聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜   作:水上 空

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優雅なティータイムと、嵐の予感

 

新居のテラス。

半壊していた屋根と壁はルナの「ビジネス資金」で綺麗に修復され、初夏の柔らかな風が吹き抜けていた。

そこには、純白のテーブルクロスを囲み、優雅にティーカップを傾ける三人の女性の姿があった。

 

ノアール:

「……ふぅ。やっぱり、あのお騒がせ女神がいなくなると静かだわ。お茶も美味しいし、最高のリラックスタイムね」

 

アイリス:

「はっはっは! 確かに。カイト殿には悪いが、彼がいないだけで家の中の破壊係数が劇的に下がるからな。平穏とは素晴らしいものだ」

 

ルナ:

「……。……茶菓子(爆風飴)の補充も完了しました。……カイト様、今頃は私の出した……いいえ、ノアール様が出した『依頼』に釣られて、泣きながら連行されている頃でしょうか」

 

ノアールは満足げに、ギルドに発行した『逃亡勇者の捕獲依頼』の控えを眺めて微笑んだ。

 

ノアール:

「ふふ、今頃はギルドのベテラン冒険者に捕まって、引きずられて帰ってくるわよ。自首すれば『皿洗い1000回』で済ませてあげようと思ってたけど、脱走したんだもの。追加で『庭の池の泥さらい100回』も付け足しちゃおうかしら」

 

アイリス:

「カイト殿も運がない。まさか自分が掴んだ『儲け話』が、自分を捕まえるための罠だとは夢にも思っていないだろうな。今頃はダンジョンの入り口あたりで、優秀な冒険者に確保されている頃だろう」

 

彼女たちは、「カイトが生きていること」を大前提に話を進めていた。

ノアールの出した依頼は、あくまで「生け捕り」だ。

まさか、彼が依頼を遂行する前にスライムに躓いて勝手に死んでいるなどとは、塵ほども想像していなかったのである。

 

 

その時、遠くの街の方角から、何やら騒がしい喧騒が風に乗って聞こえてきた。

 

アイリス:

「……ん? なんだか、ギルドの方から凄まじい叫び声が聞こえないか? 誰かが『伝説が終わった』とか、不吉なことを叫んでいるような……」

 

ノアール:

「いつものことでしょ。どうせ誰かが酔っ払って騒いでるだけよ。……それよりルナ、この紅茶、すごく香りがいいわね。どこの?」

 

ルナ:

「……。……カイト様の『死亡保険金(仮)』の積立金から、少しだけ拝借した最高級品です。……味わってください」

 

ノアール:

「あら、気が利くわね。あいつの命がこんなに美味しいお茶に変わるなんて、皮肉なものだわ」

彼女たちが優雅に三杯目の紅茶を注ごうとしていた、まさにその瞬間。

ギルドの掲示板には、あの**「Sランク・死体回収依頼」**が貼り出された。

 

まだノアールは知らない。

自分が愛用(管理)している「カイト」という名の資産が、今や**スライムに敗北した挙句、国家最高機密レベルの『災厄(事務的ストレス)』**として世界に晒されていることを。

 

ノアール:

「さて……そろそろ連れてこられる頃かしら。あいつの顔を見るのが楽しみだわ」

 

カロン(三途の川から):

「……。……今、戻ったら確実に殺されますよ。物理的な意味でも、社会的な意味でも」

 

カイトの114回目の蘇生、そしてノアールが「Sランクの真実」を知るまで、あと数分。

新居の庭に、かつてないほど巨大な**「激怒の魔力」**が充填されようとしていた。

 

 

 

 

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