都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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 アンケート結果の発表なのですが、主人公のスキルや性能に関する詳しい解説は必要か否かで『必要』が多かったので現在進行形で『終幕劇演者』人格の性能を細かく書いています。
 この人格何話か前の後書きで予告してた通り沈潜・出血の状態切り替え人格なんですが、その後公式から発表された新規薬指人格が丁度キーワードが出血・沈潜で状態切り替え系というまさかの公式との被りが発生し、非常に驚いています。
 こんなところから薬指との縁が出来ちゃう事あるんだって思いました


『薬指親方』③

「さて困った...俺がこの世界線ですべき事が一向に掴めない」

 

 俺がこの〝薬指親方〝を中心とする世界に降り立ってより既に4ヶ月が過ぎたが、未だに問題らしい問題が見当たらないのだ。

 

 〝握らんとする者〝の時は本人が望まないであろう道を歩んでしまったからそれをどうにかして軌道修正した。

 

 〝炎拳事務所生存者〝とラ・マンチャランド室長の時は2人が生き残れるように2人が争う理由を消した。

 

 そして今回、マエストロとなったホンルが抱える問題が何故か見えてこない。

 

 薬指親方人格の元となったカリストという薬指肉体派のマエストロは、芸術を追い求める者には往々にして良くある過去の作品を越える物が作れないというジレンマに悩まされていた筈なのだ。

 

 そのカリストを元にしているのだから、この目の前で機嫌が良さそうにファウストの作品を眺めているホンルも必ず何かしろの葛藤や悩みの類いを抱えている筈だろうに。

 

 それがまるで、カーテンコールが終わった後の劇場が如く閉ざされ隠されている。

 

 というより、その問題自体が存在していないかのようだ。

 

「マエストロ殿...やけに喜悦に満ちた顔をしている、何故此処に?」

 

「ええ!最近はとても楽しいんです」

 

 うっわ凄く怖っ!?何だよその急な笑顔と明るい声はどういう感情?...いや、これ本当に嬉しそうだな、声音から伝わってくる感情がやけに明るくてポジティブなものばかりだ。

 

 いや、ちょっとその姿の君でそれは洒落になってないかな...もしや何かとんでもない事を思いついちゃったりしたわけじゃなかろうな?

 

「幾つもの若い芽が育ち、そして輝きの中で散華していく様を見るのはいつだって素晴らしいひとときですから」

 

「若い芽...生徒たちのことですか、あの子たちは飲み込みが良いし早いですから...僕くらいなら容易に飛び越えて行ってしまうかもしれません」

 

「ええ、でも私にとっては貴方もその中に含まれているのですよ」

 

「それはまぁ...確かに僕は新参も新参ですから、もしこうして話しているのが他の指であれば、それこそ親指等であったならば、私はおそらく塵芥すら残さず都市の夜に熔けてしまうでしょうね」

 

 そういえば〝薬指親方ホンル〝はマエストロとして栄華を誇っていた頃、ティビアを削り彫り出すだけでも10年を費やしたという。

 

 目の前のホンルは既に其処を通り過ぎた後なのだから、そんなホンルからすれば俺もまた若い芽に過ぎないのかもしれない。

 

「確かにそうとも言えますが、私は貴方にファウストとはまた違う形で期待しているのです。

 

 このアトリエで貴方と初めて出会った時の事を今も鮮明に思い出せますね、貴方は私を見ても一切の物怖じをせず堂々と胸を張り、私にとても鮮烈な印象を与えてくれました。

 

 そして私とは異なる道で形作られた素晴らしい作品を見せてくれましたね...そんな貴方なら、私に次ぐ新たなるマエストロになることも叶うかもしれません」

 

「成る程、その期待は僕には少々重いかもしれませんね...僕は薬指の一員と言うには染まりきれておらず、さりとて世間一般の大衆からすれば僕はきっと恐ろしく写る事でしょう。

 ですが、関わってしまった子たちくらいは巣立ちの時が来る、その時までは見届けてあげようかと。

 大切な生徒たちですから、お別れをするのは中々に寂しいものを感じますが、それでも可愛い雛鳥たちが手元を離れ、やがて巣立ちの時を迎えるのは喜ばしい事なのだと思います。

 

 でも、別れとはいつだってそういうものでしょう?」

 

「やはり貴方は、少々情が深過ぎるきらいがありますね、その情がいずれ貴方の行く道を阻んでしまわない事を、私は切に願います」

 

「自覚はあるんですよ?関わってしまった一人一人に情が湧いてしまうのは悪い癖だって、それでも何故でしょうね。

 どうしても、目の前の暖かい輝きを秘めた命がひどく愛おしく思えるのです...いっそ狂おしい程に」

 

 全く、自分語りが過ぎてしまったな。

 

 そして漸く理解したよ...まだ問題が表面化する前なのか君。

 

 よくよく考えれば解る話だ...今目の前にいるこのホンルは派閥を越えて薬指の誰からも称賛され、その地位は不動に近い所にある。

 

 おそらく、最もマエストロとしての栄光が最も輝かしい絶頂期であった頃のそれだ。

 

 ならば、本格的に歯車が狂い始めるのはこの後であり、俺がやるべき事も定まったと言えよう。

 

 君という大輪の華が枯れ堕ちるその前に、俺が君に最も色鮮やかで鮮烈な彩りと刺激を与える。

 

 それが、この世界で俺に与えられた役割だと思うから。 

 

 そう...それがこの子供が目指す道なのね

 

 ...

 

 あら?それならもしかして、この子供は私と気があうのかもしれないわ、なんだかとても楽しみだと思わない?

 

 ...!

 

 そうなの?でも貴方も見てみたくはない?あの子供が何処までも飛んで行って、そして...最後には自分を消していくところを

 

 ...

 

 とても楽しみね、私...なんだか久しぶりにわくわくしてきてしまうわ




【登場人物紹介】

『薬指親方ホンル』
・実はまだ絶頂期だった頃の時系列だと判明した。
・主人公にちょっと重めの期待を持ちながらめちゃくちゃニコニコ笑顔で見ている。

『主人公』
・この世界でやるべき事が定まったし、ホンルにめちゃくちゃ鋭い指摘を受けたうえになんかクソリプお姉さんが猛烈なアップを始めてしまったので絶体ろくでもない目に合う。
・多分次回辺りでこの世界でのビジュアルと名乗っている名前が判明するかも?

『暖かい声もといクソリプお姉さん』
・主人公に困惑していたらなんだか一周回って親近感が湧いてきてしまったらしい、頼むから帰ってくれ。
・主人公が毎回世界を剪定するせいで記憶を持ち越せないからその度接触したりしなかったりしてる模様、今回はガチ目に眼をつけてるから怖い、まじで帰ってくださいお願いします。

『暖かい声(声が小さい方)』
・わりとガチ目にクソリプお姉さんへ猛抗議したが聞き入れて貰えないどころか「でも君も見たがってるよね?」されて沈黙した、頼むからそのクソリプお姉さんをちゃんと引き取って帰ってくれ。
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