聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜 作:水上 空
超豪華新築マイホーム:ダイニングにて
王室から贈られた白亜の大豪邸。眩い朝日が差し込む食卓には、ノアール特製の豪華な朝食が並んでいた。
カイト:はぁ……。王様に褒められて、こんな立派な家まで。俺もついに「上がり」の人生かな。
ノアール:何をボケっとしてるのよ。早く食べなさい。今日はギルドの定期報告の日よ。
ルナ:……カイト様。パンの耳が、少し……硬そうです。……あ、カイト様の喉が……。
カイト:ごふっ!?(パンの耳を喉に詰まらせる)
カイトが椅子から転げ落ち、床に頭を打ちつけるのと同時だった。
ダイニングの壁に設置された「懺悔室風の小窓」がシュバッ!と開き、カロンが身を乗り出した。
カロン:はい、ピッ! 85回目。死因、新居での初・窒息および打撲。おはようございますカイト様!
カイト:……あ、カロンさん。……早すぎる。俺、まだ意識が完全に「あっち」に行ってないのに、もうスタンプ押された……。
三途の川(出張所経由)
カロン:いやぁ、現地駐在は楽でいいですね! 移動時間がゼロなので、私の有給休暇が実質増えたようなものです。
カイト:カロンさんの有給のために、俺は家の中でも安心できないのか!?
カロン:はい、ピッ! 2枚目カード35個目。特典の「光る羽根」が、今朝から「七色に発光」するようアップデートされましたよ。……あ、ノアール様が今、コーヒーを飲みながら『朝から景気良く羽を撒き散らしてんじゃないわよ!』って、杖の準備をしてます。
カイト:コーヒー飲み終わるまで待ってくれって伝えて!!
ノアール:――朝食中に冥界と通信してんじゃないわよ!! 喉を詰まらせるなんて、幼児以下ね!! ……いい加減にしろよこの咀嚼下手バカイトォォォ・ブレックファスト・レザレクション!!!
ドゴォォォォン!!!
蘇生の衝撃波で、カイトの喉に詰まっていたパンの耳が弾丸のように飛び出し、向かいに座っていたアイリスの甲冑を「コンッ!」と鳴らした。
アイリス:むおっ! 朝からカイト殿の気合が飛んできたぞ! よし、私も負けじと朝稽古だ!!(カイトを担ぎ上げて庭へダッシュ)
カイト:ガバッ! ただいま! ……アイリス、待って! まだ食後30分経ってないから、動くと吐……。
結局、庭に出るまでに廊下で3回ほど死に、その度に壁の窓からカロンが「ピッ!」「ピッ!」「ピッ!」とリズム良くスタンプを押していく音が館内に響き渡った。
ルナ:……カロン様。……スタンプの音が、目覚まし時計代わりになって……いい感じです。
ノアール:ちょっとカイト! 廊下が羽根と金粉だらけじゃないの! 掃除しなさい!
カイト:……俺、この家で長生きできる自信が、1ミリもねぇよ……。