都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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 よし!書けた!


追憶『ワイルドハント』③

「ヒースクリフ、あまり喧嘩をし過ぎてはいけないよ」

 

「どうしてだ?相手が悪い時はすぐにでもぶん殴ったって良いだろ?」

 

「暴力は子供の間でも許されない時があるけれど、大人になるとその選択肢はますます悪手になっていくんだ。

 でもねヒースクリフ、大人になると人は暴力の変わりに賢くなって言葉の棘で相手を突き刺せるようになる。

 

 相手が理不尽な事、道理が通らない事を言って守りたい人や大切な人が傷つきそうになった時にその棘を相手に突き立てて君の守りたい人を守る力に出来るんだよ。

 

 だけれどね、この言葉の棘は普段から喧嘩ばかりをしている人には使えない力なんだ...暴力は時に最適解となる事もあるけれど、それは常に適当であるわけではない。

 普段から暴力に傾倒し過ぎている人間は、肝心な時に言葉の棘を使う事が出来ないんだ。

 

 なぜならね普段から暴力ばかり振るう人の話は誰も聞いてくれないからさ、言葉の力を振るうにはそれ相応の振る舞いが求められるからね」

 

「それを身につけるにはどうすれば良いんだ?」

 

「そうだねぇ、ヒースクリフがそれを身につけるとすれば身近な所から味方を増やしていく事から始めると良いかもね」

 

 私の言葉に何か思い当たることがあったのかヒースクリフは少しの間考え込むような仕草をした後質問をしてきました。

 

「ヒンドリーの事か?」

 

「君がそう思ったなら、それはきっと当たっているのだと思うよ」

 

 真っ先にヒンドリーの名前が挙がるあたり、ヒースクリフもヒンドリーとのわだかまりは解決しなければならない事だと思っていたようだね。

 

 そうだね、ヒンドリーは謂わば唐突に与えられる筈だったものを他者に割譲させられたようなものだから、ヒースクリフに良い感情を抱けるようになるのはとても難しいだろう。

 

 だけれども、ヒースクリフ側がそのわだかまりを解きほぐそうと努力するなら話は変わづてくるかもしれない。

 

 ただそれには1つだけ問題があるんだ。

 

 ヒースクリフがなにかしろの事を起こすと毎回アーンショウのもう1人の子であるキャサリンお嬢様が間に入って庇ってしまうから、偶にはお互いの意見をぶつけ合う事も重要なのだけれど、ヒースクリフが心配なあまりキャサリンお嬢様はその間に入ってしまう。

 

 だから、ヒースクリフとヒンドリーを仲直りさせるにはまずキャサリンお嬢様と話をする必要がありますね。

 

「というわけで、少しの間お話をしませんか?」

 

「私がヒースクリフを庇っちゃうとヒースクリフとヒンドリーが仲良く出来ないかもしれないっていうのは本当?」

 

 私はネリーさんを通してキャサリンお嬢様にコンタクトを取ったのはそれからすぐの事でした。

 

「正確には、2人がお互いに自分の言葉をぶつけ合う事で理解し合う必要があるのですが、キャサリンお嬢様が2人の喧嘩に毎回割って入るでしょう?あれは別に悪い事ではないのです。

 

 でもねキャサリンお嬢様、1つだけ気をつけなければいけない事があるのです。

 庇われ過ぎると、人はとても弱くなってしまうんです...何かあった時は誰かに庇って貰えると覚えてしまうと、人間は自分の力で物事を解決する事が難しくなってしまう。

 

 だからね1つだけ聞かせてください、貴方には...2人がまた喧嘩をした時にその成り行きを見守る事は出来ますか?」

 

「私は...私は2人にも仲良くなって欲しい、そうしたらヒースクリフはこの邸宅に受け入れられやすくなるのでしょう?」

 

 あぁ、この時から片鱗はあるんですねキャサリンお嬢様。

 

 貴方はきっと、将来的に沢山の人を苦痛の真っ只中に引き摺り込む事になるのでしょうね。

 

 そして、それらは全てヒースクリフの為に行われるのでしょう。

 

 私にはきっと、それを変えることは出来ないのだと思います。

 

 だって、私はあくまでも誰かを写す鏡でしかないから、その人が抱えている問題を写してそれを解決する手助けは出来たとしても、その人が心の底からそうしたいと思っている事までは否定出来ないし、したくないから。

 

 もしそれすらどうにか出来るようになってしまった時、私は再び人ではなくなっているのでしょうね。 

 

「村雨先生」

 

「なんだいネリー」

 

「どうして先生はいつも悲しいお顔をしておられるのですか」

 

「そうだね...私は皆が思っているほど良い人間ではないからかな。

 救えなかったものばかり数えて過去に縛られ、今を生きる君たちに積み重ねてきた刻の面影を見ている。

 

 そんな私が、君たちに何かを教えるような者になって良いのか時々わからなくなるんだ」

 

 ネリーは困ったような、何を言って良いのかわからないような顔をしている。

 

 当然だろう、こんな話をいきなりしたら誰だって困惑すると思うし。

 

「あの、私が言うのは違うのかもしれませんが、村雨先生は深く考え過ぎておられるのではないでしょうか?先生の仰られる救えなかった方というのはどなたが存じません。

 でも、先生はとても努力なされたのでしょう?それで救えなかったなら仕方ないんじゃないでしょうか?

 

 だって、先生だけで全ての人を救えるわけではないでしょう?」

 

 嗚呼、確かにそうかもしれないね...でもねネリー、君もまた救いを求めている事に違いはないんだろう?私にはもう見えているんだ。

 

 心の奥底に閉じ込めたつもりでも、その中に秘めた本当の思いは隠せない。

 

 君はもう、とっくの昔に疑問を持ってしまっているんだろう?だから...いつもそんなにも期待と絶望が入り混じった顔をしているだろうに。

 

 ごめんねネリー、私は君を救えない。

 

 君を救うと言う事はあの2人を見捨てると言う事だから。

 

 君の言うとおり、私には全てを救う事が出来ないのだから。

 

 でもいつか、この世全ての悲劇を無くせたのなら...君もまた救えるのかもしれないね。




【登場人物紹介】

『ヒースクリフ』
・多分めちゃくちゃ良い空気吸ってるけどこれはワイルドハント編なのを忘れてはいけない。

『キャサリン』
・作者からの第一印象がわりと悲惨なお方、作者は色々あって女性は少々苦手なのです。
 悪い方じゃなさそうなのはわかるのだけれども、作者が苦手なタイプのお方なのでちょっと書き難いとだけ。
・1つ言うなら「ちゃんと思ってる事を吐き出しましょうよ」それが出来ないのはわかっていても、ちょっとだけもどかしいというかとても悲しいものを感じるのですよ、作者もリアルだと吐き出せない側ではあるので深くは言えないのですけれとも。

『ネリー』
・自分の中にある村雨への期待は自覚しているし、自分の中の痛みを知って欲しいとも思っているが言い出せないでいる。
 多分リンバス本編でも言い出せなくて溜め込んでたら致命的なタイミングで爆発したんだろうなって思ってるけどもし読者さんたちの解釈と違ったらごめんね。

『村雨』
・この物語の主人公ではあるが、今のところメインヒロインがいない...というかこいつ自身がヒロインになり始めていないか?と作者は不安になり始めている。

解決済みの人格ストーリー(例えば握らんとする者)の後日談は必要ですか?

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