いつになったら原作に介入できるか……。
今回は、原作と違い炭治郎達が早い段階で刀鍛冶の里に。
あとタイトル通りの柱が来ます。
伊之助と小鉄がちょっと可哀そう?
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
刀鍛冶の里でからくりの工房とからくりのための日輪刀製作など、ヴァルが鬼殺隊に貢献するために諸々の準備が整い始めた頃。
「ヴァル!」
「炭治郎! わー、何日ぶり? 禰豆子ちゃんも元気~?」
柱合会議以来の再会だった。
「ああ、今は眠っているよ。」
「寝る子は育つだね。」
「そうだな。」
炭治郎が背負っている箱をチラ見してヴァルが聞くと禰豆子はいつも通り眠っているという。
刀鍛冶の里になんと炭治郎がやってきたのだ。
里の人間に案内されて工房の外でからくりの部品作りの機材を組み立てていたヴァルを発見し、駆け寄ってきた炭治郎の声でヴァルが振り向き笑顔になった炭治郎にヴァルも駆け寄って再会を喜んだという流れだ。
「ちょっと間会ってなかったけどなんかたくましくなった? なんか一皮むけたみたいな? なんかあった?」
「それは……。」
途端炭治郎の表情が曇る。
「あっ、聞かれたくなかったことだった? もしかして柱の人こと? あの派手な炎みたいな髪の人。」
「炎柱の煉獄さん…。」
「そうそう、その人その人! ……任務で亡くなったって聞いたよ。太郎丸の日輪刀が完成したら模擬戦するって約束したのに……。残念。」
さすがにヴァルの顔から笑みが消える。だが酷く悲観しておらず、どこか空虚なものだ。
まるで何かしらのことで少し損をしたのを残念がるような乾いた雰囲気だ。それだけヴァルの異質さが垣間見えるが、ヴァルの頭の中が壊れているということを柱合会議で聞いていたため炭治郎は無理に追及しなかった。
「あっ、そうだ。それで、太郎丸の日輪刀は造れたの?」
炭治郎が話題を無理やり変えてきた。
「うん。とりあえず飾っとく用と、折れた時用のも含めて4本造った。次郎丸のも造った。」
「からくり以外のこともできるなんて、すごいんだなヴァルって!」
「刀はね、最初に太郎丸の太刀を造ってくれてた人から継承したんだよ。その人が高齢だったから。」
「そうだったんだ。」
「ところでそっちの二人はだれ?」
炭治郎は、他に二人の見知らぬ人物を連れてきていた。
「あ…、こっちの二人は…。」
「おい、お前!」
ズカズカとヴァルに近寄ってきたのは、上半身は裸でたくましい体つきをしている。そして猪の被り物をした男だ。
身長や声から恐らく炭治郎と歳は近いとヴァルは分析した。
「なになに? 猪の被り物?」
「シャケだかむしょだか知らねーが、柱と互角に戦った人形ってのはどこだ!」
「太郎丸のこと? 太郎丸は……、今メンテ中。」
「めんて?」
「えーと、刀を研いで切れ味を戻すみたいな? お風呂入って汚れを落とすとか? 今、バラバラにしてるから組み立て直さないと使えないよ。部品1個づつ磨いてピカピカにしてるところだから、早くても明日か明後日だね。」
「ハーーー⁉ せっかくこの伊之助様が戦ってやろうとはるばる来てやったのに戦えねーってことかぁ⁉」
「これをちゃんとしないとからくりがからくりとして力が出せないからね。生き物じゃないから、ごめんね~。」
「ムガー! 納得できるか! 他のはいねーのか⁉」
「あるけど、模擬戦希望ってことでいい?」
「ごめん。どうして戦うって言って聞かなくて、それで…。」
「俺も止めたんだけど…。止められなくってさ…。下手なことして里で何かあったら重罰ものだから、仕方なくついてきたんだよな……。」
「そっちの君は?」
「えっ? お、俺は、我妻善逸。」
「俺は、ヴァル・ノーバディ。よろしく。ねえ、なんか君強い? 強い? 強い強い? なんか強そう。」
「近い近いって! なんでグイグイ近づいてくるんだよ⁉ それに俺、強くないって!」
もうひとりの黄色っぽい髪の少年にヴァルがぐいぐい近づいていくと少年はあからさまに嫌がる仕草をして後ずさった。
「えー、だって、なんか俺のことでなんか言いたそうな顔してたから。」
「だからって顔寄せて来るなって! 女の子なら大歓迎だけど、あんた男だろ! しかも聞いたことない変な感じだから気になっただけだし!」
「どういうこと?」
「善逸は、耳が良いんだ。人の音や、鬼の音とか細かい判別ができるらしい。」
「ふ~ん? それで俺はどう?」
「……音がしてるようで、してない感じがして気持ち悪い。」
「しろがねだからかな?」
どうやら善逸の聴覚では、しろがねの音は気持ちが悪いらしい。
音が無いようであるというのは、老化速度が人間と違うせいなのか、それとも柔らかい石による効果のせいかは不明だ。
伊之助は、フンフンと鼻息荒くしていて激情をぶつける先を探しているようだ。太郎丸と戦いたいがために刀鍛冶の里にまで来たと言っているのに肝心の太郎丸が戦える状態じゃないと聞いて気が立っている。
「太郎丸は無理だけど、次郎丸でいい? 試運転したかったところだから。」
「じ、ろ…? あ~はん点丸だ~? そいつは強いのか?」
「次郎丸。」
「伊之助は、中々名前を覚えられないみたいなんだ…。」
「そういうこと? ま、なんか猪突猛進で野性味が強そうだね。体つきも…なかなか…。ちょっと準備するから待ってて。」
「逃げんじゃねーぞ!」
「準備するって言ってただろ、落ち着いてくれ伊之助。」
「さっきから里の人達が緊張してる音が……、なんで?」
ちょっと遠巻きに様子をうかがっている刀鍛冶の里の人が数名いたため、耳が良い善逸は疑問に思った。
***
そして場所を変える。
移動する前に葛籠に太郎丸以外のからくりを入れてきた。
太郎丸のメンテナンスは、引き続き小鉄に任せている。汚れた部品を1個づつ丁寧に傷つけずに穴や凹凸に詰まった汚れも丁寧にほじくり出して綺麗にする気の遠くなる作業だ。炭治郎達が来る前にヴァルがやってくれと小鉄に頼んだ。小鉄は、分解された太郎丸の部品の大小や数を見て完全に戦意喪失し断りかけたがヴァルが小鉄の頭を鷲掴みにしてからくりの技術を教える約束をしたことを出し、笑顔で頼んで了承させたのだ。もちろん1個で部品を紛失したり、傷をつけたり、少しでも曲げたらどうなるか…っと釘は刺してある。
4人は、里から遠くなく開けた場所まできた。ここで新しく作った日輪刀を試したりするそうだ。
「よし! じゃ、始めようか!」
「おう!」
伊之助は、やる気満々だ。
「次郎丸!」
ヴァルが葛籠から次郎丸を起こす。
地面に置かれていた葛籠が開き、次郎丸が軽やかに飛び出して地面に降り立った。
その動きは、見た目からして力強く重たいと分かる太郎丸と違う。
太郎丸が戦う姿を脳に焼き付けている炭治郎は、その違いを感じて思わず息を飲んだ。
逆に善逸は、縦長の大きな葛籠から等身大のからくり人形が飛び出してきたことに驚愕し悲鳴じみた声を上げるし、伊之助も葛籠から人間が出てきたと思ったようで驚いていたがすぐに気持ちを切り替えていた。
伊之助が二刀流の日輪刀を抜いて構える。
「確か作りもんだったか? だったら、ぶっ壊しても構わねーよな!!」
「君の方が壊れないように気を付けたら?」
「ああ⁉」
「どこからでもかかってこ~い。」
次郎丸の片手が伊之助に向けて、こいこいと挑発するように動く。ヴァルが糸でそう動かしているのだ。
伊之助の血管が浮く。
獣のように大声をあげ、凄まじい脚力で突進してくる。
並みの鬼や隊士では対応するのは難しいだろう。それほど伊之助の身体能力は高いのだ。
まさに馬力のある獣が人間に宿ったような……、ヴァルは伊之助とは初対面だがそう読み解いていた。
獣の力を与えられた特別枠な自動人形をヴァルは、知っている。しろがねの犬のことも知っている。
もちろん現実に存在する肉食獣や猪突猛進な獣を相手にしたことだってある。
だからどう対処すべきかは、熟知している。
ヴァルの繰りにより次郎丸が動く。
刀を抜く必要すらない。
そもそも殺す目的じゃない。
太郎丸とは、運用目的が違うが次郎丸もまた戦闘の時に何度も使ってきた太郎丸の次に造った人形だ。
次郎丸が腰のあたりで手を添えている背で交差している2本の刀の持ち手と鍔を打撃武器とし、体を左右のいずれかに捻ることで行う体当たりが突っ込んできた伊之助の体に決まっていた。
あまりに速い動きだったため炭治郎も善逸も目で捉えられなかった。
「ご、はぁ…っ⁉」
伊之助の体が数メートル先に軽々と吹っ飛んで地面に転がされた。
「伊之助!」
「えっ、なになに⁉ 今の⁉ 今なにがあった⁉」
「ちょっと体当たりしただけ~。」
「嘘だーーー! ガチャガチャ動く歯車の音とか、糸の張る音とかするけど、それだけであんな動きするか⁉」
「でも、これは現実~。」
「ねえ、炭治郎! あいつ、ふざけてない⁉」
「ヴァルは、ああいう人だから…。」
混乱する善逸が思わず叫び返しているし、たまらず炭治郎にヴァルについて聞くと炭治郎は困ったようにそう答えるしかなかった。出会ってまだそんなに経っていないがなんとなく人となりは把握しているのは三人の中では炭治郎だけだ。
「ぐ……っ、た、体当たり…だぁ⁉ 鬼でもねぇのに、こんな…力…、今の、無しだ! 今度こそ本気だ!!」
気合いで起き上がった伊之助。非常に体が柔らかい彼は、体をバネのように使い素早く起き上がる姿を見せつけてきた。
それを見たヴァルは、口笛を吹いた。
「ヒュ~、タフだね~! さてさてさて、何回耐えられるかな? 骨は折らないように気を付けるけど。君、頑丈そうだしだいじょうぶ? だいじょうぶだよね? だいじょうぶじゃなきゃ、下手すると死ぬよ?」
「猪突猛進猪突猛進!」
二度目はないと挑んでくる伊之助。
ヴァルは、ニコニコ笑顔で模擬戦を続ける。
その結果……。
「伊之助~!」
地面にぶっ倒れた伊之助を介抱する炭治郎が泣きそうな顔をする。
何度目かで猪の被り物は外れて、その下にある女と見間違うほどの美貌が露わになったがそれでもヴァルは微動だにせず次郎丸を繰り続けた。
「伊之助…が、て、手も足も出なかった…。か、か、からくり…なのに…、鬼より絶対強い…!」
何度も同じように体当たりで地面に倒されまくった伊之助は、体力が続く限り挑んだが次郎丸を相手に何もできなかった。完敗だった。
善逸は真っ青になっていた。話には聞かされていたが、これほど強い人形が存在することに驚き恐怖さえ感じているのだ。
しかもその人形はヴァルが糸で操っているという信じがたい事実もあり、よりあり得なさを強調するがこれは現実だった。
「ち、ぢぐしょう……、どうな、って…んだ……、速すぎて……、見えねぇ…。ぐふ…っ。」
「次郎丸は、速さ重視で防御は捨ててるからね~。速く動くだけなら、太郎丸より上なんだ。」
「それって…、太郎丸より強いってこと⁉」
炭治郎が慌てて聞いてきたがヴァルは首を横に振った。
「そういうわけじゃないよ炭治郎。持ち上げる力が強いか、足が速いかって違い。里の人に聞いたけど、隊士の人達ってそれぞれ適性があるんだよね? 呼吸っていうのが色々あるから、得意不得意があるんじゃない?」
「……え~と、つまり次郎丸は太郎丸より力が強くない?」
「そう。一刀両断。一撃必殺はちょっと難しい。だから、手早く素早く、数打ってぶっ壊すって感じかな。壊されると困る部分を突いてね。あと集団戦向け。だから一概にどっちが上ってことじゃないかも? 状況に合わせて使い分けるし。」
「う~ん…。」
上手く理解できない部分があるが、とりあえず太郎丸と次郎丸では能力が違い、適性や適した戦う場面があり、どちらが優れているかという話ではないということだとざっくり理解したようだ。
太郎丸は、炎柱の煉獄と模擬戦であれだけ打ち合うことができたことから一対一の戦いに向いており、次郎丸は速い動きを活かしつつ不殺の戦いに向いていると。
伊之助が手も足も出せずに、なおかつ次郎丸の背にある交差させた刀を抜かずに体当たりのみで伊之助を倒したのだから力弱いわけではないはずだ。伊之助と肉弾戦を行ったことがある炭治郎はそう考えた。
つまり単純にヴァルが造ったからくりの力が総じて強いだけということになる。
それだけのからくりを使わないと人を襲う動く人形を倒すことができなかったのかもしれないと現段階で結論を出した。そしてそれほど恐ろしい人形がいたという事実にも恐怖を覚えた。
「満足した?」
「ふ…ざ…けんな…! 俺…様は、まだ…、か、勝って…な…ぃ…!」
何度も地面に転がされたから土汚れまみれで、打撲と擦り傷だらけ、更に体力の限界なのにそれでも闘争心を燃やしてくる伊之助にヴァルは笑みを絶やさい。
「むちゃだ伊之助! ついさっき散々やられたんだぞ! 今の俺達の力じゃ太郎丸どころか、次郎丸の足元に及ばないんだ! いくら戦っても勝てないからやめてくれ!」
「ぐぐぐ……。」
伊之助は顔を歪め歯を食いしばり次郎丸を睨みつけていた。
「そうだ、炭治郎の言うとおりだって! ひとまず落ち着けよ!」
「じゃあ次は、善逸くん?」
「へ? えっと、あっ、いや…俺は……無しで…。」
「あ~、残念~。すっごい速く動ける肉付きしてるから、やってみたかったのにな~?」
「えっ? なに? なんでそんなこと…。」
「いや~、人形の動きって結局のところ参考になる対象が必要なわけで。だから、達人の動きをさせたかったら実物の達人の動きを観察して覚えたりして、再現するのにどこをど~するかって試行錯誤するの。太郎丸の動きだって歴史の文献とか読み漁ったり、銃刀法違反って法律があるから、許可を取って限られた場じゃないと使えない刀を使う居合の達人とかの動きを実際に観察したりしてやっとあそこまでできるようになったんだよ。」
「ちょっ、早口過ぎない⁉」
「でさ、善逸くん、戦わない? 戦ってくれる? ねえ、ダメ? ダメかな? ねえねえねえねえ。」
「ひ~~~! 迫ってこないで~~~! 誰か助けて~~~!」
「なら、俺が相手してやろうか?」
そこに長身の男がやってきた。
恵まれた体躯。見覚えがある白い髪と非常に整った顔立ち。そして奇抜な飾りの格好と顔の化粧など。
音柱、宇随天元だった。
「あなたは!」
「あれ~? あの時いた派手な人?」
「よう、柱合会議以来か? お前に用があったからさっき来たところだ。」
そう言って宇随は、歩いてきながらヴァルを指差した。
「なに柱さん?」
「音柱だ。俺は、宇随天元。派手にその壊れてる頭に刻めよ。」
「うずいさん…、宇随さん…。よし覚えた!」
「丁度用があったからくりも出してるじゃねーか。派手に模擬戦をやらせろよ。」
「うちの次郎丸にご興味があるみたいでしたね?」
「俺は、もとは忍びでな。それでちっとばっかし気になったからだ。」
「えっ⁉ 本物の忍者ってこと! すごいすごい! 大正時代にもまだ残ってたんだ!」
「ま、それは抜きにして、せっかく煉獄の奴がド派手に模擬戦したのを見たら……、俺もやりたくなっちまってな。他の連中にゃ悪いが抜け駆けさせてもらったってわけだ。」
そう言って笑みを浮かべ、持ち手の先が鎖で繋がった大振りの二本の日輪刀の刃を肩に乗せるようにしやる気を見せる宇随。
「ぜひぜひ! 善逸くんの動きも見て見たかったけど、本物の忍者とも戦ってみたいし! あ~~~、なんて贅沢!! もうずっとすっごく得した気分!!」
「お前の価値観どーなってんだよ……。それで? その次郎丸は、やれんのか? 今から太郎丸みたいに分解が必要とかねーだろうな?」
「次郎丸はだいじょうぶです。ただ、この時代じゃ手に入らない部品の素材があるので、この時代で手に入るもので替えが利くか試してるところです。今のところ動作に問題はないのでいけそうですよ。」
「先の時代から来たってのが仇になったのか…。」
「そうですね。」
「途中で壊れても責任は取らねーぞ? 壊されないよう上手く繰れよ?」
「壊れるかどうか試すためだから、壊れても予想の範疇なので問題ナッシング!」
「壊れること前提か……。なら派手にやっても良さそうだなぁ?」
そう言って宇随はやや凶悪な笑みを作り、次郎丸と模擬戦を行うために適切な距離の場所に移動していく。
人の手で繰ることで絶大な力を発揮するからくりに彼なりに興奮していたのだ。普段の冷静さと飄々とした態度が少し崩れる程度には。
そして我慢できずにわざわざ刀鍛冶の里まで来た。
太郎丸を相手にするには分が悪いと考えていたが、次郎丸は忍者を模したものだと聞きそれで興味を持って柱合会議の場でで実物を見た。そして先ほど伊之助と戦う姿を見て、自分が模擬戦をするならコイツだと直感したのである。
太郎丸にも興味はあるが、自分の戦い方のことを考えると分が悪いと考えた。
炭治郎と善逸は巻き込まれないよう動けない伊之助を二人がかりで運び、開けた場所の端まで移動した。
宇随が鎖で繋がった二振りの刃を両手にそれぞれ握り、右手で握っている方のその切っ先を次郎丸に向けた。
「派手に魅せろよ。期待してんだからな?」
「じゃ、期待に応えられるよう……、頑張りまーーーーす!!」
場の空気が変わったのを炭治郎達は感じた。
善逸は、体が震えていた。
次郎丸の内部の歯車の動きの音が聞こえる。その動きの音が明らかに伊之助が戦った時と違っていたのだ。
ヴァルが微かに動かす指や腕の動きによって糸が張り、それに合わせて次郎丸の中のその音も変化する。その音の奇怪さと、ヴァルの音に耳障りさが影響して恐怖心が湧いていたのだ。
炭治郎は、善逸と違いその音をは聞けないが今は亡くなった煉獄が、太郎丸と模擬戦を行った時とはまた違う激しい模擬戦が今から始まると予感して炭治郎も自然と身が震えた。
開けた場所の周囲にある緑の茂みに身を隠している小鉄がいた。
太郎丸以外のからくりを持ってヴァルがどこかに移動したのを聞いて、慌ててヴァルに言われていた作業を中断してここに来た。
あとでヴァルに何か言われるとかされるのを覚悟して、ヴァルのからくりが戦う姿をその目で見たくて仕方がなかったのだ。
しかも柱との模擬戦なんて絶対見逃したくない。
その昔に存在したという始まりの呼吸の剣士を模したからくりを造ったからくり技師の一族の末裔であるが、先祖に及ばないという重荷から行き詰っていた小鉄。
そんな時に里にやってきたのは、ずっと先の時代からやってきたというからくり師。
しろがねという謎の身であるが人形に関する技術と優れた刀匠としての技術を有していた。見た目は15歳ぐらいに見えるが、実際はかなり歳を重ねているというのだが見た目も中身も年相応……、たまにそれ以上に見えなくもない。
頭が壊れていると本人は言っている。変なことを言うし、妙に明るいし……、なのに人形に関してだけは厳しい。
あんなとんでも精密部品の塊を分解し、その部品全部を綺麗にしろって無茶ぶりを小鉄に頼むほどだ。ヴァルにはヴァルで早く仕上げないといけない物があったので小鉄に頼んだだけだが内容が小鉄には鬼畜だった。
この世で最も優れているかもしれない戦闘用からくりの戦いを見られると思うだけで高鳴る心臓を抑えるように胸元に手を置き、息を殺して今か今かと模擬戦の開始を待った。
炭治郎達は、宇随より早めに里に来てます。
時系列は……、まだ遊郭に嫁達を潜り込ませる前ってことにしてます。
炭治郎達も無限列車後の修行中の期間。
そうじゃないと宇随が任務と嫁達を放ってからくりとの模擬戦を選んだってなって、宇随の人間性が違うってことになるので。
炭治郎がヴァルを訪ねてやってきたのには、理由がありますが次回ぐらいを予定しています。
次郎丸は、「からくりの君」でも機動力重視のからくりって感じで敵対兵力を薙ぎ払う活躍を見せているので、パワー型の太郎丸とは対になる感じをイメージして書きました。
伊之助が弱いのではなくヴァルに繰られた次郎丸がクソ強かっただけです。
あと伊之助の体の動きをヴァルが完全に見切っていたのもあります。
人形を作る工程で人体の動きや構造を観察して見抜く力を身に着けたことで得たものです。
なので人間らしい動きをする人型の鬼にも有効です。
小鉄は、からくりが戦うために動くところを見たくてヴァルから頼まれた仕事を放ってきちゃいました。
あとで見つかって怒られます。
太郎丸の掃除や整備については、中を見たらメンテ時期だったからです。蜘蛛鬼とかとの戦闘や煉獄との模擬戦で隙間に色々入って汚れてたのもあります。