続けられるかな……。他のを書けよって話ですが…。
今回はお試し短編の内容をもうちょっと詳しくして、蜘蛛鬼と下弦の伍との戦いと炭治郎達との初対面を書いています。
キャラの口調とかいろいろ間違っているかもしれないので、間違っていたら活動報告かメッセージで教えていただけるとありがたいです。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
序章 迷い人の壊れた人形師
ヴァル・ノーバディは、はてっと首を傾げた。
背中には、自分の身長と横幅よりも大きな縦長の葛籠。
肩にかけて背負っているが立ち止まって周りを見回す。
濃い土と枯れ葉と青葉の匂い。自然豊かな山の中特有のものだ。
そして暗い。空を見上げれば、月が見えた。真夜中だ。
背中に背負った葛籠の重さのせいで足元も枯れ葉と少し湿った土に登山靴みたいなごつくて厚底の靴が半分近く沈んでいた。
「ここどこ?」
大自然の中を移動していなかった。建物の中だったはず。
なのに瞬きをしたら知らない場所。しかも大自然。恐らく山の中。
「あれ? ない…、ない! 太刀が、太刀が…! 太郎丸のぉ!」
葛籠と一緒に持ち歩いていたもう一つの荷物がないことに気づいて、見知らぬ場所に突然移動したことに焦りも驚きもしなかったのに荷物のことで焦って周りを見まわしうろちょろして探した。
だが見つからない。
「なんで~~~⁉ もうガタがきててあと何振りかで折れそうなところでストック無しって…、ここで自動人形と会ったら…、まっ、なんとかなるか。…うん、問題なーし!」
頭を抱えて項垂れていたが、すぐに気を取り直してしまう前向きさ。
彼の仲間が気味悪がる特徴だ。
良い部分でもあるが、欠陥でもある。
上手くそれと付き合ってヴァルという少年はそうやって生きてきた。
自分が思い描く最高の人形を作るという趣味に人生を捧げるために。
「さ~て、どうしようか……。ん?」
気と取り直したことで順応したせいか、ある異変に気が付いた。
どこか遠くない場所で人の気配がある。激しく動いている音と息遣い。
それと人間じゃない何かがいる。人の気配よりそちらの方が数が多い。
そして濃い森の匂いよりも濃い血の臭いが微かな風に乗ってきた。
「これ、ヤバいやつ!」
人の死ぬ場面はいくらでも見てきたからヴァルには分かった。
すごい大ピンチな状況にその人達が立たされていて、助けに入らないと全滅させられてしまうと。
お人好しの偽善なしろがね
自分の保護者と名乗るが、一方でヴァルを壊した張本人である人物から常日頃言われていたし、他のメンバーからも変な目で似たようなことは言われてきた。
否定はしない。事実だからだ。
助けを求める人を見つけたら無条件に助けに行くのはいつものこと。
見知らぬ誰かだったり、顔合わせをしたことがない同じしろがねだったり、その時で違うがピンチに気づいたらいつも先に行動するのが常だ。
そのせいで無駄な怪我や自分のからくり人形が壊れてもその時はその時だとしか考えない。
けれど優先度で平気で離脱することだってある。
最近だと最古のしろがねのひとりルシールに、仕事をほっぽり出して日本に旅行に行ったことをこってり怒られて、日本で勝という少年と鳴海という青年としろがねのエレオノールの三名と知り合い、何やかやんあって誘拐された勝奪還の戦いに赴いたのだが途中で普通は使われない緊急連絡網でルシールに戻って来いと怒られて仕方なく戦線離脱した。あのあとどうなったのかは知らない。拳法家である鳴海も強いし、しろがねのエレオノールもついているから悪い結果にはならなかっただろうと予想している。
その後、しばらくしてサハラ砂漠にいた真夜中のサーカスに決戦を挑むメンバーの中に鳴海の名簿を見つけた時はすごく驚いた。だが結局顔を合わせることはできなかった。
道徳とか、善悪に難ありだとかあれこれ言われてきたし、その自覚は一応ある。
頭が壊れていて、そのせいで心もおかしい。
もとからあった記憶なんて残っていない。3歳の時に全てを無くした。
無理矢理流し込まれた他人の記憶で壊れてしまった脳は、二度と元通りにはならない。
けれど廃人にはならなかった。
流し込まれた部分的な記憶が定着し、人形への興味が粉々になった頭を歪に直した。
ヴァルは、そうして人形師になった。しろがね達が自動人形と戦うためのからくり人形を作り、修理し、整備する。それがヴァルを壊した張本人から与えられた居場所と仕事だった。
仕事の合間に自分だけのからくり人形を作る。
心血を注いで作り上げた異なる運用目的の四体の人形。
試しに動かしてみたり、自動人形と戦う中で壊れ、また造り直し、また戦い、また壊れ……、それを繰り返して改良を重ね続けた。
年月を重ね、新たな発想から生まれる色んな技術で生成される素材を取り入れたり、思いついた仕掛けを仕込んだり。
気が付けばうち1体が最強格のからくり人形だなんて言われるほどの代物になっていたが満足なんてしていない。
もっと、もっと。作れるはずだ。理想を形にできるはずだ。理想に終わりはない。
どうせ自分は地獄に落ちる。死ぬことになるなら良いことをして死ぬのと決めている。
壊れた人形師は、からくり人形作りを人生の趣味とし、偽善で動く厄介者だ。
だから後先なんて考えない。
なるようになる。きっとなんとかなる。なんとかなってきた。ダメだったらその時はその時だ。
たったそれだけで好きなように厄介ごとに首を突っ込む。
そして時代どころか、同じようで異なる似ている世界に理由も不明で飛ばされたしろがねの少年、ヴァル・ノーバディは、葛籠を地面に落とすようにし、指にはめた太い指輪のような糸と繋がった物を嵌め、葛籠から自作のからくり人形を起こす。
「太郎丸!!」
赤き鎧武者。
日本の歴史に描かれる戦国時代の武将をモデルにした。
大柄な巨体を昔の武将が身に着けていた鎧で包み、太く、長い太刀を振るう。
しげみから飛び出すように現れた太郎丸に、その場にいた人間達と、異形達の視線が集まる。
そこらに転がる死体と同じ衣装と日本刀を持った人間達を追い詰めていたのは、見たこともない異形達。
だがそんなことは関係ない。
困っているから助けに入る。
手近にいた異形に鞘から抜いた太刀を振るう。
あまりの速い剣の速度と切れ味で、異形はあっという間に胴体が真っ二つ。上と下がお別れ。
何が起こったのか分からず、上下が別れた異形はジタバタ暴れる。だが死なない。
「な…、だ、だれ…⁉」
時代錯誤な鎧武者の登場に、人間達は別の混乱状態に陥った。
だが敵は待ってくれない。隙を見て襲おうとしてくる異形を太郎丸が斬り捨てる。
重い足音をたてながら異形達を次々に斬り捨てる。
脳天から真っ二つ。胴体が上下さよなら。斜め切り、まとめて突き刺してから地面にたたきつけるようにして真っ二つ。
だがどいつもこいつも普通なら死ぬところを全然死ぬ気配がない。
それが奇妙だったが、体をぶつぎりにされてはどうにもできない様子だからとりあえずピンチを脱するために太郎丸を繰り、異形を斬って斬って斬りまくる。
そうして一匹だけ毛色が違う蜘蛛型の異形がいたのだがそいつがこの場から逃げようとした。
逃がす気はない。太郎丸の突きの方が圧倒的に速い。
眉間から後頭部まで貫いて、そのまま地面にたたきつけるようにして真っ二つにして終了。
地面に体内にあったモザイク必須な色々なものが飛び出したし、何事か喋ろうとしているが言葉として形にならない。
それより気になったことがあったからヴァルは、呆然と立ち尽くしている人達の方へ声をかけた。
「やっぱり日本語だよね?」
「は⁉ き、君は⁉」
「やっぱり日本語だ! 良かった!」
ニコーと場違いに嬉しそうに笑うヴァルに絶句する人達。
ジタバタ暴れている異形にトドメを刺しておこうと、太郎丸に太刀を振り上げさせようとすると。
「お、鬼は、首を切り落とさないと死なないんです!」
太郎丸がからくりだと知らないから普通に人間相手に喋るように叫ぶ人。
「おに? 人形じゃないんだ?」
確かに自動人形ではない。自動人形なら真っ二つでもう終わりだが、さっきからこれだけ斬り捨てても死んでいない異形達。首を切り落とす以外に死なないならそれも当たり前かと納得し、太郎丸の立っている場所を変え、太刀を振り上げて蜘蛛の鬼の首を切り落とした。
切り落としたらあら不思議。ボロボロと崩れて消えてなくなった。
他の異形…、あらため鬼の首も切ると同じように崩れて消えた。
「ふむふむ…、ちょっと面倒だな。柔いけど。」
弱点が決まっているならそこを狙えばいいだけだが、それ以外での倒し方がないとなるとそれはそれで厄介だ。
胴体を斬れば終了とはならない。
「あ、あの…。」
「自分、ヴァル。」
「へ?」
「名前。ヴァル・ノーバディっていいます。よろしくね!」
「え、えええ…?」
意味不明だという顔をされるし、声を出されるが能天気なヴァルはニコニコ顔のままだ。
「で、こっちは太郎丸! 俺が作ったからくり!」
そう言ってお披露目会でもするように、太郎丸を繰り自分の隣に移動させるとますますわけがわからないという顔をされるが気にしない。気にならない。頭に入らない。
するとヴァルの背後にしのびよる人の気配。
「動かないでください。」
「はーい。」
「…ふざけてるんですか?」
「ううん。全然。で、自分どうしたらいい?」
「…とりあえず武器を……、そちらも…。」
「あっ、待って!」
「あっ!」
背後から首に刃の先端を突き付けてきた女性を無視して、近くの木の裏に置いてきた葛籠を持ってくる。
「このままで歩かせてもいいけど、場所取るし、普通に目立つし…、納めておいた方がいいかなって。」
「なにを…。」
「こうやって!」
ヴァルは、指と腕を使い糸を繰り、太郎丸を収納するための動きをさせる。
ガコンッと音が鳴り、女性とヴァルが助けた人達が驚いて太郎丸を見た。
太郎丸の首があり得ない動きで曲がり、手足も、胴体も、鎧もおかしな形になって小さくなり、まるで自力で小さくなって葛籠の中に納まった。
明らかに葛籠より大きかったはずの太郎丸が小さく収納されたのを見て変な静寂が場を支配する。
「これは、いったい…。」
「太郎丸は、俺が作ったからくり人形なんです!」
「からくり?」
「そんな馬鹿な⁉」
「信じられない? でもほんとーのこと! 指につけた糸で自分が操ってた!」
そう言ってヴァルは、指に着けていた指輪を外した。
女性は少し思案するように難しい顔をしていた。他の人達は何が何だか分からないという顔で混乱しているようだ。
そりゃあれだけ人間らしい動きをしつつ、人間離れした戦闘能力で鬼を倒したのだから信じられないだろう。
「太郎丸は特に自信があって! 一番最初に作ったから思い入れがあって! あーでもないこーでもないって試行錯誤して…、太刀だって太郎丸に合わせて…。」
太郎丸が自分がイチから作ったからくり第一号だから思い入れと工夫を凝らしているということを一生懸命伝えたくて口が止まらない。明らかに引かれていても気にならない。だって楽しいから。
しかし不意にヴァルは気づいた。
別の場所で誰かがピンチであることに。
顔から表情が消える。太郎丸自慢の熱意が冷める。
急な変化に女性と助けた人達がいぶかしむ。
それよりピンチの人を助けるのが優先だ。
だからヴァルは、何も言わずに素早くクソ重たい葛籠を背負って、夜の森の中へ向かって走り出した。
微かな血の臭いを辿り。息遣いの方向を探す。
二つの気配を見つけた。もうひとつの気配があるがそちらは鬼と同じだと気づいた。だが…、二つの気配の方は片方が妙だった。
だがたくさん血を流して傷ついている。さっき助けた人達より死にそうな状況のようだ。
「太郎丸!」
ついさっき納めたのに再び起こされた太郎丸だが、物言わぬからくり人形は不平不満なんて言わない。言えない。
地面に降ろされた葛籠が開き、太郎丸が起き上がる。
白くて小柄な鬼と思われる子供と、地に倒れ伏せている市松模様の柄の服をまとった少年と、糸に絡まれて血まみれになっている少女。
少女の方が奇妙だったが、何が違うかは今はどうでもいい。とにかく助ける対象だからとヴァルは、太郎丸を白い鬼にけしかける。
突然のことに呆気に取られていたらしい白い鬼に太刀による突きが迫る。
あまりの速度で並みの自動人形であったなら避けられない速度だったのだが、ギリギリで眉間を貫かれるのを避けたものの、避け切れずに顔の横と耳を切り裂かれた。
「ぐぅっ⁉ なんだ、お前は…!」
斬られた箇所を手で押さえ、距離を取るように飛びのいた白い鬼。
その間に少年と少女を庇うように太郎丸と太郎丸を繰るヴァルが立ちはだかる。
「あ…、あなたは…?」
「ただの通りすがりのお人好しだよ。」
ヴァルは、それだけ言った。
だがヴァルは、指に伝わる感触に眉間にしわが寄った。
「太刀……、もつかな?」
すでにガタがきていていつ折れるか分からない状態だった。交換予定だったが交換用の太刀は手元にない。
だから折れたら太刀は捨てるしかないし、そうなると太郎丸の最大の長所が活かせない。
だが人形は他にもいる。
あの女性達には知らせてないが、あと三体いる。葛籠の中には太郎丸を含めて四体入っていたのだ。
太郎丸が使えなくなれば、残りの人形で対応する。いつもそうしてきた。
他人形もダメになったら……。
「まっ、なんとかなるなる!」
そう自分を鼓舞するように声を出すのだっていつものことだ。出す言葉が場違いなのもだ。
ヴァルの人形繰りで太郎丸が太刀を構える。
「気を付け…て…。ほ、他の…鬼とは…! 糸が……。逃げ…。」
「うん。首を切れば終わりなんでしょ? 人形よりは柔いし……、強いとはいえ、君の仲間の救援が来るまでの時間稼ぎぐらいは、とりあえずいける!」
ヴァルは、調子よく喋る。これもいつものこと。
緊張感がないといつも怒られる部分だが、ヴァルはずっとこうだ。直らない。きっと一生のこのままだ。
太郎丸が下弦の伍という強力な鬼に迫る。
下弦の伍が刀をも切断する強力な糸を張り巡らせ、太郎丸を切り裂こうとするが……。
太郎丸の動きと共にブチブチと下弦の伍の糸が切れ、太郎丸の鎧に傷がつかなかった。いや、微かについていたのだがパッと見じゃわからない。
目を見開く下弦の伍は、横へ跳んで太郎丸から距離を取るが異形であるが故の常識外れの運動能力に太郎丸も反応できるのは、太郎丸の構造もだが、その性能を引き出せるヴァルの規格外の人形繰りの技術がなせる業だ。
巨体に似合わない速度で方向転換して迫ってきた太郎丸の迫力に顔を歪めた下弦の伍の腹に、太刀が突き刺さった。小さい体の腹から刺さり、あっという間に背中まで貫通した。
あと何振りかで折れそうな太刀を振るよりは、…と考えて突き刺してから切り裂いて行動不能にさせて時間稼ぎをしようというヴァルの判断だった。
太くて鋭い太刀は、元々は自動人形という複雑な内部構造と表面の装甲や素材や様々な仕掛けだらけの壊しづらい化け物を一刀両断する用にこしらえた特注品だ。だが鬼を斬るためには作っていない。そこが懸念点だったが、常人では扱えない大きさと重量だったのが功を奏したのだろう。鬼を切り裂いたり、貫くぐらいのことはできた。あとどれぐらいもつかが不安点だが。
指と繋いでいる太郎丸と繋がった糸から太刀の限界を感じ取れるからだ。
下弦の伍が吐血した。小さいせいで軽く、太刀を少し動かすだけで足が地面から浮く。
小さい体の腹部から背中を貫く幅のある太刀が体内を傷つける。日輪刀じゃないが、普通に大ダメージだ。
「き、切り裂いて…やる!」
「ほいっ!」
「!?」
両手から糸を生成してヴァルとヴァルの背後にいる少年を狙ったが、太刀を握る太郎丸の向きをちょっとずらして糸の攻撃を狙った場所からずらして妨害した。
腹を貫く太刀と太郎丸が邪魔だとすぐに判断した下弦の伍は、太郎丸と太刀を切ろうと糸を繰り出す。
「はい、ダメー!」
「がっ、あああ⁉」
太郎丸と太刀に絡んだ糸が動かされる前にグリッと太刀を捻ったついでに小さい鬼の体を強めに小さい範囲で振り回してやる。
振り回される時にかかるGが強烈で、未体験だったのが良かった。あまり遠心力が強いと太刀から鬼が抜けてしまうので加減が必要だ。小さくて軽い鬼が太刀から抜けないように絶妙に加減しつつ動きを封じる。
やられたことがない攻撃。下弦の伍とはいえ、それだけで攻撃どころじゃなくなる。
「うっし! なんか上手いこと阻止できた!」
「ええ…?」
怪我して倒れたままの少年は、ヴァルの行動と下弦の伍をやりこめる様の差に困惑していた。
自分が手も足も出なかった下弦の伍という強力な鬼の糸は、あらゆるものを切断する強力な血鬼術という鬼が持つ能力だ。
下弦の伍は、糸の形をしたこの力で鬼殺隊隊士や普通の人間も凶暴な野生動物もバラバラに切り裂いて殺してきた。彼が家族として改造した鬼も折檻し、思い通りにならなければ容易く処分もした。
鬼を切る日輪刀さえ折れてしまうほどあの糸は恐ろしい。
だがその糸が切り裂けなかったものが今ここにいる。
太郎丸だ。
よーく見れば表面に微かに傷はついているが、切り裂けなかった。
何で出来ているのかは作者のヴァルしか知らないが、とにかく固いことだけは分かった。
下弦の伍の糸で切り裂けなかったもかなり運が良かっただけだ。なぜなら下弦の伍は、自分が理想とする家族を作るために自身の血と共に力の一部を付与していたため本来の力を一部失った状態だったからだ。もし全力全開だったら分からなかった。
そういった運のめぐりあわせと腹をデカい太刀で貫かれているため小柄さが仇となり大柄な太郎丸に動きを阻害されている。
太郎丸は、鎧武者としての動きと剣術を制限するため実は超パワー型だ。
太刀を使うことを理想としているが、実は腕力も脚力も半端じゃない。
場合によっては太刀無しで自動人形を潰したことだってある。自動人形は個体によって構造が違うから通用するしないことがあるのであまりやらないが。
「ぐ、ぐぐ……。」
下弦の伍は、顔に血管を浮かせ、口から血を垂らしながら歯を食いしばり、独特な黒目で太郎丸とヴァルを殺意マシマシの目で睨む。
「うーん…、このまま…、いや、こうしよう。」
「!」
急に突進を始めた太郎丸。
太刀に刺さったままの下弦の伍が何事かと思考が追いつかない間に、背中に大きな衝撃。
背後に太い木。
太刀によって串刺しにして木に縫い付けたのだ。
「うぐぐ! 調子に……っ⁉」
そこに現れたのは、ひとりの剣士。
一瞬にして下弦の伍の首が斬り飛ばされた。
「おお⁉ 誰ぇ⁉」
「ぎ、義勇さん…。」
ヴァルは目を丸くし、出血のせいで朦朧としているようだが少年が剣士の名前を呼ぶ。
首を切り落とされ、下弦の伍は身に着けていた白い着物だけを残して崩れて消えた。
太刀を木から抜くとはらりと着物が地面に落ちた。
「服は残るんだ。」
ヴァルが着物を拾い、鬼の特徴を知った。
「あの…、あまり粗末に扱わないでください…。」
「へ?」
「あの鬼は…。」
何か思うところがあるのかそう懇願してくる少年の言葉を聞き、ヴァルは、穴が開いてしまった下弦の伍が身に着けていた着物を丁寧に畳み、少年の傍に置いた。
「これでいい?」
「すみません…。」
「炭治郎…、憐れみを向けすぎるな。」
「でも…。」
「それと、お前。」
「はい、なんなりと!」
「……胡蝶から聞いていたが本当に妙なやつだ。お前は本当に人間か?」
そう言って刀をヴァルに突きつける。
ヴァルは、肩をすくめて見せた。
そこへあの女性やがってきた。
「鬼ではないのでしょうが、ただの人間でもないのでしょう?」
女性が険しい顔をしてヴァルを見る。
「その通り。確かに普通じゃないです。」
ヴァルは、普通じゃない。
しろがねだ。
柔らかい石という不思議な物質を溶かした水分、生命の水を飲んで肉体が変化した人間だ。
「鬼じゃないのか?」
「むしろ鬼って初めて遭遇しましたよ。戦ったのも初めて! 人形じゃなくってびっくり!」
「…にんぎょう?」
「あの~、すっごい今更なんですが…。」
「なんだ?」
「ここ、どこ? 日本? 日本語で通じてるから日本なんですよね?」
本当に今更なことをヴァルはやっと聞くことができた。
場がシーンとなる。
するとむーむーっという少女のくぐもった声を聴いて、そちらを見ると倒れている少年の傍でひざをつき泣きそうな顔をしている竹で猿轡をしたあの少女がいた。傷だらけだったのに傷はない。だが血の跡は残っている。
「だいじょうぶだ……、禰豆子。俺はだいじょうぶだから…。」
「いや、だいじょうぶじゃないでしょ? 傷、出血が…。」
「あなたは、動かないでください。私が応急処置をしますので。」
「あっ、はい。」
少年を助けようと思ったがそれより早く釘を刺されて、女性が少年の傷の応急処置をした。
その手さばきから医療従事者だとヴァルは思った。
「だいじょうぶそ?」
応急処置後、木にもたれかかった少年に声をかける。手元には下弦の伍が身に着けていた着物がある。
あとでできる限り丁寧に葬りたいらしい。
太郎丸は葛籠に戻した。
葛籠に戻すシーンには、炭治郎も義勇も驚いていたし、しのぶは一度見たが理解不能な顔をしていた。
「はい、なんとか……。えっと…。」
「自分は、ヴァル。ヴァル・ノーバディ。どっちも名前だけど、ヴァルって呼んでほしいかな。」
「ば、ばる?」
「発音難しいか~。君は?」
「俺は…、竈門炭治郎。こっちは、妹の禰豆子。」
「たんじろうとねずこ…。うん、覚えた!」
「助けてくれてありがとうございます…。なんとお礼を言ったら…。」
「かしこまらなくていいよ。たぶん年代同じぐらいじゃない? 俺15ぐらいだし。」
「じゃあ、同じぐらいだ。」
「そうみたいだ。なんかうれし~。」
「そうなの?」
「同い年っていなかったからさ。俺の周り。」
嘘ではない。しろがねのほとんどは大人だ。たまに十代の子もいたが滅多に会えない。
5年の1歳しか年を取らないから、普通の人間とは長い付き合いはできない運命にあるのだ。しろがねというのは。
「ところで…、禰豆子ちゃんからすっごく威嚇されているんだけど?」
さっきから炭治郎の横に腰かけている禰豆子から、フーッ!と猫の様に威嚇されていた。
だが直接攻撃しようとはしてこない。
「禰豆子? どうしたんだ? この人は悪い人じゃ…。」
「普通の人間じゃないからだろう。」
義勇という男がそう言った。
「禰豆子ちゃんって、普通じゃない?」
「…実は、鬼にされたんだ。でも、人は襲わない!」
「うん。それは分かる。なんか違ったから。」
「分かるんだ?」
「うーん……、なんか違うって感じがしたってだけだけど、あの白い鬼とか蜘蛛みたいな鬼とは違うってのはすぐ分かった。ま、俺も普通じゃないし警戒されても致し方ないって。それだけお兄ちゃんが大事で、守りたいってことなんだろうし。気にしないよ。」
「気を遣わせてごめん…。」
「いいのいいの。困ったときはお互いさまって言うじゃん。」
ヴァルの笑顔と気遣いに、炭治郎は安心した顔をした。
「禰豆子。箱に戻れ。そろそろ日が昇る。」
義勇がそう言うと禰豆子は、ハッとして上を見上げ、慌てたように義勇が持ってきた木箱に入って扉を閉じた。
「どういうこと?」
「鬼は太陽に当たる死んでしまうんだ。」
「へー…、首を斬る以外にも弱点があるんだ。やっぱり人形よりは、倒しやすい?」
「にんぎょう?」
「ちょっと色々とあってさ。」
「ヴァルといいましたね。」
そこへあの女性…、胡蝶しのぶという、蟲柱という階級の剣士がやってきた。
「はいはーい。」
「あの葛籠を持って、大人しく従ってください。」
「どこかに行くんですか?」
「何も言わず大人しくしてください。あの葛籠が重すぎます。何が入っているのか、このあとで全て話してもらいますからね。」
「いいですよー!」
場の空気を一切読まない明るい調子のヴァル。
彼はいつも通りだ。
例え見知らぬ場所であっても。
「なんなんですか、あなたは。…調子が狂う。」
「頭が壊れちゃってるせいですよ。バラバラのはめ込めないガラクタを無理矢理くっつけたみないに。」
「?」
しのぶは、頭を押さえ微かに額に血管を浮かせていたが、ヴァルがニコニコしながら発言した内容に顔をしかめてヴァルを見た。
変な人間と、とてつもない力を持った操り人形。人形が入ったクソ重たい葛籠(実は人形が4体分入っている)。
どうやって隠された場所へ導けばいいかと悩ませることになるが、ヴァルはそんなことなど露知らず。
ただ面白い経験をできたという興奮と喜びだけがあった。
自分のからくりは、鬼という異形にも立ち向かえるという素晴らしい性能が発揮できた。
太刀の残り寿命が気になるが、このまま彼らについていけばもっと楽しいことや面白いことが知れるし体験できるとはずだとヴァルは予感した。
きっとからくりをより素晴らしい高みに押し上げられる。それしか考えていない。人形作りだけがヴァルというしろがねを形作る全てなのだ。
木っ端みじんと言っていいほど壊れてから、人形のおかげで歪な形で再起動した人形師のヴァル・ノーバディは、自動人形という怪物退治から、鬼退治をすることになる。
今宵は、彼の初めての鬼退治であった。
太郎丸が下弦の伍の累と渡り合えたのは、累が血と力を家族の鬼に与えていて常に弱体化していたという設定を起用しています。
それでも十分恐ろしい力があるけど、自動人形を相手にするために近代技術や度重なる改良を施されてきた太郎丸の頑丈さと剛力で時間稼ぎはできたとしました。
太郎丸も万全ではなく、使用している太刀の耐久値が限界に近いのに交換用のが手元から無くなっていたため、立ち回りについて結構苦戦した。
交換予定日になぜか鬼滅世界に転移しちゃったし、なぜか用意していた交換用の太刀がなかった。たぶん元の世界に置いてちゃった。
なので後に刀鍛冶の里で新しく作る予定。今持っている太刀は折れちゃいます。
オリキャラのヴァルくんが鬼は柔いって感想を持っているのは、自動人形が真夜中のサーカスの団員という形で存在すること、フランシーヌ人形を笑わせるために見た目から入っていたり、だいたい複雑な構造をしていて相手によっては壊すのに苦労した経験があるからです。
鬼は基本的に人間からの変異なので、無残ほど肉体を自由にできるようなタイプでなけりゃ人形より関節や腹とかなどの急所がそのままであるから壊しやすいと考えたからです。
真っ先に顔面を狙ったり、腹を貫いたのも急所と柔らかいであろう個所を狙ったからです。
あとは太郎丸が人形を一刀両断して一撃で倒す仕様を目指した設計で、太刀もそれに合わせているので並みの人間どころか他のしろがねでも扱うのが無理ってレベルの代物で、発戦闘で重量とパワーで蜘蛛鬼を両断したり、弱体化した累を貫いたり攻撃の妨害はできたという流れです。
人形と鬼、どっちが強いかではなく、倒しやすい、壊しやすいで比べたらっていう感じです。
鬼は短期間で進化するので同じ手が通じなくなるから、その点では鬼に軍配があがる?
しかも無残と繋がっているので鬼が手に入れた情報とかが閲覧できるから無残側の強化にもつながるし……。
鬼にゾナハ病は通じるのか?ってちょっと考えてみたりしましたが、もし罹患したら普通の人間より地獄になる可能性があるので無しにしようと思います。
例え克服してても、無残が症状を真似てバラまいても大事ですし。
禰豆子が警戒しているのは、ヴァルがしろがねだからよく分からない変な臭いがするやつって感じて本能的に動いたからです。変な臭いの正体は、生命の水です。
でも炭治郎と自分を助けてくれたっていうのは理解しているので、攻撃はしてきません。
炭治郎も気づいてますが、命を助けくれた恩人だし、敵意が無いから今は追及してない。
こんな感じで始まるってことにしましたが、どうかな?
全部の原作イベントに参加はできないので、厳選しないといけませんし、オリジナル展開も交えていく予定。
そのため原作通り死ぬ人と逆に原作と違って助かる人がいます。
贔屓とかではなく、ヴァルがチートキャラではないことや、からくりが壊れた際に出撃できないことや、困っている人を見つけたらすぐ助けに入るお人好しだけど基本的に人形作りが最優先思考なぶっ壊れた奴だってことを描く予定なので。
できるだけ主要キャラを踏みつけるのではなく、無自覚なトリックスターのような感じを出しつつ、からくりや大正時代の技術で再現できる限りの武装で戦いを有利にするために助ける形にしたいと思ってます。
なので武器の面で一部キャラの強化もする予定。ただ使いどころが……。
活躍できない理由は、どうしても人形を操るという戦術のために操り手が無防備になるし、糸を切られちゃったりしてもダメだし、予備の糸で繋げられるけど、予備の糸がなかったらできないしで弱点がかなり多いですね。
今の段階で決めているのは、からくり人形と柱との模擬戦をオリジナル展開に入れ、上弦の陸との戦いに参加するのと割と早めに鬼を人間に戻す薬を完成させることです。
次回は柱合会議。
ヴァルが色々ひっかきまわすけど…?