都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった 作:薬指〝笛吹派〝スチューデント
幾つもの悲劇を見た。
何度も、何度も悲劇を見た。
幾千幾万、幾億もの人によって齎された悲劇を私は見てきた。
最初、何故人は繰り返すのかわからなかった。
でも、私は漸く理解した。
人も別にやりたくて繰り返してるわけじゃないって、繰り返したくないのに、わかっているのに繰り返してしまう。
そんな悲しい生き物が人間だった。
『なら、悲劇なんてもの自体がなくなってしまえば人は繰り返さなくて済むようになるんじゃないかしら?』
私はそう思っていました。
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「ヒースクリフ!お前に話がある!」
「丁度良かった、俺もお前に話があったんだ」
「...村雨先生」
「大丈夫だよキャサリン、あれは多分喧嘩にはならないから」
あれからアーンショウの子供たちは、幾多の経験を経て立派に育った。
ただ、それでもなおヒースクリフとヒンドリーの関係性は解消出来なかったのは誤算だ。
だから、少々荒っぽくはあるが1つの策を講じる事にした。
ヒースクリフとヒンドリーのわだかまりを解決する方法。
それはやはり2人の意見をぶつけ合わせるしかないという事で、私はわざと2人が同じ部屋になるよう段取りを組ませて貰った。
ジョセフィーヌの妨害やらネリー以外のバトラーからの嫌がらせ、ヒースクリフをイライラさせる要素は数在れど、ヒンドリーと同じ部屋になる事ほど気まずい雰囲気になるシチュエーションはないだろうからね。
ただ、やはり問題と障害は幾つもあるらしい。
「キャッ!?何?今の凄い雷!」
「...まずいな」
やはり干渉されたか!
「ヒースクリフ!ヒンドリー!伏せろ!!!」
私を含めた4人の頭上、揺れるシャンデリアが唐突に根本から千切れ墜ちた。
時が酷くゆっくり過ぎるように感じる。
それは別世界よりの干渉、ヒースクリフを幸せにする為だけに動く無数のとある者たちの成れ果てである。
それはとても凄まじい輝きを放ちながら堕とされる天よりの鉄槌であり、それはヒースクリフを傷つける者への裁きと化す。
"キャサリン"たちが悲しむ度にそれは訪れるのだ。
「村雨先生!!!」
酷く冷たい重み、肉体を刺すような鋭い殺意を感じるよ。
キャサリン...どうしてそんなにも怯えているのかな?そんなに自分たちが描いた筋書きと違う世界が生まれるのが怖いのかい?
嗚呼それとも、新たな可能性が生まれる事でヒースクリフがもっと酷い傷つき方をするのが嫌なのかな。
いずれにせよね、余りにも過干渉が過ぎると思うんだ。
それは私にも云える事ではあるけど。
それでもね...こんな2人とも傷つけてしまいかねない方法を取らなければならないほどに、もう君には余裕がないのかな?
「おい村雨、あんた血が!!!」
「嘘だろ?なんでこんな!」
「気にする事はないよ3人とも、幸い私は傷が"直し易い"から」
千切れ墜ちたシャンデリア、それを受け止めた私の体は酷く血塗れで今にも力無く倒れそうであると、他者から見ればそう思えるような惨状になってしまった。
参ったな、ここまで派手に怪我をするつもりはなかったこだけれども。
それに...お出ましのようだ。
『幾多の雷雨と泥に塗れた酷く痛ましい記憶の道をくぐり抜け俺は来たぞ、全てのヒースクリフを殺す為に!』
「お前は?いや!それより今は村雨先生を助けねぇと!!!」
魔王、それがやって来たのだ。
『聞け!ヒースクリフ!俺はお前で、俺たちがいたせいで起こる悲劇と酷い不幸を全て消さんが為にやってきた!
つまり、俺たちは...全てのヒースクリフは死ななくてはならない!』
やめろ...
「意味わかんねぇ事をベラベラ喋ってんじゃねぇ!其処を退け!!!」
あぁ...やめろ、それ以上をその子に聞かせるな。
聞かせてくれるな、折角ここまで来れたのに?全て台無しにされてしまう。
『聴け!ヒースクリフ、この惨劇もお前のせいで起こった事だ!お前が、俺たちがいるから皆不幸になる!
そこで血塗れになっている女も!ヒンドリーも!そしてキャサリンもだ!』
「はっ?俺がいるから皆不幸になるだと?」
『お前にも見せてやろう!お前が!俺たちが!ヒースクリフのせいで起きた全ての不幸を!!!』
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不幸を見た。
無数に積まれた夥しい数の死体の山。
不幸を見た。
その光景に至るまでに築きあげられた惨劇の数々を。
俺のせいで起きた不幸を見た。
俺の大切な皆、キャシーも誰もかれもが俺のせいで不幸になる。
そんな不幸を見た。
これが本当に起こる事なのなら、目の前で喚き散らす良くわかんねぇ俺の言うとおり...俺は死ぬべきだ。
死ななくてはならない。
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『理解し、受け入れたようだな?そうだ!今お前が見た全ての不幸が俺たちの!ヒースクリフのせいで起こった事だ!』
「...やれよ」
「ヒースクリフ!!!」
「俺がいたら、あれが全部本当になっちまうんだろう?だったら早くやれ、出来るだけさくっとやっちまってくれ」
『ああ、その為に俺は来た』
ヒースクリフに向けられた凶刃が振り下ろされる。
キャサリンも、ヒンドリーも、ただ1人を除いたその場にいた全てが目を伏せる。
しかし、その瞬間はやって来ない。
何故ならば。
「なんで、なんでだよ村雨!!!」
「私は貴方たちの家庭教師ですから、こんな時は誰よりも早く駆けつけないとね?」
その凶刃は私を深々と貫いていたから。
『何故だ!全てのヒースクリフはしななければならない!そうでなければ全てが不幸になるんだぞ!!!』
「あのねぇ、私からすればそんな事は可愛い子供たちを救わない理由になりやしないんだよ。
私は教師だ...そうである前にこの子たちの成長をここまで見守って来たんだ...だったらこの瞬間に見過ごせるわけかないじゃないか」
魔王が少したじろいだ。
でもね、私からすれば君もまた可愛いくて愛おしい子供たちの中に入っているんだよ。
「魔王、全てのヒースクリフを殺す者、それが君の在り方なのはよく知っているとも」
『なら...!』
「ごめんねヒースクリフ、君の元に訪れてあげられなくて...私は全ての悲劇を無くしたいと思っているのに1人で泣き続けている君すら救う事が出来ない」
『...!』
「私はね、この世に悲劇なんて存在しなければ良いのにと思ってる。
この世にそんなものがなければ、もっと皆幸せになれるのにってそう思っているんだ。
最初は1人の友人を救う為だけの旅路だったけれど、いつしか関わる人全てを救おうとせずにはいられなくなっていたんだよ。
でもね、私1人じゃ泣いている子供1人救えやしなかった」
嗚呼、本当に哀しい事だけれど、私は1人ではあまりにも無力だったんだ。
だから、もっともっと強くなる事にした。
「だからね魔王になってしまったヒースクリフよ、君の不幸は私が持っていこう」
『やめろ、なんでそんな事をするんだ!俺は!』
「決まっているだろヒースクリフ、私は君たちを愛しているからだ」
私の体が砕ける音がした...それと一緒に再び大きな雷と、狼の遠吠えが遠くで聞こえた。
皆が駆け寄って来る音がした。
「村雨!!!」
ごめんねヒースクリフ、私は君を最後まで見届けられない。
「俺のせいで...俺のせいであんたが!!!」
ヒースクリフを濃くて黒っぽい紫色の靄のようなものが包み込んでいく。
それはまるで彼を別の何かへ変えようとしているようで...待て、それは、その結末だけは駄目だ!!!
「俺はやっぱりちゃんと死ななくちゃならないんだ!俺がいるから、俺が死ななかったから大切な人たちが不幸になる!」
やめろ!!!
『全てのヒースクリフは死なければならない』
この日、魔王が1人消え...もう1人の魔王が生まれた。
そして、私の体は砕け散った。
【人物紹介】
『ヒースクリフ』
・ここまでの3話が全て新たなる魔王が生まれる前ふりになってしまった。
実際リンバス本編でも何人ものヒースクリフが魔王に色々見せられた結果納得して死を受け入れちゃってたから切っ掛けがあればこうなるんじゃないかって思って書きました。
『ヒンドリー』
・まるごと1話かけてスポットライトを当てられたからすんげぇ端役になったけれど一応出番はあった人、この後魔王になったヒースクリフが全てのヒースクリフを殺しに行くのをただ見送る事しか出来なくてやけ酒する。
『キャサリン(及び全てのキャサリン)』
・この世界のキャサリンじゃなくそれを呼び水代わりにした全てのキャサリンが今回の件の主犯、ヒースクリフの周りになんか変なのがついてたからキレてシャンデリア落とすわ魔王送り込むわ物語の裏で大暴れしてた。
『村雨』
・誰も救えなかったと嘆き悲しみながら次の世界に飛んだが、多分今回の件をかなり引きずるしめっちゃ病むかもしれない。
次の世界はロージャ回の予定。
解決済みの人格ストーリー(例えば握らんとする者)の後日談は必要ですか?
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必要
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必要ない