都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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 仕事でだいぶ疲労が蓄積したので多分一週間くらい休むかも?気が向いたら投稿します。


『血の散華』華

 全ての悲劇がなくなれば良いのにって思ってた。

 

 そうすれば悲劇を見続ける者もいらなくなるでしょう?

 

 でも悲劇はなくならなかった。

 

 この都市は、あまりにも多くの苦痛に満ち溢れているから、悲劇は絶えず起き続けてなくなる事はない。

 

 だから私は、自分で少しでも多くの悲劇をなくす事を自分の命題として刻み、人としての側を得て都市に生まれ落ちた。

 

 けど、本当に...本当に悲劇を消す事が正しい事なのか、私にはもうわからなくなってしまいました。

 

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「嗚呼、懐かしい感覚ですね...本当に久しぶりですよ、格上の方と踊るというのは何時だってとても大変な事ですから、それ相応の準備が必要なのです。

 貴方たち3人を相手するとなれば、今一つ下準備が足りていなかったかもしれませんね、それでもまぁ...私は何故か負ける気がしません。

 

 おそらく、私と貴方たちでは勝利条件が違うからでしょうね」

 

 瞬きをする間にも刃や弾丸、鈍器や刺凸による空間も軋むような何合もの武器と武器のぶつかり合いが起き、そしてその全てが悉く村雨の力によって相殺され消えていく。

 

 私自身の実力は1級でも下から数えた方が良いくらいのものだが、私が作った武器...そして私自身の力によってギリギリ上澄みの方々とも渡り合えている。

 

 ですが、こうしているうちにもこっそりと出した合図で、ヨハンとハンナたちは目的地に向けて歩みを進めているのです。

 

 要するに私がすべき事は時間稼ぎ、2人があの場所に辿り着くまで時間を稼ぐ事が出来れば私の勝ち、それまでに私たちを殺しきれたならイオリお婆様たちの勝ちになりますね。

 

「おたくすっごい面倒だな?なんでまぁこんな厄介な武器を幾つも持ってるんだか」

 

「それは貴方も同じ事でしょう?黒い沈黙から受け継いだその手袋、本当に厄介極まりないですね。

 まぁ、幸い私には弾丸は効かないので、そのお陰で貴方からの攻撃を何割か無力化出来ていますから、本当に準備というのはしておくものですね」

 

 話している合間にも灼熱を宿したような凶刃が横から迫って来る。

 

 赤い視線ヴェルギリウスだろう。

 

「こんにちは赤い視線、貴方も中々に面倒ですね?でもまぁEGOを使っていない貴方ならばギリギリ何とかなりそうだ」

 

 最後にもう一人である紫の涙イオリ、おそらく私に仕掛ける前準備として斬撃体勢でも取っていたのだろうか?凄まじい勢いで私の首へ向けて放たれたそれを、全てギリギリのところで弾き返す事に成功した。

 

「あんた、敵に回すと本当に厄介だねぇ?あたしゃ少し疲れてきたよ」

 

「帰って頂いたって良いんですよ?イオリお婆様、そうしていただけるならば私は追うことをしませんし、逃げ切ったと思わせたところで後ろから...なんて事もしませんから」

 

「そうしたいのは山々だけどねぇ、あんたに好き勝手させるとあたしのこれからやろうとしてる事に差し障るのさ」

 

「嗚呼、そういえば貴女は全て知っているのでしたねイオリお婆様。

 あのピアニスト事件を引き起こした諸悪の根源『ねじれ』についても貴女もよくご存知でしょうし、それを死んだアンジーの夫殿に教えてあげないというのも中々に酷いですね。

 

 でもまぁ、この都市において自分の知る全てを他人に無償で教えるなんて事はあり得ないですから、それもまた有りなのでしょうね」

 

「おい...今お前ねじれについて話したか?」

 

「ええ...話しましたね、教えて欲しいなら教えてあげても構いませんよ?どうせ全ては無かった事になるのですから」

 

「耳を貸すんじゃないよ!」

 

「おや?もしや話されると困る事でもあるんですかイオリお婆様。

 それに、私も結構怒っているんですよ?私がピアニストを始末しようとすると毎回貴女が現れて私を足止めする。

 そしてその度にアンジーは死に、多くの悲劇が生まれる...そんな事を最低でも3度は繰り返していますね、あの子も貴女の弟子の一人でしょうに、本当に冷たいお方だ」

 

「どういう事だ!あんたは何を知ってる?何を隠している!!!」

 

「落ち着いた方が良い、今は奴を倒すことに集中すべきではないですかローラン?」

 

 これぞ曼珠の...いや、村雨の真骨頂。

 

 全てをよく知るが故に全てを手繰れるその指先は、常に地獄と苦痛を指揮している。

 

 故に、ちょっとした人身の誘導とそれによる不和を引き起こすくらいは、茶を入れるくらいに容易である。

 

「やってくれたねぇ」

 

「人間とは、かくも容易く互いを憎み殺し合うのですねイオリお婆様。

 嗚呼、でも気を落とさないでくださいね?私は他の人が如何なる手段を持ってしても知り得ないものを幾つも知ってはいますが、それは私が〝相対するもの全てを写す鏡〝であるが故なのですから。

 

 そしてようやくわかったんです、あの暖かい声の中で2度目の開花を迎えた時、私は己の本質に触れました。

 そして理解した...私という存在の根幹は、結局のところ鏡であり、この身も村雨という名も全て虚飾に満ちた偽りのものに過ぎなかったということを。

 

 私は、鏡そのものだったのですね」

 

 村雨の体を、全てを写し還す鏡のような衣服とマントが覆い。

 

 顔もまた、まるで鏡をそのまま切り出したような仮面が其処には鎮座していた。

 

「これが私自身の本質を写し出したEGO、私そのものを表す殻なのです。

 どうです?とても醜いでしょう?誰かに見られて、誰かを写さない限り何一つ叶えてあげられない。

 誰かの希望を写し叶えるものとして、誰かを救うものとして、どうしようもなく破綻したこの私を貴女は村雨という名で人の形に縛り、偽りの記憶と身分を与えた」

 

 紫の涙は沈黙する。

 

 ひとえに、目の前で語り続ける元弟子の知らない顔を見せつけられたが故に。

 

「私は私の根源に立ち返る必要がある、そうすればもっとより多くの苦痛を無くせるし、悲劇も起こさせないで済むんだ。

 もううんざりなんです、ただひたすらに悲劇だけを見続ける日々はね」

 

 村雨が幾度となく力を振るう時に顕れていた力の象徴、何なを切る度に迸る水で煌めき全てを写すその刀が、今再び顕現しようとしている。

 

 だが、それは意外な人物によって防がれる事となる。

 

「嗚呼...エド、何故来てしまったのですか?」

 

 村雨の体を背後から貫く茨まみれの巨大な剣。

 

 それは村雨を想い、追い縋ってきたエドが発現するに至ったもの。

 

 つまりは彼のEGOである。

 

「先生、己の身勝手なエゴで貴方を貫く私を、どうか許さないでください。

 私は貴方に、かつての優しい先生だった頃の姿へ戻って欲しかった。

 そして謝りたかったんだ...あまりにも醜い裏切りをしておきながら、最後の最後まで己の下らない願望のままに振る舞うこの醜悪さを、どうか許さないで欲しい。

 

 許しは...もう私には相応しくなくなってしまったから、許されるわけがないのだから」

 

 村雨の体を貫いた剣がより一層深く突き刺さり、その体には幾つのもの罅が入り始めていた。

 

「ふふふっ...嬉しいですよエド、貴方もまた己の本質を花開かせるに至ったのですね。

 そして、その貴方のエゴより生まれたEGOは、きっとこれからも貴方の力になってくれる事でしょう。

 でも残念ですね、私はその活躍をもう見てあげられないでしょうから。

 

 でも、本当にありがとうございます...貴方のお陰で、私はようやくこの世界での肉体を手放す事が出来た」

 

 罅が入っていた村雨の体は、いよいよ砕け散らんというところまで来ていた。

 

 後はエドがその剣を引き抜けば全ては完了するだろう。

 

 村雨の勝利という形で...

 

「さようなら先生」

 

「さようならエド...願わくば、貴方がまた共に歩む友人たちを見つけられんことを」

 

 そして、村雨の体は完全に砕け散った。

 

 だが、村雨は勝負には勝ったのである。

 

 何せヨハンとハンナは、既に目的の場所に着いていたから。

 

『嗚呼、ようやくですね、ヨハン、ハンナ、私がこの場所で完全となる為には肉体を捨てる必要がありました。

 私の肉体、私自身を人として定める檻を壊さない限り、私は本当の意味で己の本質にして根源に至ることが出来ない。

 そして、肉体を失った今であれば...私は次の世界で形作られる肉体の元へ私という個の意識が飛ばされる時を利用して貴方たちを連れていく事が出来る。

 

 全ては私の生まれた場所にして、私の根源であり私の力を最大限に高めるこの場所だからこそそれらは達成されるのです』

 

 さようなら、この世界でのご友人たち、ホンル、ファウスト、エド、イオリお婆様。

 

 さあ、新たなる世界へと旅立ちましょう。

 

 凄まじい光の渦が波飛沫のように広がって世界を包み込み、その光が消えると世界からはこれまで起こった全ての痛みが消えた。

 

 ただ4人の例外を除いてだが。




【登場人物紹介】

『紫の涙:イオリ』
・特色息子大好き系ママ、この後ローランにガン詰めされてしゃあなくボコるし図書館の事を教える。
 この人倒しちゃうと特色をそんな簡単に殺せるわけが無いだろう!って怒られちゃうから、主人公によって比較的精神不安定な時期のローランを言葉巧みに誘導されてぶつけられた。

『ローラン』
・この後紫の涙にボコられたし赤い視線は世界から痛みが消えた事に伴って記憶が消えたのでさっさと帰った。
 ちなみに今回の件を覚えているのはイオリ、ローラン、ホンル、エドの四人だけである。

『赤い視線:ヴェルギリウス』
・偶々近くにいたせいでイオリに無理矢理連れてこられた人、まだリヴァイアサンしてない頃。

『エド』
・下手に記憶残っちゃったものだから、今後一生最悪な裏切りの記憶と罪の意識に苦しみ続ける。
 せいぜい地獄を楽しんで欲しい、でも後日談でしれっと登場するかもしれない。
 もしこいつに章タイトル与えるなら『あやまれない』になる。

『主人公』
・なんかいつも通りわけわからんこと言って、伏線ばらまくだけばらまいてから次の世界へ行ったやべえやつ(アンジーって誰だろうね?)
 アルルカン人格だけでもしんどいのに『血の散華』とかいうゲキヤバ人格の元が出来ちゃったせいで作者をぶち殺しかけている(仕事多すぎて倒れかけ何ですよ私、でも体調悪い時の方が何故か筆が乗るんです)

【ちょっとした小ネタという名の説明】

 少々この辺りで説明しておいた方が良いと思った事がありまして、何話か前に主人公が歌ってた歌についてですが、あれについて読者の皆様から色々と指摘を受ける可能性を考慮し先に言っておきますね。

 あれ作者がオリジナルで書いたやつなんで楽曲コードとか必要ないです。
 なのでご安心ください、コードとかそもそもないから載せなくても運営に怒られる事はないんです。
 というかその為に自分で書き下ろしました...バチクソしんどかったです。
 主に歌詞で過去のトラウマを刺激されたりしました。

解決済みの人格ストーリー(例えば握らんとする者)の後日談は必要ですか?

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