松下千秋にセ〇ハラしたい   作:マメち

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盛り上がってきちゃったんでタイトル変えました。

一之瀬は舞台装置なので設定とか少し違うと思いますが、ご愛嬌で。


第七話

 

「……さて、そろそろご褒美が必要かな」

 

 

独り言を呟いたその時、インターホンのチャイムが軽やかに鳴った。 モニターを確認するまでもない。この時間に訪ねてくる人間は限られている。

 

俺は一瞬で「気だるげな支配者」の顔を捨て、「人懐っこい弟分」の仮面を被った。

 

 

「はーい!」

 

 

ドアを開けると、そこには夕陽を背負って輝く、ストロベリーブロンドの少女が立っていた。

 

 

「あ、旭くん! こんばんは!」

 

「姉さん。どうしたの、こんな時間に」

 

「ふふ、実家からね、すっごく美味しいデコポンが届いたの! お裾分け持ってきたよ」

 

 

一之瀬帆波。Bクラスのリーダーであり、この汚れた学園における唯一の聖域。 彼女は大きな紙袋を抱え、天使のような笑顔で俺を見上げていた。

 

 

「わあ、ありがとう! ちょうど果物食べたかったんだ。……上がってよ」

 

「うん! お邪魔しまーす」

 

 

彼女が部屋に足を踏み入れた瞬間、殺風景な男子部屋の空気が一変した。 柑橘系の爽やかな香りと、日向のような温かい匂い。

 

彼女は俺のベッドに腰掛け、慣れた手つきでデコポンの皮を剥き始めた。椅子がないため、来客はここに座るしかない、しまったな。

 

 

 

「ほら、あーん」

 

「えっ、自分で食べるよ」

 

「いいからいいから! 手が汚れちゃうでしょ? 弟くんは甘えてればいいの」

 

 

差し出された瑞々しい果実。 俺は苦笑しながら、口を開けてそれを受け入れた。

 

甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる。

 

 

「……美味しい」

 

「でしょ? まだまだたくさんあるからね」

 

 

帆波は嬉しそうに微笑み、俺の頭を優しく撫でた。

 

その手つきには、少しの邪心もない。

 

ただ純粋な慈愛。

 

俺の心の中にあるドス黒い策略や、松下に対して行っている背徳的な行為など、微塵も疑っていない清らかな瞳。

 

 

 

 

「旭くん、最近学校どう? 困ってることない?」

 

「全然。みんな親切にしてくれるし、友達もできたよ」

 

「そっか。松下さんとも、仲良くやってる?」

 

 

不意に出たその名前に、俺は心臓が冷えるのを感じたが、表情には出さない。

 

 

 

「うん。席が隣だし、よく勉強教えてもらってるんだ」

 

「ふふ、よかった。旭くん、松下さんの話する時、なんだかんだ楽しそうだもんね」

 

 

帆波がニヤニヤと茶化してくる。

 

 

俺は「そんなんじゃないよ」と照れてみせた。

 

 

 

 

「姉さんこそ。……無理してない? クラスのこと、全部背負い込んでる気がして」

 

「ううん、全然! みんなのためだもん、頑張れるよ」

 

Sシステムの情報解禁前だというのにこの始末。

 

彼女は力強くガッツポーズをする。 その危ういほどの自己犠牲精神。 いつか壊れてしまうその心を、俺だけが守れる。

 

そのためには——俺自身がもっと「悪」に染まり、彼女の前に立ち塞がる障害をすべて排除しなければならない。

 

 

「……姉さん」

 

 

俺は衝動的に、彼女の手を握った。 華奢で、温かい手。

 

 

「何かあったら、絶対俺に言ってね。俺、姉さんのためなら何でもするから」

 

「あはは、大げさだなぁ。でも、ありがとう。旭くんがいてくれて、本当によかった」

 

 

彼女は俺の手を握り返し、そのまま体を寄せてきた。 ハグに近い距離。彼女の柔らかい体温が、俺の腕に伝わる。 そこには性的なニュアンスなど皆無だ。 あるのは、絶対的な信頼と安らぎだけ。

 

——そのはずだった。

 

 

「……あ」

 

 

帆波の肩越し。 換気のために少し開けておいたドアの隙間から、視線を感じた。

廊下の薄暗がりの中。 そこに、一人の少女が立ち尽くしていた。

 

 

松下千秋だ。 手には、俺に渡すつもりだったのだろう、綺麗にまとめられたノートの束が握られている。

 

 

彼女は見ていた。 俺が、一之瀬帆波の手を握り、愛おしそうに見つめ、抱き寄せられている光景を。

 

そして何より、俺が松下には一度も見せたことのない——「心からの穏やかな笑顔」を。

 

 

松下の表情が、凍りついている。 驚きではない。怒りでもない。 もっと根本的な、自尊心を抉られたような顔。

 

 

(……私にはあんなに冷酷なのに) (私には身体しか求めないくせに) (なんで、あの子にはそんな顔を見せるの?)

 

 

聞こえるはずのない彼女の心の声が、鮮明に聞こえた気がした。

 

彼女の瞳に、黒く濁った感情が渦巻き始める。

 

それは紛れもない「嫉妬」であり、「敗北感」だった。

 

 

俺は——残酷な愉悦を覚えた。 帆波に気づかれないように、顔の角度をわずかに変え、ドアの隙間の松下と目を合わせる。 そして。

 

口角だけで、ニヤリと笑った。

 

 

『見たか? これが「光」と「影」の差だ』

 

 

そう告げるかのように、俺は握っていた帆波の手を、わざと見せつけるように強めた。

 

松下の肩がビクリと跳ねる。 彼女は唇を噛み締め、持っていたノートを胸に抱きしめると、逃げるように走り去った。

 

パタパタパタ……という足音が遠ざかっていく。

 

 

「ん? 今、誰か通った?」

 

「……ううん、誰もいないよ。風の音じゃないかな」

 

 

俺は帆波に向き直り、何食わぬ顔で微笑んだ。 心の中は、これから松下をどう料理してやろうかという、サディスティックな期待で満たされていた。

        

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

それから30分後。 帆波を見送り、俺はすぐに松下にメッセージを送った。

 

 

『今すぐ部屋に来なよ。重要な話がある』

 

既読はすぐについた。 返信はない。だが、彼女は来る。 あの屈辱的な光景を見せつけられ、それでもなお「情報」という鎖に繋がれた彼女は、来るしかないのだ。

 

コン、コン。 控えめなノックの音。

 

「開いてるよ」

 

ドアが開く。 入ってきた松下千秋は、先ほどとは打って変わって、能面のような無表情を作っていた。 だが、その目は赤く充血しており、隠しきれない動揺が滲んでいる。

 

 

「……何よ。重要な話って」

 

「まあ、座りなよ」

 

 

俺は顎でベッドをしゃくった。 さっきまで一之瀬帆波が座っていた場所だ。

 

松下は一瞬躊躇したが、拒否すれば怪しまれると思ったのか、渋々腰を下ろした。

 

 

「……一之瀬さん、帰ったのね」

 

「ああ。美味しいデコポンを持ってきてくれたよ。……食べる?」

 

 

 

俺はテーブルの上の皮を指差す。 松下はそれを見て、汚いものを見るような目で顔を背け

た。

 

 

 

「いらない」

 

「そう言うなよ。……で、さっきは何しに来たんだ?」

 

「……これ。頼まれてた、Dクラス男子の行動パターンのまとめ」

 

 

彼女は持ってきたノートを俺に投げ渡した。 俺はパラパラと中身を確認する。完璧だ。彼女の観察眼と分析力は、間違いなくAクラスレベルだ。

 

 

 

「素晴らしい。いい仕事だ」

 

「用件はそれだけでしょ? 帰る」

 

 

松下がすぐに立ち上がろうとする。 俺はその手首を掴み、強く引いた。

 

 

「きゃっ……!」

 

 

彼女はバランスを崩し、俺の胸の中に倒れ込む。 俺はそのまま彼女を抱き留め、ベッドに押し倒した。

 

 

「な、何すんのよ……!」

 

「逃げるなよ。……さっき、見てただろ?」

 

 

俺の言葉に、松下の動きがピタリと止まる。

 

 

 

「……何を」

 

「俺と姉さんが、仲良くしてるところ」

 

 

俺は彼女の上に覆いかかり、顔を覗き込む。

 

 

「どんな気分だった? 自分にはセクハラしかしてこない男が、他の女にはあんなに優しい顔をしてて」

 

「……別に。どうでもいいわよ」

 

「嘘だ」

 

 

俺は指先で、彼女の目尻をなぞる。

 

 

 

「あの時、君はすごくいい顔をしてたよ。……惨めで、悔しくて、妬ましくて。プライドの高い君が、あんなに崩れた顔を見せるなんて」

 

 

「うるさい……っ! 放して!」

 

 

松下が暴れるが、俺は体重をかけて押さえつける。 そして、彼女の耳元で残酷な真実を突きつけた。

 

 

「教えてあげるよ、千秋ちゃん。……このベッド、まだ温かいだろ?」

 

 

 

松下が息を呑む。 彼女の背中が触れているシーツには、確かに先ほどまで座っていた一之瀬帆波の体温が残っている。

 

 

 

 

「これが『聖女』の温もりだ。……君みたいな計算高い『魔女』とは違う、純粋な光の温度だよ」

 

「っ、最低……! 比べないで……!」

 

 

「比べるさ。君は俺の共犯者だろ? 俺が光を愛すれば愛するほど、君という影が濃くなるんだ」

 

 

俺の手が、彼女のブラウスのボタンに掛かる。 一つ、また一つと外していく。

 

 

 

 

「や、やめて……今日はそんな気分じゃ……」

 

 

「俺はそんな気分なんだ。……姉さんの清らかさを見せつけられた反動でね。無性に、汚いことがしたくなった」

 

 

 

俺はボタンをすべて外し、中のキャミソールごと胸を鷲掴みにした。 乱暴で、容赦のない手つき。 帆波に向けた慈愛とは正反対の、純粋な性欲と支配欲。

 

 

 

「んぎっ……! い、たい……っ!」

 

「痛いか? でも、君はこれを待ってたんだろ?」

 

 

 

俺は彼女の首筋に噛みついた。 キスマークを残す勢いで、強く吸い上げる。

 

 

「一之瀬帆波には、こんなこと絶対にできない。……俺がこんな風に乱暴に触れるのは、世界でお前だけだ」

 

「っ……! ぁ……」

 

 

 

その言葉は、呪いであり、歪んだ愛の告白でもあった。 「お前だけ」という特別扱い。

 

それがどんなに最低な形であっても、一之瀬帆波には向けられない情熱が自分に向けられているという事実が、松下の嫉妬心を満たしていく。

 

 

 

 

(私は特別……私は、この人の本性を知ってる唯一の女……)

 

 

 

松下の抵抗が弱まる。 彼女の手が、迷いながらも俺の背中に回された。

 

 

「……あんたなんか……大嫌い……」

 

 

震える声で紡がれた言葉。 だが、彼女の体は俺を受け入れていた。 嫉妬に焼かれた心は、乱暴な愛撫によってしか鎮火できないと知ってしまったかのように。

 

 

「俺も大好きだよ、千秋ちゃん」

 

 

 

俺は彼女の唇を塞いだ。

 

聖女の残り香が漂う部屋で、俺たちは影同士、泥沼のような情事に耽る手始めをする。

 

 

「嫌い…ほっといて…」

 

 

 

震える声で拒絶の言葉を吐きながらも、松下千秋の体は、俺の腕の中で熱を帯びていた。

 

一之瀬帆波への嫉妬。 自分だけが知る俺の本性。 それらが複雑に絡み合い、彼女の理性を麻痺させている。

 

 

俺は彼女のスカートのホックに手を掛け、一気にファスナーを下ろした。

 

 

スルリと布地が落ち、隠されていた「秘密」が露わになる。

 

 

 

「へえ、例の黒の下着じゃん」

 

「っ///」

 

松下が顔を真っ赤にして、脚を閉じようとする。 だが、俺の膝が割り込んでいるため、それは叶わない。

 

 

「偶然かな? ……まさか、洗濯のローテーションでたまたまこれだった、なんて言わないよね?」

 

「う、うるさい……! たまたまよ……」

 

「嘘だね」

 

 

 

俺は指先で、黒いレースの縁をツンと弾いた。

 

 

「やーっぱり、期待してたじゃん」

 

 

 

「べ、別に……っ」

 

 

「俺からの呼び出しメッセージを見た時、何を想像した? 『重要な話』なんて嘘で、また弄られるんじゃないかって……そう思って、これを選んだんだろ?」

 

 

 

図星を突かれたのか、松下の瞳が揺れる。 彼女は言葉に詰まり、視線を泳がせた。

 

 

「ち、違う……私は……」

 

 

「違くないさ。……だって、こんなに準備万端だ」

 

 

俺は彼女のキャミソールを捲り上げ、ブラジャーのカップ越しに胸を鷲掴みにした。 そして、首筋に顔を埋め、わざと音を立てて吸い付いた。

 

 

「んっ……! ぁ……!」

 

松下の背中が弓なりに反る。 俺は彼女の耳元で、残酷な事実を囁く。

 

 

「君は、俺と姉さんが仲良くしてるのを見て嫉妬した。……そして、『私の方が一ノ瀬旭を知ってる』って確認したくて、この下着を履いてここに来た。……そうだろ?」

 

「ちが……言わないで……っ」

 

 

「認めなよ。……『聖女』にはできない汚いことを、私にしてほしいって」

 

 

俺の手が、太ももの内側を這い上がり、黒いレースの上から秘所を圧迫した。 湿り気を帯びた熱が、布越しに伝わってくる。

 

 

「ひぐっ……!? や、そこ……!」

 

「正直な体だ。……姉さんの残り香がするベッドで、こんなに感じて」

 

 

俺は執拗に、核の位置を指の腹でこね回した。 直接触れてはいない。下着の上からの焦らすような愛撫。 だが、今の彼女にはそれで十分すぎる刺激だった。

 

 

「あっ、んぅ……! だめ、声が……っ」

 

「出せばいい。この部屋の壁は厚いから」

 

 

俺はもう片方の手で彼女の両手首を頭上で束ね、自由を奪う。 完全な無防備。完全な服従。 俺は彼女を見下ろし、サディスティックに笑った。

 

 

「いい眺めだよ、千秋ちゃん。……クラスじゃ澄ました顔してる優等生が、俺の下でこんなに乱れて」

 

「ううっ……、さいあく……っ!さいあく…」

 

「もっと罵っていいよ。……それが君の『快感』なんだろ?」

 

 

俺は指の動きを早める。 松下は腰をくねらせ、俺の指に自ら擦り寄るような動きを見せ始めた。 拒絶の言葉とは裏腹に、身体は快楽を貪欲に求めている。

 

 

「くっ、あ……っ! も、もう……!」

 

 

「何? どうしてほしいの?」

 

 

「し、して……続き……っ」

 

 

彼女の理性が飛びかけた、その瞬間。

俺はパッと手を止めた。

 

「——……」

 

 

松下の動きが止まる。 彼女は荒い息をつきながら、とろんとした目で俺を見上げた。

 

「え? なんで?」という困惑の表情。 その目は、明らかに「続き」を期待していた。

俺はふぅ、と息を吐き、彼女の手首を離した。 そして、冷ややかな目で見下ろした。

 

 

 

 

「……いや、やっぱりやめた」

 

「……は?」

 

「だって君、すごく『下品』な顔してたから」

 

俺はベッドから降り、乱れた自分の服を整え始めた。

 

 

「え、ちょっ……待って……」

 

「姉さんが座ってたベッドを、これ以上汚したくないんだよね」

 

 

 

俺は松下のスカートを拾い上げ、彼女の顔にポイと投げつけた。

 

 

「終わりだ。帰っていいよ」

 

「そ、そんな……ここまでしといて……!」

 

 

 

松下はスカートを握りしめ、涙目で俺を睨む。 身体の火照りは収まっていない。 一番高いところで梯子を外され、宙ぶらりんにされた屈辱と、満たされない渇望。

 

 

「何? まさか『抱いてください』って懇願するつもり?」

 

「っ……!!」

 

 

松下は唇を噛み切りそうなほど強く噛み締め、震える手でスカートを履いた。 その手つきは、怒りと恥ずかしさで覚束ない。

 

 

 

「……死ね。……クズ」

 

「はいはい、おやすみ。……あ、その下着、ちゃんと洗っとけよ?」

 

 

俺はドアを開け、廊下を指差す。 松下は顔を覆うようにして部屋を飛び出した。 その背中は、来た時よりも小さく、そして惨めに見えた。

 

 

バタン、とドアを閉める。 俺は部屋に残った、甘いデコポンの香りと、松下の情欲の匂いが混ざり合った空気を吸い込んだ。

 

初めてのキスは甘さと苦味の混ざったデコポンの味だった。

 

 

「……さて」

 

 

これで彼女は、今夜一睡もできないだろう。 満たされなかった欲求と、俺への憎しみ。そして「次は最後までされるかもしれない」という期待。 その思考のループが、彼女をさらに俺という沼に引きずり込む。

 

 

 

「5月1日の絶望まで……あと数日か」

 

 

 

 

俺はスマホを取り出し、カレンダーを眺めた。 最高のタイミングで彼女を「救済」し、そして「所有」するために。 今夜の「お預け」は、最高のスパイスになるはずだ。

 

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