『擁護する狂人』
「・・・・はあ」
ここにきて何度目かの溜息をつく。腕に着けていない腕時計を見ると、もう夜中だった。
不思議とここにいると眠くもならなければ痛みもない。・・・認めたくないが、アリスの言っていた通りだとすればここが『精神世界』だからなのだろう。僕の精神だけ連れてこられたのなら、体はそのままのはず。アリスに問い詰めたいが・・・・、やめておこう。そこが盲点だったとしたら僕の逃げ道がなくなる。
しかし、精神世界だと思わせるための演出かもしれない。だって窓からは外が見えるし、時間もたち、太陽も昇る。
ふと窓の外を見れば三日月が見えた。月はたしか一か月で・・・・・、それならもう一か月たったというのか?いや、違うだろう。半月を見のがしただけできっとまだ二週間ほどのはず。
まあいい、今日はもう眠ろう。明日こそ、あの狂った女から解放してほしいが・・・。
コツッコツッコツッ・・・
いつものブーツの音が聞こえた。もう朝になったのか。
起き上がり髪を手櫛でとかすとアリスが部屋に入ってきた。にらみつけるが効果が無いようで能天気に笑っている。こいつはいつになったら僕を開放するのだろう。
「こんばんはリドル」
「・・・朝だ」
「ああ、そうだね。なんか認めたくなくて」
「・・・」
「またフロアが増えたよ。やっと一階増やせたね。・・・・ごめんね、忙しくて数日来れなかったよ」
そういえば居なかった。ストレスを感じなかったのはそういうわけか。僕の手首を見てから、手をつかんで下の階に引っ張っていかれる。
毎度毎度嫌だ。汚い、気持ち悪い。
手を振り払って自力で歩く。アリスの表情は見えなかったが笑っている気がする。なぜ笑ってるんだ?まあ理解はする気もないんだけど。
「ほらほら!」
ぴょんぴょん跳んでいつものように先導してくる。頼んでもいないし、うざったるいからやめてほしい。最初は少しあいてのようすを伺っていたけど、だんだん気が大きくなっている気がする。気を引き締めなければ・・・、油断させるのが相手の狙いだとしたら?そうだ、こいつは最初僕を食べようとしていた奴だ。油断は禁物。しっかり気を保とう、こんな閉鎖空間でも、いつかは庭にくらい出られるし成績もアリスよりいい僕だ、アリスの盲点をついてここから出られるはず。
「リドル本好きでしょ?闇の魔術の本からなにから、たくさん集めたの」
「・・・」
「あとね、呪文の練習する場所もとったんだ。あ、ここには小~大の動物がいるから・・・」
「・・・なぜ知っている」
「え?リドルの趣味のこと?やだなあもう!私はリドルのことなら何でも知ってるんだよ?」
ふふ、と笑ってアリスは身勝手に帰ると言い、結局何の説明もせず帰ってしまった。
なんでもなら、僕の今の考えも気持ちも読み取ってほしい。そうしたらここに閉じ込めようなんて考えなくなるだろう?
【耳をふさいだ狂人】
いや、ほら、読み取ってないわけじゃないんですよ?
お目汚し失礼しました