都市は都市でも人格ストーリー世界線に来ちゃった   作:薬指〝笛吹派〝スチューデント

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『終幕劇演者』②

 ラ・マンチャランドでの暮らしは、まぁぼちぼち楽しめてる。

  

 血鬼三人衆と一緒に演劇やって客を楽しませたり、俺が持ち込んだ楽器で盛大にライブをぶちかましたり、それはもう色々と面白い事をした。

 

 そうすることで、少しは室長殿が笑えるようにと思っていたんだが、どうにも彼女の顔は笑うことを忘れてしまったかのように笑顔を見せようとしない。

 

 ただ一つだけ、たった一回だけ室長殿が表情を変えた瞬間があった。

 

 それは俺がラ・マンチャランドを取り巻く環境を少しでも良くできないかと試行錯誤していた時の事。

 

 室長殿が俺の制作途中だった試作品の一つを手に取って口に運んだんだ。

 

「これは...いったいどうやって作ったのだ?」

 

「ん?あぁ~それっすか、俺は他者の血中から鉄分を抽出して色々な形に再形成する技術を持ってるんすけどね。

 それを応用して今度は鉄分から人間の血液に酷似した成分を作り出せないか。

 つまりは人工の血液を作れないか試してみたんすわ、そしたらまぁある程度は良いものが出来たんですけどね、残念な事に皆さん本物の血液の匂いを嗅ぐと目の色変えてそっちに引き寄せられてしまう。

 今はそれをどうにか出来ないか改良中ってところかな」

 

「もしそれを完成させることが出来れば我々の同胞たちもこれ以上苦しまなくて済むのだな」

 

「そうだな、そうなってくれたら良いと俺も思っている」

 

 こんな感じで、ラ・マンチャランド内の連中ともだいぶ仲良くなってきていたんだが、そうも言ってられない事態が少しずつではあるが顔を見せ初めていることに馬鹿な俺は気づけない。

 

 気づいた時には手遅れで、そして全ては始まっているのだから。

 

 ラ・マンチャランドに来て1ヶ月くらい経ったん辺りで、とうとう室長に俺の正体がバレちまった。

 

 きっかけはフィクサーたちによるラ・マンチャランドへの襲撃が増え始めた事だな。

 

「くっそ、こいつらどんだけ湧いてくんだよ」

 

 どうも俺に今回の話を持ってきたハナ協会の上役が不審死をして、それがラ・マンチャランドの仕業ってことになってやがったもんだから大義名分を得たハナ協会がゴリゴリの総力戦宣言を発令しやがったんだ。

 

 最初こそニコリーナさんや神父にドゥルネシーアさんたちで抑え込んでたが段々と戦線は膠着状態に陥って園内の血鬼たちは限界を迎え始めた。

 

 俺が作った血晶飴(仮)でなんとか持ちこたえてはいたが、それでも限界はあった。

 

 其処ら中で血鬼からすると旨そうな血の匂いが溢れてるもんだから血に対する飢えと渇望が最高潮に達しちまったんだな。

 

 お陰で園内の血鬼たちがどんどん異形化して抑えていられなくなってしまい、それでもなおフィクサーたちは向かってくる。

 

 日に日に勢いを増す協会からの攻勢に痺れを切らした室長殿は他の三人に止められながらも自ら最前線に出陣した。

 

 そこからはまぁ破竹の勢いで蹂躙劇が繰り広げれられ...なれどもフィクサーたちは止めどなく雪崩れ込んでくる。

 

 そのうち室長殿が疲労を隠せなくなったその一瞬の隙に丁度不意を突いた形で、一人のフィクサーが死体の山の中から這い出て室長殿に背後から切りかかった。

 

 しかもそいつが使っていたのは何処の工房製だったかは忘れたが対象を空間事叩き割るっていう代物で、それは異常な不死性を持つ血鬼の命にすら届き得る致命的な一打と成りかねない劇物である。

 

 この一瞬に対応しようとした時に俺は気づいたんだ。

 

 此処から室長殿がいる場所まではそれなりに距離がある...だがこの血鬼としての側じゃあ力を完全には発揮出来ない。

 

 つまり、このままではどうやっても室長殿にへの攻撃を弾くには間に合わない。

 

 だから、やるしかなかった。

 

 俺は、変装の為に纏っていた幻形外装を解除し1ヶ月ぶりに全霊の力を振るった...が、その代償として俺が血鬼じゃなかった事が室長殿にバレてしまったんだ。

 

 すなわち俺の人間としての側、村雨としての姿が白日のもとに晒されて...まぁわかるだろう?室長殿の酷く落胆したような悲しむような顔が頭に焼きついてやがる。

 

「貴様その姿は...そうか、やはり貴様は我らの同胞ではなかったのか」

 

「至極残念ながらな、それでどうするよ...このまま俺と殺り合うか?もしそうであるならば俺はこの場で自害する事を選ぶが」

 

「何故だ」

 

「あっ?」

 

「何故私を助けた!貴様ら人間にとって此度の一瞬は私を滅ぼすまたとない絶好の機会であった筈、なのに何故!!!」

 

 あぁ、なんだそんなことか。

 

「んなもんおたくらの事が気に入ったからに決まってんだろ。

 俺はな、一度気に入った奴は優先順位に引っ掛からない限り絶対に助ける事にしてんだわ...だからまぁ、今回はその優先順位であんたの方が上だったから助けた。

 助けた理由なんて、別にそれだけで十分だろう?」

 

「馬鹿な...あり得ない、そんな理由で人間が血鬼を?そんな、それじゃ私が今までやって来たことは何だったというのだ...」

 

「あぁ言い忘れてたが、今回の件で間違っても自己嫌悪とかすんなよ?俺は人間の中でもぶっちけ変わり者な方だから基準にするだけ馬鹿らしいってもんだし。

 それにあんたが気落ちしてると他の連中も萎びた薔薇みたいに活気がなくなりやがるからさ。

 

 だから、どうにかあんただけはいつだって笑っていられるようにするってのが俺の目標であり願い...まぁ、いずれあんたにもそんな日が訪れるさ、あんたを導く輝ける星の軌跡があらんことを祈る」

 

「待て、一つ聞かせろ」

 

 おっ?なんだろうな。

 

「貴様、名は何と言うのだ?今の今まで私は貴様の名前を聞いていないではないか」

 

 そんなことかよ、でもまぁしゃあねぇな。

 

「そうさなぁ...人間としての名前は此処じゃ名乗れないから、まぁ...血鬼として演じたこの〝側〝の名前なら教えてやっても良いかもな。

 そうだな、俺は演じる者であり観測し定める者でもある。

 してこの身は『アルルカン』狂宴を催す悪魔であるが故に」

 

「アルルカンか...覚えておく」

 

「ん?殺さなくて良いのか?」

 

「貴様はこのラ・マンチャランドに必要な人材だからな、貴様が我々を裏切らぬ限り他の家族たちにも黙っておいてやろう」

 

 なんと懐が広いのだろうか、ハナ協会のクソ上役とは大違いだなこりゃ。

 

 人の上に立つ者としての差があり過ぎるだろ。

 

 嗚呼やっぱり...俺はこの人と殺り合いたくねぇなぁ。

 

 ・・・・・

 

「ごめんな、室長...グレゴール」

 

 血反吐を吐きながら砕けかけた肉体を引きずり、俺はこの世界でのこれまでを想起した。




【登場人物紹介】

『一般フィクサーさん』
・工房武器:仮称「次元砕き」を使うフィクサー、実は1級に近い2級だった。
 主人公にすんばらり劇場されて死亡、工房武器は後日所属事務所に本人の遺品と一緒に郵送された。

『ラ・マンチャランド室長』
・自分たちに色々と貢献してくれてた奴が何か同胞に化けた人間だったことで超複雑な気持ちを抱いている。
 でも皆の為に頑張ってくれてるし仲良くしてくれてるから皆の為にも黙っとこした。

『主人公』
・血鬼としての側が「アルルカン」という名前であると判明したが未だに血鬼形態ビジュアルが開示されていない男、なお髪の毛の色だけ開示しておくと白色である。

『炎拳事務所生存者グレゴール』
・最大の苦痛を与える為の準備期間なので空気(カリストホンル&アルビナファウストガチャでもまた確定枠持っていったの許さんぞ)
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