冷たい金属の大地に、赤い閃光が走った。
かつてそれは、星だった。生命があり、文明があり、誇りがあった。だが今、サイバトロンは戦場でしかない。
轟音と共に、大地が裂ける。
青い光を宿した戦士──オプティマス・プライムが剣を振るう。その対面、圧倒的な威圧を放つ巨体──メガトロンが笑う。
「まだ抗うか、オプティマス」
「抗うのではない。守るのだ」
衝突。火花と衝撃波が、廃墟をさらに砕いた。
──その戦いを、少し離れた場所から見ている者がいた。
黒とガンメタの装甲。青く静かな光を宿す眼。
ガルバス。
彼は動かない。ただ、見ている。
崩れ落ちる建造物。逃げ惑う非戦闘員。巻き込まれ、消えていく命。
その全てを。
「……どちらも、間違っている」
その呟きは、戦場の轟音に飲まれて消えた。
──その日、ガルバスは戦場を去った。
どちらにも与しないという選択。それは逃避ではなく、決別だった。
「守るために戦うなら、やり方を変える」
彼は一人になった。
長い時間が流れた。
宇宙の果て、青い惑星。
地球。
夜の砂漠に、静寂が降りている。
その静寂は、一瞬で破られた。
轟音。
軍用ヘリが基地へと降下する。
だがそれは、人類の兵器ではなかった。
金属が歪み、折れ、組み替わる。
巨大な異形へと変わる影。
ブラックアウト。
爆発が連鎖し、炎が夜を焼く。
通信は遮断され、基地は一方的に破壊されていく。
まだこの時、人類は知らない。
“戦争”が始まったことを。
そして——
この星を巡る争いが、すでに動き出していることも。
その光景を、遠くから見ている存在がいた。
丘の上。
闇の中に溶け込むように立つ黒い影。
ガルバス。
彼は一切動かない。
ただ観測する。
エネルギー波形。
攻撃パターン。
目的。
すべてを、冷静に解析していく。
「ディセプティコン……間違いない」
視線が、燃え上がる基地を捉える。
逃げ惑う人間。
無力な存在。
巻き込まれていく命。
沈黙。
長い、ほんの数秒の静寂。
「……放置すれば、この星は戦場になる」
だが——
彼はまだ動かない。
その理由は単純だった。
「これは、俺の戦争じゃない」
かつて、そう決めた。
関わらないと。
どちらにも加担しないと。
だが。
炎の中、小さな影が倒れる。
人間の兵士だ。
立ち上がれない。
逃げることもできない。
ブラックアウトが、ゆっくりと近づく。
その瞬間。
ガルバスの足が、一歩だけ前に出た。
止まる。
再び沈黙。
そして——
「……違うな」
低く、はっきりとした声。
「これはもう、俺の問題だ」
決断だった。
関わらないという誓いを、自ら破る選択。
次の瞬間。
ガルバスは動いた。
重力を切り裂くように跳躍し、戦場へと落下する。
着地。
衝撃で砂が吹き飛び、地面が砕ける。
ブラックアウトが振り向く。
未知の存在。
新たな敵。
ガルバスはゆっくりと立ち上がる。
その視線には、迷いは無い。
「ここから先は、好きにはさせない」
右腕が変形する。
フュージョンブラスター。
エネルギーが収束し、青い光が脈動する。
「この星は、お前たちの戦場にはさせない」
閃光。
衝撃。
戦いが、始まった。
——だが、それはまだ序章に過ぎない。
ガルバスは戦いながら理解していた。
敵は一体ではない。
これは“侵略の前触れ”だと。
「……一人じゃ足りないか」
わずかに視線が空へ向く。
呼ぶべきか。
あの者たちを。
かつて、自分が遠ざけた存在。
だが。
次の瞬間、彼は決める。
「……来い」
右腕の一部が展開する。
通信ビーコンが起動する。
光が、夜空へと突き抜ける。
「今度は俺が呼ぶ」
それは命令ではない。
願いでもない。
“選択”だった。
「家族を」
光は宇宙へと届く。
応答はまだ無い。
だが——
確かに、何かが動き出していた。
ガルバスは再び敵を見る。
戦いは続く。
孤独な戦士としてではない。
これから来る者たちのために。
時間を稼ぐために。
「来るまで持たせる」
低く呟き、再び構える。
青い光が、闇を裂いた。
——レギオスティコン、その始まりである。
——宇宙。
静寂の闇の中、一筋の光が走った。
ガルバスが放ったビーコン。
それはただの信号ではない。
“呼び声”だった。
応答が返る。
一つではない。
複数。
遠く離れた宙域で、反応が連鎖する。
そして——
動き出す影。
最初に加速したのは、小型で俊敏な機体。
スティンビー。
「……呼んだな、ガルバス!」
声には迷いがない。
むしろ、少しだけ嬉しそうだった。
スラスターを全開にし、一直線に軌道を変える。
その後方。
重厚な機体がゆっくりと進路を変える。
ブレイクハイド。
「やっとか……」
低く呟く。
長い間待っていた戦い。
だが焦りはない。
確実に、確実に距離を詰めていく。
さらに別方向。
漆黒の機体が静かに動く。
スカイアーム。
無言。
だがその動きには迷いがない。
(……あなたが呼ぶなら)
その思考だけで十分だった。
高高度。
巨大な影が翼を広げる。
ドレッドウィング。
「状況は戦争規模……か」
冷静に分析しながらも、進路は変えない。
「いいだろう。付き合う」
加速。
最後に。
わずかに遅れて反応する存在。
ノチェット。
「……ふむ」
興味深そうな声。
「“家族”を呼ぶか」
一瞬の沈黙の後——
「なら、行くしかないな」
ゆっくりと動き出す。
そして。
五つの軌跡が、同時に地球へ向かう。
大気圏突入。
燃え上がる装甲。
空が裂ける。
流星のように降り注ぐ五つの光。
地上ではまだ誰も知らない。
新たな勢力が到来したことを。
最初に突入したのはスティンビー。
「うおおおおッ!!」
炎を引き裂きながら急降下。
そのまま都市外縁へと着地——
衝撃。
地面を滑りながら体勢を立て直す。
すぐに周囲をスキャン。
「……ここが地球か」
視線の先。
一台の車。
赤いマスタング。
スティンビーのセンサーが反応する。
「いいな、それ」
次の瞬間。
装甲が変形し、構造が再構築される。
——ビークルモード確定。
赤いマスタングが、夜の道路へと滑り出した。
別地点。
重い衝撃と共に着地する巨体。
ブレイクハイド。
周囲の建物が揺れる。
「……悪くない環境だ」
視線の先には、警察の装甲車両。
SWATトラック。
無言で近づき、スキャン。
「これでいい」
変形。
黒い装甲が再構築される。
重量級のSWATトラックが、静かにエンジンを鳴らす。
影の中。
音もなく着地するスカイアーム。
周囲を一瞬で把握。
視線の先には——
黒いバイク。
ハーレー。
(……速く、静か)
それだけで十分だった。
変形。
黒い車体が、闇に溶けるように走り出す。
空。
まだ落下を続ける影。
ドレッドウィング。
途中で変形を開始する。
「地上に降りる必要はないな」
そのまま戦闘機形態へ。
F-35。
轟音と共に水平飛行へ移行。
「空は、俺が抑える」
そのまま夜空へ消える。
最後に。
静かに着地する影。
ノチェット。
周囲は人間の施設。
サイレンの音。
救急車。
フォードE-350。
「……なるほど」
ゆっくりと近づく。
スキャン。
「実に都合がいい」
変形。
白い車体が、不気味な静けさを纏う。
そして——
全員が揃う。
姿は違う。
場所も違う。
だが、目的は同じ。
通信が繋がる。
ガルバスの声。
「……来たか」
短い一言。
だがそれで十分だった。
スティンビー:
「当たり前だろ!」
ブレイクハイド:
「遅れてはいない」
ドレッドウィング:
「状況は把握済みだ」
スカイアーム:
「……いつでも」
ノチェット:
「面白くなりそうだ」
わずかな沈黙。
そして——
ガルバスが告げる。
「戦うぞ」
その言葉に、誰一人として迷いは無い。
それは命令ではない。
“家族の合図”だった。
——レギオスティコン、集結。
夜の街。
エンジンが悲鳴を上げる。
黄色の車体——バンブルビーが、限界まで加速していた。
助手席でサム・ウィトウィッキーがシートにしがみつく。
「ちょ、ちょっと待てって!! これ絶対スピード違反どころじゃないだろ!!」
返事はない。
代わりにラジオがノイズを吐く。
《……hold tight》
「いやそれしか言わないの!?」
背後——サイレン。
ミラーに映るパトカー。
だがその動きは異常だった。
低く歪んだ声が、無線を乗っ取る。
「逃がさん……ウィトウィッキー」
サムの背筋が凍る。
「来てる!! すぐ後ろだ!!」
バンブルビーは急旋回。
狭い路地へ突っ込む。
壁をかすめ、ゴミ箱が弾け飛ぶ。
——だが。
追ってくる。
バリケード。
距離は、縮まる。
タイヤが軋む音。
金属がきしむ。
その瞬間。
バリケードの車体が歪む。
走行したまま——変形。
巨大な腕が展開される。
「撃ってくるぞ!!」
サムの叫び。
バンブルビーは急ブレーキ。
横滑りしながら射線を外す。
——次の瞬間。
衝撃。
横から突っ込んできた“赤い影”が、バリケードを弾き飛ばした。
金属同士の激突音が路地に響く。
「そこまでだ!!」
赤い車体が跳ね上がり——変形。
軽量機体が着地し、構える。
スティンビー。
サムが目を見開く。
「え、ちょ……もう一体!?」
バリケードが体勢を立て直す。
「……増援か」
スティンビーは一歩も引かない。
「兄貴から離れろ!!」
その言葉。
一瞬——バンブルビーが動きを止める。
ラジオがノイズを吐く。
《……?》
だが、次の瞬間。
理解。
“敵ではない”
バンブルビーの姿勢が変わる。
警戒から——連携へ。
バリケードが突撃。
スティンビーが迎撃する。
高速機動で翻弄し、射撃。
だが——重い。
押し切れない。
「くっ……!」
その瞬間。
黄色の影が横から突っ込む。
バンブルビーの体当たり。
二体の連携。
スティンビーが笑う。
「さすがだな、兄貴!」
ラジオが応じる。
《……let's go》
短い。だが十分だった。
——しかし。
空気が、変わる。
重いエンジン音。
路地の奥から現れる、黒いトレーラー。
ゆっくりと近づく。
ただそれだけで——圧が場を支配する。
サムが思わず息を呑む。
「……なに、あれ」
スティンビーの声が少しだけ低くなる。
「来たか……」
トレーラーが停止。
金属が軋む。
変形。
現れたのは——ガルバス。
黒とガンメタの巨体。
青い光が静かに脈動する。
バリケードが、わずかに後退する。
「……何だ、あの存在は」
ガルバスは一歩前へ出る。
右腕が変形。
フュージョンブラスター。
青い光が収束する。
「退け」
——発射。
閃光。
バリケードは咄嗟に回避し、距離を取る。
一瞬の静止。
そして。
「……覚えておけ」
撤退。
闇へ消える。
静寂。
サムは荒い息を整えながら周囲を見る。
黄色。
赤。
そして——黒。
三体のロボット。
スティンビーが振り返る。
視線はサムではなく——バンブルビーへ。
「久しぶりだな、兄貴」
ラジオが応じる。
《……good to see you》
短い再会。
だが、それで十分だった。
——そして。
ガルバスが一歩前に出る。
視線が、サムを捉える。
圧倒的な存在感。
サムは動けない。
ガルバスが低く言う。
「そいつが鍵か」
スティンビーが即答する。
「守るんだろ?」
わずかな沈黙。
そして——
ガルバスは頷く。
「当然だ」
遠くでエンジン音。
複数。
接近してくる。
スティンビーが空を見上げる。
「……別の連中か」
ガルバスも視線を上げる。
「来るぞ」
その一言で、全員が理解する。
これは終わりではない。
始まりだ。
夜の街。
焼けた空気と、まだ消えない炎。
その中に——
低く、重いエンジン音が割り込む。
一つではない。
複数。
一直線に接近してくる。
サム・ウィトウィッキーが振り向く。
「……また来たのかよ」
スティンビーが舌打ちする。
「さっきのとは違うな」
バンブルビーが前に出る。
サムを庇うように。
ガルバスは動かない。
ただ——耳を澄ますように、わずかに頭を傾ける。
「……違うな」
低く呟く。
ヘッドライトが止まる。
一直線に並ぶ光。
静止。
次の瞬間——
金属の連鎖音。
車体が分解し、組み上がる。
巨大な影が夜に立ち上がる。
先頭。
オプティマス・プライム。
その背後に、複数のオートボット。
武装は展開されている。
だが——撃たない。
張り詰めた沈黙。
サムが小さく言う。
「……敵?」
誰も答えない。
スティンビーが構える。
「どう見る、ガルバス」
ガルバスはすぐに答えない。
オプティマスを見ている。
まっすぐに。
そして——
「……オプティマス」
名前を呼ぶ。
断定で。
空気が変わる。
オプティマスの動きが止まる。
「……その声」
一歩、前に出る。
「ガルバスか」
サムが息を呑む。
「やっぱ知り合いじゃん……」
スティンビーが小さく笑う。
「だから言ったろ」
だが、緊張は消えない。
オプティマスの視線は鋭いまま。
「なぜここにいる」
ガルバスは肩をわずかにすくめる。
「同じ理由だろ」
短く返す。
「戦争が来てる」
オプティマスが一瞬だけ沈黙する。
その言葉の重さを測るように。
「……確認済みだ」
静かに答える。
「ディセプティコンが地球に侵入している」
ガルバスが頷く。
「ブラックアウト、バリケード」
名を並べる。
「先遣だな」
オプティマスの目の光が強くなる。
「やはりか」
だが——
次の言葉に、わずかな違和感が混じる。
「だが、規模が小さい」
ガルバスが視線を上げる。
「……小さい?」
オプティマスが続ける。
「本隊の気配がない」
断定。
その言葉に——
ガルバスが、ほんのわずかに笑う。
「見えてないだけだ」
低く言う。
「来てる」
その言い方。
“確信”。
オプティマスが問い返す。
「根拠は」
間。
ガルバスは少しだけ空を見る。
何かを探るように。
「……静かすぎる」
短く言う。
スティンビーが眉をひそめる。
「それ、理由になるか?」
ガルバスは続ける。
「ブラックアウトの動きが雑だ」
「バリケードも同じだ」
視線を戻す。
「本命がいない時の動きじゃない」
一拍。
「“後ろに何かいる”動きだ」
オプティマスが沈黙する。
否定しない。
だが、確証もない。
ガルバスが、さらに低く言う。
「……メガトロンは来てる」
その名。
メガトロン。
空気が一段階、冷える。
オートボットの何体かが反応する。
オプティマスが静かに言う。
「……その可能性は低い」
理性的な判断。
「彼の反応は確認されていない」
ガルバスは即答する。
「隠れてるだけだ」
断言。
その強さに——
一瞬、全員が黙る。
サムが小声で言う。
「え、そんなやつなの……?」
スティンビーが肩をすくめる。
「そういうやつだよ」
オプティマスが一歩前に出る。
「仮にそうだとしても」
視線を合わせる。
「証拠がない」
ガルバスも一歩出る。
距離が詰まる。
「そのうち出てくる」
静かに言う。
「必ずな」
その言葉には、妙な重みがあった。
経験から来る確信。
オプティマスは数秒、何も言わない。
そして——
「……警戒は強める」
完全否定はしない。
それが答えだった。
バンブルビーのラジオが鳴る。
《……together?》
全員の視線が動く。
ガルバスは少しだけ考える。
ほんの一瞬。
「……利害は一致してる」
それだけ言う。
オプティマスが頷く。
「同意する」
そして振り返る。
「オートボット」
短い指示。
「この星を防衛する」
ガルバスが小さく笑う。
「相変わらずだな」
その言い方は、どこか人間的だった。
軽い皮肉と、少しの安心。
スティンビーが言う。
「で、どう動く?」
ガルバスは答えない。
代わりに、街の奥を見る。
煙。
炎。
遠くで何かが動いている。
「まずは——」
一歩前に出る。
「目の前からだ」
オプティマスも並ぶ。
完全な同盟ではない。
だが、同じ方向を見る。
サムが呟く。
「……味方、ってことでいいんだよな」
バンブルビーのラジオが答える。
《……for now》
短く。
現実的な答え。
そして——
二つの勢力が、同時に動き出す。
まだ見えない“本命”に向かって。
知らないまま。
すでに、この星のどこかに——
メガトロンが眠っていることを。
夜の街。
炎はまだ消えていない。
だが——動きは分かれた。
「一時離脱だ」
オプティマス・プライムの低い声。
「サム、案内しろ。例の“メガネ”だ」
サム・ウィトウィッキーが慌てて頷く。
「え、あ、うん! 家! すぐそこだ!」
短い静止。
そして——
一斉変形。
金属が折れ、回転し、圧縮される。
オプティマスはトレーラーへ。
バンブルビーは黄色のカマロへ。
他のオートボットも次々と車両へ変わる。
エンジン始動。
低く、重く、揃う。
その中で——
赤い車体がサムの前に滑り込む。
スティンビー。
ドアが自動で開く。
「乗れ、早く!」
サムが飛び込む。
「マジで行くんだなこれ!?」
直後。
そのすぐ横。
黒いバイクが滑り込む。
スカイアーム。
——ライトが点灯する。
だが、ただの点灯ではない。
白ではない、やや抑えた光量。
鋭く細いビームが、路面だけを正確に照らす。
無駄に広げない。
存在を主張しすぎない。
それでも——“いる”と分かる光。
《配置完了》
短い通信。
スティンビーがちらりと見る。
「今回はちゃんと点けてんだな」
スカイアームは応えない。
ただ、わずかに車線をずらす。
ライトの角度が変わる。
交差点の死角を、正確に舐めるように照らす。
《前方、視界確保》
必要最小限の報告。
——加速。
スティンビーがアクセルを踏み込む。
サムが悲鳴を上げる。
「うおおお速いって!!」
その横を——
スカイアームが抜ける。
ライトが一瞬だけ強くなる。
前方の路面、障害物、曲がり角。
必要な情報だけを浮かび上がらせる。
そしてすぐに光量を落とす。
無駄がない。
《前方クリア》
スティンビーが笑う。
「相変わらず仕事が細けぇな」
返事はない。
だが次の動きで答える。
スカイアームが一気に前へ出る。
先行偵察。
ライトが細く伸びる。
暗闇を切り裂く一本の線。
その先——
サムの家。
「……あれだ!」
スティンビーが減速。
タイヤが鳴く。
急停止。
同時に——
スカイアームが減速し、位置を変える。
ライトの向きを調整。
入口、道路、建物の影。
三方向を分割して照らす。
影を“消す”配置。
《周囲スキャン中》
サムが飛び出す。
「取ってくる!!」
「早くしろ!」
ドアが閉まる。
静寂。
だが——
ライトが動く。
スカイアームのヘッドライトがゆっくりと振れる。
一定ではない。
“探す光”。
スティンビーが低く言う。
「……来るぞ」
《複数反応、接近》
スカイアームのライトがわずかに強くなる。
遠くの道路を照らす。
まだ見えない。
だが——確実に近づいている。
サイレン。
別のエンジン音。
光と闇の境界が、揺れる。
スカイアームは動かない。
ただ——照らし続ける。
来るべき敵を。
夜。
サムの家。
ドアが勢いよく開く。
「どこだよ……どこだよあれ……!」
サム・ウィトウィッキーが部屋に飛び込む。
散らかった机。
引き出し。
本棚。
片っ端から漁る。
「確か……じいちゃんのやつ……!」
外では——
エンジン音が低く唸っている。
赤い車体——スティンビー。
その横、黒いバイク——スカイアーム。
ライトが静かに周囲を舐める。
《周囲異常なし》
だが。
スティンビーが小さく言う。
「……いや、来るな」
スカイアームのライトがわずかに強まる。
遠く。
別の光。
複数。
規則的な動き。
《車両接近。軍用パターン》
その瞬間——
上空。
雲の上。
静かに旋回する影。
ドレッドウィング。
戦闘機形態のまま、高高度から俯瞰する。
センサーが街をスキャン。
熱源、電波、移動体。
その中で——
サムの家に集中する複数の反応。
「……来たな」
低く呟く。
「人間側も動いたか」
視線をわずかにずらす。
さらに遠方。
別ルートで移動する、黒いトレーラー。
ガルバス。
「……どうする」
誰にでもなく呟く。
だが、答えは出ている。
「任せるか」
そのまま旋回を続ける。
——地上。
サムの部屋。
「くそっ……!」
引き出しを引き抜く。
紙が散る。
その奥。
古びたケース。
「……あった」
手が止まる。
ゆっくりと開く。
中にあるのは——メガネ。
古びた、だが異様な存在感。
「これ……か」
その瞬間。
外で急ブレーキ音。
複数。
スティンビーが即座に反応する。
「来たぞ」
スカイアームのライトが鋭く動く。
家の前。
黒い車両群。
無音に近い動き。
ドアが開く。
黒服の男たち。
武装。
統制された動き。
《識別:不明部隊》
だが——ただの軍ではない。
スティンビーが低く言う。
「……嫌な感じだな」
スカイアームの通信。
《目的、サム・ウィトウィッキーと推定》
一瞬の判断。
スティンビーが舌打ちする。
「間に合わねぇな」
家の中へ視線を送る。
サムはまだ中。
だが——
次の瞬間、判断を変える。
「離脱する」
スカイアームも即応。
《了解》
理由は単純。
“ガルバスの方針”。
正面衝突はしない。
情報を優先する。
スティンビーが短く呟く。
「死ぬなよ、人間」
アクセル。
スカイアームも同時に加速。
ライトが一瞬だけ強くなり——
すぐに落ちる。
二台は闇へ溶けるように離脱。
——同時。
別方向。
オートボット車列が接近する。
黄色のカマロ——バンブルビーが先頭。
その後ろに、オプティマス・プライム。
だが——
間に合わない。
すでに包囲は完了している。
家の中。
サムが窓から外を見る。
「……何だよ、あれ」
黒い車両。
無言で配置される兵士。
逃げ場が消える。
ドアが破られる。
突入。
「動くな!!」
叫び。
一瞬で制圧。
サムが抵抗する間もない。
「ちょ、待てって! 何なんだよお前ら!!」
応答なし。
無線だけが響く。
「確保した。対象確認」
そのまま連行。
メガネも奪われる。
——外。
オートボットが到着する。
だが遅い。
オプティマスが状況を見て、低く言う。
「……人間の組織か」
バンブルビーのラジオが荒れる。
《……Sam……》
車列は停止しない。
追跡に移る。
映画と同じように——
人間側との接触へ進む。
──その頃
少し離れた高台。
街を見下ろす位置。
黒いトレーラー——ガルバスは動かない。
その背後に、スティンビーとスカイアームが滑り込む。
エンジン音だけが低く響く。
「連れてかれた」
スティンビーが短く言う。
「黒い連中。人間だ」
スカイアームのライトがわずかに揺れる。
周囲をスキャンしながら補足する。
《統制レベル高。通常軍ではない》
ガルバスはすでに視線を遠くへ向けている。
サムが連行された方向。
そして——その先。
「……分かってる」
短い返答。
スティンビーが少し苛立つ。
「追わねぇのか?」
間。
ガルバスは答えない。
代わりに——別の問いを投げる。
「オートボットは」
スカイアームが即答。
《追跡に移行》
ガルバスが小さく頷く。
「ならいい」
それだけ。
スティンビーが眉をひそめる。
「いや、“いい”って……」
ガルバスがようやく振り返る。
青い光が静かに揺れる。
「オールスパークはあいつらに任せる」
断定。
スティンビーが一瞬黙る。
「……マジで言ってんのか」
ガルバスは淡々と続ける。
「目的が違う」
一歩、前へ出る。
「ディセプティコンは必ず動く」
その言葉に、空気が引き締まる。
スカイアームのライトが細くなる。
集中。
ガルバスが続ける。
「オールスパークに向かってな」
スティンビーが理解する。
「……つまり」
「釣る」
即答。
「餌はもう動いてる」
オートボット。
人間。
そしてオールスパーク。
すべてが一方向に集まり始めている。
ガルバスの声は低い。
「俺たちは、それを見る」
監視。
解析。
そして——最適な瞬間での介入。
スティンビーがニヤッと笑う。
「なるほどな……らしいやり方だ」
スカイアームが補足する。
《敵動線予測、開始》
ライトがゆっくりと動く。
街の各所をスキャン。
逃げるのではない。
“待つための準備”。
——上空。
雲の上。
戦闘機形態のドレッドウィングが旋回する。
センサーに変化。
複数の高速移動反応。
別方向から接近する影。
「……来たか」
低く呟く。
「ディセプティコン」
進路を微調整。
追跡軌道へ。
——地上。
ガルバスが空を見上げる。
ドレッドウィングの軌跡。
「動き始めたな」
スティンビーが言う。
「で、どうする?」
ガルバスはすぐに答える。
「接触はするな」
明確な制限。
「位置を掴め」
スカイアームが応答。
《了解。追跡優先》
ガルバスが最後に言う。
「メガトロンが出る」
その一言。
スティンビーが小さく息を吐く。
「やっぱそこか」
ガルバスは視線を戻さない。
遠くを見る。
まだ見えない“何か”を。
「……その瞬間が、本番だ」
エンジンが唸る。
だが——発進しない。
動かない。
待つ。
すべてが出揃う、その時まで。
——別方向では、
オプティマス・プライム率いるオートボットが追跡を続けている。
メガトロンの存在を、まだ知らないまま。
そしてガルバスだけが知っている。
この静けさが——嵐の前触れだということを。
地下深く。
セクター7施設。
白い照明が、無機質に照らす。
重い扉が閉じる。
「対象、搬入完了」
サム・ウィトウィッキーは腕を掴まれたまま、内部へ連行される。
「離せって!! ここどこだよ!!」
無視。
そのまま広い区画へ押し出される。
——そして。
サムの足が止まる。
「……ビー?」
そこにあったのは——
横たえられた巨体。
バンブルビー。
ロボットモード。
背中から固定され、両腕と脚は重い拘束具で床に固定されている。
電力は落とされている。
だが——
完全停止ではない。
胸部のコアが、微かに明滅している。
サムが駆け寄ろうとする。
「ビー!!」
だが兵士に止められる。
「近づくな!」
その瞬間。
バンブルビーの頭部が、わずかに動く。
カメラアイが点灯。
青い光。
ゆっくりと——サムを捉える。
サムの息が詰まる。
「……生きてる」
バンブルビーのスピーカーがノイズを吐く。
《……Sam……》
かすれた音。
だが確かに意思がある。
サムが叫ぶ。
「大丈夫か!? 今外すから——」
「動くな!!」
銃が向けられる。
サムが止まる。
バンブルビーの視線が、ゆっくりとサムから兵士へ移る。
抵抗しようとする——
だが。
腕部のサーボが軋むだけ。
動かない。
拘束は完全。
電力制御もかけられている。
《……don’t……》
ノイズ混じり。
「無茶するな」と言っている。
サムが歯を食いしばる。
「くそ……!」
その時。
スーツ姿の男が前に出る。
「その個体は危険だ」
冷たい声。
サムが睨む。
「違う!! こいつは——」
「判断は我々が行う」
遮断。
完全に。
男は視線をバンブルビーへ向ける。
観察対象として。
「自己修復機能あり。エネルギー反応も確認」
技術員が報告する。
「だが現在は抑制可能なレベルです」
バンブルビーの目がわずかに細くなる。
“聞いている”。
理解している。
だが動けない。
その無力さが、空気を重くする。
——その時。
奥のシャッター。
低い唸り。
サムが振り向く。
「……何だよ、あれ」
兵士の一人が顔をしかめる。
「見るな」
だが。
もう遅い。
サムは感じている。
あの向こうに“何か”があると。
スーツの男が言う。
「MBE-1」
無機質な呼称。
「長年、我々が管理している対象だ」
サムが眉をひそめる。
「対象って……」
兵士の一人が割り込む。
砂漠帰りの生存者。
「違う」
低く言う。
「“あれ”は対象なんかじゃない」
別の兵士が続ける。
「スコルポノックを見た」
空気が変わる。
「同じだ。あれと同じ“奴ら”だ」
サムの視線が、再びバンブルビーへ。
そして——シャッターへ。
理解が繋がりかける。
「……まさか」
バンブルビーの目がわずかに動く。
サムを見る。
警告のように。
《……danger……》
ノイズ。
その一言。
サムの背筋が冷える。
——その時。
施設が揺れる。
低い振動。
警報が鳴り始める。
「外部センサー異常!」
「高速飛行体、接近中!!」
兵士たちが動く。
サムが顔を上げる。
バンブルビーの目が強く光る。
反応。
外で何かが起きている。
そして——
奥のシャッターの向こう。
氷の中。
メガトロン。
微細な電流。
ほんのわずかな“応答”。
まだ誰も気づかない。
だが確実に——
“戦争”が、ここへ届こうとしていた。
警報が鳴り続ける。
「外部施設、交戦状態!!」
「防衛ライン崩壊寸前!」
だが——
地下の人間たちは、別の判断をしていた。
「MBE-1の移送準備を急げ!」
スーツの男が命じる。
「ここは危険だ。フーバーダムへ再移送する!」
技術員が慌てる。
「ですが、現在エネルギー反応が——」
「制御下にある!」
強引な判断。
それが——引き金になる。
冷却装置が段階的に解除される。
氷が軋む。
温度が上昇。
微弱だったエネルギー反応が——跳ね上がる。
「反応増大!?」
「制御値を超えます!!」
もう遅い。
氷の内部。
赤い光が灯る。
ゆっくりと——
確実に。
意識が戻る。
「……ここは……どこだ」
低く、重い声。
誰にも届かない。
だが——確実に“目覚めた”。
次の瞬間。
衝撃。
氷が内側から砕ける。
警報が一段階上がる。
「MBE-1が覚醒!!」
「拘束フィールド維持できません!!」
兵士たちが後退する。
恐怖。
理解が追いつかない。
巨大な腕が動く。
氷を引き剥がす。
立ち上がる。
完全な姿。
メガトロン。
その視線が、周囲を捉える。
小さな存在——人間。
一瞬の沈黙。
そして。
「……弱い」
それだけ。
腕が振られる。
衝撃。
機材も壁も、人間も——まとめて吹き飛ぶ。
施設が崩壊を始める。
電力系統が落ちる。
照明が消える。
非常灯だけが点灯する。
赤い光の中。
メガトロンが一歩、進む。
すべてを無視して。
ただ——“外”へ。
上層。
サムたちのいる区画。
床が揺れる。
「な、何だよ今の!?」
兵士が叫ぶ。
「地下で爆発!!」
別の声。
「違う……何かが——上がってくる!!」
恐怖が広がる。
地上。
夜。
セクター7施設。
その中央が——
“盛り上がる”。
地面が裂ける。
爆発。
土砂と鉄骨が吹き飛ぶ。
そこから現れる影。
巨大なシルエット。
煙の中から現れる存在。
メガトロン。
完全覚醒。
静寂。
その場の全員が動けない。
兵士も、オートボットも、ディセプティコンも——
“理解する”。
格が違う。
メガトロンが空を見上げる。
センサーが起動する。
探知。
そして——
「……オールスパーク」
即座に感知。
位置を特定。
迷いはない。
そのまま変形。
戦闘機形態。
轟音。
一瞬で加速。
空へ。
一直線に——
オールスパークの元へ。
上空。
ドレッドウィングがその軌跡を捉える。
「……来たか」
静かに言う。
追跡コースへ移行。
地上遠方。
高台。
ガルバス。
その目が細くなる。
「やはりな」
スティンビーが笑う。
「派手に出てきたな、あいつ」
ブレイクハイドが低く言う。
「追うか?」
一瞬の間。
ガルバスが答える。
「当然だ」
短い。
明確。
「目標はオールスパーク」
オートボットと同じ。
だが——目的は違う。
スカイアームのライトが強まる。
《進路確定》
ノチェットが呟く。
「ようやく本番か」
ガルバスのエンジンが唸る。
「全員、移動」
命令。
「戦場は移る」
その言葉と同時に——
レギオスティコンが動き出す。
セクター7は崩壊。
メガトロンは解放。
オールスパークへ一直線。
そして——
すべての勢力が、同じ場所へ向かう。
昼。
砂煙の残る郊外道路。
軍の車列が全速力で走る。
中央には大型コンテナ。
——オールスパーク。
護衛するのは
オプティマス・プライム率いるオートボット。
車体を揺らしながら、隊列を維持する。
並走する黄色の車体。
バンブルビー。
その中でサムが息を整える。
「これ……どこに持ってくんだよ……」
返答はない。
だが理解している。
“ここに置いてはいけない”と。
オプティマスの通信が入る。
短く、的確に。
目的は一つ。
——街から離すこと
その瞬間。
上空。
音が変わる。
低い振動。
空気が震える。
誰よりも先に反応したのはオプティマス。
視線を上げる。
「来るぞ」
次の瞬間。
雲を突き破る影。
急降下。
メガトロン。
一切の減速なし。
一直線。
「散開!!」
軍の車列が崩れる。
爆発。
先頭車両が吹き飛ぶ。
道路が抉れる。
メガトロンが着地。
衝撃波。
コンテナが横転しかける。
オプティマスが即座に変形。
地面に着地。
そのまま前に出る。
完全に“壁”として。
メガトロンが視線を向ける。
標的はただ一つ。
オールスパーク。
二体の距離が詰まる。
静止。
一瞬。
そして——
衝突。
拳と刃。
衝撃波。
道路が砕ける。
戦闘開始。
別ルート。
高速道路。
スティンビーが加速する。
「始まったな」
その横。
スカイアーム。
ライトは点灯していない。
代わりに——
センサーが作動。
微細な振動、熱源、通信、戦闘波形。
すべてをリアルタイム解析。
《交戦確認。戦域拡大中》
静かな報告。
後方。
ブレイクハイド。
「間に合うか」
ノチェット。
「問題ない」
上空。
ドレッドウィング。
《目標捕捉済み》
最後尾。
ガルバス。
低く唸るエンジン。
動きは遅い。
だが確実に距離を詰める。
スティンビーが通信を開く。
「どうする」
ガルバス。
「追う」
短い。
「介入は?」
一瞬の間。
「まだだ」
スカイアームが続ける。
《主要交戦体:二体確認》
つまり——
オプティマス・プライム
メガトロン
ガルバスが静かに言う。
「観測を続けろ」
昼の光は、あまりにも無慈悲だった。
逃げ惑う人々の影が、アスファルトに焼き付く。
サイレンが重なり、空気は震え、街はすでに“日常”ではなくなっていた。
その中心を、サムは走っていた。
両腕に抱えた立方体——オールスパーク。
重い。息が上がる。だが、止まるわけにはいかない。
背後で、大地が砕けた。
振り返らずとも分かる。
来ている。
メガトロン。
その存在そのものが、空間を支配していた。
直後、視界の端に黄色が割り込む。
バンブルビー。
サムの前に立ち、盾になるように構える。
ラジオが弾ける。
《……run》
短い、ノイズ混じりの声。
だがそれで十分だった。
「分かってるよ……!」
サムは再び走り出す。
空が裂けるような衝撃。
別方向から飛び込んできた影が、メガトロンの進路を叩き逸らす。
オプティマス・プライム。
巨体同士が激突する。
拳と装甲がぶつかり合い、衝撃波が街路を薙ぐ。
ガラスが割れ、車が転がり、ビルの壁面が抉れる。
それでも、オプティマスは退かない。
ただ一歩、前へ。
その光景を——
少し離れた高所から、別の視線が捉えていた。
ビルの影。
風もないその場所に、複数の影が立つ。
レギオスティコン。
スティンビーが身を乗り出すように言う。
「……行かねぇのか」
返事はすぐには来ない。
中央に立つ黒い巨体——ガルバスは、ただ戦場を見ていた。
その視線は鋭く、だがどこか静かだった。
スカイアームが低く告げる。
《戦域解析完了。主要交戦体、二》
視線の先。
オプティマス・プライムと
メガトロン。
ぶつかり続ける二つの意思。
「押されてるな」
ブレイクハイドが呟く。
「だが、折れてはいない」
ノチェットが続ける。
スティンビーが舌打ちする。
「このまま見てるだけかよ」
その時、ガルバスが口を開いた。
「……まだだ」
低く、揺るがない声。
再び視線が動く。
戦場の中心ではない。
その少し外。
——サム。
小さな存在。
だが、その手にあるものは、この戦争すべてを左右する。
「選ぶのは、あいつだ」
静かに言う。
誰に聞かせるでもなく。
スティンビーが眉をひそめる。
「人間がか?」
否定は返らない。
ただ沈黙。
その間にも、戦いは激しさを増していく。
メガトロンが踏み込み、オプティマスを押し込む。
地面が砕け、建物が軋む。
圧倒的な力。
それでも——
オプティマスは立つ。
守るために。
サムが足を止める。
もう逃げ場はない。
振り返る。
目の前に立つのは——
メガトロン。
影が落ちる。
巨大な存在。
絶対的な力。
息が止まる。
足が動かない。
だが、手の中の重みだけは消えない。
その時。
背後で、金属が軋む音。
オプティマス・プライムが、再び立ち上がる。
傷だらけのまま。
それでも前へ。
空気が張り詰める。
すべてが、この一点に収束する。
ビルの上。
スカイアームが静かに言う。
《臨界点到達》
ドレッドウィングの声が重なる。
《介入可能》
ブレイクハイドが一歩踏み出す。
「限界だ」
だが——
ガルバスが手を上げた。
止める。
「……まだだ」
スティンビーが思わず声を荒げる。
「何を待ってる!」
ガルバスの視線は、ただ一つ。
サム。
「終わらせるのは——あいつだ」
その言葉と同時に。
サムの中で、何かが決まる。
昼の光の中で。
戦争の結末が——選ばれようとしていた。
昼の光が、戦場を白く照らしていた。
煙が流れ、崩れたビルの影が道路に落ちる。
その中心で——
メガトロンが、一歩踏み出した。
重い足音。
それだけで、空気が沈む。
サムは動けなかった。
手の中のオールスパークが、やけに重い。
逃げ場はない。
視線の先には、絶対的な存在。
その瞬間。
金属がぶつかる衝撃が、横から割り込んだ。
オプティマス・プライム。
そのままメガトロンへ体当たりし、進路を逸らす。
地面が砕ける。
二体が激突する。
だが——
押し切れない。
メガトロンの力が上回る。
一撃で、オプティマスの体勢が崩れる。
踏み込まれる。
終わる。
その直前——
横から、もう一つの影が割り込んだ。
黒い巨体。
ガルバス。
メガトロンの腕を掴み、強引に止める。
衝撃。
地面が沈む。
「……貴様か」
メガトロンの声が低く響く。
ガルバスは静かに答える。
「久しぶりだな」
短い言葉。
だが、それで十分だった。
メガトロンが力を込める。
押し潰すように。
だが——動かない。
ガルバスが完全に受け止めている。
その隙。
オプティマスが立ち上がる。
傷だらけのまま。
それでも前へ。
「退け」
メガトロンが唸る。
オプティマスは答える。
「断る」
次の瞬間。
三体が同時に動く。
拳。
刃。
衝撃。
三つの力がぶつかり合い、空間が歪む。
ガルバスが踏み込み、メガトロンの体勢を崩す。
そこへ——
オプティマスが斬り込む。
連携。
言葉はいらない。
動きだけで通じる。
メガトロンが反撃する。
衝撃波で二体を弾く。
だが——
止まらない。
ガルバスの右腕が変形する。
フュージョンブラスター。
青い光が収束。
同時に。
オプティマスの刃が構えられる。
「終わらせる」
ガルバス。
「ここでな」
オプティマス。
同時。
発射。
斬撃。
爆発。
メガトロンが後退する。
初めて、大きく体勢を崩す。
その裏で。
サムが走る。
オールスパークを抱えて。
周囲ではレギオスティコンが動く。
スティンビーが敵を引き付ける。
スカイアームが正確に機能を奪う。
ブレイクハイドが前線を押し返す。
ノチェットが人間を退避させる。
ドレッドウィングが空を封じる。
——誰もサムに近づけない。
中心。
三体の戦い。
メガトロンが吼える。
「共闘か」
嘲り。
ガルバスが答える。
「違う」
一瞬の間。
「利害が一致しただけだ」
オプティマスは何も言わない。
ただ前に出る。
再び衝突。
激突。
爆発。
その瞬間。
ガルバスの視線が、一瞬だけ逸れる。
サムを見る。
「やれ」
それだけ。
サムが踏み込む。
全力で。
オールスパークを掲げ——
メガトロンへ突っ込む。
光。
閃光。
すべてを飲み込む白。
音が消える。
やがて。
静寂。
煙の中で。
メガトロンの巨体が崩れ落ちる。
オプティマスが立つ。
その隣に——ガルバス。
二体は何も言わない。
ただ、同じ方向を見ている。
戦いは終わった。
だが——
それぞれの選択は、これからも続いていく。
煙が、ゆっくりと晴れていく。
昼の光が戻り、崩れた街並みを静かに照らしていた。
倒れた巨体——
メガトロンは、もう動かない。
戦いは終わった。
その中心で、
オプティマス・プライムが静かに立っている。
その視線の先には——
ガルバス。
二体の間に、言葉はなかった。
だが、長い時間を共有した者同士にしか分からない“何か”が、そこにあった。
やがて、ガルバスが口を開く。
「……終わったな」
短い一言。
オプティマスがわずかに頷く。
「一つの戦いはな」
沈黙。
風が瓦礫を転がす音だけが響く。
スティンビーが肩をすくめる。
「思ったより派手だったな」
ブレイクハイドが低く笑う。
「悪くない」
ノチェットは周囲を見渡す。
「だが、長居は無用だ」
スカイアームが静かに報告する。
《周辺安全圏、確保》
上空ではドレッドウィングが旋回を続けている。
ガルバスが振り返る。
自分の“家族”を見る。
全員が揃っている。
誰一人欠けていない。
「行くぞ」
その一言で十分だった。
スティンビーが軽く笑う。
「了解」
ブレイクハイドも続く。
「次の場所へ、か」
ノチェットは小さく頷く。
「それも悪くない」
スカイアームは無言で従う。
ドレッドウィングが高度を上げる。
だが——
その直前。
ガルバスが足を止める。
ゆっくりと、振り返る。
視線の先には、
オプティマス・プライム。
そしてその背後に、
バンブルビーたち。
ガルバスが静かに言う。
「……お前は変わらないな」
オプティマスは答える。
「お前もな」
わずかな間。
それだけで十分だった。
「次に会う時は——」
スティンビーが言いかける。
だがガルバスがそれを遮る。
「その時に決めればいい」
敵か、味方か。
あるいは——
どちらでもないか。
曖昧なまま。
だが、それでいい。
オプティマスが最後に言う。
「道を違えても、意思は理解できる」
ガルバスは何も答えない。
ただ、わずかに視線を逸らす。
それが答えだった。
次の瞬間。
レギオスティコンが一斉に動く。
スティンビーが加速し、
スカイアームが影のように消え、
ブレイクハイドが重く走り出し、
ノチェットが静かに後を追い、
ドレッドウィングが空へ昇る。
最後に。
ガルバス。
ゆっくりと背を向ける。
「この星は……まだ終わっていない」
誰にともなく呟く。
そして——
黒い巨体は走り出す。
残されたのは、
オプティマス・プライムたち。
オプティマスが静かに空を見上げる。
「新たな勢力か……」
バンブルビーのラジオが小さく鳴る。
《……friends?》
オプティマスは答えない。
ただ、遠ざかる影を見つめる。
その関係に名前はまだない。
だが——
確かに、繋がっている。
戦いは終わった。
だが、物語はまだ続く。
レギオスティコン図鑑
■ 組織概要
レギオスティコンは、多様な経歴を持つ戦士たちで構成された部隊。
その実態は単なる戦闘集団ではなく、家族のような絆で結ばれたチームである。
過去や出自に関係なく互いを受け入れ、支え合うことを信条とし、
離反者や異端すらも“居場所”として迎え入れるのが最大の特徴。
ガルバスを中心に、厳しさと温かさが共存する独特の関係性を築いている。
■ 初期メンバー
■ ガルバス
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:サイバトロン星での戦闘教官
役職:リーダー/戦闘指南役
性格:
冷静沈着で厳格な指揮官。仲間想いで面倒見がよく、部隊を家族として守る存在。
スティンビーの主な抑え役。
武装:
・右腕:フュージョンブラスター
・左腕:収納式エナジーブレード
・背中:ガルバスブレード
・背中:ガルバスシールド
・両肩:収納型ミサイルポッド
ビークルモード:M1070A1 HET
■ スカイアーム
性別:女性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコン(諜報・暗殺)
性格:
クールで任務重視。感情は表に出さないが、仲間への情は深い。
武装:
・両腕:エナジーブレード
・エナジーピストル×2
ビークルモード:ハーレーダビッドソン(バイク)
■ ドレッドウィング
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコンの航空部隊
性格:
寡黙で任務に忠実な武人。確実な戦果を重視する。
武装:
・大型エナジーガトリングガン(両手持ち)
・エナジーマシンガン(片手持ち/ビークル主砲)
・ブレード×2
・ミサイル
ビークルモード:F-35(戦闘機)
■ ブレイクハイド
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:サイバトロン星でのレッカーズ教官
役職:教官
性格:
寡黙で職人気質。実戦主義の厳格な教官。
武装:
・右腕:ハンマー
・両腕:エナジーブラスター
・ガトリング(ビークルモードでも使用可能)
ビークルモード:SWAT仕様ピットブル(装甲車)
■ ノチェット
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:サイバトロン星での医療部隊
役職:医療長
性格:
冷静で理知的。仲間の命を最優先とする。
武装:
・エナジーナイフ
・レーザー溶接機
ビークルモード:フォードFシリーズ 救急車
■ スティンビー
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:サイバトロン星での先見部隊
設定:
バンブルビーの実弟
性格:
ハイテンションで無鉄砲な突撃型。
ガルバスとヴァルキシアが抑え役。
武装(例外):
・スパークブレイカー
・スティングブレード
ビークルモード:赤いフォード・マスタング
■ 後期加入メンバー
■ ランドエイジ
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコン(防衛隊隊長)
役職:副リーダー
性格:
温厚で仲間思い。部隊の精神的支柱。
武装:
・大型シールド
・大型ハンマー
ビークルモード:白いセンチュリー1140(レッカー車)
■ ブラックウィドウ
性別:女性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコン(諜報・暗殺)
性格:
お喋りで軽いが、裏では冷酷な判断も可能。
武装:
・ツインブレード
・エナジーマシンガン
ビークルモード:セネターAPC
■ ディスペンサー
性別:男性
所属:レギオスティコン
元所属:なし(地球生まれ)
性格:
無口で純粋。家族という概念を学び成長していく。
武装:
・グレネードランチャー(右腕変形)
・腹部クロー
ビークルモード:緑色のブッシュマスター(装甲車)
■ ヴァルキシア
性別:女性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコンの航空部隊
性格:
冷徹な合理主義者。
スティンビーを弟のように思い、抑え役も務める。
武装:
・高出力エナジーライフル
・エナジーブレード
・爆撃用ミサイル(ビークル時)
ビークルモード:F-117 ナイトホーク
■ ノックアウト
性別:女性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコン
役職:軍医/技術士官
性格:
完璧主義で美意識高め。皮肉屋だが仲間を大切にする。
武装:
・エナジーサーキュラーソー
・精密レーザースカルペル
・軽量ブラスター
ビークルモード:赤いアストンマーチンDB11
■ アストレア
性別:女性
所属:レギオスティコン
元所属:ディセプティコン(特殊実験部隊)
分類:トリプルチェンジャー
性格:
冷静で理知的、感情をあまり出さない。
家族という概念には不慣れだが、少しずつ馴染みつつある。
武装:
・高出力エナジーライフル
・エナジーブレード
・内蔵型ミサイルポッド
ビークルモード:
① A-10サンダーボルト(空戦・対地攻撃)
② M8グレイハウンド(地上戦・偵察)
関係性:
・ガルバス:指揮能力を評価
・ヴァルキシア:航空系として意識
・スティンビー:危険視しつつサポート
・ノックアウト:機体構造の観察対象
・ディスペンサー:弟のように思う。お互い特殊な生まれで、共感と親近感が強い
立ち位置:
空と地を繋ぐ戦術支点であり、静かな守護者。
■ 補足
元ディセプティコン:
スカイアーム/ドレッドウィング/ランドエイジ/ブラックウィドウ/ヴァルキシア/ノックアウト/アストレア
サイバトロン星:
ガルバス/ブレイクハイド/ノチェット/スティンビー
特殊個体:
ディスペンサー(地球生まれ)
初期メンバー:
ガルバス/スカイアーム/ドレッドウィング/ブレイクハイド/ノチェット/スティンビー