聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜   作:水上 空

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サービス回(物理)!高圧洗浄の乙女たち

1. 勇者、入店拒否

 

下水道から「茶色の山」として帰還したカイト。だが、彼が立ち上がった瞬間、周囲の空気が黄色く淀んだ。

 

「……お、俺は……生きてるのか?」

「……。……。分析。……。生存。ただし、半径50メートル以内の全生物の嗅覚を破壊するレベルで汚染されています」

 

カイトがフラフラとギルドの扉に手をかけると、中からマスターが全力で鍵を閉め、バリケードを築く音がした。

「頼むから来るな! カイト! お前が今一歩でも入ったら、このギルドは『腐海』として王国から封鎖されるんだよぉ!」

 

「うるさいわね! そんな臭い身体で街を歩かないで! 私の服に匂いが移ったら、あなたの不滅の肉体を分子レベルで消滅させるわよ!」

ノアールが鼻を洗濯バサミでつまみながら、10メートル先から杖を突きつける。

2. 川辺のサービス(?)シーン

 

一行は街外れの川へとやってきた。

「はぁ~、生き返るわねぇ。やっぱり冒険の後はこれに限るわ」

 

上流では、ノアール、ルナ、アイリスの3人が、カイトから遥か離れた場所で優雅に足湯を楽しんでいた。ノアールは豊かな金髪をかき上げ、ルナは無表情に水をパシャパシャと跳ねさせ、アイリスは騎士甲冑を脱ぎ捨てて白い肌を夕日にさらしている。まさに読者が待ち望んだサービスカットだ。

 

「……。……。極楽。……。……あ、カイト様。そっち(下流)へ行ってください」

「わかってるよ! でも、石鹸もタオルも届かねーんだよ! 投げてくれよ!」

「……。……。却下。……。ルナが、直接『洗浄』してあげます」

 

ルナが静かに立ち上がり、下流で震えるカイトに杖を向けた。

3. 高圧洗浄魔法、発動

 

「……。……。魔力出力、最大。……。……目標(ターゲット)、不浄の権化」

「おいルナ、その杖の先に渦巻いてる水の勢い、おかしくないか? 龍巻(トルネード)みたいになってるけど!?」

 

「……はぁ……はぁ……! 舐めるなよ……! 俺は……女神様お墨付きの『死なない男』だ! ……この程度の水圧……ちょっと鼻に水が入ってツーンとするくらい……耐えてみせるぜ……!!」

 

ルナの放つ高圧水流魔法【ウォータージェット・ケルヒャー】に揉みくちゃにされながらも、カイトは岩にしがみつき、必死に踏みとどまった。確かに身体はバラバラになりそうな衝撃だが、なぜか意識だけはハッキリしている。

4. カロンの密かな愉しみ

 

その頃、三途の川のほとり。

死神カロンは、いつもならカイトの魂を待ち構えているはずの「魂のチェックイン用タブレット」を横に置き、防護服のヘルメットを脱いでいた。

 

「……。…………来ない。予定時間を15分過ぎましたが、カイト様の魂が流れてくる気配がありません。……。……まあ、そうですよね」

 

カロンは震える手で高級なティーカップを持ち上げ、優雅に一口啜る。

 

「……素晴らしい。……。カイト様が『普通に死ねない体』を盾に、必死に現世にしがみついてくださっている。おかげで、私の定時退勤は約束されました」

 

カロンの顔には、死神になって以来最高の、慈愛に満ちた(本心からの)笑顔が浮かんでいた。

 

「……いいですよカイト様。そのまま、そのまま地上の理不尽に耐え続けてください。こちらに来る手間を省いてくれるなら、鼻がツーンとするくらい何度でも耐えてくださいね。……。……さて、おかわりを淹れるとしましょう」

5. 磨き抜かれる勇者

 

一方、地上ではアイリスが巨大な「洗車用回転ブラシ」を構えて突撃していた。

 

「おおお! 耐えたかカイト殿! さすがは不滅の勇者、そのガッツこそが騎士の誉れ! では仕上げに、この超速回転ブラシで背中の隅々まで磨き上げてやろう!!」

 

「待てアイリス! それ回転速度が速すぎて火花出てるだろ! ぎゃああああああ!!」

 

「……。……。追撃。……。……カイト様が『普通には死ねない』のを信頼して、遠慮なく最大出力……いきます」

 

「冷てぇ! 痛い! 誰か助けてええええ!!」

 

数時間後、河原には不自然なほど白く発光し、一切の「下水の残り香」が消え去ったカイトが転がっていた。

 

「……。……。純白。……。……カイト様、魂の汚れと一緒に、何か大事な『人間としての尊厳』まで洗い流されたようです」

 

カイトの瞳からは「生気」という名の汚れまで、綺麗さっぱり洗い流されていた。

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