聖女ノアールの受難 〜私のMPはゴミクズ勇者のためにあるのではない〜   作:水上 空

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謝罪の巡礼行・マイドシティ編「聖女の涙と、冥界のコスプレ刺客」

1. 聖域に響く「即・懺悔」の洗礼

 

「謝罪の巡礼行」――。それは、カイトという不滅の汚物が撒き散らした数々の無礼を、隣国の教会本山まで歩いて謝りに行くという、カイトにとっては刑執行に近い旅である。

 

その第一の寄港地、マイドシティ大聖堂。案内役を務めるセレナに促され、一行が重厚な扉を開いた瞬間、信徒たちの祈りの声が止まった。

 

「皆様、お騒がせしております。隣国より、この『歩く不浄』を案内して参りました……」

 

セレナは地元神官たちに憔悴しきった顔で挨拶を済ませると、流れるような動作でカイトの首根っこを掴んだ。そのまま、入り口付近に並ぶ「懺悔室」の一つへと彼を強引に押し込める。

 

「……さあカイトさん。挨拶よりも先に、まずはその存在自体を懺悔しなさい。神様にお会いする前に、少しでもその『魂の異臭』を浄化してきてください。……でないと、私が今ここで、あなたをジャガイモと一緒に土に埋めてしまいそうですから……」

 

「いきなり箱詰めかよ!? せめてステンドグラスくらい見せろよ!」

 

カイトの叫びと共に懺悔室の扉が「ガチャン!」と閉ざされた。純白の法衣を涙で濡らし、「ううっ……ひっ……」と咽び泣くセレナの姿に、周囲の神官たちは深く同情した。

 

「……ああ……。私の……一生懸命な祈りが……。彼を至福の天界へ送ったはずなのに……。天界の門番にすら『その汚物は持ち込み禁止だ』と追い返されるなんて……。もう、聖女なんて辞めます……」

 

セレナの絶望的な独白が、聖堂内に木霊する。

2. 「地獄の再起動聖女」への同情

 

セレナによって懺悔室へ乱暴に押し込まれ、鍵までかけられたカイト。その箱の中でジタバタともがく汚物の気配を横目に、ノアールが聖母のような微笑みを浮かべて、しずしずと入場した。

 

「皆様、お騒がせして申し訳ありません。……ああ、あの中にいるのは気にしないでください。この男の『誰にも望まれていない頑丈さ』が、セレナ様の自信を完全に粉砕してしまったのです。責任を持って本山まで謝罪に伺う途中ですので、どうかお許しを……」

 

地元の神官が、痛ましそうにノアールの手を取った。

「おお、ノアール様……! 噂は伺っております。この『下水勇者』のせいで、貴女の清らかな蘇生魔法が、今や【地獄の再起動】と呼ばれるほど殺伐としたものに変えられてしまったとか……」

 

ノアールはスッと目を伏せ、懺悔室から漏れるカイトの「出せよ!」という叫びをBGMに、震える声で被せる。

「ええ……彼が何度死んでも、すぐに汚物まみれで戻ってくるものですから。私の祈りも、今やただの『起動スイッチ』……。本当は私も、皆様のように優雅に過ごしたかったのに……ううっ」

 

「「「ノアール様ぁぁ……!!」」」

3. 冥界の番人、禁断のコスプレ披露

 

その頃、冥界のモニター室では、死神カロンがいつになく上機嫌で着替えを済ませていた。

 

「ふふふ……現世では『謝罪の巡礼』が流行っているそうですね。ならば私も、TPOに合わせた装いでカイト様をお迎えしなければ」

 

カロンが鏡の前でポーズを決める。その姿は、いつもの死神装束ではなく、どこからどう見ても清楚(?)な修道女(シスター)のコスプレだった。ベールの隙間から灰色の髪を覗かせ、手元には特製のスタンプ帳を携えている。

 

「……はい、ピッ。115回目。死因、『あまりの視線の冷たさに精神が砕け、そのままショック死』。……おめでとうございますカイト様。物理ダメージなしでのご入国を祝して、本日は特別に『シスター・カロン』バージョンでスタンプを押して差し上げますよ」

 

カロンは修道女服の袖から特製スタンプを取り出し、邪悪な笑みを浮かべてスタンプ帳を広げた。115個目の枠に、百合の紋章と共に『シスター・カロン(偽名)』という文字が刻印される。

「逃げ場のない謝罪の旅路、三途の川の向こう側から全力で見守って差し上げますからね、ニッコリ」

4. 爆速再起動と、修道女たちの祈り

 

現実世界では、あまりの周囲の冷たさと「即・懺悔室送り」という屈辱にショック死したカイトの亡骸を前に、ノアールが「作業」を開始していた。

 

「……さあ、カイト。いつまで寝てるの。謝罪のスケジュールが押しているわよ」

 

ノアールは祈りの言葉を一切省略し、無造作に杖で懺悔室の扉越しにカイトを突いた。

 

「はい、ピッ。115回目。再起動成功です、バカイト様(笑)」

 

バチィィィンッ!!!と雷のような音が聖堂に響き、カイトが「ぎゃあぁぁぁ痛いぃぃ!」と叫びながら箱の中で跳ね起きた。

慈愛の欠片もない、あまりに事務的で暴力的な蘇生。それを見たマイドシティの修道女たちは、あまりの凄惨さに顔を覆い、ガタガタと震えながらノアールのために祈りを捧げ始めた。

 

「ああ、神様……! ノアール様をお救いください!」

「あの清楚だったお方が、死者を『ピッ』の一言で処理する機械のようになってしまわれて……!」

 

「(……私、今すごく同情されてる。美味しいわ……!)」

ノアールは心の中でガッツポーズを決めながら、さらに悲劇のヒロインを演じるべく、わざとらしく溜息をついた。

5. 逃げ場なしの謝罪ステップ

 

「……。……分析。……。……カイト様の支持率は現在マイナス100%です。……。……誠意を見せるため、ここで『反省のステップ』を踏んでください。……。」

 

アイリスも深く溜息をつく。

「カイト殿、諦めろ。今、教会の影からシスターの格好をした死神がスタンプを振って応援してくれているのが見えた気がするが……幻覚ではないはずだ。踊るしかない」

 

「カロンさんまで(コスプレして)楽しんでる!? ……あああ、待ってくれ! 俺はただ、普通に……普通に生きて、普通に死にたいだけなんだぁぁ!!」

 

カイトの絶叫は、清らかな讃美歌にかき消された。

こうして、死神のコスプレ欲を満たしたカロン、そしてカイトが惨めになればなるほど少しずつ機嫌を取り戻していくセレナを案内役に、「死ねない男の謝罪巡礼」はかつてない熱気を帯びて幕を開けたのである。

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