生者に恐怖を、少女に祝福を   作:狐畑

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 本当はすぐ投稿したかったんですが、この話と次の話を書くために最初の病室周辺を徘徊したり普通に忙しかったりで遅れました。
 細かいオブジェクトの文字もしっかり書かれていたりして面白かったです。


file2:くらやみおばけⅠ

 ゆっくりと意識が浮上する。どうやら、考えを巡らせるうちに眠ってしまったようだ。ゆっくり身体を起こして、妹たちの様子を確認してみる。

エミリーはまだ寝ていて……マリーの姿はなかった。壁には小さな穴が開き、マリーのお気に入りの人形が寂しげに地面に落ちていた。

 

「朝だ、起きろ」

 

 そう言って、髭を生やしていて、スーツを着た施設の男の人が入ってきた。今日はハズレの日、私たちとやけに距離を起きたがるし当たりも強い男の人。名前は……忘れちゃった。あの人は私たちとあまり話したがらないし、すぐ距離を取ってくる。私たちを怖がってるようにも感じる……私はそれを何となく察していたから、あまり近付かないようにしてきた。

 彼は私とエミリーの部屋のロックを解除したあと、エミリーの部屋のガラスを叩き、彼女を起こす。

 

「朝食の時間だ、世話は任せる。着替えもしておけ」

 

 吐き捨てるように言った彼は、折りたたみ式の机に、今日の分の着替え……ご飯の乗ったトレーを2人分置いて去ってしまった……。マリーの分は無かった、ほんとに居なくなってしまったみたいだ。早く、見つけてあげないと……。

とりあえず、今日のご飯を食べよう……エミリーにも食べさせてあげないと。

今日のご飯はシンプルなベーコンエッグに焼きたてのトーストだった。自分の分とエミリーの分をもって、扉が空いたエミリーの部屋に入る。彼女は大人しくベッドに座って私を待っていた。

 

「おはよう、エミリー。機能はちゃんと寝れた?」

「うん……ちょっと怖かったけど、寝れたよ」

 

 小さめのトレーに乗った2人分の朝食と折りたたみ式の机をエミリーの部屋に広げ、隣に座って優しく問いかける。

 エミリーは少し私の場所を探るような素振りを見せたあと、優しく私の手を握りながら答えてくれた。

その後はふたりでゆっくり食事をする……エミリーは目が見えないから、私が口元までご飯を持って行ってあげる……美味しそうに食事をする妹を見ていると、なんだか幸せな気分になる。食べ終わった後はエミリーの口元を拭いてあげた。

 しかし……そんな、平和な時間は耳に入った異音によって終わりを告げる。

 

『あ……そぼう……?』

 

 しわがれた、不気味な声だった。でも、確かに聞こえた。同時に、夜に感じたのと同じ嫌な気配の感覚が戻ってくる。

 

「マリー?」

「……えっ?」

 

 エミリーが口にした言葉に、私は困惑してしまった。確かにエミリーは目が見えにくい分聴覚が冴えている、けど、今のがマリーなわけ……。そう考えを巡らせながら、辺りを見渡す。声が聞こえたということは少なくとも近くにいるはず。

 きょろきょろと見渡してるうちに、"ソレ"と目が合った。昨日、マリーの部屋に空いた穴から、濁った大きな瞳が、私達を覗いていた。きっと、隠れてるだけでかなり大きい。私の本能が……アレはやばいと悲鳴を上げている。

 

「エミリー、ちょっとここを出るよ」

「えっ、どうしたの急に……怒られちゃうよ?」

「……大丈夫、お姉ちゃんが責任とるから」

 

怒られるだろうが、仕方ない。優しくエミリーの手を取り、小走りで部屋を出て階段を駆け上がる。上の詰所に誰かいて追い返されるか少し心配だったが、幸い無人だった。ふと、ホワイトボードに書かれた注意書きが目に入った。今まではたいして気にもしていなかったものだが……

 

『この先の投薬室には、担当職員以外の一切の入室を禁じる。【異変】を感知したら、主任に即時連絡を、緊急時のた――』

 

 大事なところで途切れている、早めに書き直しておくべきじゃないだろうか。異変ってなんだろう……夜にマリーの部屋で起きたことと関係があるのだろうか。

 今は考えても仕方ない、とにかく離れて人を呼ぼうとしたところで、どんっ、と誰かとぶつかった。

それは……ギデオンさんだった、朝から規則違反をされたせいか、露骨に不機嫌そうな口元を見せている。

 

「何をしている、朝から規則違反で私に――」

「お化けが居たの! 穴から覗いてた!」

 

 今あそこに戻されたくない一心で声を荒げる、言い返されると思ったが、ギデオンさんは急に黙って少し考え……

 

「分かった……こちらで確認しよう。少し時間がかかるかもしれない」

「君たちは、そうだな……」

「ミス・アリシア、彼女たちを東棟の202病室へ。最近まで子供の患者が入院していたし、玩具なども置かれていたはずだ」

 ちょうど近くに居た職員さんを呼ぶと、私達を案内するように伝えてくれた。あの人は最近ここに来たばっかりだから名前は知らなかったけど、アリシアさんというらしい。念のため覚えておこう。

 

「確認が済めば迎えに行く、それまでそこでじっとしていてくれ」

 

 そういって、ギデオンさんは足早に私たちの部屋の方に向かってしまった。

 

「えーっと、初めまして……お姉さんと会うのは初めてですよね……私はアリシア、よろしくお願いします」

「うん、よろしくねお姉さん」

 

 アリシアさんは少し緊張した面持ちで私たちに挨拶してくれた、ので私も軽く笑みを浮かべて返す。エミリーはまだ緊張してるのが、ぎゅっと私の手を握ったまま後ろに下がってしまった。

 

 そのあと、私達は2階に上がって廊下を通った先の部屋に案内された、ここはあまり入ったことない場所だから、少しワクワクする。廊下には馬に乗った人の石像が置かれていた……随分と変わった石像だ。

 アリシアさんは仕事があるからと、案内だけ済ませて行ってしまった。この辺は今人が居ないのか、随分と静かな気がする。患者さんの気配も、職員さんの気配もない。

 202病室にはクマのぬいぐるみや馬のおもちゃ、お絵かきして遊べるようにクレヨンと紙まで置いてあった、こんな至れり尽くせりの場所なら、いつもの部屋にももっと色々置いてほしいと思ってしまう。奥の壁には時計と、3枚の色紙で『叫ぶな、おもちゃを綺麗に使おう、かんしゃくを起こさないで』と注意書きが書かれていた。

 まあ気にすることでもない、私は叫ぶこともないし、かんしゃくを起こしたりおもちゃを壊すような年齢でもないのだから。その辺は姉としてしっかりしてきたつもりだ。

 

「わぁ……こんなにたくさん」

「ソフィア……わたしが遊べそうなのは、ある?」

 

 その言葉を聞いて我に返る、私だけ楽しくてもダメだ……エミリーの遊べるもの、遊べるものと考えながら周囲を探すと、1冊の本が目に入る。タイトルには『くらやみおばけ』と書かれている黒い本だ。

 

「うーん、くらやみおばけって本があったよ……点字じゃないし、お姉ちゃんが読み聞かせする?」

 

 そういうと、エミリーはこくりと頷いた。私はエミリーを近くにあったベッドにちょこんと座らせ、隣に座って本を広げる。

 

「じゃ、読むね……"くらやみおばけは どこにでもいるよ くらいところが大好き"」

「"くらやみおばけはどこにでもいるよ あかるいところがだいきらい"」

「"だから まっくらから 君を見てるんだ"」

 

なんだか怖い内容だったが、エミリーは怖がらずに聞いていた、やめようと思いもしたが大丈夫そうならと、私は次のページを開く。

 

「暗闇に……近づくな」

 

 でかでかとした赤い文字でそれが書かれていて、私は思わずびくっとしてしまった。なんだか全体的に不気味だったが、こういう子供向けの本は教訓が多いと聞いたことがある、つまるところ暗闇は危ないよってことだろう。

 

「……終わり? なんだか、よくわからない話だね」

「うん……多分暗闇は危ないよってことだと思う、教訓ってやつ」

「へぇ、私見えてないから……気づいたら暗闇に居るかも……」

 

エミリーが不安げな様子で口にしたその言葉を聞いた私は、ぎゅっとエミリーの手を握る。

 

「……大丈夫、その時はお姉ちゃんが助けてあげるから。どんな暗闇からでも、おばけからでもね」

「マリーもすぐに見つけてみせる……」

 なんて、本心であるがカッコつけたことを言ってみる……そうしたら、エミリーは安心したような様子で私に身を預けてきた。

そんな可愛いエミリーを撫でようとした瞬間――

 

バツンッ!という音と共に、部屋の電気が消えた……外の方を見てみると、廊下の電気も消えている。ふと、全身に悪寒が走る。この嫌な気配、さっき部屋で感じたのと同じモノだ。

 

「何かあったの……?」

「……停電かな、様子見てくるね? エミリーはここで待ってて」

 

 心配するエミリーにそういって安心させた。すぐに私は部屋を出て、念のため扉も閉める。停電したいうのに誰も来ない、この辺には今私達しかいないのだろうか。廊下は薄暗くなっていた、奥の方はしまったカーテンの隙間からわずかに差し込む日の光で照らされてはいるものの、なんだか不気味だ。

 ドス、ドス、ドス……っと、天井の方多様なから音がする、何かが歩いているようなそんな音だ……今は真上を通ったのだろうか。

 

「誰か、居るの……?」

 

 それには誰も答えない、静寂だけがそこにある。仕方ない……こうなったら他の人を呼びに行こう。そう思って、私はエントランスに続く廊下を進んだ。

 

 突然、ばき、めり、めり、という音が、天井から聞こえた。無理やり建材を引き裂くような音だ。

 ゆっくりと上を見上げると、大きく、爪も伸びた灰色の手が強引に天井を引き裂いて、大きな穴をあけようとしていた。その穴の中からは、濁った眼の怪物が覗いていた。間違いない、さっき私たちを覗いてたやつだ。

 顔の全容が初めて見えた、目が大きくて、挙句片方が飛び出している。鼻も口も何もかも大きくて、白い髪まで生えていた。中途半端に人間に見えて、なおさらそれが不気味に思う。

 

「あ……ぁ……」

 

 私は自分の口を咄嗟に抑えた。ダメだ、今悲鳴を上げたらエミリーが怖がる、この音くらいなら我慢してくれると思うけど、私の悲鳴なんて聞こえたらあの子も悲鳴を上げてしまうかもしれない。息を整え、自分を落ち着かせる。

 この怪物は今私しか見えてない、だから……せめてあの子の元に行かせないようにするんだ、うまいこと向こう側に抜ければエントランスに逃げられる、助けも呼べるはずだ。

 

 前みたいに覗いてくるだけなら……という願いを否定するように、怪物はするりと天井から私の前に降り立つ、顔も大きければ当然手足も体も大きい……ギデオンさんよりも大きいし、3mはあるだろうか。怪物も服を着るのか、薄汚れ、引き延ばされて一部が破けた衣服を纏っている。それは、心なしか私たちが着ているのに似ていた……。

 

『ハァ……ア……アァ』

 

 不気味なうめき声をあげ、その怪物はゆっくりと此方に寄ってくる。考えろ、とにかくこいつをエミリーから引き離して助けを呼ぶ。やることはそれだけだ。この狭い廊下で横をすり抜けてエントランスに向かうのは無謀だろうか……ここで大声を出しても今のエントランスに人はいないと思う、気づいてもらえる保証はないし、エミリーが反応してこの怪物に存在がばれてしまうかもしれない……なら。

 私は廊下の奥に向かって駆け出した――




 The girl怖いですよね、私も攻略中にかなり苦しめられました。RE2のタイラントを思わせる厄介さだったと感じます。あと何より見た目が本当に怖い。ちなみにソフィアはThe girlの正体には気づいていません。
 経営中のローデスヒル療養所で始まってしまった恐怖の鬼ごっこ、今のところ大した対抗手段も持たない彼女は無事にこの窮地を脱することができるのでしょうか。

 今の所ソフィアは大した力を持っていませんが、彼女も一応感染者、レオンのラクーンシティ編辺りには様子がおかしくなると思います。か弱い少女では戦いについていけない――
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