都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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書けたぞ!


追憶『涙で研ぎ澄まされた剣』

 数多くの悲劇を見続ける中、私はどう足掻いても救えない者もいると知った。

 

 悲劇の形は人それぞれであり、他者にとってはなんてことのない出来事でもその人にとっては悲劇足り得るのだから。

 

 ならば、私の他者を救おうとする行為もまた悲劇を生んでいるのだろうか?

 

 そう思わずにはいられなかった。

 

だから欲した...この身ごと悲劇を消す方法を私は求めたのだ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 通路を曲がると、角で壁に片手をついてよし掛かりながら何やらブツブツと呟いている女性がいた。

 

「また思い詰めているのかい?」

 

「あんた...まぁあんたなら良いか、あまりこんなところを人に見られたくなかったんだけどね」

 

 それは私たちが今いるこの場所、ロボトミーコーポレーションでも屈指の実力を誇る職員ロジオン。

 

 通称ロージャである。

 

 

 

 

 L社ことロボトミーコーポレーション、あの会社には施設内に居住スペースがあって職員たちは皆そこで暮らしていたんだ。

 

 そして、Lはとあるエネルギーを精製している事で有名だった。

 

 その名もエンケファリンと云う、もっと古い時代の都市では酷く人体に有害で多方面から不興を買っていたリンバスカンパニーから数えて旧旧L社とでも云うべき翼があった。

 

 そんな旧旧L社への反発を利用して引き起こされた翼戦争により今のロボトミーコーポレーションはあるのだ。

 

 だが、ロボトミーコーポレーションも別に安全というわけではない。

 

 扱うエネルギーこそクリーンなものにはなったが、それを得る為の手段は極めて危険なものであり、日々職員たちには多くの犠牲が出る。

 

 私は、そんな悲劇の真っ只中である場所に降り立ってしまったわけだ。

 

「最近の君はまた酷く荒んでいるからね、皆口には出さないけれど心配しているんだよ」

 

「わかってるなら放っておいてよ、私は今1人になりたいの」

 

 ロージャという女性はとても難儀な人物だ。

 

 誰よりも『特別』というものに拘っていて、それを手に入れる為ならどんな努力も惜しまない。

 

 そんな彼女だからこそ他の職員以上に強い焦燥感を常に持っている。

 

「また何かあったんだね」

 

「あんたこそ、なんでいきなり紅茶なんか飲みだしてんのよ」

 

「いるかい?」

 

「頂くわ」

 

 だからこそ、偶にこうしてメンタルケアが欠かせないわけだね。

 

「それで、今回は何があったのかな?」

 

「...」

 

「話したくないなら当ててあげようか、また自分が作業をした後に収容室へ入った職員がギフトを持って出てきたんだろう?君は貰えなかったのに」

 

「あんたって本当に怖いくらい全部わかってるんだね、その通りだよ」

 

 これは答えを知っているからというだけではなく、此処に降り立ってから何度も同じ光景を目にしてきたからだ。

 

 新しい幻想体がやってくる度に優秀な職員である彼女はその担当を任される。

 

 しかし、その度に何故か幻想体が職員に与えるギフトと呼ばれるものを彼女だけが貰えない。

 

 いつだって彼女の後に収容室へ入った職員ばかりがギフトを貰っている。

 

 そんな事が何度も繰り返されているうちに彼女は益々荒んでいった。

 

 そうして、つい先日収容された『絶望の騎士』からもギフトを貰えなかった彼女は遂に心が折れてしまう寸前までになり、危うく殺人性パニックを起こした職員のようにギフトを貰った職員を攻撃しかけたので私がぎりぎりのところで割って入ったのだ。

 

 本当に危なかったぞ、もう少しであの哀れな職員は穴だらけになるところだ。

 

 幸いこの会社では職員が暴走して同僚を攻撃するなんて事は日常茶飯事だったが為になんとかその場は収める事が出来たが、次はどうなるかわからない。

 

 だからこそこの辺りで彼女の心のしこりを解消しておきたかったのだけれど。

 

「やっぱり苦しいのかな、君の心の中で抱え込まれた酷く痛ましい感情。

 誰よりも頑張っている筈なのに誰からもそれを特別に見て貰えないその焦燥感」

 

「なんでわかんの?」 

 

「私もまた、君とは違う形で焦燥感を抱く者だからとでも言っておこうか」

 

「またそうやってあんただけ自分の事を煙に巻くんだね、あんたはあたしや皆の事は全部知ってる癖にあんたの事は誰も知りやしない。

 

 それって凄く不公平じゃない?」

 

 痛いところを突かれたかな、確かに私は自分の事を誰にも話していない。

 

 あまり親しくなってもお別れが辛くなるだけだと思うから。

 

「話しても全部無かったことになってしまうからね」

 

「それはどういう...」

 

「これ以上は話すと色々まずいことになる、職務規定違反で退職手続きをされたくないだろう?」

 

 この会社はその辺り容赦がないからね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 やっぱり、話しておけば良かったかな。

 

『嗚呼、こうなるなら素直に私の事を教えてあげれば良かったのかな。

 でもね、何を教えてあげたところでどうせ全て無かったことになるのだから...話しても所詮は流れ行く涙のように空気に溶けていくだけだ』

 

「あんた...なんでそんな」

 

 その日、私は何故か幻想体として鎮圧対象にされた。

 

 職員を助ける為に自分自身のE.G.Oを使ったのがまずかったか。

 

『まぁ別に構わないさ、私は此処にいない筈の者なんだから居なくなっても誰も困りはしないだろうから』

 

「あんた!最初からあたしたちを騙してたの!?」

 

『そう思われて仕方がないだろうね、私は確かに純粋な人ではないから幻想体の定義に当てはまるのかもしれない。

 けれど、君たち職員と過ごした日々も中々に楽しかったよ...でもね、こうなってしまった以上はもう仕方がないんだ。

 

 一度壊れてしまってはもう元に戻らないんだよ』

 

「この裏切り者!!!」

 

 ふふふ、意味がわからないという視線を感じるね。

 

 話していない余白の中で私は色々な事をしてきましたが、今回のL社では職員方から思った以上に好かれてしまったようですね。

 

 だからこそ、今回のように幻想体として振る舞う私の姿は酷い裏切りのように映るのでしょう。

 

「なんで抵抗しないのよ!なんでこんなになってもまだ!!!」

 

 震えるロージャの手の先で彼女の握った剣が私を深々と貫いていた。

 

『ロジオン、貴女に言わなくてはならない事があります』

 

「はぁ!?」

 

『ロジオン、この先も貴女はの渇望が満たされる事は決してないでしょう。

 何故なら貴女はどれだけの栄光を築きあげても、どれだけ特別になれたとしても、それでもなお貴女は満足それに出来ない。

 どれだけ特別になろうとも、貴女は他者のそれと比べて特別である事を求め続けるでしょう、それが...それこそが貴女の在り方であり存在意義となっているのだから。

 

 それをやめてしまった時、貴女はきっともう立ち直れなくなってしまうから...でもねロジオン、いつか必ずそれを埋めてくれる人が貴女の前に現れる。

 

 その時まで、どうか待っていて...さようなら』

 

 剣に貫かれた傷を中心として砕けゆく体は、きっと酷く儚く写った事だろう。

 

 それでも、これでお別れだよロジオン。

 

 これだけ多くの悲劇を積み重ねて、私は漸く理解したんだ。

 

 今の私だけの力では、絶対に救えないものがあまりにも多すぎるって。




【登場人物紹介】

『ロージャ/ロボトミーE.G.O::涙で研ぎ澄まされた剣』
・元々ロボトミーE.G.O編でやる予定だったけれど個別ストーリーでやったほうが美味しいなと思ったのでこういう形になった。
 作者なりにロージャを見てて多分こんな感じにすれば良いのかなって思ったものを出力したが、うまく書けているか不安である。
・この後チェックポイント戻りで何もかも無かったことになった。

『村雨/開花E.G.O::全ての悲劇が無くなるように』
・自分のE.G.O使ったら会社内でいきなり意味不明な数値出したせいで幻想体扱いされて鎮圧命令出ちゃった。
 皆話を聞いてくれないので、前回の話で溜まりに溜まったフラストレーションのせいでやけになりサイバーサイコシスみてえになったうえに殺しまくってたら絶望ロージャにぶっ刺されて鎮圧された。
・今の自分の力だけでは救えないものがあると悟った。

解決済みの人格ストーリー(例えば握らんとする者)の後日談は必要ですか?

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