聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜   作:水上 空

66 / 76
隣町ギルドの掲示板・二つ名発覚

1. 掲示板の「要注意人物」リスト

 

隣町のギルド『安らぎの盾亭』の入り口。カイトは道中で負った「アイリスに崖から落とされた傷」と「ルナの誤射による火傷」を、女神の不滅パワーで無理やり再生させながら門をくぐった。

 

そこに貼り出されていたのは、最新の「要注意・重要人物リスト」だ。

2. 確定した「二つ名」

 

カイトは、リストに並んだ名前を見て吹き出した。

 

「おい、見ろよこれ! お前らの正体がバレてるぞ!」

 

【死神の迷子騎士】アイリス・ライト

 

備考: 善意で道案内を申し出るが、騎士としての勘が壊滅的に外れており、常に勇者を死地(崖や罠)へ導く。

 

【カイト狙撃用の磁石】ルナ

 

備考: 放つ魔法が物理法則を無視して味方の勇者に吸着する。敵を狙うフリをした精密な身内撃ち。

 

【地獄の再起動聖女】ノアール

 

備考: 死者の安らぎを認めず、0.1秒で戦線復帰させる蘇生の鬼。彼女の視界内では「死」は休息にならない。

 

3. 至宝の絶望

 

そして、リストの最後にはひときわ大きくこう書かれていた。

 

【至宝の淑女】セレナ

 

備考: 隣国の宝。現在、上記の「死のカルテット」に同行中。ジャガイモ農家への転職を希望している。

 

「……至宝。淑女……。うっ、うわあああん! 私、至宝なのに、 全然淑女じゃないですぅぅ!!」

セレナがその場に泣き崩れる。

4. カイトの屈辱

 

アイリスは顔を真っ赤にして掲示板を凝視し、ルナは無表情に杖を握り直した。

 

「『死神』だと……!? 私はただ、カイト殿を最短ルートで案内しようと……」

「……。……。磁石。……。磁力で、この掲示板ごとカイト様を消滅させれば……」

 

それを見ていたノアールが、カイトの肩をポンと叩いた。

 

「あら、他人事みたいに笑ってるけど、自分の二つ名、見たのかしら?」

 

カイトが視線をリストの端へやると、そこには殴り書きでこう付け加えられていた。

 

【会員制勇者(バカイト)】カイト

 

備考: 三途の川のプレミア会員。スライムに負けるなど、死に方がとにかくマ抜け。

 

「……。……俺だけただの悪口じゃねーか!! 他の三人は二つ名に『騎士』とか『聖女』とか入ってるのに、俺だけ『バカイト』って何だよ!!」

 

受付嬢は震える手で防護障壁のスイッチを入れ、カイトの顔をマジマジと見つめた。

 

「……いらっしゃいませ。あら、カイト様。今日はまだ、一度も三途の川へ行かれていないようですね?」

 

カイトは全身泥まみれ(アイリスの崖落としのせい)で、服は焦げ(ルナの誤射のせい)、顔は引きつっているが、確かにピンピンして立っている。

 

「ああ、女神様に『死なない体』にしてもらったからな! 見ろよ、転んでも、スライムと戦っても、この通り生きてるんだぜ! ざまぁ見ろ、俺の勝ちだ!」

 

カイトが鼻高々に言い放つと、受付嬢はこれまで以上の「哀れみの眼差し」を向けた。

 

「……勝ち、ですか? 」

 

カイトの笑顔が、凍りついた。

 

ノアールが後ろから、カイトの肩を優しく(威圧的に)掴む。

 

「……ねえ、受付さん。この子、死なないから依頼とか、在庫ありません?」

 

「ええ、喜んで。死なない勇者様なら、ギルドとしても大助かりです」

 

カイトは、自分の手に入れた「不滅」が、「労働チケット」だったことにようやく気づき、膝から崩れ落ちた。

 

「……。……女神様……。……死なせて……。……一回だけでいいから、普通に死なせてくれぇ……!!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。