聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜 作:水上 空
三途の川の受付にて
辺り一面、白い霧に包まれた川のほとり。
そこには事務机が置かれ、一人の少女が気だるげに頬杖をついていた。
カロン:「……はい、次の方。お名前と死因をどうぞ」
カイト:「えーっと、カイトです。死因は……散歩中にバナナの皮で滑って、そのまま崖下に」
カロン:(無言で分厚い台帳をめくる)
「……カイト様、今月で4回目ですね。ペース早すぎませんか? 帳尻合わせるこっちの身にもなってください」
カイト:「いやぁ、不慮の事故には勝てなくて。あ、スタンプお願いします」
カロンが慣れた手つきでカードに「死」というシュールなスタンプを捺す。
カロン:「はい、10個貯まったら『現世の高級プリン』と交換です。……じゃあ、あちらの光の門へ。聖女様がお呼びですよ(凄く怒った顔で)」
「……っの、バカイトーーー!!」
まばゆい光と共に、カイトの意識が現実に戻る。
目の前には、白銀の髪を振り乱し、顔を真っ赤にさせた美少女・ノアールがいた。彼女の手には、バチバチと火花を散らす聖杖が握られている。
カイト:「ぷはっ! ……あ、ノアール。ただいま」
ノアール:「『ただいま』じゃないわよ! 何が『不慮の事故で死ぬのが特技』よ! ギルドの依頼に向かう道中で、バナナの皮で死ぬ勇者がどこにいるのよ!」
カイト:「いや、あれは黄金に輝く芸術的な皮で……」
ノアール:「うるさい! 私の超高密度・神聖蘇生術(ハイ・レザレクション)を、そんなギャグみたいな死因に浪費させないで! MPの無駄なのよ、MPの!」
彼女の怒号が神殿内に響き渡る。周りの神官たちは「あぁ、またか……」という目で見ている結局、ノアールに引きずられるようにしてギルドへ向かうカイト。
ノアール:「いい? 今日こそはギルド登録を済ませるわよ。あなたは今日から私の『盾(タンク)』なんだから。勝手に死ぬのは禁止!」
カイト:「分かってるって。俺だって、たまにはカッコよく魔物と戦ってみたいし」
ノアール:「……はぁ。まあ、死んでも私が治してあげるけど。……絶対、勝手にどっか行かないでよね」
少しだけ頬を染めて、ノアールがカイトの袖を掴む。
ちょっと良い雰囲気――。
カイト:「(おっ、これはフラグか……?)」
その時、カイトの足元に小さな小石が。
カイト:「あ」
ノアール:「え?」
カイトが盛大に前のめりに転倒。その先には、運悪く飾られていた儀式用の「巨大な鋭利な槍のオブジェ」が。
グサッ。
カイト:「(あ、これ死んだわ……)」
ノアール:「カイトぉぉぉぉ!! また三途の川に行ってんじゃねええええええ!!」カロン:「あ、おかえりなさいカイト様。最短記録更新です」
カイト:「……スタンプ、お願いします」
カロン:「はい、ポン。……これ、今日中にプリンまで貯まるんじゃないですか?」。