松下千秋にセ〇ハラしたい   作:マメち

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短め、snsアプリ(○INE)を使ったトークっぽい回です。


第六話

4月も終わろうとしていたある日の夕暮れ。 Dクラスには、まだ破滅の足音は届いていない。生徒たちは給料日の到来を無邪気に待ちわびていた。

俺、一ノ瀬旭は、男子寮4階の自室で、ベッドに寝転がりながら天井を見上げていた。 手元にあるスマホには、ある女ととの密談が表示されている。

 

『クラス内勢力図・改訂版』が表示されている。

軽井沢グループが平田の取り合いで揉めはじめていること、櫛田がおとなしい女子の統率を始めたこと、クラスで浮いている女子男子、高円寺の上級生との交流に至るまで事細かに

 

 

『なんでこんなことしなくちゃならないの』

 

『そろそろ勘づき始めただろ?前借りだと思って協力してよ。報酬は用意するから』

 

『えっちなのは駄目だから』

 

 

 

 

スマホの画面に、松下千秋からのメッセージが表示されている。

 

 

 

「あ、バレた?」

 

 

返信する前に、俺はベッドの上で体を起こす。夕陽が窓から斜めに差し込んで、部屋の壁に長い影を作っていた。

 

 

---

 

 

 

『当たり前でしょ。私はそんなの望んでない』

 

『だったら何がいいの?』

 

『情報料。相場で』

 

『相場って』

 

『Dクラスの情報、他に買う人間いると思わない?』

 

 

 

やはり聡い。すでに他クラスのリーダー格になるであろう人間にまで接触しているか。

 

 

 

『……一万pt』

 

『安い』

 

『一万五千』

 

『三万』

 

『二万』

 

『三万、これ以上は安くできないよ?』

 

『…二万五千、僕もかつかつなんだよ』

 

『嘘つき』

 

『じゃあこっちも聞くけどさ、二万五千で他クラスが買い取ってくれると思ってんの?それに』

 

『その情報、信頼性があっても役に立つかわかんないじゃん』

 

 

 

沈黙。ムキになりすぎたか?とりあえず続けるか

 

 

 

『情報の信用性がほしいな。こっちも担保がいる。』

 

『それってなによ』

 

『値段じゃない。僕が欲しいのは、千秋ちゃんにしか出せないもの』

 

 

 

また間があく。今度は五分。

 

 

カーテンの隙間から見える空が、オレンジから紫に変わり始めていた。

 

 

 

 

『どういう意味』

 

『証明。千秋ちゃんが本気で取引する気があるって証明』

 

『…………』

 

『嫌なら別にいい。他を当たる』

 

 

 

これはブラフだ。他に当たれる人間はいない。だが松下はそれを確かめる手段を持っていない。

 

 

 

『どんな証明』

 

 

 

 

食いついた。

 

俺は画面を見つめたまま、次の一手を考える。要求は具体的であるほどいい。曖昧な脅しより、明確な条件の方が、相手に選択の余地を与える。選択の余地がある方が、人間は動く。

 

 

 

 

 

 

『写真一枚』

 

『は』

 

『今日着てるやつでいい』

 

『正気?』

 

『嫌なら別にいい』

 

 

 

 

 

三度目の沈黙。今度は長かった。十分近く、画面は既読のまま止まっていた。

 

廊下を誰かが歩く音。隣室のシャワーの音。寮の夜が始まっていく。

 

そして。

 

画面が光った。

 

添付ファイル、一件。

 

俺は親指でタップする。

 

展開された画像の中に、薄いピンクの布地が映っていた。レースの縁取り。指の先が端を摘ま

んでいる。背景は床らしき木目。

 

たったそれだけの写真だった。

 

だが、松下千秋が撮って、送ってきた写真だった。

 

 

 

 

 

『これで満足?』

 

 

 

怒りと羞恥が半々に混ざったような文面。

 

 

 

『ありがとう』

 

『……それだけ?』

 

『取引成立。次の情報、明日の朝に送る』

 

『待って』

 

『なに』

 

『今の写真、どうするの』

 

 

 

俺はしばらく画面を見た。

 

それから、こう打つ。

 

 

 

 

 

 

『トーク画面、スクショしちゃった。掲示板に乗せていい?』

 

 

 

 

 

 

---

 

返信は、三秒で来た。

 

『は???』

 

『冗談』

 

『…………殺す』

 

『情報の続き、待ってる。こっちの情報は今度ね。』

 

 

 

 

スマホを胸の上に置いて、俺は再び天井を見上げた。

 

松下千秋。

 

Dクラスの中では目立たない位置にいる。軽井沢グループにはいるが、櫛田の周辺には属していない。だが情報の質は高い。観察眼がある。そして、今証明された。

 

追い詰められたとき、動く人間だ。使える。窓の外で、鳥が一羽、電線から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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