都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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『薬指親方』②+『薬指子方』①

「さてさて、俺の担当する生徒たちの評価点と適性診断の結果を見てみるかね」

 

〝ヨハン〝

・評価点B−

 人体を用いた造形に輝くものがあるが、今のところはまだ荒削りである為この評価に落ち着いた。

・身体派に適性あり。

 

〝ハンナ〝

・評価点B

 人の皮から糸の取り出し工程が非常に丁寧であり、彼女が取り出した糸を使用した作品はマエストロから中々に良い評価を貰っている。

 これからの活躍が見込める為点数をBとする。

・身体派に適性あり。

 

〝ニコライ〝

・評価点C+

 造形時に少々無駄が多く肉を余らせてしまう癖がある。

 出来上がる作品は中々に上出来なのだが如何せん素材の扱いがまだまだ未熟である為この点とする。

・推定-野獣派に適性あり。

 彼はおそらく原始的かつ心のままに描く芸術へ適性がある。

 その為野獣派への推薦を検討中。

 

〝ジョゼフ〝

・評価点D−

 人体を用いた造形の才能が壊滅的である、その為評価点はD−としたが、これはあくまで肉体派における評価点であり、彼が適性診断中に見せた才能の一端からして別派閥への適性が高い可能性がある。

・推定-点描派に適当あり。

 適性診断中、彼は人体を材料として加工する工程が非常に苦手であり肉体派には向かないようだったが、もしやと思い血液を使わせて見たところ非常に見事なタッチを描いて見せてくれたので彼は点描派への編入を強く推奨する。

 

〝エド〝

・評価点A

 期待の逸材、人体を用いた造形、毛細血管を取り出し素材を縫合する手際、仕上げの美しさ、その全てが非常に高水準であり、今すぐにでもスチューデントになれるだろう。

・身体派に適性あり。

 

「ざっとこんなところかな、フィクサーの時に覚えた資料作製技術がこんなところで役にたつとは思わなかったが、俺が面倒を見る以上なるべく死ななくて良いようにしてやらないと後味が悪くなる」

 

 薬指の評価基準はだいぶ効率が悪い、明らかに適性を度外視した配置を行うせいであまりにも人材のロスが過ぎる。

 

 だからまず人材配置の最適化を提案した。

 

 適性ごとに各派閥へ人材を振り分け、これによってより効率的にスチューデントやドーセント候補を増やす。

 

 芸術に適性があまり無かった者や落第に近づいた者は画材調達班を作り其処に配置した。

 

 そのお陰で無駄過ぎる人材ロスは大方減少傾向にあるが、偶にお偉方が癇癪起こしたり気まぐれで生徒たちをぶっ殺すから其処だけがネックだな。

 

「嗚呼、ストレスで涙が出そうだよ...」

 

 マエストロでもないのに3ヶ月の間で薬指へ与えた貢献の証として3回巻きの指輪を渡されてしまったのが非常に面倒だな。

 

 今までは必要以上のしがらみを避ける為にある程度を越える地位には就かないよう努めていたというのに、これでは動き辛い事このうえない。

 

 これでは気軽に裏路地で材料集めも出来ないじゃないか。

 

「おや、スチューデント候補たちの評価をしているのですか?感心ですね、貴方の薬指に対する献身は私の耳にも届いていますよ」

 

「ふむ、そう思うなら少しは我慢を覚えて欲しいものだね。

 それぞれの派閥ごとに思想や行動原理が異なるのはわかるが少々堪え性の無さがネックになってきているのだから、ツヴァイ協会に眼をつけられては叶わんだろう?。

 連中は表向き自警団のような事をしているが、実際には圧倒的な暴の化身だから、それ故に連中と敵対した場合大きな損失は避けられないだろう」

 

「...」

 

「何かな?」

 

「いえ、貴方がいつも腰に下げているその鈴はいったい如何なる作品なのかと思いましてね、良ければお聞かせ願えませんか?」

 

 あぁ、これの事か。

 

「これは古い友との約束、その履行の為に必要な物なのだよ」

 

 懐かしいな...これはかつて、私と〝友人〝がした約束の証であり、いずれ彼が私の力を必要とした時の為の保険でもある。

 

「かつて約束したのだよ『君がもし、自分の力ではどうしようもなくなってしまったのなら、その時はきっと...それが君の力になってくれる』それが彼との約束、私が己を定義する為の記号だ」

 

「そうですか...貴方はとても情の深い方なのですね」

 

 そう言ってホンルは離れていったが、頼むから俺に構うのはもう少しばかり控えめにして欲しいものだ。

 

 例えそれが薬指であろうと、情が湧いてしまえば俺はきっと...また彼らを助ける為に動いてしまうのだろうから。

 

 そうそう、もう一つ俺の頭を悩ませる案件がある。

 

「...」

 

 親方がいるのだからもしやと思ったら案の定いやがったよ〝子方〝の方も!!!

 

 しかも俺の製作物を興味深そうに見つめてやがる...やらんぞ?(※ファウストはファシアの参考にしようと見ています)

 

「見るのは構わない...だが触れるのはやめた方が良い、時折勝手に動いて外敵を排除しようとするが故」

 

「ファウストは疑問に思います、それらに考える為の脳は入っているのですか?」

 

「可...これら全ては、裏路地で集めた有り合わせの材質を最高の作品に仕上げるというコンセプトで形作られている。

 故にこれら一つ一つは全て自分で考え、自分で判断を決めることが出来る。

 

 ただしマエストロ殿のティビア程ではない、其処に至るまでは成長が足りない故...だが如何なる道具も一つ一つ愛でているうちに愛着を持って接するに至り、そしてそれらはその愛に応えてくれる事だろう。

 

 君のファシアもまた...いずれはマエストロ殿とは違った形で昇華するのかもしれない」

 

 子供は悩んでいたんだ...演じた自分と本来の自分、その境界で揺れ動く自我と情動

 

 それらはいずれ曖昧になって一つになってしまうかもしれない

 

 でも不思議ね、この子供は本当に子供なのかしら?




【登場人物紹介】

『薬指親方ホンル』
・主人公に興味津々「貴方はとても面白い方ですね」

『薬指子方ファウスト』
・主人公に興味津々「ファウストはこの方を見ていれば何かを掴めるような気がします

『生徒の皆様』
・主人公が担当する生徒たち、皆スチューデント候補だが何人かは別派閥へ推薦中である。

『主人公』
・自分が作った作品一つ一つを愛している事が判明、それら全てが思考し自ら判断するヤバい武器と化している。
 
『暖かい声』
・アップを始めたが主人公に若干困惑気味。
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