷属として再構成するのは無理。

 術式は結構大きいから、別途転送。使い方は眷属化と同じ。

 

(……そもそも、眷属化をした事が無いんだが?

 リーナとアコノすら、やったのはチャチャゼロだ)

 

 あ゛。

 えーと、リンカーコアと魂を専用術式で蒐集して、改変と同時に駆動用のパスを作るために加工する。同時に体の情報も確保。

 加工が終わったら吸収して、眷属や従者用の領域に格納。その後魔力と制御用のパスを元の体に繋げて完了。

 体が破損してるなら一旦破棄して再生成するのが手っ取り早いけど、今回は不要。

 大雑把な流れはこんな感じ。

 

(そうか、解った)

「セツナ。リスクを理解した上で、私の眷属に、本当になりたいんだな?」

 

「はい」

 

「それは、いつがいい?」

 

「可能であれば、今、ここで。

 うじうじしていても仕方ありませんし、何かあってからでは遅いです」

 

「ここが、ポイント オブ ノー リターンだ。

 眷属になった後は、私が崩壊するか、私がお前を殺す気にならない限り、消滅出来なくなる。

 完全に生殺与奪権を握る事になるが、本当にいいんだな?」

 

「お願いします」

 

「……解った」

 

 お姉様が、ついに納得……はともかく、説得を諦めはした。

 親愛属性の眷属化術式、起動を確認。

 属性付与、想定誤差の範囲でクリア。躯体制御用パスの生成完了。肉体構造の解析及び記録完了。

 肉体とのリンク開始を確認……問題なし。

 

「……あれ?

 えーと……もう、終わっちゃいました?」

 

「ああ。不老不死になった気分はどうだ?」

 

「うーん……気持ち魔力が使いにくい気がしますけど、それ以外はよく解りません。

 でも、何だか安心感はあります」

 

 本体がお姉様に取り込まれて体を遠隔操作してるようなものだから、最初の違和感は仕方ない。

 体を維持する魔力も、今はお姉様が供給してるし。

 

「親愛属性の付与に、そんな効果は無いと思うが。

 身近に感じる事の副作用か……?」

 

「いえ、前の世界みたいにこの身を盾にしても、別れなくて済むようになったんです。

 そうですよね?」

 

 自己犠牲な考え方をぶっちゃけちゃった。

 お姉様は、そういうのはあまり好きじゃないのに。

 

「……そうだが、そんな事をさせる気は無いし、お前を盾にしてどうにかする必要があるほど私は弱くないからな。それは覚えておけよ?」

 

 

 ◇◆◇  ◇◆◇

 

 

 その後は、さくっと違法研究所を襲撃。

 意識が朦朧としてるアギト(仮)を確保した上で、所内に居た人から容赦なく全力蒐集。魔力は全て闇の書へ渡し、お姉様が全員の魂を確保。おまけとして記憶の情報もゲット。

 軽く確認した範囲では、アギトという名は痕跡すら無し。

 研究所自体を生成空間に取り込んで紙やコンピュータの情報等々も丸ごと頂き、ついでに存在した証拠を消去。仮に撮影してても、機材そのものが建物と一緒に別荘行きだから漏れる心配は無い。

 

「で、こいつを治療するのは当然としても、だ。

 本当にこの言い訳でいいのか?」

 

 問題無し。

 次元を超えた助けを求める声が聞こえて、場所を確認して転移。

 付近でアギト(仮)を発見して、治療の為に連れて来た。

 出発前にセツナ・チェブルーが嘱託魔導師として、気になる声を仲間と一緒に調べるという報告をして、該当する管理外世界の情報をアースラから貰ってる。行動順も問題無い。

 建物跡も、爆発の影響で抉れたようにした。というか、実際に爆破した。アギト(仮)の発見場所は、少し離れた森の中という設定。

 

「……次元転送をどうやったかは?」

 

 そこは、お姉様の技術とカートリッジで。

 実際、それで来てるわけだし。

 

「まあ、そうなんだが……」

 

 というわけで、帰還推奨。

 早めに治療すべき。




カートリッジシステムとの相性と、おまけの魔力量/魔導師ランクまたは魔力操作技術の相当ランク(現在値)は、こんな感じです。
※技術での相当ランク評価は、魔導師ランクと一致しません(主に転生者と非魔導師)。
 これは、応用力や持久力等を考慮しない為。STSのティアナ(Bランク)をAA相当の技術(Variable Barret)を使用出来たのでAAと評価する感じです。
 千晴やツバサ等の一点突破型で鍛えてる人は魔導師ランクがとても低くなるので、原則として高い方での記述となっています。
※未測定の人(カリム、アリシア等)は含みません。また、原作で説明されてない人や部分には独自設定が入っています。

異常:セツナ(S-/AAA)
(何かがおかしい壁)
高+:エヴァ(C?/?)、アコノ(B?/S+)、美由希(-/D)、プレシア(S/SS)
高 :はやて(?/E)、なのは(AAA/AAA)、恭也(-/C)、すずか(-/D)
高-:忍(-/D)、ヴィヴィオ(S/AA?)、リンディ(AA/AAA)、チクァーブ(AA/AAA)
(うまくやれば常用や乱用が可能な壁)
中+:フェイト(AAA/AAA)、シグナム(AAA+/S-)、ヴィータ(AAA-/AAA+)、
   クロノ(AAA/AAA+)、千晴(A/B)
中 :ザフィーラ(AA-/AA)、ユーノ(A/AAA)、エイミィ(D/D)、
   ツバサ(A/B)、亜美(B/D)、鹿乃(C/C)
中-:シャマル(AA-/AA+)、アルフ(AA-/AA-)、カイゼ(AAA/AAA)
(扱いを間違えなければ大丈夫な壁)
低+:天牙(A/C)
低 :早苗(AA/F)
低-:アリサ(-/-)


なお、セツナの説明(仲間を見捨てて……の件)は、妹達監修の誘導が入っています。

常に生死の境が見える様な環境で優先される事は、可能な限り大勢が無事に生き残る事です。
誰かが犠牲になっている間に逃げる事を受け入れられないなら、その人も死にます。
逃げる事を躊躇して死ぬことは、育ててくれた仲間や身を挺した人に対する裏切りになります。
セツナはそれを理解していたので、逃げる事を当たり前として受け入れていました。

でも、何も感じなかったとは言っていません。無力感とか、喪失感とか、色々と。
最後に殿を任された時は、自分を犠牲に仲間を生かす為と自分から志願しています。
これ以上仲間を見捨てないため=仲間を優先するため。安心感は自己犠牲の精神でも安心、の意味。
忠犬せっちゃんは健在(むしろ悪化)です。


無限書庫については、Vivid公式でゴーレムやゴーストが出るんだから、魔獣の映像も出しちゃえ、的なノリ。深い意味はありません。無いんだからねっ!


2014/03/07
 中間報告やらも適当に上げて→中間報告に見えるモノも適当に提出して に変更
 土足で踏み込む理由にされる→土足で踏み込まれる理由にされる に修正
 応用いう段階→応用という段階 に修正
 構えたような体制→構えたような体勢 に修正
 眷属化の説明を増量
 その他、表現や使用する漢字を少し変更(意味等は変化ありません)
2015/04/08 魔法はどうなったのやらみぎ→魔法すらまともに発動出来んなんて、何をやりたかったのやら に修正
2019/09/23
 大きな魔力や特殊な変換資質が→特殊な変換資質が に修正
 ルーテシアに名付けられたというお姉様の怪しい記憶は、恐らく正しい を削除
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