デモンズソウル転生とか罰ゲームでは?   作:青ファントム

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一部のデーモンが強化されているのは、主人公の強化(汎用即死攻撃:忍殺)に対して敵の強化(体力ゲージ複数)でバランスをとるフロム式です。
転生主人公君は死なないけど、ちゃんと苦しんでくれるように頑張って書いていきます。


3つめのエンディングはデモンズソウルにはない

場面はボーレタリアが霧に包まれる以前に遡る──

 

ボーレタリア、オーラント、この二つの名を聞いた男──当時は少年と称すべきかもしれない年齢であった──は悟った。

男がいるのは、ゲーム”Demon's Souls(デモンズソウル)”の世界である。

国と王の名前だけなら偶然の一致もありえる。しかし、教会で学んだ──前世の常識からは考えられない技術──奇跡、そしてオーラント王の功績として語られるソウルの業、これらの名称は男に否応なしに絶望の未来を示唆していた。

即ち、オーラントが目覚めさせた怪物──古い獣による亡国である。

 

男がまず考えたのは古い獣の目覚めの阻止である。長くそうであったように──そしてある未来ではまたそうなるように──眠りの中に居続けてもらうことは出来ないだろうか。

結論としては不可能だろう。

なにせこの国は王国。身分の重さは以(・)前(・)とは比べ物にならない。孤児であった男が王であるオーラントの行いに干渉するなど許されるはずもない。

それに、古い獣を目覚めさせるなど天災を自ら呼び込むようなものだ。王がソレを行うことを前提とした行動は忠言でさえ死に値する無礼となる。

 

男が考えるべきは古い獣が目覚めた後にどう動くかということになる。

──ゲームの主人公である”デーモンを殺す者”に全てを任せ、己は禊の神殿で待つのはどうか?

微妙な方針である。ゲームでは世界の結末は二つ、片方の未来では世界は滅ぶ。

しかも結末を決めるのは主人公の胸先三寸だ。その人柄がゲームでは描写されなかった以上、世界の運命がどちらに転ぶかは男でさえ予想は不可能だ。

分が良いか悪いかさえ判断できない賭けに全てを託すなど論外である。

 

男が為すべきことは決まった。

自分自身が世界を──なにより第二の故郷を救うのだ。例え道半ばで斃れようとも、未来のための何かを遺して逝くのだ。

 

男は力を求めた。

男は死ねない。この世界で蘇れるのは禊の神殿に囚われた者だけであり、”デーモンを殺す者”が選ばれたのは”死を恐れない、強いソウル”を持つからだ。男にはその資格がない。

転生を経験した男の胸には死の恐怖がある。死の苦痛は記憶に無いが、死の後に訪れるのが平穏でないことを知っている。この世界よりも希望の無い世界へ行くかもしれないし、かつての世界にも想像を絶する不幸というものはあった。

かつて触れた幾つかの物語──例えばこの世界と縁の深い暗き魂の世界──を教訓に不死を求めることこそないが、死を恐れないことは不可能だった。

魂(ソウル)は感情(思い)の源だ。流れる水が水源そのものを塞き止めることが出来ないように、恐れてはならないという思いだけで恐怖を生み出す魂が変化することはない。

 

一度も死ねない以上、古い獣が目覚める前に可能な限り死なないための力をつける必要がある。

奇跡も武術も、そして魔法も──

 

神職に就く者に魔法を好まぬ者が多いのは知っている。奇跡と似て非なる魔法は邪なる業であり、使い続ければ神の天罰が下ると信じる者が少なくないのだ。

男は魔法を学ぶことに否はない。奇跡も魔法もソウルの業という点では同類と知っていたし、神の存在については前(・)世(・)の(・)経(・)験(・)もあって最初から懐疑的だった。

今となっては神の存在を示す全ては古い獣かあるいは獣が産み落としたデーモンによるものではないかとすら考えていた。

 

しかし、信仰に背を向けることはできなかった。神は人を救わない──しかし神への信仰は人を救う。ほかならぬ男が信仰のもとに命を救われ、今日まで健やかに育てられたのだ。

故に男は恐れた。神職の老人──男を今日まで育て上げてくれた大恩人に己の進む道を打ち明け、嫌悪を向けられることを。

 

されど老人はどこまでも優しかった。男の魔法を学びたいという言葉に黙って耳を傾け、最後にこう告げた。

”それはとてもとても孤独な旅となるだろう。汝の道にどうか幸運があらんことを”

祝福でも神の加護でもなく、老人は幸運を祈った。

男と老人の歩む道を隔てるどうしようもない断絶を悟り、それでも隣人を愛することを捨てなかったのだ。

 

メイス、盾、チェインメイル──旅の神職と何ら遜色のない装備を与えられた男は南へ向かった。

賢者フレーキ、その弟子の一人が開いたとされる小さな魔法の学院へと──

 

 

 

腐れ谷──あらゆる不浄の安息の地に訪れた男は、谷の底へと歩みを進めていた。

今にも崩れ落ちんとする腐りきった足場は以前の男であれば大変な緊張を強いられ、歩みは遅々として進まないものになったかもしれない。

しかし、嵐の王より手に入れたデモンズソウル、嵐のデモンズソウルは男に限定的ながら飛行能力を与えていた。

かつての持ち主のように悠々と空を泳ぐことは叶わないが、落下の恐怖に別れを告げることはできる。それを知った男はひどく歓喜した。

 

飛竜の炎をもって男はあらゆる不浄を焼いていった。病を、毒を、蛭を、蠅を、そうして最後にこの地で最も不浄な存在と対峙することになる。

あらゆる不浄を受け入れ、デーモンへと堕ちた乙女。聖女アストラエアである。

 

アストラエアとその騎士であるガル・ヴィンランドは人間が変じたものであり、マンイーターと違い本人の意思を保持している。

そのため、多くのデーモンのように他者からの畏敬によって形作られた動作を行うのではなく、相手の動作に応じて柔軟に打つ手を変えてくる可能性がある。

これまで相手がデーモンであるが故の柔軟性を欠いた動作を逆手にとって攻略したことが多い男にとって、自分が攻略される側に回るかもしれない戦いは不安が多い。

対人戦闘の経験が少ないわけではないが、強い自信があるわけでもない。

 

不安を抱えながら霧を越えた男のもとへ、複数の戦士が接近してきた。

ガル・ヴィンランドが分身を使用したのかと驚愕しながら、身に宿したデモンズソウルより様々な攻撃を放つが、戦士たちは各々の盾で互いを守り合い本物のファランクスのような強固な防壁を築きながら男へと接近していく。

 

よく見ると、戦士たちは一人ひとり微妙に装備が異なる。

そして暗銀の騎士の象徴たる烏賊のような兜が見られない。

つまり彼らはガル・ヴィンランドと同様に沼で永い眠りについていた戦士達であり、それが乙女の守護の為に再び蘇ったのだ。

 

盾を構え距離を詰めてくる戦士たちに対して、男は後退しながら攻撃を加えていく、全ての攻撃を防げる盾はこの世界には存在しない。

魔法や炎、そして物理でさえも盾によっては防御の上から相手の命を脅かす。

想像以上に耐える戦士たちにゆっくりと距離を詰められ続けることに焦りつつも攻撃の手を緩めない男の身を──

 

──死の雲が覆った

 

「何ッ・・・最初からそのつもりかよっ!」

疫病に身を侵されながらも、死の雲の原因をすぐに悟った男は聖女へ叫んだ。

「──ええ、その通りです」

「私とあなたが相容れないことはどうしようもなく分かっています」

「──デーモンを喰らう者よ」

この時になって初めて、聖女は美しく、強い芯を感じさせる声で男に語り掛けた。

 

「嘆かわしいことに、彼らを救うには私の力だけでは足りません」

「私に宿るデモンズソウルの力なくしては、私は彼らから苦痛を取り除くことができないのです」

 

「言葉で説得とか考えないのかよ・・・」

戦士たちを斃した男は、荒い息を吐きながら再生と治癒の力が発揮されるまでの時間稼ぎも兼ねて聖女に問いを投げかけた。

「あなたのソウルを見れば分かります」

「複数のデモンズソウルを、その性質を維持したまま取り込んだソウル」

「私が魔法の探求に身を置く者であれば、相応しい称賛を探すのにも苦労するでしょう」

 

「あなたは、どうしようもなくデモンズソウルを求めているのでしょう」

「であれば、私たちは決して相容れないのです」

時間稼ぎがしたかったのは聖女も同様。男が斃し、地に伏せた戦士たちが再び蘇生した。

 

 

 

蘇生した戦士たちを槍で岩肌に縫い留めることで封じた男は、更に戦士たちを差し向けてくる聖女へ攻撃を放つが、聖女の側に留まった戦士たちによって防がれる。

防ぎきれずに聖女へと届いた攻撃もあるだろうが、彼女は聖女、奇跡の扱いに長けている。現状、届いた攻撃は彼女の回復能力を下回る。

 

さらに状況は悪化する。

「──炎が来ます」

聖女の言を受け、スチールシールドを持つ戦士が前に出て飛竜の炎を防ぐ。

「──魔法が来ます」

遮光の派生を施し、魔法防御を高めた戦士が前方へ出る。

「──槍に注意を」

兵卒の盾のような炎にも魔法にも耐性が高いとはいえない盾の持ち主が、他の戦士の代わりに前へ出てくる。

 

男が宿したデモンズソウル。それぞれの活性化のタイミングを見切った聖女の声をもとに、戦士たちは連携を始めた。聖女は指揮までは行えない、次来るであろう攻撃を伝えるだけが精一杯だ。

装備と消耗から誰が盾になるかは、戦士たちが判断していく。

戦士たちが聖女の言を、聖女が戦士たちの技量を強く信頼したが故の原始的な連携は、柔軟故に男にとってやりづらいモノとなった。

 

とはいえ、付け入る隙はある。

「──槍と棘、魔法が来ます!」

遮光の派生を施した戦士たちに向かい、男は駆け出した。

戦士たちの武器がその身に届くギリギリの場所で、男は通路から宙へ身を投げ出した。

何のデモンズソウルから力を引き出すか分かっても、何の力を引き出すかは分からないはず。

嵐のデモンズソウルの力で通路の横を浮遊した男は、構えられた盾の側方から槍を射出し、戦士達を壁に縫い留めると聖女のもとへ一直線に向かった。

 

聖女の側を守る戦士達が僅かに動揺した隙をついて衝撃波で吹き飛ばすと、聖女が放つ神の怒りを召喚した盾で防ぎ、戦士の護りを失った聖女に向かって棘と魔法を放った。

 

──だが彼がいた。

暗銀の騎士、ガル・ヴィンランドがようやく姿を現した。

聖女の盾となった騎士へ男は竜の炎を放つが、騎士は盾で防ぎきれない炎に身を焼かれながら前進する。

 

召喚した魔物との乱戦で他の戦士の横槍は入らない。

戦士の屍は二度放たれた衝撃波により、近くに無い。

またとない好機をふいにしない為にも、男は騎士を苛烈に攻めた。

反魔法領域を展開し聖女の支援を絶ち、異形の武器と人外の膂力をもって、強固な防御の上から騎士のスタミナを削る。

無尽蔵のスタミナを誇る騎士もこれには耐えかね、盾を弾かれ大きな隙をさらした。

 

騎士を仕留めんと刃を突き出す男の背に──

──一本のスローイングナイフが突き刺さった。

 

乱戦の中でどうにか騎士を援護しようとした戦士が、我が身を省みずに投げた一本だった。

隙を作った戦士は、そのまま魔物の兵により沼へ縫い留められるが、彼が稼いだ一瞬は戦況を大きく動かした。

体勢を立て直した騎士は、好機を逃さぬために身を穿つ槍にも怯まず男に接近し、大槌を振り下ろした。その無尽蔵のスタミナを生かして何度も何度も大槌を叩きつけ、デモンズソウルを幾つも取り込み異常な耐久力をもった男の体力をついに削り切った。

 

「まだです!」

男のソウルを注視していた聖女は、デモンズソウルが一つ活性化したのを見逃さなかった。

勇士のデモンズソウル、それによって起きた男の復活。

僅かに動揺した騎士の隙をついた男の奇襲は──

 

「──がっ!」

聖女の放った奇跡、神の怒りで防がれた。

暗銀の騎士は吹き飛ばされた男に追撃を加え、もう一度その体力を削らんとする。

再生の力により回復を続ける男だが、大槌の一撃により回復が少しずつ間に合わなくなっていく。

男の切り札を防ぎ切った聖女に向かって──

 

──竜の炎が放たれた。




彼は神ではなく信仰それ自体が人を救うと考えた。
知性によって構築された信仰は、それ故に神に背を向けても失われなかった。
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