待ってた方おられるのかな?
今回は、刀鍛冶の里での話。
前回での最後でも書きましたが、無限列車には関わりませんので炎柱は原作通り…です。
炭治郎達とも会えないため、完全に原作とは関わらない展開です。
からくり関係で小鉄くんと絡みます。
刀鍛冶の里の人達の言葉遣いとか、刀鍛冶の里の様子とかなどはほぼ想像で書いてます。
なので違うというご指摘がありましたら、メッセージか活動報告で教えていただけると助かります。
後付けの太刀の設定を書いてます。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
炎柱こと煉獄杏寿郎が無限列車で殉職する少し前に時は遡る。
「着いた? 着いた?」
「いちいちうるさいです。」
黒子のような格好の人物達がうんざりしたように声をつい漏らしてしまっていた。
彼らは、隠(かくし)といい、鬼殺隊の非戦闘部隊である。鬼と戦う隊士達と違い、事後処理や後援支援を主としている組織で目立たないが重要な縁の下の力持ちといったところだ。
そんな彼らがヴァルを刀鍛冶の里に案内するのは大変だった。
ただでさえクソ重たい葛籠を背負っているせいで鬼殺隊の本部まで連れてくるのも大変だったのに、鬼殺隊の標準武装である日輪刀を制作する要の要所は特に鬼に見つかってはならない場所だから余計に連れてくるのが大変だったのだ。
道中よく喋る喋る。声はひそめていてもお喋りが止まらないヴァルに、何度静かにするよう言ったか分からない。
ヴァルは、鬼の気配はないから大丈夫だと言って静かにする気がなく、いい加減口を縫ったろかと血管がぶち切れそうだったがなんとか無事に到着できた。
そして真っ先に出迎えに来たのは、刀鍛冶の里でからくり師をしている人物であった。
「ようこそおいでくださいました! あなたが…、ヴァルさん…でよろしかったですよね?」
「ひょっとこのお面! ここの子供? 俺がヴァルだよ!」
「うわっ! びっくりしたぁああ⁉ なに、今の⁉ 距離空いてましたよね⁉」
音もなく一瞬で距離を詰めてきたヴァルに驚いて尻もちをついてしまうお面の少年。
「あはっ、ごめんごめん。つい。だいじょうぶ?」
ひょっとこのお面をつけた少年が尻もちをついてしまったためヴァルが手を差し伸べて助け起こした。
「お手紙の内容通りなんですね…。柱の方々より速く動けるって…。」
「脳みそが壊れてるから、運動能力がね。でも、意識してると上手くいかないんだ。変だよね?」
「そうなんですか。あっ、申し遅れました。自分は、小鉄。この刀鍛冶の里で刀匠になるべく修行をしている見習いです。歳は十です。」
「そっか~、この時代はそれぐらいの年頃でも大人と並んで仕事するんだったんだ?」
「この時代? よくわかりませんけど。それより、あの……。」
「なに?」
「か、からくりをご所持だと聞いております…。」
「そうだけど? この葛籠に入ってるよ?」
「本当なんですか⁉ 実は俺、戦国時代から続くからくり技師をしている家の者で、その……、ぜ、ぜひ…、からくりについて…。」
「本当⁉ わ~~~、嬉しい!! すっごい運命感じちゃう!」
「近い近い近い近い! 怖いって! うぎゃっ!」
「あっ、ごめんごめん。つい。でも、からくり技師に会えるなんて、すっごい運命感じちゃう! ねえねえ、君はどんなの作るの⁉ どういうコンセプト⁉ 俺はね! (※ここから聞き取りにくい難解な専門用語や息継ぎしてるのか分からないほどの早口トーク)」
「うわー-! なんなのこの人⁉ 早口すぎるし、近いし、ヒーーー⁉」
「そいつにからくりの話題を出すのは禁物だぞ? そうやって早口でグイグイ来るから…。」
「柱の方々も引いておられたから…。」
隠達がヴァルに思いっきり迫られて後ろに倒れた小鉄に、生ぬるい視線を送りながらうんざりしたように忠告していたが、言うのが遅い。
「落ち着きなされ。銀色のからくり師殿。」
そこにお面をつけた大人達がやってきた。
ヴァルがそれに気づいて顔をそちらに向けたその隙に小鉄は、ヴァルから距離を取って逃げた。
「ここは刀鍛冶の里。鬼殺隊に支給している日輪刀はすべてここで打っているのです。あなたのことは、お館様からだいたいのことは…。」
「どうも、初めまして! ヴァル・ノーバディです! 人形師です!」
「本当に元気が良いな…。手紙の内容通りじゃなか。」
「はーい! 元気が取り柄でーす! ところで、お館様から伝えられてると思うんですけど、うちのからくりが使う太刀を用意したくって…、あとからくりのための工房も…。」
「ああ、もちろんだとも。でも、まずは、里の長とお会いになってくれ。太刀と工房について話がしたいと。」
「ぜひぜひ!」
「では、こちらに。」
刀鍛冶の里の大人達がヴァルを案内する。
そして里にある屋敷にて、小柄だが老齢であることが分かる人物が座布団に座っている部屋に通された。
「どうもコチンニチハ。よろぴく。」
「よろぴくお願いします!!」
「ほほほっ、手紙の通り元気が良いね。」
ちょっとふざけているようにしか思えない刀鍛冶の里の長の挨拶に笑顔で挨拶を返すヴァルに長は、楽しそうに笑った。
「ワシは、鉄地河原鉄珍。この刀鍛冶の里の長であり、刀匠じゃ。お館様より話は聞いておる。お主のからくりのための刀をここで造りたいと。」
「はい! 日輪刀の太刀を!」
「ワシも長いこと刀匠をやっておるが、からくりが使う刀を見たことも聞いたことがなくてのう。まずは、折れてしまったいうからくりの太刀を見せてはくれん?」
「これです。重いから気を付けて。」
「うおっ⁉」
煉獄との模擬戦で折れてしまった太刀は、鞘ごと布でくるまれている。本来は、太郎丸とセットで葛籠に入れられていた物だったのだが、折れてしまったため鞘に納めて別にして持ってきた。
それを前に押し出すように差し出す。
それをお付きの里の人間が受け取りるが、注意されていたのにその重さでつい畳の上に太刀が落ちたので、三人がかりで鉄珍のもとへ持っていき布を外した。
見るからに並みの人間では扱えない大振りの太刀であったことが分かる鞘の長さと太さに、同じ場所でそれを見た者達の一部が僅かに声を漏らした。
鉄珍が里の人間達に助けられながら鞘から折れた太刀を抜き出し、折れた部分と合わせて広げた布の上に並べた。
ジッと太刀を観察し、太刀の素材などを見極めているようだ。
「……これを誰が打った?」
「自分です。」
「………その年でこれほどの…。」
「自分、見た目通りの年齢じゃありませんので。」
「ほう?」
「聞いてません? 自分はしろがねという、人間と異なる存在です。5年に1つしか年を取らないため、生きた年数だけは高齢者ですよ。」
「これは、自己流ではないのじゃろう? 誰かから技術を学んだんじゃろう? これほどの業物は、よほどの学びと腕の師の下で学んだことが下地になければ造れるものではない。」
「あっ、分かります? 最初の頃、太郎丸の太刀の制作を依頼していた刀匠の方がもうご高齢で引退するしかなく、跡継ぎもいなかったみたいで、それに自分で造った方が早いかと思って。それで自分が太郎丸の太刀を造り続けるために技術を継ぎました。鞘と鍔には、必ずお師匠様が生きた証としていて必ずその模様と形にさせていました。これについては自分の独断であって、師匠の遺言でもなんでもありません。自分なりの師匠へのお礼のつもりです。」
「なるほどなるほど。……この形は、兎と…、和邇(わに)かな?」
「分かります? 大体の人は何の形をしているのか分からないんですけど。」
「伊達に刀鍛冶の里の長をしておらんて。しかし、これは因幡の白兎かな? 何か所縁があったのか?」
「詳しくは……、ただご先祖様が昔で言う出雲の出身だったとは少しだけ聞きました。」
「聞かなかったのか?」
「太刀が必要な事情はこちらから全て話したうえで、人間が扱えない代物な太刀を頼んでました。お喋りな人じゃなかったですし、太刀を使う理由についても詳しく話したらすぐに了承してくださった。それだけで十分だし、それ以上の関係性になる気もなかったし。けれど高齢で、病魔が巣くい始めたためにこれ以上は無理だとなって、自分が今後太刀を造るようにすると言ったら二つ返事で了承してくださった。そしてこの身に叩き込みました。あの人は、数年後に治療の甲斐なく亡くなられました。自分は諸々の事情で葬儀に参列しませんでした。お身内の方に兎と和邇を刻んだ鍔と特別小さく造った鞘を棺桶か骨壺の埋葬の時に一緒にと渡しました。お身内の方は、模様や形を見て何か察したようでしたが詳しくは聞かれず、葬式の間は棺桶に入れて、火葬前に一旦出してから骨壺と共に墓石に…。それ以来、太刀には必ず兎と和邇のそれを付けるようにしてます。外せない拘りはそこですね。」
「良い刀匠じゃったんじゃのう。そして、教えを守り、更に高めてこれほどの刀を造り続けてきたか…。これだけの腕があるのなら、そのからくりのための日輪刀打つのは難しくはない。」
「本当ですか⁉ やったー!」
「ただ、その前に日輪刀について学んでもらわなんと。なにせ鬼殺隊は、癖の強い剣士ばかりでな。すぐ折る奴もおれば、試行錯誤してやっと完成させた造るのが困難過ぎるもんも少なくない。ちゃ~~~んと学ばなければ刀を打つことも、からくりのための工房のことも白紙じゃ。」
「やりますやります! ぜひぜひ!」
「勢いが凄いのう! なら、早速鍛冶場を見て来なさい。案内を。」
「はっ!」
鉄珍の命を受け、刀鍛冶の里の人間が案内役となり、ヴァルを刀の鍛冶場へ案内した。
一通り見終わり、最後にヴァルが使うからくりの工房になる予定の小屋を見せてもらった。
「ここは昔、からくりの修理工房だったんだが……、からくりの数がもう1体しかなくてね。ほとんど使われてない。掃除して、必要な道具とかについては鉄珍様が用意するとおっしゃられていますので。」
「ってことは、小鉄くんのご先祖様が使ってたってこと? 小鉄くんは使ってないんだ?」
「…からくり技師として行き詰っているみたいです。刀匠として腕を磨きつつ、ご先祖様から代々伝わるからくり造りの技術を身に着けようと努力しているようですが……。」
「じゃあ、小鉄くんも呼んでよ!」
「えっ?」
「同じからくりを扱う者同士だから? 話がしたいし!」
「わ、分かりました。」
そうして小鉄が呼ばれた。
「ほ、本当にいいんですか?」
指名されたやってきた小鉄がおずおずと聞くと、ヴァルは、ニコニコしながら早口で言葉を放った。
「そんなかしこまらなくていいよ。人形作りの同士ってことで! だからお願い! この時代のからくり技師として俺の注文を伝えられそうだし、今の時代の技術でうちのからくり達の修繕とか修理とか、新しい仕掛けづくりとかがどこまで再現できるか色々やりたいから力貸して!」
「俺で…よければ…。えっと…、その…、その代わり…、俺も…。」
「なになになに? 聞くよ? できること叶えるよ!」
「ヴァルさ…、いえ、ヴァルのからくりの技術を…教えてください!」
「おう! いいね! ん~…、それなら、条件付きで。」
「条件?」
「俺のもといた時代…、世界観…、難しいことは省くけど。俺の住んでたところじゃ、人の生き血を啜る自分で動く人形がいて、その人形を退治するための武器としてからくりを使ってた。」
「それ…、少し聞いた。鬼じゃなく、人を襲う人形がいるなんて…。」
「その人形達には、致命的な弱点があって、その弱点を突くためにからくり人形で戦うのが有効だったの。だから強力なからくり人形をしろがね達に配って使ってもらわないといけないから、人形師は人形作りと修理でてんてこ舞いって感じ。でも、あくまで人形は人形に戻すべきって意味もあるし、人間相手に使うなんてナンセンス。たまに仕方なく使うことはあるけどそれはそれ、これはこれ。だから条件は、教えたからくりの技術を誰かを傷つける技術にしないように努力してほしいってことかな。それだけ。」
「すごい強いからくり武者だとは聞いてます。柱を相手にすごい力を見せたと。」
「太郎丸のこと? 一番最初に造ったからくりだし、一番改良をし続けた最古参だからかな? 一撃で人形を両断して戦闘終了ってのを目指したから、それに見合った太刀を用意するのがね~。」
「人形は、鬼のように再生しないから?」
「そうだね。まあ、中には自力で修理できるのとか、修理専門のが控えていたりとかしてめんどくさって時あるけど、胴体を真っ二つにぶった切って中の構造部品を壊したり、動く人形の命の疑似体液を大量を失わせちゃえばほぼ勝ち確定だし……、なにより…。」
「なにより?」
「一撃必殺、一刀両断は、最高にカッコいい!!」
「それが理由⁉」
「もといた世界も、きっと俺がいなくなっても人形はそのうちいなくなる。だから人形を壊すからくり人形も必要なくなる。使うとしたら見世物の劇で使う操り人形で十分だし。物騒な武器や人形を壊すための仕掛けは必要ないでしょ? 人体を抱きしめるだけで骨バキバキに折って、逆くの字にするほどの力を持った等身大のからくりって日常生活に必要だと思う?」
「…確かに要りませんね。今は鬼がいますから鬼殺隊には、すごく欲しいですけど。」
「鬼って不死身で不老なんだよね? 胡蝶さんから聞いた。」
「そう、鬼の始祖は千年以上も昔から生きていると耳にタコなほど聞いてて、太陽を浴びたら死んでしまうから逃げ回って夜に活動してて…。始祖さえ倒せば全ての鬼が滅びるって…。」
「それって、人を襲わない鬼も含めて?」
「そうなるんじゃ…ないですかね? 無惨の血を与えられて鬼になるし、血をたくさん与えられると強くなるって聞いてます。」
「なるほど、だから炭治郎も急いでたのか。始祖倒したら、妹ちゃんまで巻き添えってなったら目も当てられない。」
「鬼を連れた隊士のこと?」
「あっ、それ聞いてる? そうそう、その二人に協力するって約束したんだ。だから、鬼を人間に戻す方法を見つけるためにも早くからくりのための工房を用意したかったんだよね~。それと太郎丸の日輪刀を造って、柱の人とも再戦したいし。」
「鬼を人間に…、そんなことができるのかな?」
「もとは人間なんだから、できないってことはないはずじゃないかな? しろがねとは違うだろうし。」
「しろがねってなんなんです?」
「すっっっっごくめんどくさい話になるけどいい?」
「……ちょっとやな予感がするのまた今度に。」
その後、小鉄や刀匠見習いの手伝いもあって誇りをかぶって、半ば打ち捨てられた小屋状態だったからくり技師の工房を掃除し、雨漏りしていた屋根やボロボロに穴が開いていた壁をなどの個所を修繕した。
それが終わると、ヴァルのからくり達の部品作りや修理のための設備を造る前の準備をしておく。
準備の際には刀鍛冶の里に行く前に予めヴァルが用意していた設計図を出し、大正時代で実現できる限りの技術で再現した。からくりのための整備や部品作りなどに必要な専用の道具については、ほとんど自作する必要があったが、太郎丸の日輪刀を制作してから取り掛かる予定となった。
そうなった理由は、刀匠見習い達にヴァルが持つ刀匠としての技術とからくり専用の大きな太刀を制作する過程を見学させるためだった。鉄珍から頼まれたのである。
日輪刀に使われる素材の配合や温度管理などの基礎は学んだ。
あとは、太郎丸の太刀の強度を実現する技法を下地に、日輪刀の素材の配合を計算し、失敗した場合は配合を変えて再度取り組むことを前提として鍛冶場のひとつを借りて、ついに太郎丸の日輪刀造りが始まった。
ここまでに至るまでそれなりに日数を要した。
なにせ西暦2000年代から急に大正時代に技術が退行する状況で、2000年代の技術を使っているからくり達を構成する部品の代用をどこまで実現できるか調べないといけなかったのだ。
刀鍛冶の里が鬼に見つからないよう徹底的に秘匿されているためどうしても都会に比べるとものすごい不便。ほぼ手作業での部品作りが前提となり、電気を使う機械が無いから部品のスペアを用意するのに時間がかかる。なにせ数を用意しておかないといけない。
技術の時代を逆行させないといけないが便利な工業用の機材がない場合の代替えとなる古いやり方をヴァルは知っているし実際にやってみて身に着けていた。これはからくりが破損して修理が必要なのにスペアの部品が不足しているうえに、部品作りに使う機材が使えない時のためだ。
高度経済成長期である昭和の時代に爆発的に発展した工業技術や諸々もまだないため、それに代わる物を見つけることや多少品質は落ちてもいいからすぐに使える物を用意しないといけなかった。
そこは、工房の掃除と修繕をしながらヴァルが小鉄に頼んで、小鉄から聞いた鉄珍が産屋敷と相談して市場を調べて探してくれた。おかげで一番の難関をクリアできそうだとヴァルは安堵した。
からくりが壊れた時に修理できるかという問題が一番解決しないといけないことだったからだ。
ヴァルは、脳に宿る運動能力が一部いかれていて異常な速度で動けることはできるが肉体が強いかと言ったらそうではない。あくまでからくりを操って戦うことを重視し、壊れた脳もそういう風に特化するようツギハギの状態になったような感じだ。だから何でもできるように見えて実際は、普通出来ることができないという欠陥がある。
だから、からくり無しで鬼殺隊の一員として鬼を相手に戦うことは不可能に近い。鬼ごっこになったら逃げ足の速さで逃走成功は確実だが。
対鬼の仕掛けを仕込んだ特殊な武器を造れそうだし、そういう案を真っ先に考えたが鬼の特性を胡蝶から聞いたら、それはあまり効果的じゃないという答えがすぐに出た。
鬼に有効な毒として藤の花があるが、これも鬼の体内で分解されてしまったら同じ濃度の毒は通用しないと。それでも藤の花を鬼は嫌うため、鬼避けのために鬼が活動する夜間に藤の花の香を焚いて身を守るのが常らしい。もしくは藤の花を育てて家の周りを囲うなどするようだ。
千年以上も逃げ隠れする無惨という名の鬼の始祖があちこちにばらまくように生み出す鬼退治にいまだに日輪刀という近接武器が使用されるのも、鬼の弱点と鬼の耐久力のこともあるがすべての鬼が無惨と繋がっており、鬼が受けた攻撃の情報が無惨に伝わるうえに攻撃を受けた鬼に同じ攻撃が通用しなくなる。これによって他の鬼の適応能力や進化に繋がってしまい、鬼退治を困難にさせてしまうため基本的に発見した鬼は即首を切り落とすか、太陽の光の下で滅ぼすかして確実に倒すことが求められるようだ。取り逃すことで余計な犠牲が出ることや後々の戦いに響いてくるのだから。
無惨と繋がっていることで無惨は、他の鬼の思考を覗き見ることができ遠隔で命令を出したり、生まれたての鬼からでも情報を得て対策を立てるということもできてしまうのも無惨本人を探し出すことと討伐という最大の目標を遠ざける要因になっている。対鬼の仕掛けで挑むのは悪手だという考えに至ったのもこれが原因だ。
例外として無惨の支配から逃れた鬼が一部存在しており、そういう鬼は無惨との繋がりがなく無残がその鬼の情報を閲覧できないから情報が取れないし、声を届けることもできない。そして支配されていない鬼側も無惨の動きを把握できない。無惨はそういう鬼の命を狙う。
禰豆子は、まさにその鬼に該当し、炭治郎からの話で無惨の支配下にない二人の鬼がいることも聞いた。
この二人は、少しの血を一般人からもらい、それで食人の衝動を抑えているそうだ。
禰豆子は、血の一滴も摂取しておらず、それでいて普段は眠っており、眠ることで回復、食人衝動を抑え込むことからかなり特殊だとその二人の鬼からもお墨付きをもらっているらしい。
無惨の支配下にないこの二人の鬼が鬼を人間に戻す研究をしていた。炭治郎は、その話に希望を見出し二人に頼みを聞いて鬼の血を集めていることを聞いた。
だから禰豆子を人間に戻すために鬼の血……、無惨の血を可能な限り多く集める必要がある。鬼殺隊の隊士として鬼と戦うのも効率よく鬼の血を採取して鬼を人間に戻す研究を完成させてもらおうとしているのだ。
強い鬼ほど無惨の血をたくさん与えられており、その血を採取できれば研究が捗るようなのでヴァルは、こう考えた。
鬼の血を一度にたくさん吸い出す仕掛けをからくりに仕込めば良くない?
っと。
その仕掛けの設計図は、すでに頭にある。
あとは、それを実現するための工房と設備や素材があれば……という状態だ。
刀鍛冶の里に来たのは、太郎丸の日輪刀とからくりの整備や修理だけが目的じゃない。鬼の血を効率よく大量に手に入れるための仕掛けを造って炭治郎が達成したい一番の目的に協力するためだ。
「工房を整える準備も整ってきたし、腕がなる~~~!」
打ち捨てられたような有様だった昔のからくり技師が使っていたとされる小屋は見違えるほど綺麗になった。
内装については、刀鍛冶の里の人間達の手では再現できない部分もあり、そこはヴァルが拘って自分で整えることになっている。完全な状態で稼働させるにはまだ時間がかかりそうだが刀鍛冶の里の人々の力を借りれば短縮できそうだ。
「本当にずっとご機嫌ですよね。からくりが好きなんですか?」
数日間重労働をしているはずなのに疲れ一つ見せず、ニッコニコ、ハイテンションなヴァルに小鉄が若干引きながら聞いた。
「もちろん! でもって、やりたいことができるってことが確定したから!」
「そうなんだ。俺ができることなら手伝いますよ?」
「それがさ~、どうしても設備がね…、だから集中力があって手先が器用な人の手が欲しくって欲しくって…。小鉄くんいてくれてちょ~~~助かる! 手の怪我と目の怪我だけは絶対に避けてね!」
「すっごい期待と重圧⁉」
「作業用のゴーグルとグローブとか…、もしくは顔を守る物を小鉄くん用に造っとくから安心して! あと一番は、やっぱ体調管理大事! しっかり寝て、しっかり食べる! 頭しゃっきり集中力、超大事! ちょっとでも磨き残しや、バリが残ってたり、形がほんの僅かでも違ったら使えないから…ねぇ? これくらいならだいじょうぶなんて、あり得ないから。精密になればなるほど、寸分の狂いも許されないんだよ? 時計をイチから造ったことある?」
「ひいっ⁉ なんか怖くなってきた!」
「精密部品は、とにかく少しの乱れも許されないから。一個の歯車なりがペキッてなったり、目に見えないほど微々たる凹凸で引っかかったら、それだけでからくりが使い物にならなくなるって考えた方がいいよ。」
「そ、そんな手間を惜しまず…、からくりを…。」
「じゃ、太郎丸の日輪刀を造りに行こうか! 早く研磨機とか、切断機も用意したいし。整備用の道具も造らないと。」
「切り替え早い⁉」
「じゃ、鍛冶場に行こっか~。」
「待ってください~!」
スキップスキップランランランといった足取りで工房から出ていき、刀を作る鍛冶場へ向かうヴァルを小鉄が慌てて追いかけて行った。
***
ここからはかなり端折るが、刀鍛冶の里に残した記録によるとこう記された。
因幡の白兎の寓話の地を始まりとする刀匠より、その業を受け継いだ銀色のからくり師が日輪刀を打った。
並の人間では扱えない厚み、重さ、長さを持つ太刀である。
人間が扱うものではなく、からくり武者のための日輪刀であり、鬼を滅するために特別に打たれた特別な日輪刀である。
銀色のからくり師の腕は、当時の刀鍛冶の里の長を驚かせるほどのものであった。
腕を磨くには長い歳月を使う。老いた身であるが里で最も優れた刀匠である長が言葉が出なくなるほどであった。
日輪刀に用いられる素材と初めて向き合ったとは考えられないほど、これから日輪刀となる熱く溶けた金属を見事な手際で太刀の形にした。
その後の刃を研ぐ技術も里の刀匠達が舌を巻くほどであった。
人の生き血を啜って自ら動く人形を一撃で両断して破壊することを追及してきた鋭さだと語られた。
そうしてその日のうちに2本の日輪刀を見事に完成させた。
うちの1本は里に寄贈された。銀色のからくり師なりの拘りだという。壁に飾っていつでも見れるようにし、からくり人形のための日輪刀の参考にするためだとも語った。
十日ほどでからくり武者の太刀を3本。忍びのからくりの刀を4本こしらえた。
どの刀も兎と和邇の象った彫りが鞘と鍔を彩る。
これを見た鬼殺隊の隊士が同じ意匠の日輪刀を求めたこともあった。
だが銀色のからくり師は、それを断った。
ただし、里の刀匠見習いでからくり技師である小鉄という者が造るなら良いとした。
しかし、小鉄という者が銀色のからくり師の鞘と鍔を作れるようなるまでに時間を要してしまい、やっと満足がいくものが出来たのは、鬼殺隊が必要なくなった後のことである。
追記。
からくり武者の日輪刀が完成したあと、模擬戦で刀を交えた柱のひとりと再戦をする約束であったが、その柱の者は、日輪刀を完成させる前の日時のある任務にて上弦の参との交戦で殉職したという知らせを受けた。
からくりを整備するために造られた専用の支えによって糸無しで立たせた赤いからくり武者の前で、銀色のからくり師はその柱との約束が果たせなくなったことが酷く残念だと口にしている姿が目撃された。
太刀の鞘と鍔に因幡の白兎の模様と形を刻んでいるというのは、後付けです。
急な思い付きでした。
一応歴史のある刀匠だった人物に最初は太刀造りを頼んでて、後に彼のもとで修業してその技術を習得し、彼が亡き後に彼が生きた証として鞘と鍔に因幡の白兎の部分を必ずつけるという拘りがヴァルにあるってことにしました。
特に意味とかは考えてなかったのですが、師である刀匠の先祖が出雲出身だったって程度ぐらいの情報しかないってことにしました。
形や模様などは、パッと見じゃ因幡の白兎が基になっているとは分かりにくい物になっています。鉄珍は、長年の経験と勘で言い当てました。
もう少し考えて因幡の白兎の話の意味とかを無理やりねじ込もうかな?
次回は、準備が整った工房の話と炭治郎達が早い段階で刀鍛冶の里に来て、あと柱の誰かと軽く模擬戦するかとかを考えています。
炎柱繋がりで恋柱か、太郎丸と戦ってみたいと望んだ霞柱か、次郎丸が気になった音柱か……。
縁壱零式のことも出したいし。
どうしようかな?