聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜 作:水上 空
新居の居間:絶望の家計簿
カイトは、ノアールが突きつけた「今月の収支報告書」を見て、白目を剥いて倒れそうになっていた。
カイト:ノ、ノアール……。これ、俺の取り分が「マイナス3000ゴールド」になってるんだけど……。
ノアール:当たり前でしょ! メイに送った特級マナリンゴ代に、あなたが壊した新居の備品代、それから私の「遠隔蘇生(メイ・ブースト)」の特別残業代よ。……文句ある?
カイト:……ないけど……。でも、このままじゃ自分でお菓子も買えない! ノアール、俺、今からギルドに行って稼いでくる! 今日は死ぬまで……じゃなくて、死なない程度にガッツリ稼ぐんだ!!
ノアール:……(ピキッ)……「稼ぐ」ですって? あんたがギルドに行ったら、依頼料より蘇生費用の方が高くつくのが目に見えてるわよ!
カイトはノアールの制止を振り切り、アイリスとルナを伴ってギルドへ駆け込んだ。
カイト:受付のお姉さん! 一番報酬が高くて、かつ「転んでも死なない」安全な依頼をください!!
受付嬢:あ、不滅の盾のカイト様! ちょうど良かったです。……『狂暴なビッグ・ボアの討伐』なんていかがですか? 報酬は破格ですが、突進を食らうと死にます。
カイト:死ぬのは困るけど……背に腹は代えられない! やるぞ!
ルナ:……カイト様。……やる気は認めますが、今のあなたの装備、ノアール様に没収されて「布の服」一枚ですよ。……ボアの鼻息だけで死ぬ予感がします。
カロン:はい、ピッ! 105回目。死因、……えーっと、「ギルドの自動ドアの閉まる速度が予想より速くて、挟まって圧死」。……カイト様、ボアと戦う前に建物に殺されるなんて、経済的困窮が死を急がせていますね。
カイト:カロンさん! カードの背景が「ギルドの受付カウンター」になってる!?
カロン:お仕事ハローワーク仕様です。……あ、ノアール様が「金に目がくらんで死んでんじゃないわよ!!」って、『資本主義・レザレクション』を準備してますよ。
ギルドの入り口。ドアに挟まって絶命したカイトの前に、般若のような顔のノアールが仁王立ちしていた。
ノアール:
「冥き底より這いずる愚か者よ! 稼ぎたいなら私の肩でも揉んで、お手伝いポイントでも貯めなさい! 扉一枚に命を預けるような貧弱な財布に、再起動のチャンスをあげるわ! ――【いい加減にしろよこの一文無しバカイトォォォ・融資(ローン)・レザレクション】!!!」
ドゴォォォォォォォン!!!(ギルドの自動ドアが衝撃波で完全に粉砕され、カイトが跳ね起きる)
カイト:ガバッ! ただいま! ……あ、ノアール。……いま、自動ドアの修理代が俺の借金に上乗せされた気が……。
ノアール:……(額の青筋を抑えながら)……察しがいいわね。……さあ、帰りなさい! 今日はカレーの具材の買い出しから、全部あんたの労働(返済)で賄ってもらうからね!!
アイリス:はっはっは! カイト殿、ついに借金完済の道が見えたな! おめでとう!