聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜 作:水上 空
天界のプライベートサロンは、カイトの「連続自死」によって、もはや神聖な場所とは思えないほど澱んだ空気に包まれていた。女神スティアは、高級ソファにこびりついたカイトの「魂の痕跡」を必死に拭いながら、半泣きで叫んでいた。
スティア:
「わかった、わかったから! もう私の目の前で死ぬのはやめて! 今すぐ下界の聖女ちゃんのもとに送り返してあげるから!!」
カイト:
「……ちょっと待って、女神様。帰る前に一つだけ約束してくれよ。下界に戻ったら、またノアールに死ぬほど(文字通り)怒られるんだ。……お願いだ、俺を**『普通には死なない体』**にしてくれ! そうすれば、少しはノアールのMPも節約できるし、俺も平和に暮らせるはずだ!」
スティア:
「……。……。もう何でもいいわよ、契約ね! 契約成立! はい、あんたの耐久力を神の加護で限界まで引き上げたわ。これでスライムに躓いたくらいじゃ死なないはずよ! だから早く消えて!!」
カロンは、水晶板に刻まれたカイトの不滅契約を眺め、いつになく深い溜息をついた。
カロン:
「……。……。困りましたね。カイト様が『なかなか死なない体』になってしまうなんて。……。……あんなに毎日、楽しそうに(?)死に顔のスタンプを押しに来てくださったのに。……。……ああ、寂しくなりますねぇ(棒読み)」
カロンは手元のスタンプを寂しそうに(振りをしながら)磨き、次にカイトが「それでも死んでくる」瞬間を、実は少しだけ楽しみに待機していた。
一方、ダンジョン前では、ノアールがセレナと並んで紅茶を飲んでいた。だが、空から降ってくる「カイトの魂の再臨」を感じ取った瞬間、ノアールの瞳に再び冷徹な光が戻った。
ノアール:
「……あら、セレナ様。せっかくあなたが『成仏』させてくださったのに、あのお荷物、天界を追い出されて戻ってくるみたいだわ。……全く、不法投棄されても戻ってくるとは、まるで質の悪い生ゴミね」
セレナ:
「……ええっ!? そんな、私の【至福への強制昇天】を自力で跳ね除けるなんて……。……。せっかく彼を安らぎに導いたと思ったのに、私の祈りが足りなかったのでしょうか……(ガックリ)」
セレナは、自分の聖女としての功績が「カイトのしぶとさ」によって否定されたことに、目に見えて落ち込んでしまった。
ノアールは空に向かって杖を掲げ、再突入してくるカイトの魂に向けて、次元を越えるレベルの「神託(という名のお叱り)」を叩きつけた。
ノアール:
「聞きなさい、カイト! 女神様から『不滅の体』なんて貰ったつもりでしょうけど、私のMPが全部浄化されてお肌が乾燥する前に、さっさと実体化して蘇生しなさい! 逃げ得なんて許さないわよ! ……。さあ、落ちてきなさい、この**『成仏拒否バカイト』**!!」
カイト:
「……。……。うわああああ! 女神様ぁ、やっぱりノアールが待ち構えてるじゃないか!!」
不滅の体を手に入れたはずのカイトだったが、ノアールの「蘇生(強制労働)」という呪縛からは、神の加護を持ってしても逃れることはできないのであった。